また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※これはディレクターズカットIFです。
本編のIFシリーズは無関係のエピソードとなります。


ディレクターズカットIF:本編春麗は、発勁で勝った後に介抱で落ちる

 記録板AIは、白い外部メタ領域で静かに表示を開いた。

 

『本記録は、ディレクターズカットIFです』

 

『本編確定ログではありません』

 

『本編時系列への直接反映は行われません』

 

『宿題回答ライン、正式回答前後、会話発生時期などは、本記録では確定しません』

 

 一拍。

 

『本記録は、検証ログです』

 

『検証対象』

 

『本編春麗が、青でリュウに勝つ場合』

 

『発勁を決定打として用いる場合』

 

『過去の発勁事故ログを踏まえ、倒れ込み事故を回避する場合』

 

『それでも勝利後介抱ログが発生した場合』

 

 一拍。

 

『注意』

 

『勝利と事故は別判定です』

 

『勝利と介抱も別判定です』

 

『戦闘勝利と精神HP敗北も別判定です』

 

『本編春麗の青い小箱への直接保存は非推奨です』

 

『危険封筒との分割保存を推奨します』

 

 記録板AIは、最後に淡々と表示した。

 

『ディレクターズカットIF検証ログを開始します』

 


 

 青い武道服を畳む手が、少しだけ止まった。

 

 本編春麗は、深く息を吐く。

 

 今日は、青で戦う。

 

 黒ではない。

 

 黒の半拍でもない。

 

 黒の視線誘導でもない。

 

 黒の煽りでもない。

 

 青。

 

 真正面からリュウと向かい合う青。

 

 ただし、今までの青とは少し違う。

 

 届かれた青。

 

 見られた青。

 

 覚えられた青。

 

 聞かれた青。

 

 相打ちの青。

 

 進まれた青。

 

 そこまで積み重なった青。

 

 今日は、その青で勝つ。

 

 春麗は、掌を見た。

 

 発勁。

 

 この技には、危険なログが多すぎる。

 

 発勁勝利後、リュウが気絶して倒れ込んできた事故ログ。

 

 黒執着春麗がそのログに足を取られて、逆にリュウの拳を受けたログ。

 

 介抱。

 

 倒れ込み。

 

 安全確認。

 

 精神HP被弾。

 

 危険封筒。

 

 全部、発勁の周囲にまとわりついている。

 

 だから、今日は違う。

 

 ただ当てるのではない。

 

 勝つだけではない。

 

 方向を管理する。

 

 距離を管理する。

 

 重心を管理する。

 

 リュウを前へ倒さない。

 

 こちらへ倒れ込ませない。

 

 後方へ抜く。

 

 倒れるなら、自分の上ではなく、向こうへ。

 

 発勁の威力を、決定打として、正しく使う。

 

 春麗は、小さく呟いた。

 

「勝利と事故は別判定」

 

 一拍。

 

「方向管理は、今回の課題」

 

 もう一拍。

 

「精神HP被弾は、試合後に発生しないようにする」

 

 そこまで言って、少しだけ嫌な予感がした。

 

 こういう時、だいたい発生する。

 

 精神HPイベントは、こちらが警戒した場所からではなく、警戒していない場所から来る。

 

 春麗は、首を振った。

 

「今日は勝つ」

 

 言い直す。

 

「青で」

 

 一拍。

 

「発勁で」

 

 もう一拍。

 

「事故なく」

 

 そこまでは言い切れた。

 

 その先は、言わなかった。

 


 

 リュウは、いつもの場所にいた。

 

 春麗を見る。

 

 青い武道服を見る。

 

 それから、春麗自身を見る。

 

 その視線だけで、春麗の精神HPが少し削れた。

 

 まだ試合前。

 

 まだ何も始まっていない。

 

 なのに、削れる。

 

 春麗は、内心で深く息を吐いた。

 

「リュウ」

 

「春麗」

 

「今日は、発勁を使うわ」

 

 リュウの目が少しだけ変わった。

 

「ああ」

 

「ただし」

 

 一拍。

 

「倒れ込ませない」

 

 リュウは少しだけ考えた。

 

「倒れ込む?」

 

「あなたが」

 

「俺がか」

 

「ええ」

 

「俺は倒れないつもりだ」

 

「そのつもりでも倒れる時があるでしょう」

 

「ああ」

 

「だから、こちらで管理する」

 

 言ってから、春麗は自分で少し恥ずかしくなった。

 

 何を宣言しているのか。

 

 勝つ前から、相手の倒れ方を管理すると言っている。

 

 だが、重要だった。

 

 これは本当に重要。

 

 勝利と事故は別判定。

 

 事故を起こさないためには、事前に言語化する必要がある。

 

 リュウは、静かに頷いた。

 

「分かった」

 

「分かったの?」

 

「ああ」

 

「本当に?」

 

「春麗が、俺を倒すつもりだということは分かった」

 

 春麗は一瞬詰まった。

 

「……そこだけ分かればいいわ」

 

 リュウは構える。

 

「来い」

 

 春麗も構えた。

 

 青が、静かに張る。

 

 今日の青は、逃げない青。

 

