また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※これは本編時空とは無関係の妄想章IFです。
自分をめんどくさい女と自覚する前の春麗のエピソードになります。


妄想章IF:自覚前春麗は、青で行く理由を資料として確認する

 

 眠りに落ちる直前。

 

 自覚前春麗は、黒ドレスのことを考えていた。

 

 黒は、まだそこにある。

 

 勝った黒。

 

 HP9で立っていた黒。

 

 遅れたわね。

 

 今の私に。

 

 そう言えた黒。

 

 黒酔いルートフラグを折られた黒。

 

 そして、黒を着ていない日も、自分は春麗として見られてしまった。

 

 黒は消えていない。

 

 勝利ログも消えていない。

 

 だが、次に必ず黒を着なければならない理由も、もうない。

 

 そこが厄介だった。

 

「……別に、青で行くと決めたわけではないわ」

 

 眠りに落ちる前、自覚前春麗は小さく呟いた。

 

「ただ、黒を連続使用すると、資料として偏るだけ」

 

 言ってから、自分で少し眉を寄せた。

 

 言い訳が、かなり整っている。

 

 整いすぎている。

 

 つまり、たぶん本心に近い。

 

 目を閉じる。

 

 意識が沈んでいく。

 

 現実の部屋が遠ざかる。

 

 代わりに、薄い光が見えた。

 

 黒い影。

 

 青い揺らぎ。

 

 記録板の白い文字。

 

 そこに、円卓がある。

 

 椅子がある。

 

 湯呑みがある。

 

 ただし、そこは現実のどこにもない。

 

 眠りの底に触れる、高次の会議室。

 

 春麗会議室。

 

 自覚前春麗は、気づけば円卓の席に座っていた。

 

 少しだけ不機嫌な顔で。

 

「……今日は短く済ませて」

 

 最初にそう言った。

 

 記録板AIが即座に光る。

 

『対象:自覚前春麗』

 

『状態:精神HP回復途中』

 

『本日の議題:自覚前春麗・次戦衣装選択方針確認』

 

『本日の参加者』

 

『自覚前春麗:当事者』

 

『本編春麗:青ルート当事者・比較指摘担当』

 

『通常救済版春麗:安定化担当』

 

『行き遅れに恐怖する春麗:位置取り整理担当』

 

『黒ドレス特化救済春麗:特別参加/黒の扱い確認担当』

 

『記録板AI:議題進行・判定表示担当』

 

『特別参加:黒ドレス特化救済春麗』

 

『グランドフィナーレ春麗:本日は不参加』

 

『黒執着春麗:観測対象外/不参加』

 

 自覚前春麗は、記録板を見る。

 

 本編春麗が資料を置いた。

 

「それで、次の試合の話ね」

 

 自覚前春麗は、すぐに答えた。

 

「まだ青で行くとは言っていないわ」

 

 本編春麗は、少しだけ目を細める。

 

「でも、黒で行くとも言っていない」

 

「そうよ」

 

「なら、今日の議題はそこね」

 

 黒ドレス特化救済春麗が静かに言う。

 

「黒を選べるあなたが、次に黒を選ばないかもしれない。その確認」

 

 自覚前春麗は、腕を組んだ。

 

「黒を着ないとは言っていないわ」

 

『発言記録:黒を着ないとは言っていない』

 

「記録しなくていい」

 

『重要です』

 

「重要だけど」

 

 通常救済版春麗が穏やかに言う。

 

「でも、連続で黒を選ぶことに少し警戒しているのね」

 

「警戒ではないわ」

 

『発言信頼度:低』

 

「早い」

 

「警戒ではなく」

 

 一拍。

 

「資料として偏るのよ」

 

 本編春麗が即座に言った。

 

「それ、青で行く言い訳ね」

 

 自覚前春麗は固まった。

 

「違うわ」

 

『発言信頼度:低』

 

「違うと言っているでしょう」

 

 本編春麗は涼しく続ける。

 

「黒で勝った。黒の有効性は確認済み。次は対照条件として青を使う。そういう言い訳でしょう?」

 

「言い訳ではないわ」

 

「では何?」

 

「実験計画よ」

 

 会議室が一瞬静かになった。

 

 記録板AIが光る。

 

『自覚前春麗:青武道服選択を実験計画として提示』

 

「言い方!」

 

 本編春麗が肩を震わせる。

 

「かなりあなたらしいわ」

 

「笑わないで」

 

 通常救済版春麗が優しく言う。

 

「でも、悪くない考え方だと思うわ」

 

 自覚前春麗は、少しだけそちらを見る。

 

「そう?」

 

