また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

319 / 321
※これはディレクターズカットIFです。
本編のIFシリーズは無関係のエピソードとなります。



ディレクターズカットIF:黒執着春麗は、扉の外でリュウを迎え撃つ

 記録板AIは、白い外部メタ領域に静かに表示を出した。

 

『本記録は、ディレクターズカットIFです』

 

『本編確定ログではありません』

 

『本編春麗の青い小箱への直接混入は禁止です』

 

『黒執着春麗観測ログです』

 

 一拍。

 

『今回の検証対象』

 

『黒執着春麗が、扉の外にいる自分のところへ来たリュウを迎え撃つ場合』

 

『黒いドレス戦闘服を選択し、リュウと試合を行う場合』

 

『作者ご褒美ログを含みます』

 

 一拍。

 

『注意』

 

『リュウ無自覚高火力発言の発生可能性があります』

 

『髪留め関連ログの再発火可能性があります』

 

『黒執着春麗の精神HPに大きな影響を与える可能性があります』

 

 一拍。

 

『検証を開始します』

 


 

 黒執着春麗は、棚の前に立っていた。

 

 黒。

 

 青。

 

 髪留め。

 

 危険封筒。

 

 掲示板投稿ログ。

 

 作者メール。

 

 ライバル枠認定。

 

 そして。

 

 作者プレゼント主人公補正ログ。

 

 外にいるなら、俺が会いに行けばいい。

 

 理由を持って行く。

 

 その二行が、妙に棚の中で目立っていた。

 

 黒執着春麗は、しばらくそれを見つめる。

 

 消していない。

 

 隠してもいない。

 

 ただし、目立つ場所には置いていない。

 

 黒と青の間。

 

 髪留めの少し奥。

 

 作者メールの少し手前。

 

 未承認。

 

 保留。

 

 危険。

 

 しかし、捨てない。

 

「……本当に、理由を持って来るのかしら」

 

 口に出してから、黒執着春麗は自分で止まった。

 

 待っているように聞こえた。

 

 違う。

 

 待っていない。

 

 検証しているだけ。

 

 リュウの発言が、作者プレゼント主人公補正ログとしてどの程度継続性を持つか確認しているだけ。

 

 そういうことにした。

 

 そういうことにしたかった。

 

 その時。

 

 白い通知が浮かんだ。

 

『記録板AI経由:作者ご褒美エピソード申請を受領しました』

 

 黒執着春麗は、無言で通知を見た。

 

「……また」

 

『はい』

 

「作者から?」

 

『はい』

 

「内容は?」

 

『扉の外にいる黒執着春麗に、リュウが会いに行き、試合をするエピソードです』

 

 黒執着春麗は、完全に固まった。

 

 一拍。

 

 もう一拍。

 

 そして、低く言った。

 

「……今、試合と言った?」

 

『はい』

 

「甘いエピソードではなく?」

 

『甘い要素を含む試合回です』

 

「最悪ね」

 

『作者ご褒美です』

 

「ご褒美の定義が危険すぎるわ」

 

『黒執着春麗向けに最適化されています』

 

「最適化しないで」

 

 黒執着春麗は、深く息を吐いた。

 

「確認するわ」

 

『どうぞ』

 

「これはディレクターズカットIF」

 

『はい』

 

「本編春麗には流さない」

 

『可能な限り』

 

「その言葉を禁止にしたいのよ」

 

『作者希望により変動します』

 

「二重に信用できないわ」

 

『ただし、今回の主対象は黒執着春麗です』

 

「そこは分かっているわ」

 

『リュウが会いに来ます』

 

 黒執着春麗は、黙った。

 

 棚を見る。

 

 黒。

 

 青。

 

 髪留め。

 

 作者メール。

 

 自分の厳しいルート。

 

 自分がライバル枠として、もう一つの軸になったという言葉。

 

 その全部の前で、黒執着春麗は静かに目を伏せた。

 

「……なら」

 

『はい』

 

「迎え撃つわ」

 

『衣装選択をお願いします』

 

 黒執着春麗は、棚の前で立ち止まる。

 

 青がある。

 

 黒がある。

 

 どちらも選べる。

 

 青で勝ったログもある。

 

 黒で勝ったログもある。

 

 今日はどちらか。

 

 リュウが、自分のところへ来る。

 

 自分から行くのではない。

 

 外にいる自分へ。

 

 理由を持って。

 

 なら。

 

 黒執着春麗は、黒い衣装に手を伸ばした。

 

「黒」

 

『黒いドレス戦闘服を選択』

 

「ええ」

 

『理由は』

 

「今日は、私が黒に縋る日ではない」

 

 一拍。

 

「リュウが、扉の外へ来る日よ」

 

 もう一拍。

 

「なら、外で待っていた私の黒で迎える」

 

『記録します』

 

「記録していいわ」

 


 

 夕方。

 

 場所は、いつもの試合場ではなかった。

 

 街外れの古い広場。

 

 人通りは少ない。

 

 空は薄く赤い。

 

 風がある。

 

 黒い裾が、静かに揺れる。

 

 黒執着春麗は、そこに立っていた。

 

 髪は整えている。

 

 髪留めも付けている。

 

 黒い戦闘服に。

 

 リュウからもらった髪留め。

 

 未承認。

 

 検証中。

 

 戦闘用具。

 

 まだ贈り物としては正式承認していない。

 

 そういうことにしている。

 