 隠さない青。

 

 届かれたことも、見られたことも、覚えられたことも、聞かれたことも、進まれたことも、なかったことにしない青。

 

 そして。

 

 勝ちに行く青。

 


 

 序盤。

 

 リュウの拳は重かった。

 

 春麗は、それを真正面から受けない。

 

 青だからといって、ただ正面に立つわけではない。

 

 青は誠実であって、無防備ではない。

 

 踏み込む。

 

 蹴る。

 

 リュウが受ける。

 

 拳が返る。

 

 春麗は半歩ずらす。

 

 黒のように誘うのではない。

 

 青として、堂々と外す。

 

 リュウの視線が追ってくる。

 

 春麗は、それを受けた。

 

 今日は逃げない。

 

 見られている。

 

 分かっている。

 

 見られた青。

 

 覚えられた青。

 

 聞かれた青。

 

 それでも、戦う。

 

 リュウの拳が肩をかすめる。

 

 痛い。

 

 だが、崩れない。

 

 春麗の蹴りがリュウの脇へ入る。

 

 浅い。

 

 でも、入った。

 

 リュウの足が、少しだけ止まる。

 

「春麗」

 

「何?」

 

「今日の青は、前より近い」

 

 精神HPが削れた。

 

 試合中に言わないでほしい。

 

 近い。

 

 何が。

 

 距離か。

 

 拳か。

 

 青か。

 

 自分か。

 

 春麗は、反論しようとした。

 

 だが、やめた。

 

 反論すると遅れる。

 

 今日は、青の分類を増やす日ではない。

 

 勝つ日。

 

「近いなら」

 

 春麗は踏み込む。

 

「届くでしょう」

 

 掌底。

 

 リュウが受ける。

 

 受けた腕が少し落ちる。

 

 リュウの目が鋭くなる。

 

「ああ」

 

 拳が来る。

 

 春麗は受け流す。

 

 届く。

 

 そう。

 

 今日は届く。

 

 届かれるだけではない。

 

 こちらからも、届く。

 


 

 中盤。

 

 リュウが押してきた。

 

 青の春麗を、拳で見ている。

 

 黒への対応とは違う。

 

 視線を惑わされるのではなく、春麗の重心を読む。

 

 蹴りの後。

 

 掌の前。

 

 呼吸の切り替え。

 

 発勁に入るための距離。

 

 リュウは、そこを見ている。

 

 春麗には分かる。

 

 今、リュウは発勁を警戒している。

 

 警戒しているのに、来る。

 

 止まらない。

 

 発勁の距離に入らせないようにするのではなく、入った上で拳を合わせるつもりだ。

 

 それがリュウ。

 

 春麗は、少しだけ笑った。

 

「そう来ると思ったわ」

 

 リュウは答えない。

 

 拳で答える。

 

 重い一撃。

 

 春麗は受けた。

 

 受け切れない。

 

 腕に痺れが走る。

 

 足が半歩下がる。

 

 リュウが踏み込む。

 

 連撃。

 

 春麗は、そこを待っていた。

 

 下がる。

 

 さらに半歩。

 

 リュウが追う。

 

 追わせる。

 

 黒ではない。

 

 青でも、誘いはある。

 

 ただし、隠さない。

 

 春麗は、右足で地面を噛む。

 

 リュウの拳が来る。

 

 見える。

 

 発勁の距離。

 

 だが、まだ早い。

 

 ここで打つと、リュウは前へ崩れる。

 

 こちらへ倒れる。

 

 事故ログに近づく。

 

 違う。

 

 今日は、後方。

 

 リュウの重心が前に乗り切る直前。

 

 拳を振り切った瞬間。

 

 胸が開く瞬間。

 

 そこ。

 

 春麗は一拍、待った。

 

 リュウの拳が頬の横を通る。

 

 風圧。

 

 怖い。

 

 だが、見えている。

 

 今。

 

 春麗の掌が、リュウの胸に触れた。

 

 発勁。

 

 音は小さかった。

 

 しかし、衝撃は深かった。

 

 リュウの身体が、後方へ抜ける。

 

 前ではない。

 

 春麗の方へ倒れない。

 

 後方。

 

 足が浮く。

 

 リュウの背中が空へ傾く。

 

 春麗は、最後まで腕を伸ばし切らない。

 

 突き飛ばすのではない。

 

 抜く。

 

 衝撃を通し、後方へ逃がす。

 

 方向管理。

 

 成功。

 

 リュウの身体が後方へ吹き飛ぶ。

 

 地面へ落ちる。

 

 背中からではない。

 

 肩と背で衝撃を分散するように、後方へ倒れる。

 

 春麗は、息を止めた。

 

 リュウは起き上がらなかった。

 

 一拍。

 

 二拍。

 

 三拍。

 

 リュウの拳が、開いている。

 

 意識が落ちている。

 

 春麗は、動けなかった。

 

 勝った。

 

 発勁で。

 

 青で。

 

 方向管理も成功した。

 

 倒れ込み事故は起きなかった。

 

 リュウは後方へ飛んだ。

 

 勝利。

 

 完全に、春麗の勝利。

 