「ええ。黒で勝ったから、次も黒で証明し直す必要はない。黒の勝利ログは消えないもの」

 

 記録板AIが表示する。

 

『黒ドレス勝利ログ:有効』

 

 自覚前春麗は、その表示を見た。

 

 少しだけ、肩の力が抜ける。

 

「……有効なのよね」

 

『はい』

 

「HP9でも?」

 

『はい』

 

「精神HPを落とされても?」

 

『はい』

 

「黒酔いフラグを折られても?」

 

『はい』

 

 通常救済版春麗が微笑む。

 

「勝ったことは消えないわ」

 

 自覚前春麗は、目を伏せた。

 

「それなら」

 

 一拍。

 

「連続で黒を使う必要はない」

 

『発言信頼度:高』

 

「そこは採点しなくていい」

 

 黒ドレス特化救済春麗が、静かに頷いた。

 

「良い判断よ」

 

 自覚前春麗は、少しだけ警戒する。

 

「あなたがそう言うと、逆に怖いのだけど」

 

「黒を否定せず、青を選べるなら良い判断よ」

 

 その言葉に、会議室が静かになる。

 

 黒ドレス特化救済春麗は続けた。

 

「黒を捨てたのではない」

 

「ええ」

 

「黒が怖くなったから逃げるのでもない」

 

「ええ」

 

「黒を選べるからこそ、今日は選ばないこともできる」

 

 自覚前春麗は、少しだけ息を止めた。

 

 黒を選べるからこそ、選ばない。

 

 それは、思っていたよりも強い言葉だった。

 

「……資料としては、かなり妥当ね」

 

『発言信頼度:高』

 

 本編春麗が少し笑う。

 

「今のは高いのね」

 

「うるさいわ」

 

 行き遅れに恐怖する春麗が、湯呑みを両手で包みながら言った。

 

「次を急がないための青」

 

 自覚前春麗は、そちらを見る。

 

「次を急がないため?」

 

「ええ」

 

「私は急いでいないわ」

 

『発言信頼度:中』

 

「中なの?」

 

 行き遅れ春麗は静かに言う。

 

「黒で勝った直後は、次も黒で確かめたくなる」

 

「……」

 

「でも、それは勝利ログを守るためではなく、勝利の熱をもう一度確かめるためかもしれない」

 

 自覚前春麗は、反論しようとして、少し黙った。

 

 その可能性はあった。

 

 大満足ではない。

 

 資料として有用だっただけ。

 

 そう言い続けていた。

 

 でも、あの黒は気持ちよかった。

 

 遅れたわね。

 

 今の私に。

 

 言えた。

 

 決まった。

 

 だから、次も黒で。

 

 そう思いかけたのは、否定しきれない。

 

 行き遅れ春麗は、続ける。

 

「青は、黒を捨てるためではなく、次を急がないために選ぶ」

 

 記録板AIが表示する。

 

『新規整理:次を急がないための青』

 

 自覚前春麗は、その表示を見た。

 

「……また分類が増えた」

 

 本編春麗が言う。

 

「でも、これはかなり良いわ」

 

「あなたの青とは違うわよ」

 

「もちろん」

 

 本編春麗は、静かに頷いた。

 

「私の青は、届かれた青をなかったことにしない青」

 

「ええ」

 

「あなたの青は、黒で勝った後に、黒を否定せずに選ぶ対照実験の青」

 

「対照実験の青……」

 

『分類候補:対照実験の青』

 

「登録しないで」

 

『未承認仮分類として保持します』

 

「だから保持しないで!」

 

 通常救済版春麗が、柔らかく言う。

 

「でも、読者にもわかりやすいわ。黒で勝ったのに、なぜ青なのか」

 

 自覚前春麗は腕を組む。

 

「黒で勝ったからこそ、青を試す」

 

『記録しました』

 

「早い」

 

 黒ドレス特化救済春麗が言う。

 

「黒を捨てたのではなく、黒を連続使用しない選択」

 

『記録しました』

 

 行き遅れ春麗が言う。

 

「青は本編春麗の青ではなく、自覚前春麗の対照実験としての青」

 

『記録しました』

 

 本編春麗が言う。

 

「そして、リュウに見られた時に精神HPを削られる青」

 

『記録しました』

 

「そこは記録しなくていい!」

 

 本編春麗は笑いをこらえている。

 

 自覚前春麗は、じとっと睨んだ。

 

「あなた、少し楽しんでいない?」

 

「楽しんではいないわ」

 

『発言信頼度:中』

 

「あなたも採点されているじゃない」

 

 本編春麗は少し顔を逸らした。

 

 会議室に、わずかに笑いが戻った。

 


 