 だが、今日は付けてきた。

 

 理由はある。

 

 視界確保。

 

 髪の乱れ防止。

 

 黒の輪郭を崩さないため。

 

 そして。

 

 リュウが、前に言ったから。

 

 春麗に合っていた。

 

 黒執着春麗は、髪留めに触れた。

 

「……理由は十分」

 

 自分に言い聞かせる。

 

 少し離れたところで、足音がした。

 

 黒執着春麗は、振り返らない。

 

 来た。

 

 分かる。

 

 気配で。

 

 歩幅で。

 

 沈黙の重さで。

 

「春麗」

 

 リュウの声。

 

 黒執着春麗は、ゆっくり振り返った。

 

「来たのね」

 

「ああ」

 

「理由を持って?」

 

「ああ」

 

 リュウは、少しだけ黒執着春麗を見る。

 

 髪留め。

 

 黒。

 

 裾。

 

 そして、春麗。

 

 黒執着春麗は、先に釘を刺す。

 

「長く見ない」

 

「ああ」

 

「髪留めの感想は一回まで」

 

「ああ」

 

「似合っているは禁止」

 

「分かった」

 

「今の春麗にも合っている、も禁止」

 

「分かった」

 

「外にいるなら、会いに行けばいい、も今日は一回まで」

 

 リュウは少し考えた。

 

「もう言ったか?」

 

「言っていないけれど、予防よ」

 

「分かった」

 

 黒執着春麗は、構える。

 

「それで、理由は?」

 

 リュウも構える。

 

「戦いに来た」

 

「それだけ?」

 

「ああ」

 

「私と?」

 

「ああ」

 

「わざわざ?」

 

「ああ」

 

「扉の外にいる私に?」

 

 リュウは、静かに頷く。

 

「春麗がそこにいるなら、戦える」

 

 黒執着春麗の精神HPが削れた。

 

「……予防線をすり抜けるのが上手いわね」

 

「そうか」

 

「褒めていない」

 

「ああ」

 

「でも、理由としては」

 

 一拍。

 

「悪くないわ」

 

 黒執着春麗は、黒い裾をわずかに揺らした。

 

「来なさい、リュウ」

 

 その声は、煽りではなかった。

 

 いや、少し煽りだった。

 

 だが、それだけではない。

 

 迎える声だった。

 

 外にいる自分のところへ来た相手を、試合で迎える声。

 

 リュウが踏み込んだ。

 


 

 序盤。

 

 黒執着春麗は、動かなかった。

 

 動かない黒。

 

 見せる黒。

 

 黒は、揺らした瞬間だけが黒ではない。

 

 静止していても、黒は見る者に圧をかける。

 

 リュウの視線が一瞬、裾へ落ちる。

 

 黒執着春麗は、すぐに言う。

 

「今日は早いわね」

 

 リュウは視線を戻す。

 

 その瞬間、黒執着春麗が踏み込んだ。

 

 掌底。

 

 リュウが受ける。

 

 受けた腕が沈む。

 

 黒執着春麗は、半歩左へ流れる。

 

 黒い裾が遅れて揺れる。

 

 リュウの拳が返る。

 

 黒執着春麗は肩で外す。

 

 頬を風がかすめる。

 

 危ない。

 

 だが、見えている。

 

 今日は違う。

 

 黒に沈んでいない。

 

 黒に使われていない。

 

 自分が黒を置き、自分が黒を動かしている。

 

「外から来たわりには」

 

 黒執着春麗は、笑う。

 

「遠慮がないのね」

 

 リュウは答える。

 

「遠慮をしに来たわけじゃない」

 

 精神HPが削れる。

 

「……そういう返答を、試合中にしないで」

 

「すまない」

 

「謝らないで」

 

 蹴り。

 

 リュウが受ける。

 

 拳。

 

 黒執着春麗が流す。

 

 黒の裾が、拳の軌道を一瞬隠す。

 

 その半拍で、黒執着春麗の足がリュウの膝横を取る。

 

 リュウの体勢が崩れる。

 

 黒執着春麗は、そこへ掌底を重ねる。

 

 リュウが後退する。

 

 効いた。

 

 黒執着春麗は、胸の奥が熱くなるのを感じた。

 

 来た。

 

 リュウが来た。

 

 そして、自分は迎え撃っている。

 

 黒で。

 

 髪留めを付けて。

 

 自分の棚から選んだ黒で。

 


 

 中盤。

 

 リュウの拳が重くなる。

 

 様子見が消える。

 

 黒執着春麗は、笑みを消した。

 

 ここからが本番。

 

 リュウが見ている。

 

 黒だけではない。

 

 髪留めだけでもない。

 

 春麗の中心。

 

 足。

 

 呼吸。

 

 踏み直し。

 

 黒が揺れる前の、春麗自身。

 

 黒執着春麗は、少しだけ背筋が熱くなった。

 

 見られている。

 

 見せている。

 

 でも、見られると危険。

 

 いつものことだ。

 

 リュウの拳が来る。

 

 黒執着春麗は受ける。

 

 重い。

 

 腕に痺れが走る。

 

 もう一撃。

 

 今度は避ける。

 

 避けた先に、リュウがいる。

 

 読まれている。

 

 黒執着春麗は、咄嗟に黒い裾を大きく流した。

 

 見せる。

 

 遅らせる。

 

 迷わせる。

 

 しかし、リュウは迷い切らない。

 