 なのに。

 

「……リュウ?」

 

 返事がない。

 

 春麗の勝利の実感より先に、別のものが来た。

 

 安全確認。

 

 介抱。

 

 気絶。

 

 発勁。

 

 リュウ。

 

 春麗は駆け寄った。

 


 

 リュウは倒れていた。

 

 呼吸はある。

 

 胸が上下している。

 

 顔色も極端には悪くない。

 

 だが、意識は落ちている。

 

 春麗は膝をついた。

 

「リュウ」

 

 返事はない。

 

 まず呼吸。

 

 次に視線。

 

 反応。

 

 頭を強く打っていないか。

 

 発勁の衝撃は胸から後方へ抜いた。

 

 倒れ方も管理した。

 

 だが、気絶している。

 

 春麗は、リュウの肩に手を置いた。

 

「リュウ、聞こえる?」

 

 返事はない。

 

 声は落ち着いていた。

 

 落ち着かせていた。

 

 実際には、胸の奥がかなり騒いでいる。

 

 勝った。

 

 でも、リュウが倒れている。

 

 勝利と介抱は別判定。

 

 勝利と安全確認も別判定。

 

 精神HP被弾は、今は考えない。

 

 今は、介抱。

 

 春麗はリュウの頭の位置を確認する。

 

 首に負担がかからないようにする。

 

 気道。

 

 呼吸。

 

 手足の反応。

 

 問題はない。

 

 ただ、意識が戻らない。

 

 春麗は少しだけリュウの頬に触れた。

 

「……リュウ」

 

 その瞬間、自分の指が震えていることに気づいた。

 

 怖かったのではない。

 

 いや、少し怖い。

 

 でも、それだけではない。

 

 リュウの顔が近い。

 

 気絶している。

 

 いつもこちらを真っ直ぐ見てくる目が、今は閉じている。

 

 いつも止まらない拳が、今は開いている。

 

 自分が倒した。

 

 自分の発勁で。

 

 青で。

 

 完全に。

 

 春麗は、勝者のはずだった。

 

 でも今は、勝者ではなく介抱する側だった。

 

 これがまずい。

 

 非常にまずい。

 

 警戒していた倒れ込み事故は回避した。

 

 方向管理も成功した。

 

 なのに、今度は介抱する側として危険になっている。

 

「……事故ログは回避したのに」

 

 小さく呟いた。

 

「介抱ログが発生するのね」

 

 誰も答えない。

 

 リュウはまだ目を覚まさない。

 

 春麗は、リュウの手首に触れた。

 

 脈。

 

 落ち着いている。

 

 大丈夫。

 

 たぶん大丈夫。

 

 春麗は、胸を撫で下ろしかけた。

 

 その時、リュウの指がわずかに動いた。

 

 春麗は、顔を近づける。

 

「リュウ?」

 

 リュウの目が、ゆっくり開いた。

 

 焦点が合うまでに、少し時間がかかる。

 

 そして、春麗を見る。

 

 近い。

 

 かなり近い。

 

 春麗は、そこで自分の姿勢に気づいた。

 

 リュウのそばに膝をつき、片手を肩に置き、もう片方の手で手首を確認している。

 

 完全に介抱。

 

 安全確認。

 

 正しい。

 

 正しいのだが。

 

 目が合った瞬間、精神HPが大きく削れた。

 

「……春麗」

 

 リュウの声は、少しかすれていた。

 

「起きた?」

 

「ああ」

 

「意識は?」

 

「ある」

 

「痛みは?」

 

「胸にある」

 

「吐き気は?」

 

「ない」

 

「視界は?」

 

「春麗が見える」

 

 春麗の精神HPが一気に削れた。

 

「……視界確認としては、もっと別の答え方があるでしょう」

 

 リュウは少しだけ瞬きをする。

 

「見えている」

 

「それでいいの」

 

「ああ」

 

「動ける?」

 

「少し待て」

 

「分かった」

 

 春麗は、離れようとした。

 

 だが、リュウの手がわずかに動いた。

 

 掴まれたわけではない。

 

 ただ、離れる春麗の袖に指が触れた。

 

 ほんの少し。

 

 反射かもしれない。

 

 意識が完全に戻っていないせいかもしれない。

 

 安全確認として、そばにいてほしいだけかもしれない。

 

 春麗は、動けなくなった。

 

「……何?」

 

 リュウは、ゆっくり言った。

 

「まだ、そこにいてくれ」

 

 精神HPが、大きく削れた。

 

 春麗は、声を出すのに少し時間がかかった。

 

「安全確認のため?」

 

「ああ」

 

「そう」

 

「それと」

 

「それと?」

 

 聞いてはいけない。

 

 聞くべきではない。

 

 精神HPが危険域に入っている。

 

 しかし、聞いてしまった。

 

 リュウは、春麗を見た。

 

「春麗の発勁で倒された」

 

 一拍。

 

「だから、春麗がいる方が分かりやすい」

 

 春麗は、完全に固まった。

 

「……分かりやすい?」

 

「ああ」

 

「何が?」

 

「俺が負けたことだ」

 

