また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい―― 作:エーアイ
自分をめんどくさい女と自覚する前の春麗のエピソードになります。
資料。
あくまで資料。
自覚前春麗は、そう思っていた。
黒執着春麗のログも。
本編春麗の青ログも。
春麗会議室のレビューも。
記録板AIの余計な分類も。
全部、資料。
自分に直接関係があるわけではない。
正確には。
関係はある。
春麗である以上、完全に無関係とは言えない。
けれど、自分は本編春麗の過去そのものではない。
春麗会議室に参加している時点で、もう別の分岐を走っている。
本編春麗は、本編春麗。
黒執着春麗は、黒執着春麗。
自分は、自覚前春麗。
まだ、自分をめんどくさい女と自覚していない春麗。
そして、黒ドレスルートへ向かう可能性を持ちながらも、すでに本編春麗とも黒執着春麗とも異なる位置にいる春麗。
だから、黒執着春麗と同じになるわけではない。
本編春麗と同じ道を歩くわけでもない。
そこは、前に会議室でも整理された。
自覚前春麗は、鏡の前で小さく息を吐いた。
「……私は、私のルートにいる」
言葉にすると、少しだけ落ち着く。
そうだ。
自分は、誰かの後追いではない。
黒執着春麗の救済後ログを見たからといって、自分も同じように棚を作る必要があるわけではない。
本編春麗が青で相打ちになったからといって、自分も青で同じようにリュウと向き合う必要があるわけではない。
ただ。
参考にはなる。
資料として。
資料としては、非常に興味深い。
黒執着春麗は、黒でも青でもリュウに向かった。
本編春麗は、青でリュウと相打ちになり、宿題の途中回答を受けた。
そのログを見て、自分が何も思わなかったかといえば、嘘になる。
拳が、少しだけ疼いた。
足が、少しだけ動きたがった。
リュウと向き合った時の空気を、思い出した。
自分は十連勝後の十一戦目を経由していない。
その意味では、裏ルートの黒執着春麗と同じ起点ではない。
だが、リュウと向き合えば、何かが変わる。
それは、他の春麗のログを見ても明らかだった。
「……確認くらいなら」
自覚前春麗は、小さく言った。
「してもいいわよね」
何を確認するのか。
リュウの今の状態。
本編春麗や黒執着春麗のログが、自分の中にどれくらい残っているのか。
自分がまだ本当に、資料として距離を取れているのか。
それとも、もう拳で確かめたいと思っているのか。
そのあたり。
そういうことにした。
リュウに会いたいわけではない。
試合をしたいわけでもない。
まして、自分の感情を確かめたいわけでもない。
ただ、資料として。
自分の分岐ルートに必要な確認として。
自覚前春麗は、青い武道服を見た。
黒ドレスではない。
今日は青でいい。
いや、青でなければならない。
黒を着るほどの議題ではない。
今日は、黒の確認ではなく、自分の現在地の確認だ。
春麗は、青い袖に手を通した。
布が身体に馴染む。
その感覚が、少しだけ悔しい。
まだ、動ける。
まだ、戦える。
まだ、前に出たい。
春麗は、鏡の中の自分を見た。
そこにいるのは、本編春麗ではない。
黒執着春麗でもない。
自覚前春麗。
本編春麗の過去ではなく、独自に分岐した春麗。
まだ、自分をめんどくさい女と認めていない春麗。
春麗は、鏡の中の自分に言った。
「確認するだけよ」
一拍。
「必要なら、少し話すだけ」
もう一拍。
「試合は、流れ次第」
言った瞬間、自分で顔をしかめた。
「……もう言い訳が崩れているわね」
それでも、春麗は部屋を出た。
青い袖が、少しだけ揺れた。
リュウは、いつもの場所にいた。
その姿を見た瞬間、自覚前春麗は足を止めた。
ログで見るリュウとは違う。
本編春麗の記録に残ったリュウ。
黒執着春麗のバトルログに映るリュウ。
春麗会議室で精神HPを削ってくる発言だけが抽出されたリュウ。
それらとは違う。
実際のリュウは、ただそこに立っているだけで、空気が違った。
拳を下ろしている。
構えていない。
それなのに、こちらを逃がさない感じがある。
リュウが顔を上げた。
「春麗」
それだけで、精神HPが少し削れた。
自覚前春麗は、内心で即座に否定する。
削れていない。
今のは観測誤差。