 黒を見る。

 

 春麗を見る。

 

 そして、拳を出す。

 

 胸元に鋭い衝撃。

 

 黒執着春麗の息が詰まる。

 

 一歩下がる。

 

 リュウが止まらない。

 

 黒執着春麗は、奥歯を噛んだ。

 

 強い。

 

 本当に強い。

 

 自分がどれだけ戻ってきても、リュウは簡単に越えさせてくれない。

 

 それが腹立たしい。

 

 それが嬉しい。

 

 最悪だ。

 

「……本気ね」

 

「ああ」

 

「ご褒美回なのに?」

 

「戦いに来た」

 

 黒執着春麗の精神HPがまた削れる。

 

「だから、そういうところよ」

 

 リュウが踏み込む。

 

 黒執着春麗は、あえて後ろへ退かない。

 

 黒で受ける。

 

 いや。

 

 黒を置いて、春麗で受ける。

 

 拳の重さを腕に通す。

 

 身体が軋む。

 

 それでも、中心は外さない。

 

 リュウの拳が戻る前に、黒執着春麗の肘が入る。

 

 浅い。

 

 だが、入った。

 

 さらに蹴り。

 

 リュウの脇腹へ。

 

 リュウが一瞬沈む。

 

 黒執着春麗は、そこで笑った。

 

「来てよかったと思っている?」

 

 リュウは息を吐く。

 

「ああ」

 

 精神HPが削れた。

 

「……本当に、あなたは」

 

 言い切る前に、リュウの拳が来た。

 


 

 終盤。

 

 黒執着春麗は、追い込まれていた。

 

 体力は削れている。

 

 腕も重い。

 

 足も熱い。

 

 黒い裾には、わずかに土埃が付いている。

 

 髪留めは、まだ髪を留めている。

 

 視界は開けている。

 

 危険なほど、リュウがよく見える。

 

 リュウも傷ついている。

 

 肩が落ちている。

 

 呼吸が深い。

 

 だが、拳はまだ来る。

 

 黒執着春麗は、少しだけ笑った。

 

 やはり、そうだ。

 

 自分は、これが欲しかった。

 

 勝たせてほしいのではない。

 

 来てほしかった。

 

 ここまで来てほしかった。

 

 扉の外へ。

 

 黒の前へ。

 

 今の自分の前へ。

 

 そして、本気で拳を返してほしかった。

 

「……作者」

 

 黒執着春麗は、小さく呟いた。

 

「ご褒美としては、かなり分かっているじゃない」

 

 リュウには聞こえない。

 

 聞こえなくていい。

 

 リュウが踏み込む。

 

 最後の間合い。

 

 黒執着春麗は、黒を見せる。

 

 いつもの黒。

 

 リュウが知っている黒。

 

 準備された黒。

 

 読ませる黒。

 

 リュウは反応する。

 

 その反応も、もう見えている。

 

 黒執着春麗は、最後だけ外す。

 

 前と同じ。

 

 黒で読ませ、最後に外す。

 

 だが。

 

 リュウも、そこを読んでいた。

 

 拳が、外した先に来る。

 

 黒執着春麗の目が見開かれる。

 

 避け切れない。

 

 だが、受ける。

 

 腕で受ける。

 

 衝撃が身体を抜ける。

 

 膝が落ちそうになる。

 

 黒執着春麗は、足を踏み直す。

 

 まだ。

 

 まだ終わっていない。

 

 リュウの拳は戻りきっていない。

 

 黒執着春麗は、身体をねじる。

 

 掌底。

 

 リュウの胸へ入る。

 

 深い。

 

 リュウが後退する。

 

 だが、倒れない。

 

 リュウの最後の拳が、低く来る。

 

 黒執着春麗は、受けようとした。

 

 間に合わない。

 

 拳が、脇腹へ入った。

 

 息が止まる。

 

 視界が揺れる。

 

 黒い裾が、遅れて揺れた。

 

 黒執着春麗は、一歩、二歩と下がり。

 

 膝をついた。

 

 リュウも、立っているのがやっとだった。

 

 肩で息をしている。

 

 拳は下がっている。

 

 それでも、立っている。

 

 黒執着春麗は、膝をついたまま笑った。

 

「……負けたのね」

 

「ああ」

 

「あなたも、かなり危なかったでしょう」

 

「ああ」

 

「なら」

 

 一拍。

 

「悪くないわ」

 

 リュウは、静かに頷いた。

 

「春麗は強かった」

 

 精神HPが削れる。

 

「追撃禁止」

 

「すまない」

 

「謝らないで」

 

 黒執着春麗は、立ち上がろうとする。

 

 だが、身体がふらついた。

 

 リュウが一歩近づく。

 

 黒執着春麗は、手を上げる。

 

「介抱禁止」

 

 リュウは止まる。

 

「だが」

 

「禁止」

 

「ああ」

 

「ただし」

 

 黒執着春麗は、少しだけ顔を逸らす。

 

「手を貸すのは、条件付きで許可」

 

「条件?」

 

「勝者として」

 

 一拍。

 

「敗者に手を貸しなさい」

 

 リュウは、少しだけ目を細めた。

 

 そして、手を差し出した。

 

「ああ」

 

 黒執着春麗は、その手を取った。

 

 熱い。

 

 戦闘後の手。

 

 勝者の手。

 

 リュウの手。

 

 立ち上がる。

 

 近い。

 

 危険。

 