 記録板AIが、中央に最終確認を表示する。

 

『次戦方針確認』

 

『黒ドレス勝利ログ:有効』

 

『黒ドレス調整版勝利:有効』

 

『未承認仮登録セリフ“遅れたわね。今の私に”:使用ログ保存済み』

 

『黒酔いフラグ:折損継続』

 

『黒ドレス限定欲求再固定化:現時点では不成立』

 

『青武道服選択:黒否定ではなく対照実験』

 

『青武道服選択:次を急がないための青』

 

『次戦方針:青武道服で出撃』

 

 自覚前春麗は、その最後の一行を見た。

 

「……決定なの?」

 

『方針です』

 

「決定ではなく?」

 

『未実行のため方針です』

 

「そこは正確なのね」

 

『記録板AIですので』

 

 通常救済版春麗が微笑む。

 

「青で行っても、黒の勝ちは消えないわ」

 

 黒ドレス特化救済春麗が続ける。

 

「青で行っても、黒を捨てたことにはならない」

 

 行き遅れ春麗が言う。

 

「青で行けば、黒の次を急がずにすむ」

 

 本編春麗が言う。

 

「そして、あなたの青がどうリュウに見られるか、わかる」

 

 自覚前春麗は、少しだけ黙った。

 

 それが、一番厄介だった。

 

 リュウがどう見るか。

 

 黒を着ていない自分を。

 

 青で立つ自分を。

 

 黒で勝ったログを持ったまま、青で来た自分を。

 

 おそらく見る。

 

 かなり見る。

 

 そして、余計なことを言う。

 

 それは、もうほとんど確定事項だった。

 

「……試合前から精神HPが削れそうね」

 

『予測:高』

 

「予測しないで」

 

 黒ドレス特化救済春麗が、静かに言う。

 

「でも、それでいいのよ」

 

「よくないわ」

 

「あなたは黒で勝った。黒も持っている。青を選べる。その状態でリュウの前に立つ」

 

 一拍。

 

「それが、今回の確認」

 

 自覚前春麗は目を伏せた。

 

 確認。

 

 資料。

 

 対照実験。

 

 そういう言葉なら、まだ前に出られる。

 

 自分の感情だと言われると困る。

 

 楽しみだと言われると困る。

 

 見られたいのかと聞かれるともっと困る。

 

 だから、今日も資料でいい。

 

 資料として、青で行く。

 

「……わかったわ」

 

 会議室が静かになる。

 

 自覚前春麗は、記録板を見た。

 

「次の試合」

 

 一拍。

 

「青武道服で行く」

 

『次戦方針を確定しますか?』

 

 自覚前春麗は少しだけ息を吸った。

 

「方針として、確定」

 

『保存しました』

 

 本編春麗が小さく頷く。

 

「よく言えたわね」

 

「上から言わないで」

 

「本編春麗なので」

 

「それを言えばいいと思っているでしょう」

 

 通常救済版春麗が、お茶を置く。

 

「今日はここまででいいわね」

 

 自覚前春麗は頷いた。

 

「長くしない約束だったもの」

 

『本日の会議時間:短縮成功』

 

「あなた基準では、でしょう」

 

『はい』

 

 行き遅れ春麗が、静かに言う。

 

「次を急がないための青。でも、次へ進むための青でもある」

 

 自覚前春麗は、少しだけその言葉を受け止めた。

 

「……資料として、覚えておくわ」

 

『発言信頼度:高』

 

 今度は、誰も突っ込まなかった。

 


 

 記録板AIが、最後の総括を表示する。

 

『本日の結論』

 

『一、自覚前春麗の黒ドレス勝利ログは有効です』

 

『二、黒酔いフラグ折損は継続しています』

 

『三、次戦で青武道服を選ぶことは、黒の否定でも、黒勝利ログの破棄でもありません』

 

『四、青武道服選択は、黒を連続使用しないための対照実験として分類します』

 

『五、本青は本編春麗の青ではなく、自覚前春麗固有の“対照実験の青”です』

 

『六、次を急がないための青として有効です』

 

『七、次戦方針:青武道服で出撃』

 

『八、リュウ発言による精神HP被弾リスク:高』

 

 自覚前春麗は最後の行を見た。

 

「八番、要る?」

 

『必要です』

 

「不安を煽らないで」

 

『事前警戒です』

 

 本編春麗が言う。

 

「そこは警戒しておいた方がいいわ」

 

「経験者みたいに言わないで」

 

「経験者よ」

 

「そうだったわね」

 

 通常救済版春麗が笑う。

 

 黒ドレス特化救済春麗は静かに頷く。

 