本人を前にした時の一時的反応。
資料確認に伴う生理的揺れ。
そういうことにする。
「リュウ」
春麗は、少しだけ顎を上げた。
「今日は、少し確認に来ただけよ」
「確認?」
「ええ」
「試合ではないのか」
「まだ、そうは言っていないわ」
言ってから、しまったと思った。
まだ。
そう言った。
まだ、とは何。
後で言う可能性を自分で残している。
リュウは、そこを見逃さなかった。
「なら、試合になるかもしれないんだな」
精神HPが削れた。
「……あなた、そういうところだけ鋭いわね」
「そうか」
「そうよ」
春麗は、咳払いをした。
「最近、いくつかログを見たの」
「ログ?」
「こちらの話よ」
「そうか」
「本編春麗の青」
一拍。
「黒執着春麗の黒と青」
リュウは黙って聞いている。
「でも、私はそのどちらでもない」
「ああ」
春麗は、少しだけ意外に思った。
「そこは、わかるの?」
「今ここにいるのは、春麗だ」
「それはそうだけれど」
「だが、同じではない」
春麗の精神HPが、少し削れた。
リュウは、こういう時だけ余計に正確だ。
「……そう」
「ああ」
「私は、本編春麗の過去そのものではない」
「ああ」
「黒執着春麗と同じ起点でもない」
「ああ」
「だから、今日来たのは、誰かの真似ではないわ」
「ああ」
「資料確認よ」
リュウは、少しだけ首を傾げた。
「資料なのか」
「資料よ」
「春麗自身のことでも?」
精神HPが大きく削れた。
自覚前春麗は、完全に停止した。
今のは何。
なぜそこを突く。
資料として、と言っただけなのに。
なぜ、自分自身のことでも、と返す。
春麗は、どうにか口を開いた。
「……あなた、本当に」
「ああ」
「無自覚に危険なところを突くわね」
「危険だったか」
「危険よ」
リュウは真面目に頷いた。
「気をつける」
「たぶん無理ね」
「そうか」
「そうよ」
会話が少しだけいつもの調子に戻る。
自覚前春麗は、そこで息を整えた。
まだ大丈夫。
これは資料確認。
まだ、甘いイベントではない。
まだ、試合でもない。
そう思った。
思った瞬間、リュウが言った。
「春麗が来たなら、俺も確認したい」
精神HPが削れた。
「……何を」
「今の春麗を」
さらに削れた。
自覚前春麗は、青い袖を握りそうになった。
握らない。
握ると負ける。
「今の私?」
「ああ」
「私は、何も変わっていないわ」
リュウは少し黙った。
その沈黙が、すでに危険だった。
やめなさい。
考えないで。
今、それ以上見ないで。
リュウは言った。
「変わっていないように見せている」
精神HPが、危険域へ一歩近づいた。
春麗は、完全に顔を背けた。
「……それは」
「ああ」
「資料としての見解?」
「俺の見た春麗だ」
追撃。
自覚前春麗は、頭の中で警告音を聞いた。
これは、たまっていた主人公補正だ。
最近、本編春麗と黒執着春麗ばかりが前に出ていた。
自分は安全圏にいた。
資料として見ているだけで済ませていた。
その分、溜まっていたものが今、まとめて来ている。
リュウの視線。
リュウの言葉。
リュウの確認。
全部、自分へ向いている。
ただし。
これは、本編春麗と同じになるという話ではない。
黒執着春麗のようになるという話でもない。
自覚前春麗として、今ここに引きずり出されている。
それが問題だった。
「……いいわ」
リュウが見る。
「確認したいなら」
一拍。
「試合で確認しなさい」
言ってしまった。
完全に言ってしまった。
資料確認のはずだった。
会話だけで済ませるはずだった。
試合は流れ次第だった。
その流れを、自分で作った。
リュウは、静かに頷いた。
「ああ」
即答。
その即答も刺さる。
「受けるのが早いわね」
「春麗との試合だからな」
精神HPがまた削れる。
「……そういうところ」
「そういうところか」
「ええ」
春麗は、顔を熱くしながら言った。
「今日はしないわ」
「そうなのか」
「今日は確認に来ただけ」
「試合の約束か」
「そうよ」
一拍。
「次に会う時、試合をしましょう」
「ああ」
「本気で」
「もちろんだ」
「手を抜いたら怒るわ」
「わかっている」
「見すぎても怒るわ」
リュウは少しだけ考えた。
「それは難しい」
「努力しなさい!」
思わず声が大きくなる。