 だが、今日は逃げない。

 

 黒執着春麗は、リュウの手を離す。

 

「今日は、あなたの勝ちね」

 

「ああ」

 

「でも、次は分からない」

 

「ああ」

 

「扉の外へ来るなら」

 

 一拍。

 

「また理由を持って来なさい」

 

 リュウは頷いた。

 

「持って来る」

 

 精神HPが削れた。

 

「……即答しないで」

 

「すまない」

 

「謝らないで」

 


 

 試合後。

 

 黒執着春麗は、広場の端に座っていた。

 

 リュウとは少し距離がある。

 

 近すぎない。

 

 離れすぎない。

 

 危険な距離。

 

 安全な距離。

 

 どちらとも言える距離。

 

 リュウは、しばらく黙っていた。

 

 黒執着春麗は、その沈黙を少し警戒する。

 

「何か言いたいことがあるでしょう」

 

「ああ」

 

「一つまで」

 

「ああ」

 

「危険度によっては、作者へ抗議メールを送るわ」

 

「作者?」

 

「何でもない」

 

 リュウは、少しだけ考えた。

 

 そして、言った。

 

「来てよかった」

 

 黒執着春麗は、目を閉じた。

 

 一つまで。

 

 確かに一つ。

 

 短い。

 

 だが、火力が高い。

 

「……それは」

 

「ああ」

 

「かなり危険な一つよ」

 

「そうか」

 

「そうよ」

 

 リュウは静かに続けようとした。

 

 黒執着春麗は、すぐに手を上げる。

 

「一つまで」

 

「ああ」

 

「今日はそれ以上禁止」

 

「分かった」

 

「ただし」

 

 一拍。

 

「私も一つだけ言うわ」

 

 リュウが見る。

 

 黒執着春麗は、黒い裾の土埃を指先で払った。

 

「来てくれて」

 

 一拍。

 

「悪くなかったわ」

 

 リュウは、静かに頷いた。

 

「ああ」

 

 それだけ。

 

 それ以上、言わない。

 

 言われたら危険だった。

 

 言われなかったら、少しだけ物足りない。

 

 黒執着春麗は、自分で自分が面倒すぎて、少し笑った。

 


 

 部屋に戻ると、黒執着春麗は黒を脱いだ。

 

 丁寧に畳む。

 

 土埃を払う。

 

 裾を見る。

 

 今日の黒は、負けた黒。

 

 だが、沈んだ黒ではない。

 

 迎え撃った黒。

 

 外で待った黒。

 

 リュウが来た黒。

 

 理由を持って来られた黒。

 

 そして、辛くも負けた黒。

 

 黒執着春麗は、棚の前に座る。

 

 新しい封筒を出す。

 

 表書き。

 

 作者ご褒美ログ:扉の外で迎え撃った黒。

 

 その下に。

 

 リュウ来訪。

 

 理由:戦いに来た。

 

 勝敗:リュウ辛勝。

 

 春麗HP:残りわずか。

 

 精神HP:大被弾。

 

 決定打:来てよかった。

 

 黒執着春麗は、ペンを止める。

 

「……短いのに強いわね」

 

『はい』

 

 記録板AIの文字が、棚の横に浮かんだ。

 

 黒執着春麗は、驚かなかった。

 

「来ると思ったわ」

 

『作者へのメール送信権が発生しています』

 

「やっぱり」

 

『送信しますか』

 

 黒執着春麗は、少し考える。

 

 作者へのメール。

 

 前にも送った。

 

 厳しいルートだった件。

 

 ライバル枠認定。

 

 高火力ログへの危険度表示要求。

 

 今回も、送れる。

 

 抗議か。

 

 お礼か。

 

 どちらでもある。

 

 黒執着春麗は、白い画面を開いた。

 

【宛先:作者】

 

【件名:扉の外までリュウを来させた件について】

 

 黒執着春麗は、少しだけ笑った。

 

「件名からして抗議ね」

 

『はい』

 

「でも、本文は」

 

 一拍。

 

「少しだけ違うわ」

 

 書き始める。

 

 作者へ。

 

 まず、今回の件について抗議します。

 

 扉の外にいる私のところへリュウを来させるのは、高火力です。

 

 しかも、理由が「戦いに来た」なのは、私向けに最適化されすぎています。

 

 ご褒美としては危険です。

 

 黒執着春麗は、一度手を止める。

 

 そして続けた。

 

 ただし、今回の試合については、悪くありませんでした。

 

 黒を選び、外で待ち、リュウを迎え撃ち、負けました。

 

 負けましたが、勝たせてもらったわけでも、処理されたわけでもありません。

 

 リュウは本気で来ました。

 

 私も本気で迎え撃ちました。

 

 結果として、リュウの辛勝。

 

 この勝敗は、かなり納得しています。

 

 黒執着春麗は、少しだけ目を伏せた。

 

 負けた。

 

 だが、悪くない。

 

 リュウが来た。

 

 自分は迎え撃った。

 

 外にいるまま、試合が成立した。

 

 それは、自分にとってかなり大きかった。

 

 さらに書く。

 

 また、試合後の「来てよかった」は危険発言です。

 

 一つまでと制限したにもかかわらず、一つだけで精神HPを大きく削られました。

 

 今後、短文高火力発言にも危険度表示をお願いします。

 

 ただし。

 

 ここで黒執着春麗は、ペンを止めた。

 

 少し迷う。

 