 行き遅れ春麗は、湯呑みを包んだまま目を伏せる。

 

 記録板AIの文字が、少しずつ薄れていく。

 

 会議室の輪郭も、ゆっくりほどける。

 

 現実へ戻る時間だった。

 

 消える直前、自覚前春麗は小さく言った。

 

「青で行くけれど」

 

 一拍。

 

「黒は消えていないわ」

 

『保存しました』

 

「それは保存していいわ」

 

『保存済みです』

 

 夢がほどける。

 

 青い光と黒い影が、静かに混ざって消えた。

 


 

 朝。

 

 自覚前春麗は目を覚ました。

 

 部屋には、薄い光が入っている。

 

 黒ドレスは、いつもの場所にあった。

 

 勝った黒。

 

 危なかった黒。

 

 酔いかけた黒。

 

 でも、今日は選ばない予定の黒。

 

 春麗は、しばらくそれを見つめた。

 

 黒は、消えていない。

 

 昨日の会議でも確認した。

 

 勝利ログは有効。

 

 黒酔いフラグは折損継続。

 

 青武道服選択は、黒否定ではなく対照実験。

 

 次戦方針。

 

 青武道服で出撃。

 

 春麗は、ゆっくり起き上がった。

 

 黒ドレスに触れる。

 

 布の感触は、変わらない。

 

 そこにある。

 

 勝った記録も、そこにある。

 

「今日は、あなたではないわ」

 

 黒ドレスに向かって、春麗は言った。

 

 一拍。

 

「捨てるわけではない」

 

 さらに一拍。

 

「資料として、条件を変えるだけ」

 

 言ってから、少しだけ顔を赤くした。

 

 言い訳としては、かなり整っている。

 

 整いすぎている。

 

 でも、今日はそれでいい。

 

 春麗は、黒ドレスから手を離した。

 

 そして、青い武道服を手に取る。

 

 青。

 

 本編春麗の青ではない。

 

 戻って選び直した青でもない。

 

 黒で勝った後の、自覚前春麗の青。

 

 対照実験の青。

 

 次を急がないための青。

 

 春麗は、青い袖に指を通した。

 

 まだ着てはいない。

 

 ただ、手に取っただけ。

 

 それでも、胸の奥が少し動く。

 

「……青で行くわ」

 

 一拍。

 

「資料として」

 

 最後にそう付けると、いつもの自分に戻れた気がした。

 

 完全には戻っていない。

 

 たぶん、もう戻らない。

 

 それでも、進める。

 

 黒はそこにある。

 

 青も手元にある。

 

 次の試合は、青で行く。

 

 自覚前春麗は、朝の光の中で静かに息を吐いた。

 

 そして、今日の自分として、青い武道服を広げた。

 




Q:今回の妄想章IFについて解説して?

A:

今回の核は、「自覚前春麗が、黒で勝った後に、次戦は青武道服で行く方針を決める」ことでした。

ここで大事なのは、青を選ぶ理由です。

黒で負けたから青へ逃げるのではありません。
黒が怖くなったから青へ戻るのでもありません。
黒を否定するために青を選ぶのでもありません。

自覚前春麗は、すでに黒で勝っています。

HP9で立っていた黒。
「遅れたわね。今の私に」と言えた黒。
黒酔いルートフラグを折られた黒。
リュウ相手に、黒の有効性を示した黒。

その勝利ログは有効です。

今回、記録板AIがそこを明確に確認しています。

黒ドレス勝利ログは有効。
HP9でも有効。
精神HPを落とされても有効。
黒酔いフラグを折られても有効。

つまり、黒で勝った事実は消えません。

だからこそ、次も黒で証明し直す必要はない。

ここが今回の一番大事な整理です。

以前の自覚前春麗なら、黒で勝った直後にもう一度黒を選びたくなったかもしれません。

勝てた黒。
気持ちよかった黒。
決まった黒。
リュウを遅らせた黒。

その熱を、もう一度確かめたくなる。

これはかなり危険です。

黒の勝利が気持ちよかったから、次も黒で行く。
黒で勝てたから、黒を連続使用する。
黒で証明したいから、黒から離れられない。

そうなると、黒酔いルートに戻る危険がある。

今回、行き遅れに恐怖する春麗が言った、

「青は、黒を捨てるためではなく、次を急がないために選ぶ」

これはかなり重要です。

青を選ぶことで、黒の熱を急いで再確認しに行かない。
黒で勝った興奮にすぐ次の黒を重ねない。
黒の勝利を消さず、でも黒に固定されない。

この意味で、今回の青は「次を急がないための青」です。

これは本編春麗の青とは違います。

本編春麗の青は、届かれた青をなかったことにしない青です。
黒の後に戻って選び直した青であり、リュウへの宿題の正式回答へ向かう青です。

一方、今回の自覚前春麗の青は、黒で勝った後の対照実験としての青です。

黒で勝った。
では、黒を着ていない自分はどうリュウに見られるのか。
黒で勝ったログを持ったまま、青で立つとどうなるのか。
黒を選べる自分が、あえて青を選ぶと何が起きるのか。