リュウは真面目に頷く。
「努力する」
「……本当に、難しい男ね」
「春麗も難しい」
精神HPが削れた。
自覚前春麗は、少しだけ目を見開いた。
「……私が?」
「ああ」
「本編春麗ではなく?」
「ああ」
「黒執着春麗でもなく?」
「ああ」
「私が?」
「ああ」
リュウは、まっすぐに言った。
「今、ここにいる春麗が難しい」
精神HPが、一気に危険域へ入った。
春麗は、動けなかった。
今、ここにいる春麗。
それは資料ではない。
観測者でもない。
ログの読者でもない。
自覚前春麗自身のことだ。
リュウは、そこを見ている。
見てしまっている。
「……リュウ」
「ああ」
「あなたは本当に、余計なところを正確に見るわね」
「余計なのか」
「余計よ」
一拍。
「でも、見ていないとは言わせない」
言ってしまった。
自覚前春麗は、自分で固まった。
何を言っているの。
それは、どういう意味。
見てほしくないのか。
見てほしいのか。
どちらなのか。
リュウは、静かに頷いた。
「見る」
精神HPが、さらに削れた。
「次の試合で」
追撃。
「今の春麗を」
決定打。
自覚前春麗は、完全に顔を背けた。
「……今日は、帰るわ」
「ああ」
「追ってこないで」
「わかった」
「あと、今のは」
一拍。
「資料として保存しないで」
リュウは首を傾げた。
「保存?」
「こちらの話よ!」
春麗は背を向ける。
足取りは少しだけ危うい。
戦っていない。
拳も交えていない。
ただ、会話しただけ。
確認に来ただけ。
試合の約束をしただけ。
それなのに、精神HPはかなり削れている。
甘いイベントだった。
完全に甘いイベントだった。
自覚前春麗は、歩きながら小さく呟いた。
「……主人公補正、たまりすぎるものではないわね」
帰り道。
春麗は何度か立ち止まりそうになった。
リュウの言葉が、後ろから追ってくるようだった。
春麗自身のことでも?
今の春麗を。
変わっていないように見せている。
今、ここにいる春麗が難しい。
次の試合で。
今の春麗を。
春麗は、青い袖を握った。
今度は握ってしまった。
誰も見ていないからいい。
そういうことにした。
「……資料としてでは」
一拍。
「済まなくなってきているわね」
言ってから、すぐに顔をしかめる。
認めてはいない。
まだ、自覚前。
まだ、完全には認めていない。
ただ、資料としてでは済まない可能性が出てきただけ。
あくまで可能性。
仮説。
未確定。
そう言い訳を重ねる。
しかし、胸の奥の熱は消えない。
次に会う時、試合をする。
リュウは見ると言った。
今の春麗を。
自覚前春麗は、空を見上げた。
「……次の試合、どうするのよ」
答えはない。
青で行くのか。
黒ドレスを試すのか。
自分の青で向かうのか。
それとも、まだ何も決めないままリュウの前に立つのか。
考えることが増えた。
それが、少しだけ腹立たしい。
少しだけ怖い。
そして、少しだけ。
楽しみでもある。
春麗は、そこでまた立ち止まった。
「……楽しみ?」
自分で自分に突っ込む。
「今、楽しみと言った?」
言っていない。
心の中で思っただけ。
それでも、思ったことは消えない。
自覚前春麗は、顔を覆った。
「……だから、私はまだ自覚前なのよ」
その言い訳が、今日は少し弱かった。
夜。
春麗は部屋に戻り、青い武道服を畳んだ。
今日は戦っていない。
だから汚れていない。
けれど、袖に少しだけ自分の手の跡が残っている気がした。
帰り道、握ってしまった袖。
リュウの言葉から逃げるように握った袖。
春麗は、その部分を見つめる。
「……今日は、洗う必要はないわね」
一拍。
「でも、畳み直す」
整える。
今日の自分を、整える。
資料として見ていたつもりの自分。
会いに行ってしまった自分。
確認と言いながら、試合の約束をした自分。
リュウに今の春麗を見たいと言われて、精神HPを削られた自分。
それらを、まだ棚に置くほどではない。
まだ、名前をつけるほどではない。
でも、乱れたままにもできない。
春麗は、青を畳み直した。
丁寧に。
ゆっくり。
そして、机の上に置いた。
「次に会う時」
一拍。
「試合」
言ってから、顔が少し熱くなる。
「……ただの試合よ」
自分に言う。
「資料確認の続き」
一拍。
「今の私を見たいと言ったから」