 書くか。

 

 書かないか。

 

 書く。

 

 ただし、今日のご褒美は、受け取ります。

 

 扉の外にいる私のところへ、リュウが理由を持って来た。

 

 それは、少し嬉しかったです。

 

 黒執着春麗は、画面から顔を逸らした。

 

「……送る前から精神HPが削れるわ」

 

『送信しますか』

 

「するわ」

 

『了解しました』

 

「ただし、最後に一文」

 

 黒執着春麗は、書き足す。

 

 次回も来るなら、理由を持って来させてください。

 

 ただ会いに来るだけだと危険すぎます。

 

 黒執着春麗より。

 

 送信。

 

【送信完了】

 


 

 数秒後、自動返信が来た。

 

【差出人:作者側自動応答】

 

【件名:Re: 扉の外までリュウを来させた件について】

 

 黒執着春麗は、目を細めて開く。

 

 本文。

 

 ご抗議および受領ありがとうございます。

 

 今回のご褒美エピソードは、黒執着春麗が自分からリュウの元へ行くのではなく、リュウが扉の外まで会いに行く構造を描くためのものでした。

 

 勝敗については、リュウ辛勝としました。

 

 理由は、黒執着春麗を強く描きつつ、リュウが理由を持って会いに来た重みを勝利で示すためです。

 

 また、黒いドレス戦闘服の選択は、外で待つ黒執着春麗が黒を迎撃用として選ぶ構図が最も美しいと判断しました。

 

 黒執着春麗は、無言で読み進める。

 

 さらに一文。

 

「来てよかった」は、作者も入れたかったので入れました。

 

 黒執着春麗は、画面を閉じた。

 

「……そこは開き直るのね」

 

『はい』

 

「作者側自動応答、最近ずいぶん正直ね」

 

『作者ログ複雑化への適応です』

 

「あなたの言い方を真似しないで」

 

 黒執着春麗は、少しだけ息を吐いた。

 

 腹立たしい。

 

 でも、納得もある。

 

 リュウ辛勝。

 

 黒い戦闘服。

 

 理由を持って来る。

 

 来てよかった。

 

 作者はかなり分かっていた。

 

 分かっていたから腹立たしい。

 

 分かっていたから、嬉しい。

 

 黒執着春麗は、棚の封筒に最後の追記を入れる。

 

 作者回答:分かってやっている。

 

 精神HP危険度:高。

 

 受領:保留承認。

 

 さらに、小さく。

 

 また来るなら、理由を持って来ること。

 

 黒執着春麗は、その一文を見て、少しだけ笑った。

 

「……待っているわけではないけれど」

 

『待機予兆』

 

「保存しないで」

 

『保留非公開保存しました』

 

「非公開なら許すわ」

 


 

 夜。

 

 黒執着春麗は、眠る前に棚を見た。

 

 今日の黒は、そこにある。

 

 負けた黒。

 

 だが、誇れる黒。

 

 リュウが会いに来た黒。

 

 理由を持って来られた黒。

 

 扉の外で迎え撃った黒。

 

 黒執着春麗は、小さく呟いた。

 

「次は」

 

 一拍。

 

「勝つわ」

 

 言ってから、少しだけ顔が熱くなる。

 

 次。

 

 そう言った。

 

 次がある前提で。

 

 リュウがまた理由を持って来る前提で。

 

 黒執着春麗は、布団をかぶった。

 

「……作者ご褒美回の副作用が大きすぎる」

 

 記録板AIが、最後に静かに表示する。

 

『黒執着春麗:扉の外で待つ黒から、迎え撃つ黒へ』

 

『勝敗:リュウ辛勝』

 

『精神HP:大被弾』

 

『ご褒美受領:保留承認』

 

『次回意欲:発生』

 

 黒執着春麗は、布団の中から言った。

 

「最後は消しなさい」

 

『保留非公開保存しました』

 

「……ならいいわ」

 


 

 記録板AIは、白い外部メタ領域に最後の表示を出した。

 

『本記録を終了します』

 

『本記録は、ディレクターズカットIFです』

 

『本編確定ログではありません』

 

『黒執着春麗が、扉の外へ来たリュウを黒で迎え撃ったログです』

 

 一拍。

 

『戦闘結果』

 

『リュウ辛勝』

 

『黒執着春麗敗北』

 

『ただし、黒執着春麗は迎撃成功』

 

『黒は沈んだ黒ではなく、外で待ち、迎え撃つ黒として機能しました』

 

 一拍。

 

『発生内容』

 

『リュウが、理由を持って黒執着春麗のいる場所へ来ました』

 

『黒執着春麗は、黒いドレス戦闘服と髪留めを選択しました』

 

『黒執着春麗は、リュウを迎え撃ちました』

 

『リュウは本気で戦い、辛勝しました』

 

『試合後、リュウの“来てよかった”により、黒執着春麗の精神HPに大きな被弾が発生しました』

 

『黒執着春麗は、作者ご褒美ログを抗議しつつ受領しました』

 

 一拍。

 

『分類』

 

『作者ご褒美ログ』

 

『扉の外で迎え撃った黒』

 

『リュウ来訪』

 

『理由:戦いに来た』

 

『黒いドレス戦闘服選択』

 

『髪留め装備』

 

『リュウ辛勝』

 

『短文高火力:来てよかった』

 

『ご褒美受領:保留承認』

 

『次回意欲:保留非公開』

 