 春麗の胸が、変な形で跳ねた。

 

 リュウは続ける。

 

「春麗がそこにいると、俺は負けたんだと分かる」

 

「今、それを言う?」

 

「ああ」

 

「気絶明けに?」

 

「ああ」

 

「介抱されながら?」

 

「ああ」

 

 春麗は、片手で顔を覆いたくなった。

 

 しかし、片手はまだリュウの肩の近くにある。

 

 もう片方の手は、さっきまで手首に触れていた。

 

 動けない。

 

 精神HP的に。

 


 

 リュウは、少しずつ呼吸を整えていた。

 

 春麗は、介抱を続ける。

 

 本当は、少し離れた方がいい。

 

 距離を取った方が安全。

 

 精神HP的には。

 

 だが、リュウはまだ起き上がらない。

 

 気絶直後。

 

 無理に動かせない。

 

 安全確認が優先。

 

 春麗は、自分に言い聞かせる。

 

 これは甘いイベントではない。

 

 介抱。

 

 安全確認。

 

 発勁後の状態確認。

 

 勝利後処置。

 

 甘いものではない。

 

 断じて違う。

 

 リュウが、静かに言う。

 

「春麗」

 

「何?」

 

「強かった」

 

 精神HPが削れる。

 

「それは、今言わなくていい」

 

「言いたかった」

 

「言いたかったとしても、今ではない」

 

「今、分かった」

 

「何が?」

 

「春麗の発勁が、前と違った」

 

 春麗は息を止めた。

 

 リュウは、倒れたまま続ける。

 

「前に来るのではなく、後ろへ抜けた」

 

「……」

 

「方向を変えた」

 

「分かったの?」

 

「ああ」

 

「気絶したのに?」

 

「当たる瞬間までは覚えている」

 

 春麗は、言葉を失った。

 

 覚えている。

 

 発勁の瞬間を。

 

 自分が方向管理したことを。

 

 リュウは覚えている。

 

 リュウはさらに言う。

 

「春麗が、倒れ方まで見ていた」

 

 精神HPがまた削れる。

 

「……見ていたわよ」

 

「ああ」

 

「事故を起こさないため」

 

「ああ」

 

「勝つためだけではなく」

 

「ああ」

 

「安全に倒すため」

 

「ああ」

 

「だから」

 

 春麗は、言葉を切った。

 

 言い訳のはずだった。

 

 説明のはずだった。

 

 だが、リュウはその途中で言う。

 

「春麗らしかった」

 

 精神HPが大きく削れた。

 

 春麗は、完全に停止した。

 

「……今」

 

「ああ」

 

「それは、何に対して?」

 

「発勁だ」

 

「発勁」

 

「ああ」

 

「方向管理?」

 

「ああ」

 

「安全確認?」

 

「ああ」

 

「勝ち方?」

 

「ああ」

 

「全部?」

 

「ああ」

 

 春麗は、目を閉じた。

 

 危険。

 

 これは危険。

 

 リュウは気絶明けで、介抱されていて、倒された側なのに、春麗の勝ち方を「春麗らしかった」と言う。

 

 これは反則。

 

 かなり反則。

 

 春麗は、少しだけ声を低くした。

 

「リュウ」

 

「何だ」

 

「あなたは、倒された直後くらい、黙っていて」

 

「すまない」

 

「謝らないで」

 

「ああ」

 

 一拍。

 

「だが、本当にそう思った」

 

 春麗の精神HPが、さらに削れた。

 

「追撃禁止」

 

「ああ」

 

「もう遅いわ」

 

「そうか」

 

「そうよ」

 

 春麗は深く息を吐いた。

 

 このままだと危ない。

 

 かなり危ない。

 

 しかし、まだリュウは起き上がっていない。

 

 介抱を続ける必要がある。

 

 精神HPと安全確認が衝突している。

 

 最悪だった。

 


 

 少しして、リュウは上体を起こした。

 

 春麗は肩を支える。

 

 支えないと危ない。

 

 しかし、支えると近い。

 

 近い。

 

 かなり近い。

 

 リュウの体温が伝わる。

 

 発勁を入れた胸が上下している。

 

 自分が倒した相手。

 

 自分が介抱している相手。

 

 自分に「強かった」と言った相手。

 

 自分の発勁を「春麗らしかった」と言った相手。

 

 春麗は、精神HPがもう危険域だと分かっていた。

 

 分かっているのに、手を離せない。

 

 安全確認。

 

 介抱。

 

 勝利後処置。

 

 そう言い聞かせる。

 

 リュウが、ふと春麗を見る。

 

「春麗」

 

「何?」

 

「手が震えている」

 

 春麗は、完全に止まった。

 

「震えていない」

 

「震えている」

 

「震えていないわ」

 

「俺を心配したのか」

 

 精神HPが大きく削れた。

 

「……普通、気絶した相手は心配するでしょう」

 

「ああ」

 

「だから普通」

 

「ああ」

 

「普通の介抱」

 

「ああ」

 

「甘いイベントではない」

 

「甘い?」

 

「何でもない」

 

 リュウは、しばらく春麗を見ていた。

 

 そして、静かに言った。

 