もう一拍。
「見せてあげるだけ」
言い訳を重ねる。
しかし、最後の言葉だけは、少し違った。
「……見せてあげる」
言ってから、自分で止まる。
それは、ほとんど煽りだった。
自覚前春麗は、机に手をついた。
「……駄目ね」
一拍。
「完全に、影響を受けている」
本編春麗。
黒執着春麗。
青で煽る春麗たち。
黒で煽る春麗。
リュウに見られて、それでも前に出る春麗たち。
そのログを見すぎた。
資料として見ていたはずなのに。
影響を受けている。
ただし。
同じになるわけではない。
自分は、自分のルートで影響を受けている。
自分の言い訳で。
自分の否認で。
自分のまだ認めていない感情で。
自覚前春麗は、ため息をついた。
「次は、言わないわよ」
一拍。
「煽りなんて」
もう一拍。
「……たぶん」
言った後、自分で頭を抱えた。
「たぶんって何よ」
夜が静かに深くなる。
春麗は、灯りを落とす前に、もう一度だけ青を見た。
まだ戦っていない青。
でも、試合の約束をした青。
資料としてでは済まなくなり始めた青。
春麗は、灯りを消した。
眠りに落ちる前。
春麗は、ぼんやりと思った。
もし、今日のことが春麗会議室に届いたら。
記録板AIは、きっと余計な分類をする。
自覚前春麗、主人公補正蓄積分被弾。
資料確認失敗。
試合約束成立。
今の春麗を見られる危険。
そんな表示が出るに違いない。
春麗は、布団の中で顔を覆った。
「……絶対に保存しないで」
誰に言ったのか、自分でもわからない。
でも、どこか遠くで、記録板AIが保存しましたと言った気がした。
気のせい。
そういうことにする。
自覚前春麗は、目を閉じた。
次の試合のことを考えないようにしながら。
結局、少しだけ考えながら。
眠りへ落ちていった。
Q:今回の妄想章IFについて解説して?
A:
一言で言うなら、
自覚前春麗を“本編春麗や黒執着春麗の前段階”としてではなく、“独自分岐を走っている春麗”として再配置したうえで、それでもリュウに会うと安全圏から引きずり出される回
です。
自覚前春麗は、もう本編春麗の過去そのものではありません。
また、黒執着春麗と同じ出会い・同じ十連勝・同じ十一戦目敗北を経ている春麗でもありません。
つまり、自覚前春麗は、
本編春麗でもない。
黒執着春麗でもない。
その前段階でもない。
春麗会議に参加したことで、すでに独自に分岐した春麗。
「私は、私のルートにいる」が今回の核
私は、私のルートにいる
という整理です。
この一文で、自覚前春麗の立ち位置がかなり明確になりました。
彼女は、他の春麗のログを見る。
本編春麗の青を見る。
黒執着春麗の黒と青を見る。
でも、自分がそのどちらかになるとは思っていない。
ただし、影響は受けている。
ここが非常に重要です。
同じになるのではない。
でも、影響は受ける。
この距離感が、自覚前春麗の独自性を保っています。
「資料として」がより自然になった
自覚前春麗は、かなり一貫して「資料として」と言い張っています。
ただし、それは逃避ではあるけれど、前より自然です。
なぜなら、彼女は本当に別ルートの春麗だからです。
本編春麗の青ログも、黒執着春麗の黒ログも、自分と完全一致する未来ではない。
だから、
これは資料。
私は私のルートを確認するために見ている。
という態度が成立します。
ただし、リュウに会うと、その「資料」という距離が崩れていく。
ここが今回の面白さです。
リュウの刺し方がかなり良い
今回のリュウの最大の役割は、他の春麗と比較することではありません。
彼は、自覚前春麗本人を見る。
特に強いのが、
今ここにいるのは、春麗だ。
だが、同じではない。
ここです。
リュウは、本編春麗と同じだとも言わない。
黒執着春麗と同じだとも言わない。
ただ、今目の前にいる春麗を見ている。
これは自覚前春麗にとって非常に危険です。
なぜなら、彼女は「資料として」「私は別ルートだから」と距離を取っていたのに、リュウはその距離を無効化して、
今ここにいる春麗
として扱うからです。
ここで彼女は、観測者ではいられなくなります。
「春麗自身のことでも?」が強い
今回の精神HP削りポイントとして一番わかりやすいのは、
資料なのか
春麗自身のことでも?