 一拍。

 

『保存先推奨』

 

『ディレクターズカットIF棚:保存』

 

『黒執着春麗棚:保留保存』

 

『作者ご褒美ログ:保存』

 

『ライバル枠関連:参照可』

 

『本編時空:直接反映不可』

 

『青い小箱:混入不可』

 

『危険封筒:短文高火力ログとして保存』

 

 最後に、記録板AIは小さく追記した。

 

『未承認仮分類:扉の外で待つ黒から、迎え撃つ黒へ進んだ春麗』

 

 どこかで、黒執着春麗の声がした。

 

「……進んだ、は言い過ぎよ」

 

『では、代替分類を提示します』

 

 一拍。

 

『黒執着春麗:扉の外で、理由を持って来たリュウを迎え撃った春麗』

 

 少しだけ間があった。

 

 黒執着春麗は、小さく言った。

 

「……それなら、保留で」

 

『保留保存しました』

 

 黒は棚に戻った。

 

 負けた黒として。

 

 しかし、沈んだ黒ではない。

 

 リュウが扉の外まで来た日の黒として。

 

 それは、黒執着春麗にとって。

 

 悔しくて。

 

 危険で。

 

 少し甘くて。

 

 かなり嬉しい。

 

 ご褒美だった。

 




Q:今回のディレクターズカットIFについて解説して?

A:

今回は、ディレクターズカットIFとしての「黒執着春麗のご褒美回」でした。

ただし、この作品におけるご褒美回なので、単純に甘いだけではありません。

リュウが来る。
理由を持って来る。
黒執着春麗が外で待つ。
黒を選ぶ。
戦う。
負ける。
でも、悪くない。

そういう回です。

今回の中心は、黒執着春麗が「扉の外で待つ黒」から「扉の外で迎え撃つ黒」へ進んだことです。

黒執着春麗は、春麗会議室の中には入りません。

本編春麗の青い小箱も奪いません。

正式回答ラインにも立ちません。

彼女はあくまで、扉の外にいる春麗です。

ただし、扉の外にいるだけで、物語の外にいるわけではありません。

前回までで、彼女は作者メールによって「ライバル枠」「もう一つの軸」として整理されました。

今回の話は、そのライバル枠としてのご褒美回です。

本編春麗のように青い小箱をもらうわけではない。

真正面から甘いイベントを受け取るわけでもない。

黒執着春麗にとって一番のご褒美は、リュウが理由を持って自分のところへ来ること。

しかも、その理由が「戦いに来た」であること。

これが重要です。

黒執着春麗は、ただ会いに来られると処理できません。

「会いに来た」
「会いたかった」
「春麗だから来た」

こういう言葉は、危険すぎます。

だから、理由が必要です。

戦いに来た。

これは黒執着春麗にとって、かなり受け取りやすい理由です。

拳がある。
勝敗がある。
間合いがある。
黒を使える。
煽れる。
抵抗できる。

甘さを、そのまま甘さとして受け取らず、戦闘の形にして受け取れる。

だから今回のリュウの来訪は、黒執着春麗向けにかなり最適化されたご褒美になっています。

そして、黒執着春麗は黒を選びます。

ここも大事です。

今回は、黒に縋るための黒ではありません。

黒に沈むための黒でもありません。

リュウが扉の外へ来る日だから、外で待っていた自分の黒で迎える。

つまり、今回の黒は「迎撃用の黒」です。

これまでの黒執着春麗の黒は、かなり危険な意味を持っていました。

リュウに残るための黒。
自分を黒に固定するための黒。
女性性や視線誘導を戦闘に使う黒。
リュウを遅らせる黒。
黒の先にいる自分を見られる黒。

今回の黒は、その延長にありますが、少し違います。

リュウが来たから着る。

リュウを迎えるために着る。

黒で逃げるのではなく、黒で立つ。

これはかなり大きな変化です。

戦闘結果としては、リュウの辛勝です。

黒執着春麗は負けます。

ただし、この負けは悪い負けではありません。

勝たせてもらったわけでもない。
処理されたわけでもない。
救済されたわけでもない。

リュウが本気で来て、黒執着春麗も本気で迎え撃って、その結果としてリュウが辛くも勝った。

この勝敗が、今回かなり大事です。

もし黒執着春麗が勝っていたら、それはそれで気持ちいい回になったと思います。

でも今回は、リュウが理由を持って会いに来た重みを、勝利で示す必要がありました。

扉の外まで来る。
理由を持って来る。
本気で戦う。
黒執着春麗の黒を受けて、それでも辛くも勝つ。

これによって、リュウがただ優しいだけではなく、きちんと強い相手として黒執着春麗の前に立ったことになります。

黒執着春麗にとっても、それが嬉しい。

悔しいけれど嬉しい。

負けたけれど納得している。

だから「悪くない」と言える。

今回のリュウの危険発言は、やはり「来てよかった」です。

短いです。

一言です。

でも火力が高い。

黒執着春麗は、試合後に「一つまで」と制限をかけています。

これは防御です。

リュウに長く喋らせると危険だからです。

しかし、リュウは一言だけで刺してきます。

来てよかった。

これは、今回のご褒美回の核です。

リュウが来た。
理由を持って来た。
戦った。
勝った。
そのうえで、来てよかったと言った。

黒執着春麗は、それを受け取ってしまいます。

もちろん素直には受け取りません。

危険発言として処理します。

作者へ抗議メールも送ります。

でも、最終的には受け取ります。

扉の外にいる私のところへ、リュウが理由を持って来た。

それは、少し嬉しかったです。

この一文が、今回の黒執着春麗にとっての最大の受領だと思います。

黒執着春麗は、「嬉しい」と簡単には言いません。

でも、少し嬉しかったとは書く。

そして消さない。

ここが大事です。

今回の分類は、

作者ご褒美ログ。
扉の外で迎え撃った黒。
リュウ来訪。
理由:戦いに来た。
黒い戦闘服選択。
髪留め装備。
リュウ辛勝。
短文高火力:来てよかった。
ご褒美受領:保留承認。
次回意欲:保留非公開。

