また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい―― 作:エーアイ
本編のIFシリーズは無関係のエピソードとなります。
記録板AIは、白い外部メタ領域に表示を出した。
『本記録は、前話から続くディレクターズカットIFです』
『本編確定ログではありません』
『本編春麗は現在、本編時空ではリュウへ出した宿題の正式回答待ちです』
『したがって、本記録内の出来事は本編時空へ直接反映されません』
『青い小箱への正式混入も行いません』
一拍。
『前話の発生内容』
『本編春麗は、作者ご褒美エピソードとしてリュウから青い髪留めを受け取りました』
『リュウは、春麗に合うと思った、と発言しました』
『さらに、今の青も、覚えておく、と発言しました』
『本編春麗は精神HPを大きく削られました』
『その後、匿名希望による断片受信が発生しました』
『本編春麗は、祝福されて落ち込む春麗として記録されました』
一拍。
『本記録の検証対象』
『青い髪留めが、翌朝も物として残っている場合』
『本編春麗が、言葉ではなく物として残る青をどう受け止めるか』
『本編春麗が、自分の嬉しさをどこまで否認し、どこで認めるか』
一拍。
『注意事項』
『本件は本編春麗個人用の作者プレゼント主人公補正ログの続きです』
『他春麗ログではありません』
『ただし、黒執着春麗関連ログとの構造的対比が含まれます』
『本編時空への直接反映はありません』
最後に、記録板AIは小さく追記した。
『なお、本編春麗本人はこの説明を読んでいません』
『読ませると、開始前に青い髪留めをしまい込む可能性があるためです』
翌朝。
本編春麗は、いつもより少し早く目を覚ました。
理由は分かっている。
分かっているけれど、分かっていないことにした。
目覚ましより早く起きた理由。
寝つきが浅かった理由。
夜中に一度、机の方を見てしまった理由。
それらすべてを、春麗は一度まとめて否認した。
「……昨日、少し疲れていただけよ」
そう言って、布団から起き上がる。
そして。
見た。
机の上。
青い小箱の横。
まだ中には入れていない。
危険封筒にも入れていない。
ただ、青い髪留めログの封筒の上に、そっと置いてある。
青い髪留め。
リュウから受け取ったもの。
春麗は、しばらく動かなかった。
朝の光の中で見ると、昨日の夕方とは少し違って見える。
夕方の青ではない。
夜の部屋の青でもない。
朝の青。
落ち着いている。
小さくて、派手ではなくて、でも確かにそこにある。
春麗は、ゆっくり机の前に座った。
「……ある」
声が漏れた。
それだけだった。
だが、その一言で、自分が何を考えているのか分かってしまった。
ある。
昨日の出来事が、まだある。
言葉だけではない。
記憶だけではない。
青い小箱の中の紙でもない。
危険封筒の中の分類でもない。
物として。
そこにある。
春麗は、そっと髪留めに指を触れた。
冷たい。
少しだけ硬い。
軽い。
でも、軽いのに、昨日からずっと重い。
「……本当に、物として残っているのね」
そう呟いた瞬間、春麗は両手で顔を覆った。
危険だった。
この気づきは、かなり危険だった。
これまでにも、リュウからもらったものはあった。
言葉。
視線。
沈黙。
拳。
勝負。
宿題。
思い出。
それらは全部、春麗の中に残っている。
届かれた青。
見られた青。
覚えられた青。
聞かれた青。
進まれた青。
どれも、消えていない。
どれも、大事だった。
でも。
それらは、形がなかった。
だから紙に書いた。
封筒に入れた。
小箱に入れた。
記録として置いた。
自分の中で扱えるようにするために。
だが、これは違う。
髪留めは、最初から形がある。
触れる。
持てる。
置ける。
付けられる。
外せる。
なくさないようにしまえる。
春麗は、髪留めを指先で少しだけ動かした。
小さな音がした。
その音だけで、胸の奥が変に揺れた。
「……駄目」
春麗は即座に言った。