です。
これは、自覚前春麗の逃げ道をかなり正確に突いています。
彼女は「資料として」と言っている。
でも、本当に資料だけなら、わざわざリュウ本人に会いに来る必要はない。
他のログを見ているだけでいい。
なのに来た。
それはもう、春麗自身の確認でもある。
リュウがそれを言ってしまう。
ここが甘いイベントの入口です。
「変わっていないように見せている」が決定的
今回のリュウの高火力発言としてかなり強いのが、
変わっていないように見せている
です。
自覚前春麗は、自分をまだ「自覚前」として保とうとしています。
私はまだ変わっていない。
私はまだ認めていない。
私はまだ資料として見ているだけ。
私はまだ当事者ではない。
でも、リュウはそこを見て、
変わっていないように見せている
と言う。
これはかなり危険です。
「変わった」と断定していないところも良いです。
断定ではなく、見せ方を見抜いている。
だから自覚前春麗には逃げ場が少ない。
彼女は感情を認めるのではなく、確認・検証・資料という言葉で戦闘へ向かう。
つまり、試合の約束も恋愛的な衝動ではなく、
資料確認の延長として発生した試合予約
になっています。
この言い訳が、非常に彼女らしいです。
「本編春麗ではなく? 黒執着春麗でもなく? 私が?」が良い
今回の中盤で、自覚前春麗がリュウに確認する場面があります。
本編春麗ではなく?
黒執着春麗でもなく?
私が?
これはとても良いです。
自覚前春麗の最大の不安は、
他の春麗たちのログに埋もれて、自分が個別に見られているのか
が焦点になっています。
そしてリュウは、
今、ここにいる春麗が難しい
と答える。
これが本当に刺さります。
自覚前春麗は、自分だけを見られてしまった。
資料の読者ではなく、分岐の当事者として。
ここが今回の甘いイベントの中心です。
「資料としてでは済まなくなってきている」が良い到達点
帰り道の、
資料としてでは、済まなくなってきているわね
ここが今回の到達点です。
ただし、その後すぐに、
認めてはいない。まだ自覚前。可能性。仮説。未確定。
と逃げる。
これがすごく自覚前春麗らしいです。
完全に認めると本編春麗寄りになってしまう。
だからまだ認めない。
でも、完全に資料でもなくなっている。
この中間地点が今回の彼女の現在地です。
「見せてあげる」がほぼ煽りになっている
夜の場面で、自覚前春麗が、
見せてあげるだけ
と言って、自分で止まるところも良いです。
これはもう、ほとんど煽りです。
でも本人はまだ煽りだと認めたくない。
本編春麗や黒執着春麗のログを見て、明らかに影響を受けている。
ただし、ここでも重要なのは、
同じになるわけではない。
自分のルートで影響を受けている。
という整理です。
黒執着春麗との違いが明確になった
黒執着春麗は、黒に沈み、救済され、棚を作り、黒も青も運用する春麗です。
一方、自覚前春麗は、
まだ認めていない。
資料として距離を取る。
でもリュウに会うと自分自身の問題になる。
試合で確認しようとする。
という春麗です。
つまり、自覚前春麗は危険域を通過した春麗ではなく、危険域を資料として眺めていたはずなのに、自分の足元が揺れ始めている春麗です。
この違いは大きいです。
本編春麗との違いも明確になった
本編春麗は、自分をめんどくさい女と自覚しています。
だから本編春麗は、精神HPを削られても、
またやられた
私は本当にめんどくさい女ね
でも次へ進む
という処理ができます。
でも自覚前春麗は違います。
彼女はまだ、
私はそうではない
資料として
未確定
可能性
仮説
で処理します。
つまり、本編春麗が自覚済み処理なら、自覚前春麗は否認型処理です。
この回は、自覚前春麗の再起動回です。
これまで彼女は、ログを見る側・資料として観測する側にいました。
今回、リュウ本人に会いに行ったことで、その安全圏から出ました。
でも、まだ自覚はしていない。
だから、今後の自覚前春麗ルートは、
資料としての距離を保ちたい春麗
対
今ここにいる春麗を見るリュウ
という構図になります。
これはかなり良いです。
結論
一言でまとめるなら、
自覚前春麗は、本編春麗や黒執着春麗の後追いではない。独自分岐の春麗として資料を見ていたはずが、リュウ本人に“今ここにいる春麗”として見られたことで、安全圏から引きずり出され、試合の約束までしてしまう回
です。
私は他の春麗とは違う。
でも、私自身は本当に資料の外に出ずにいられるのか。
という、自覚前春麗らしい葛藤になっています。