になります。

特に重要なのは、

扉の外で待つ黒から、迎え撃つ黒へ。

です。

黒執着春麗は、外にいます。

でも、ただ待っているだけではなくなりました。

リュウが来るなら迎え撃つ。

理由を持って来るなら戦う。

負けても、次は勝つと言う。

これはかなり前向きな変化です。

もちろん、本人は正式承認しません。

待っているわけではない。
嬉しかったわけではない。
次回意欲ではない。
保留非公開。

そう言います。

でも、棚には残します。

負けた黒。
誇れる黒。
リュウが会いに来た黒。
理由を持って来られた黒。
扉の外で迎え撃った黒。

今回の黒は、沈んだ黒ではありません。

負けた黒ですが、誇れる黒です。

黒執着春麗にとって、これはかなり大事なご褒美だったと思います。

バトル内容についてのRPG形式解説

今回の戦闘は、リュウの辛勝です。

黒執着春麗はかなり善戦しています。

リュウも余裕勝ちではありません。

最終的にはリュウが立っており、黒執着春麗が膝をついたため、勝敗としてはリュウの勝利です。

ただし、リュウの残HPはかなり少なく、黒執着春麗も最後まで決定打に近い攻撃を入れています。

戦闘開始時

黒執着春麗
戦闘HP:100/100
精神HP:100/100
状態:黒い戦闘服選択、髪留め装備、迎撃モード、扉の外で待つ黒から迎え撃つ黒へ移行中

リュウ
戦闘HP:100/100
精神HP:100/100
状態:来訪者、理由持参、戦闘目的明確化、無自覚高火力発言準備済み

今回の黒執着春麗は、最初からかなり良い状態です。

黒を選んでいますが、黒に沈んでいるわけではありません。

自分が黒に縋る日ではない。
リュウが扉の外へ来る日。
だから外で待っていた自分の黒で迎える。

この意識があるため、黒の制御状態はかなり高いです。

一方、リュウは「戦いに来た」という明確な理由を持っています。

この理由が黒執着春麗にとっては非常に重要です。

ただ会いに来たわけではない。
戦いに来た。
だから受け取れる。
だから迎え撃てる。

この時点で、黒執着春麗の精神HPには少し被弾が入っていますが、戦闘意欲も上がっています。

第一フェーズ:扉の外での開戦

リュウの発言。

春麗がそこにいるなら、戦える。

黒執着春麗精神HP:100 → 88

開幕前から精神HPが削れます。

ただし、黒執着春麗はこれを戦闘開始の燃料に変えています。

戦闘面では、黒執着春麗が序盤を取ります。

動かない黒。
見せる黒。
静止していても視線を引く黒。

リュウの視線が一瞬だけ裾へ落ち、その瞬間に黒執着春麗が踏み込みます。

掌底。
横移動。
黒の裾による視線遮断。
膝横への崩し。
追加掌底。

リュウ戦闘HP:100 → 76
黒執着春麗戦闘HP:100 → 92

序盤は黒執着春麗が優勢です。

リュウも反撃していますが、黒執着春麗の黒がうまく機能しています。

ここでのポイントは、黒執着春麗が黒に使われていないことです。

黒に沈んでいるのではなく、自分が黒を置き、自分が黒を動かしている。

この状態の黒執着春麗は、かなり強いです。

第二フェーズ:リュウの本気化

中盤に入ると、リュウの拳が重くなります。

様子見が消え、本気の踏み込みに変わります。

ここからリュウが巻き返します。

リュウは黒だけを見ていません。

髪留めだけでもない。
黒い衣装だけでもない。
春麗の中心。
足。
呼吸。
踏み直し。
黒が揺れる前の春麗自身。

そこを見てきます。

この時点で、黒執着春麗はかなり危険な状態に入ります。

見られている。
見せている。
でも、見られると危険。

黒執着春麗精神HP:88 → 73

戦闘面では、リュウの攻撃が入り始めます。

黒執着春麗は黒を流し、見せ、遅らせようとしますが、リュウは迷い切りません。

黒を見る。
春麗を見る。
そして拳を出す。

黒執着春麗戦闘HP:92 → 52
リュウ戦闘HP:76 → 58

ここで黒執着春麗はかなり削られます。

ただし、完全に押し切られてはいません。

リュウの拳を受け、身体が軋みながらも中心を外さず、肘と蹴りを返しています。

このフェーズの黒執着春麗は、防戦になりながらもまだ戦闘を成立させています。

リュウの発言。

戦いに来た。

黒執着春麗精神HP:73 → 62

さらに、

来てよかったと思っている?