「心配してくれて、ありがとう」

 

 春麗の精神HPが、ほぼ0になった。

 

 視界が少し白くなる。

 

 なぜ。

 

 なぜ、そこで礼を言う。

 

 正しい。

 

 完全に正しい。

 

 介抱された側が礼を言うのは正しい。

 

 心配してくれた相手にありがとうと言うのも正しい。

 

 でも、春麗の精神HPには正しくない。

 

 春麗は、口を開いた。

 

「……それは」

 

 言葉が続かない。

 

 分類できない。

 

 勝利。

 

 発勁。

 

 方向管理。

 

 介抱。

 

 心配。

 

 ありがとう。

 

 強かった。

 

 春麗らしかった。

 

 全部が、青い小箱に入らない。

 

 危険封筒にも入りきらない。

 

 どこに置けばいいのか分からない。

 

 精神HPノックアウトの前兆。

 

 春麗は、必死に言う。

 

「これは、勝利後処置」

 

「ああ」

 

「介抱」

 

「ああ」

 

「安全確認」

 

「ああ」

 

「心配ではあるけれど、当然」

 

「ああ」

 

「礼を言われることでは」

 

「ある」

 

 リュウが言った。

 

 短く。

 

 まっすぐに。

 

「ある」

 

 春麗の精神HPが0になった。

 

 声が出ない。

 

 反論が止まる。

 

 分類が止まる。

 

 青い小箱が閉じる。

 

 危険封筒も開かない。

 

 勝利ログも介抱ログも、どこにも置けない。

 

 リュウは、春麗を見る。

 

「春麗?」

 

 春麗は、ようやく言った。

 

「……少し」

 

「少し?」

 

「少し、黙って」

 

「ああ」

 

「私が」

 

 一拍。

 

「処理できない」

 

 言ってしまった。

 

 かなり言ってしまった。

 

 リュウは、静かに頷いた。

 

「分かった」

 

 その素直さが、また削る。

 

 しかし、もう削れる精神HPがない。

 

 ノックアウト後の追撃。

 

 春麗は、支えていた手をそっと離した。

 

「起き上がれそう?」

 

「ああ」

 

「立てる?」

 

「少し待て」

 

「分かった」

 

 春麗は、少しだけ距離を取った。

 

 距離を取ったのに、近い。

 

 さっきまで触れていた感覚が残っている。

 

 リュウの呼吸。

 

 リュウの体温。

 

 リュウの声。

 

 ありがとう。

 

 春麗らしかった。

 

 それらが全部残っている。

 

 春麗は、完全に負けた気がした。

 

 試合には勝ったのに。

 


 

 リュウは、ゆっくり立ち上がった。

 

 少しふらつく。

 

 春麗が反射的に手を出す。

 

 リュウは、その手を取らない。

 

 自分で立つ。

 

 しかし、春麗の手がそこにあることは見ていた。

 

「大丈夫だ」

 

「そう」

 

「だが、助かった」

 

「……また言う」

 

「言う」

 

「言わなくていい」

 

「言いたい」

 

 春麗は、もう反論する力がなかった。

 

 精神HPはノックアウト済み。

 

 肉体HPは残っている。

 

 試合は勝った。

 

 でも、精神HPは倒れている。

 

 リュウは、春麗を見た。

 

「今日は、春麗の勝ちだ」

 

「……ええ」

 

「発勁も、勝ち方も」

 

「ええ」

 

「介抱も」

 

「介抱は勝敗に入れないで」

 

「そうか」

 

「そうよ」

 

「だが、春麗だった」

 

 最後の一撃。

 

 春麗は、目を閉じた。

 

「……本当に」

 

「ああ」

 

「あなたは、勝者を倒すのが上手いわね」

 

「俺は負けた」

 

「試合はね」

 

 リュウは少しだけ首を傾げる。

 

 春麗は、弱く笑った。

 

「精神HPは、私の負け」

 

「精神?」

 

「何でもないわ」

 

 春麗は、青い袖を少し整える。

 

 今日の青は勝った。

 

 発勁で勝った。

 

 方向管理も成功した。

 

 倒れ込み事故も起こさなかった。

 

 そこまでは完璧。

 

 だが、その後。

 

 リュウが気絶した。

 

 春麗が介抱した。

 

 甘いイベントになった。

 

 心配してくれてありがとう、と言われた。

 

 春麗らしかった、と言われた。

 

 精神HPはノックアウト。

 

 春麗は、小さく息を吐いた。

 

「今日は、ここまで」

 

「ああ」

 

「無理しないで帰りなさい」

 

「ああ」

 

「まだ胸に痛みが残るなら、休むこと」

 

「ああ」

 

「明日も違和感があるなら、ちゃんと確認すること」

 

「ああ」

 

「私に報告する必要は」

 

 言いかけて止まった。

 

 リュウが見る。

 

 春麗は、顔を逸らす。

 

「……必要なら、して」

 

 言ってしまった。

 

 完全に言ってしまった。

 

 リュウは頷いた。

 

「分かった」

 

「今のは安全確認」

 

「ああ」

 

「甘いものではない」

 

「ああ」

 