そこを確かめる青です。

だから、作中では「対照実験の青」という分類が出ています。

自覚前春麗らしい言い訳でもあります。

彼女は、自分の感情に直接名前を付けるよりも、「資料」「条件変更」「実験計画」として扱う方が前に進めます。

今回も同じです。

青で行きたい。
黒を連続で着るのは危ないかもしれない。
黒で勝った後の自分を、青で試したい。
リュウにどう見られるのか、確かめたい。

でも、そうは言えない。

だから、

「黒を連続使用すると、資料として偏る」
「対照条件として青を使う」
「実験計画」

という言い方になる。

この言い訳が、かなり整っています。

そして、整いすぎている言い訳は、たぶん本心に近い。

ここが自覚前春麗らしいところです。

今回、黒ドレス特化救済春麗が参加しているのも大事です。

この議題は、自覚前春麗が黒をどう扱うかに関わっています。

黒で勝った後に青を選ぶ。
それは黒の否定なのか。
黒から逃げることなのか。
黒を捨てることなのか。

そこを確認するには、黒ドレス特化救済春麗の視点が必要です。

彼女は今回、かなり重要なことを言っています。

「黒を選べるからこそ、今日は選ばないこともできる」

これは強い言葉です。

黒を着られないから青に逃げるのではない。
黒が怖いから青へ戻るのでもない。
黒を選べる状態だからこそ、今日は青を選べる。

つまり、青を選ぶことが黒の敗北になっていない。

むしろ、黒を手元に戻せたからこそ、青が選べるようになった。

この構造がとても大事です。

通常救済版春麗の役割も効いています。

彼女は、黒で勝ったログが消えないことを確認します。

黒で勝ったから、次も黒で証明しなければならないわけではない。
一度勝った黒は、ちゃんと有効なログとして残っている。
だから、青を試しても、黒の勝利は消えない。

これは自覚前春麗にとって、かなり安心できる整理です。

自覚前春麗は、黒の勝利を消したくない。
でも、黒に固定されるのも危ない。
その間にある答えが、今回の青です。

そして本編春麗は、比較担当としてかなり良い役割をしています。

彼女は、自分の青と自覚前春麗の青が違うことを整理します。

本編春麗の青は、届かれた青をなかったことにしない青。
自覚前春麗の青は、黒で勝った後に、黒を否定せず選ぶ対照実験の青。

同じ青でも、背負っているものが違う。

ここを明確にしたことで、青武道服という同じ衣装でも、各春麗ごとに意味が違うことが読者にも伝わりやすくなっています。

今回の終盤、自覚前春麗は次戦方針として「青武道服で行く」と言います。

ただし、「決定」ではなく「方針」です。

この細かさが記録板AIらしいです。

未実行だから決定ではなく方針。
でも、方針としては確定。

この言い方は、自覚前春麗にも合っています。

いきなり強く断言するのではなく、資料として、方針として、条件変更として、青を選ぶ。

それなら前に進める。

今回のラストで、自覚前春麗は黒ドレスに向かって、

「今日は、あなたではないわ」
「捨てるわけではない」
「資料として、条件を変えるだけ」

と言います。

これは非常に良い締めです。

黒を捨てない。
黒を否定しない。
黒はそこにある。
勝った記録もそこにある。

でも、今日は青。

青を手に取る。

本編春麗の青ではない。
戻って選び直した青でもない。
黒で勝った後の、自覚前春麗の青。
対照実験の青。
次を急がないための青。

この整理ができたことで、次の青武道服戦へかなり綺麗につながります。

今回の到達点は、

自覚前春麗の黒ドレス勝利ログは有効。
黒酔いフラグ折損も継続。
次に青を選ぶことは、黒の否定ではない。
青武道服は、黒を連続使用しないための対照実験として機能する。
この青は、本編春麗の青ではなく、自覚前春麗固有の青。
そして、次を急がないための青でもある。

このあたりです。

かなり静かな会議回ですが、次の青武道服戦の意味を整えるためには重要な回だったと思います。

黒で勝ったから、次も黒で行くのではない。

黒で勝ったからこそ、青を選べる。

この逆説が、今回の自覚前春麗の大きな前進です。
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