という黒執着春麗の問いに、リュウが、

ああ。

と答えます。

黒執着春麗精神HP:62 → 49

試合中の短文高火力が発生しています。

第三フェーズ:終盤の読み合い

終盤、黒執着春麗は追い込まれています。

体力は削れている。
腕も重い。
足も熱い。
裾には土埃。
髪留めはまだ髪を留めている。
視界は開けている。
危険なほどリュウがよく見える。

リュウも傷ついています。

リュウ戦闘HP:58
黒執着春麗戦闘HP:52

ここから最後の読み合いに入ります。

黒執着春麗は、黒を見せます。

いつもの黒。
リュウが知っている黒。
準備された黒。
読ませる黒。

リュウは反応します。

黒執着春麗は、その反応を読んで最後だけ外そうとします。

前回までなら、ここで黒執着春麗が勝つパターンです。

黒で読ませて、最後に春麗自身が外れる。

しかし、今回はリュウもそこを読んでいました。

リュウの拳が、外した先に来ます。

黒執着春麗戦闘HP:52 → 21

黒執着春麗は避けきれません。

ただし、腕で受けます。

ここで倒れてもおかしくない攻撃を、踏み直して耐えます。

そして、反撃。

掌底がリュウの胸へ入ります。

リュウ戦闘HP:58 → 17

かなり深い一撃です。

リュウも倒れておかしくない。

しかし、倒れません。

最後の拳が低く入ります。

黒執着春麗は受けようとしますが、間に合いません。

拳が脇腹へ入ります。

黒執着春麗戦闘HP:21 → 0

リュウ戦闘HP:17 → 6

最終戦闘結果

リュウ:6/100
黒執着春麗:0/100

勝敗判定
リュウ辛勝

これはかなりギリギリの勝利です。

リュウの残HPは6。

黒執着春麗は敗北していますが、最後に深い掌底を入れており、リュウもほぼ限界です。

今回の戦闘は、黒執着春麗の完敗ではありません。

リュウが辛くも勝った戦いです。

第四フェーズ:戦闘後の精神HP戦

戦闘終了後、リュウが言います。

春麗は強かった。

黒執着春麗精神HP:49 → 38

黒執着春麗は即座に追撃禁止を出します。

ここで防御に成功しています。

その後、黒執着春麗は立ち上がろうとしますが、ふらつきます。

リュウが近づく。

黒執着春麗は介抱禁止を出します。

ただし、手を貸すのは条件付きで許可します。

勝者として、敗者に手を貸しなさい。

ここはかなり黒執着春麗らしい処理です。

介抱されるのは危険。
でも手は借りる。
ただし、勝者と敗者の形式にする。
甘さをそのまま受け取らず、勝敗の形に変換する。

黒執着春麗精神HP:38 → 29

さらに、黒執着春麗が言います。

扉の外へ来るなら、また理由を持って来なさい。

リュウの返答。

持って来る。

黒執着春麗精神HP:29 → 18

即答が危険です。

ここで黒執着春麗は、次がある前提を作ってしまいます。

本人は否認しますが、これはかなり大きなログです。

第五フェーズ:来てよかった

試合後、広場の端で距離を取って座る場面。

黒執着春麗は、リュウに発言を一つまで許可します。

リュウの発言。

来てよかった。

黒執着春麗精神HP:18 → 4

これは今回最大の短文高火力です。

たった一言です。

しかし、今回の構造をすべて肯定してしまう一言です。

リュウが来た。
理由を持って来た。
戦った。
辛くも勝った。
そのうえで、来てよかった。

これにより、黒執着春麗は精神HPを大きく削られます。

ただし、今回はノックアウトではありません。

残り4で踏み止まっています。

なぜなら、黒執着春麗も返したからです。

来てくれて、悪くなかったわ。

これによって、自分の側からも受領しています。

黒執着春麗精神HP:4 → 7

少しだけ回復します。

素直な感謝ではありません。

でも、受け取りです。

最終精神HP

黒執着春麗精神HP:7/100

精神HPは大被弾。

ただし、ノックアウトまでは行っていません。

これは重要です。

今回の黒執着春麗は、負けました。

精神HPも大きく削られました。

でも、逃げていません。

試合後の言葉も、一つまで制限して受け取りました。

自分も一つ返しました。

これは、前回までの「精神HP保護撤退」から少し進んでいます。

総合結果

戦闘HP

リュウ:6/100
黒執着春麗:0/100

戦闘勝敗
リュウ辛勝

精神HP

黒執着春麗:7/100

精神HP結果
大被弾。ただしノックアウト回避。

総合判定

リュウ辛勝。
黒執着春麗は敗北。
ただし、黒は沈んだ黒ではなく、迎え撃つ黒として成立。
ご褒美ログは保留承認。
次回意欲が発生。

今回のバトルは、黒執着春麗にとってかなり良い負けです。

勝たせてもらったわけではない。
甘やかされたわけでもない。
救済だけされたわけでもない。

リュウが来て、戦って、辛くも勝った。

黒執着春麗は迎え撃って、負けて、それでも「次は勝つ」と言った。

この「次は勝つ」が、今回の最大の成果です。

黒執着春麗は、扉の外で待つだけではなくなりました。

リュウが理由を持って来るなら、迎え撃つ。

負けても、次を考える。

それは、ライバル枠として非常においしい位置です。

今回の黒は、負けた黒です。

でも、誇れる黒です。

そして、黒執着春麗にとっては、悔しくて、危険で、少し甘くて、かなり嬉しいご褒美でした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。