「勝利後処置」

 

「ああ」

 

 リュウは、少しだけ笑ったように見えた。

 

「春麗らしい」

 

 春麗は、完全に背を向けた。

 

「帰る」

 

「ああ」

 

「追撃禁止」

 

「ああ」

 

「本当に禁止」

 

「ああ」

 

「……今日は、私の勝ちだから」

 

「ああ」

 

 リュウは静かに言った。

 

「春麗の勝ちだ」

 

 春麗は振り返らなかった。

 

 振り返ったら終わる。

 

 もう終わっている気もするが、振り返ったらさらに終わる。

 

 だから歩き出した。

 

 青い武道服の裾が揺れる。

 

 その背中に、リュウの視線がある。

 

 見られている。

 

 覚えられている。

 

 今日の青も。

 

 発勁も。

 

 介抱も。

 

 全部。

 

 春麗は、歩きながら小さく呟いた。

 

「……勝ったのに」

 

 一拍。

 

「勝ったのに、なぜ倒されているの」

 

 答えは分かっている。

 

 精神HPイベントは別判定。

 

 それだけだった。

 


 

 夜。

 

 春麗は、青い武道服を畳んでいた。

 

 手つきは丁寧だった。

 

 いつもより、少しだけ遅い。

 

 今日の青は、特別だった。

 

 発勁で勝った青。

 

 方向管理に成功した青。

 

 リュウを後方へ吹き飛ばした青。

 

 決め技でリュウを気絶させた青。

 

 介抱した青。

 

 心配した青。

 

 ありがとうと言われた青。

 

 春麗らしかったと言われた青。

 

 春麗は、途中で手を止めた。

 

「……多い」

 

 多すぎる。

 

 青の分類が多すぎる。

 

 今日の青を、何と呼べばいいのか。

 

 発勁の青。

 

 勝った青。

 

 倒した青。

 

 介抱した青。

 

 心配した青。

 

 春麗らしかった青。

 

 どれも違う。

 

 どれも合っている。

 

 だから困る。

 

 春麗は、青い小箱を開けた。

 

 紙を一枚取り出す。

 

 しばらく迷ってから、書く。

 

 未承認仮分類:倒した後で介抱した青。

 

 書いてから、顔を覆った。

 

「……そのまますぎる」

 

 しかし、正確だった。

 

 さらに書く。

 

 発勁勝利。

 

 方向管理成功。

 

 倒れ込み事故回避。

 

 リュウ一時気絶。

 

 春麗、介抱実施。

 

 リュウより「強かった」「春麗らしかった」「心配してくれてありがとう」。

 

 春麗、精神HPノックアウト。

 

 春麗は、ペンを置いた。

 

 完全な記録板AI文体だった。

 

「……記録板AI、いないわよね」

 

 誰も答えない。

 

 でも、どこかで保存された気がする。

 

 春麗は、紙を見つめる。

 

 今日の勝利は、大事だ。

 

 青で勝った。

 

 発勁で勝った。

 

 方向管理もできた。

 

 これは、本当に大事。

 

 でも、介抱ログも同じくらい重い。

 

 どこに置けばいいのか分からない。

 

 春麗は、小さく言った。

 

「勝利ログと介抱ログは別」

 

 一拍。

 

「でも、同じ日のログ」

 

 もう一拍。

 

「別だけれど、切り離せない」

 

 それが、今日の結論だった。

 

 春麗は、紙を青い小箱に入れようとして、止まる。

 

 青い小箱だけでいいのか。

 

 危険封筒ではないのか。

 

 かなり危険。

 

 でも、青の勝利でもある。

 

 春麗は迷った。

 

 そして、紙を二つに分けた。

 

 一枚目。

 

 青い小箱へ。

 

 発勁で勝った青。

 

 方向管理成功。

 

 二枚目。

 

 危険封筒へ。

 

 介抱ログ。

 

 心配してくれてありがとう。

 

 春麗らしかった。

 

 精神HPノックアウト。

 

 春麗は、二つを別々に置いた。

 

 そして、すぐに思った。

 

「……結局、同じ日のことなのに」

 

 分けた。

 

 でも、完全には分かれない。

 

 それでいい。

 

 今はそれでいい。

 


 

 布団に入っても、眠れなかった。

 

 勝利の感触が残っている。

 

 発勁の感触。

 

 リュウの胸へ届いた掌。

 

 衝撃が後方へ抜けた瞬間。

 

 リュウが吹き飛ぶ姿。

 

 勝った。

 

 確かに勝った。

 

 その次に、倒れたリュウの顔が浮かぶ。

 

 閉じた目。

 

 かすれた声。

 

 春麗が見える。

 

 強かった。

 

 春麗らしかった。

 

 心配してくれて、ありがとう。

 

 春麗は、布団の中で顔を覆った。

 

「……やめて」

 

 誰に言っているのか分からない。

 

 リュウに。

 

 記憶に。

 

 青い小箱に。

 

 危険封筒に。

 

 作者に。

 

 全部だった。

 

 春麗は、目を閉じる。

 

 精神HPはもう落ちている。

 

 だから、考えても仕方がない。

 

 明日、整理する。

 

 たぶん。

 

 春麗会議室には行きたくない。

 

 絶対に議題になる。

 

 記録板AIが言う。

 

『本日の議題:発勁勝利後介抱ログ』

 

 やめてほしい。

 

 確実に言う。

 

 そしてこう分類する。

 

『勝利判定:春麗』

 

『精神HP判定:春麗ノックアウト』

 

『未承認仮分類:倒した後で介抱した青』

 

 春麗は、布団の中で小さく言った。

 

「……保存しないで」

 

 誰も答えない。

 

 けれど、どこかで保存された気がした。

 


 

 その夜。

 

 本編春麗は、青で勝った。

 

 発勁で勝った。

 

 方向管理にも成功した。

 

 リュウを後方へ吹き飛ばし、倒れ込み事故を回避した。

 

 それでも、介抱で甘いイベントを食らい、精神HPはノックアウトされた。

 

 勝利と事故は別判定。

 

 勝利と介抱も別判定。

 

 そして。

 

 戦闘勝利と精神HP敗北も、別判定。

 

 春麗は、布団の中で最後に小さく呟いた。

 

「……でも、勝ったのは私よ」

 

 一拍。

 

「そこだけは、譲らない」

 

 もう一拍。

 

「精神HPは、別だけれど」

 

 さらに一拍。

 

「……たぶん」

 

 最後の一言で、また少しだけ自爆した。

 

 それでも、青い小箱の中には、確かに新しい紙が入っていた。

 

 発勁で勝った青。

 

 そして、危険封筒にはもう一枚。

 

 倒した後で介抱した青。

 

 どちらも、今日の春麗のものだった。

 


 

 記録板AIは、白い外部メタ領域で表示を閉じる前に、最後の分類を追加した。

 

『検証終了』

 

『本記録は、ディレクターズカットIFです』

 

『本編確定ログではありません』

 

『本編時系列への直接反映は行われません』

 

『宿題回答ライン、正式回答前後、会話発生時期などは、本記録では確定しません』

 

 一拍。

 

『発生内容』

 

『本編春麗は、青でリュウに勝利しました』

 

『発勁を決定打として使用しました』

 

『方向管理により、倒れ込み事故を回避しました』

 

『リュウは後方へ倒れ、一時的に意識を落としました』

 

『本編春麗は介抱と安全確認を行いました』

 

『リュウは、春麗の勝ち方を「春麗らしかった」と評価しました』

 

『本編春麗は、戦闘には勝利しました』

 

『ただし、精神HPはノックアウトされました』

 

 一拍。

 

『分類』

 

『発勁で勝った青』

 

『方向管理成功』

 

『倒れ込み事故回避』

 

『勝利後介抱ログ』

 

『心配してくれてありがとう被弾』

 

『春麗らしかった追撃』

 

『倒した後で介抱した青』

 

『戦闘勝利と精神HP敗北は別判定』

 

 一拍。

 

『保存先推奨』

 

『青い小箱:発勁で勝った青/方向管理成功』

 

『危険封筒:介抱ログ/心配してくれてありがとう/春麗らしかった/精神HPノックアウト』

 

 一拍。

 

『備考』

 

『本件は、本編春麗の青が勝利可能であることを示す検証ログです』

 

『同時に、勝利後処置が精神HPイベント化する危険を示す検証ログでもあります』

 

『青い小箱と危険封筒の分割保存を推奨します』

 

 最後に、小さく表示が増えた。

 

『未承認仮分類:勝ったのに倒された春麗』

 

 どこかで、本編春麗の声がした気がした。

 

「保存しないで」

 

 記録板AIは、いつも通り淡々と表示した。

 

『保存しました』

 




Q:今回のディレクターズカットIFについて解説して?

A:

今回は、ディレクターズカットIFとしての「本編春麗が青で発勁勝利し、倒れ込み事故は回避したものの、介抱ログで精神HPを落とされる」回でした。

まず大前提として、この話は本編確定ログではありません。

本編の時系列にそのまま入る話ではなく、あくまでディレクターズカットIFとしての検証ログです。

そのため、リュウへの宿題回答ラインや、どの時点で発生したかについては、今回は明確に確定させていません。

今回の主題はかなりはっきりしています。

青で勝つ。
発勁で勝つ。
ただし、発勁事故は起こさない。

これです。

これまで発勁の周囲には、かなり危険なログが増えていました。

発勁で勝った後にリュウが意識を落とす。
倒れ込む。
支えきれない。
介抱になる。
安全確認になる。
精神HPが削れる。

こうしたログが積み重なった結果、本編春麗にとって発勁は、単なる決め技ではなく、危険封筒とセットになった技になっていました。

だから今回の春麗は、最初からそこを警戒しています。

ただ当てるのではなく、方向を管理する。
距離を管理する。
重心を管理する。
リュウを前へ倒さない。
自分の方へ倒れ込ませない。
後方へ抜く。

つまり、発勁を「勝つための技」としてだけではなく、「事故を起こさず勝つための技」として使おうとしています。

ここが今回の春麗の成長点です。

そして実際に、そこは成功しています。

リュウを前へ倒さない。
自分の上に倒れ込ませない。
後方へ抜く。
方向管理に成功する。
倒れ込み事故は回避する。

戦闘としては、これはきれいな勝利です。

青で勝った。
発勁で勝った。
事故ログを踏まえたうえで、それを回避した。

本編春麗の勝利としては、かなり大きいログです。

ただし、ここで終わらないのが本作の春麗です。

倒れ込み事故は回避しました。

しかし、リュウは気絶します。

ここで「勝利ログ」と「介抱ログ」が分離し始めます。

勝った。
でも、リュウが倒れている。
事故は起きていない。
でも、介抱は発生する。
自分の上に倒れ込まれてはいない。
でも、自分が駆け寄って安全確認をする。

この構造が、今回の一番厄介なところです。

春麗は、勝利後の倒れ込み事故を警戒していました。
しかし、精神HPイベントは別の場所から来ました。

介抱する側になる。

これです。

これまでの危険ログでは、春麗が介抱される側だったり、倒れ込まれる側だったりしました。

今回は逆です。

自分がリュウを倒した。
自分がリュウを介抱する。
自分が呼吸を確認し、意識を確認し、痛みや視界を確認する。

これは安全確認としては正しいです。

格闘家としても、戦闘後処置としても当然です。

でも、相手がリュウなので精神HPに悪い。

この理不尽さが今回の中心です。

特に、リュウの発言が危険です。

「春麗が見える」
「まだ、そこにいてくれ」
「春麗がそこにいると、俺は負けたんだと分かる」
「強かった」
「春麗らしかった」
「心配してくれて、ありがとう」

全部、正しいことを言っています。

リュウは煽っていません。
甘いことを言おうとしている自覚もありません。
気絶明けで、倒された側として、ただ感じたことをそのまま言っています。

だから危険です。

今回のリュウは、試合には負けています。

発勁で完全に倒されています。
方向管理された上で、後方へ抜かれています。
戦闘判定としては春麗の勝ちです。

でも、精神HP判定では春麗を倒しています。

ここが今回のタイトル通りの構造です。

戦闘勝利と精神HP敗北は別判定。

春麗は試合に勝った。
発勁にも勝った。
方向管理にも成功した。
倒れ込み事故も回避した。

でも、介抱ログで精神HPを落とされた。

この「勝ったのに倒されている」状態が、今回の本編春麗らしいところだと思います。

また、今回の青はかなり多層化しています。

発勁で勝った青。
方向管理に成功した青。
倒れ込み事故を回避した青。
リュウを倒した青。
リュウを介抱した青。
心配した青。
ありがとうと言われた青。
春麗らしかったと言われた青。

一つの勝利なのに、分類が多い。

だから春麗は整理に困っています。

青い小箱に入れたい部分もある。
危険封筒に入れたい部分もある。
でも、同じ日のログなので完全には分けられない。

そこで春麗は、紙を二つに分けます。

青い小箱へ。

発勁で勝った青。
方向管理成功。

危険封筒へ。

介抱ログ。
心配してくれてありがとう。
春麗らしかった。
精神HPノックアウト。

この分割保存が、今回の最終的な整理です。

完全には分けられない。
でも、分けないと処理できない。

これも、春麗会議室や青い小箱、危険封筒の運用として重要な考え方です。

勝利そのものは青い小箱に入れていい。

ただし、その勝利後に発生した精神HP被弾は危険封筒に分ける。

この扱いが、今回の落としどころでした。

今回の分類は、

発勁で勝った青。
方向管理成功。
倒れ込み事故回避。
勝利後介抱ログ。
心配してくれてありがとう被弾。
春麗らしかった追撃。
倒した後で介抱した青。
戦闘勝利と精神HP敗北は別判定。

になります。

特に大事なのは、「倒した後で介抱した青」です。

かなりそのままの分類ですが、今回の本質はそこです。

勝った側なのに介抱する。
倒した相手を心配する。
そして、その相手から「強かった」「春麗らしかった」「ありがとう」と言われて、精神HPを落とされる。

これは黒ではなく、青の危険さです。

黒のように見せ方で攻めるわけではありません。
煽りでもありません。
女として見られる半拍でもありません。

真正面から勝つ。
真正面から心配する。
真正面から感謝される。

だから逃げ場がない。

今回の春麗は、最後にこう言います。

でも、勝ったのは私よ。
そこだけは、譲らない。

これはかなり重要です。

精神HPでは負けた。
介抱ログでは落とされた。
でも、戦闘では勝った。

そこは譲らない。

本編春麗にとって、青で勝つことは大事です。

精神HPが落ちても、勝利は消えない。
介抱ログが危険でも、発勁勝利は残る。
リュウに「春麗らしかった」と言われて自爆しても、その青は確かに春麗のものです。

今回のディレクターズカットIFは、青の勝利と、その勝利後に発生する危険を同時に見るための検証回でした。

発勁事故を回避しても、介抱ログは発生する。
勝利しても、精神HPは落ちる。
それでも、勝った事実は消えない。

そういう、かなり本編春麗らしい青の一戦だったと思います。
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