「これは駄目」
何が駄目なのか。
嬉しいのが駄目なのか。
嬉しすぎるのが駄目なのか。
物として残っていることに、こんなに反応している自分が駄目なのか。
全部だった。
春麗は、深呼吸した。
「落ち着きなさい」
自分に言う。
「ただの髪留めよ」
違う。
「青い髪留めよ」
もっと違う。
「昨日、花屋の前で見た青い花に似ていて」
違う方向に危険。
「リュウが、春麗に合うと思ったと言って」
精神HPが削れた。
「今の青も、覚えておくと言われた」
精神HPがまた削れた。
春麗は机に突っ伏した。
「……自分で言って削れるの、本当にどうにかならないの」
どうにもならなかった。
春麗は、髪留めを手に取った。
もう一度、鏡の前に立つ。
付けるつもりはない。
確認するだけ。
似合うかどうかの確認ではない。
構造確認。
位置確認。
髪をどう留めると邪魔にならないか。
そういう実務的な確認。
そういうことにした。
春麗は髪を少し持ち上げる。
髪留めを近づける。
止まる。
鏡の中の自分と目が合った。
青い髪留めを持っている自分。
それを付ける前に止まっている自分。
たぶん、少し顔が赤い自分。
「……何をしているの、私は」
答えは簡単だった。
嬉しいのだ。
ものすごく。
かなり。
非常に。
認めたくないくらい。
リュウから、初めて物として残るものをもらった。
その事実が、春麗の中で何度も跳ねている。
言葉は危険だった。
昨日の言葉も危険だった。
春麗に合うと思った。
今の青も、覚えておく。
十分に危険だった。
でも、言葉は過ぎる。
記憶に残る。
青い小箱に入れる。
しかし、この髪留めは、過ぎない。
目を開ければ、そこにある。
触れれば、ある。
付ければ、髪に重さが乗る。
外せば、手の中に戻る。
それは、思っていたよりずっと強かった。
「……ずるいわね」
春麗は、小さく言った。
「言葉だけでも危険なのに」
一拍。
「物まで残すなんて」
言いながら、髪留めを付けた。
青が、鏡の中に現れる。
小さな青。
目立ちすぎない。
それでも、確かに春麗の髪にある。
春麗は、鏡を見たまま固まった。
「……似合っているかどうかは」
一拍。
「私が判断することではないわ」
そう言い訳した。
なぜなら、リュウがもう言っている。
春麗に合うと思った。
春麗は、また顔を覆った。
「危険語彙を禁止する前だったとはいえ、やっぱり危険すぎるわ」
しばらくして。
春麗は、髪留めを外した。
外したくなかったわけではない。
付けっぱなしにしておくと、いろいろ危険だから。
今日は誰にも会わない。
そう決めている。
だから付けていてもいい。
いいはずだ。
でも、ずっと付けていると、自分がかなり嬉しがっていることを自分で認め続けることになる。
それは危険だった。
春麗は、髪留めを机の上に戻す。
戻した後、位置を少し直す。
封筒の中央。
青い花が上を向くように。
ずれないように。
直してから、春麗は動きを止めた。
「……丁寧に置きすぎ」
自分で気づいてしまった。
雑に扱えない。
扱えるわけがない。
物として残っているから、扱い方が出る。
春麗は、椅子に座り直した。
小さな紙を出す。
昨日のログとは別の紙。
表書き。
青い髪留めについて。
書いた瞬間、少しだけ精神HPが削れた。
だが、続ける。
リュウから初めて物として残るものを受け取った。
春麗は、そこでペンを止めた。
文字にすると、破壊力が増す。
初めて。
物として残るもの。
受け取った。
春麗は、その三つの言葉を見つめる。
そして、小さく追記した。
未承認。
ただし、非常に重要。
さらに追記。
青い小箱にはまだ入れない。
ただし、青い小箱の横に置く。
さらに。
なくさない。
書いてしまった。
なくさない。
それだけで、春麗は自分がどれだけ大事にしているかを理解してしまった。
「……これはもう駄目ね」
春麗は額に手を当てた。
「内心、すごく嬉しいことが隠せていない」
誰もいない。
春麗会議室にも繋がっていない。
掲示板も開いていない。
匿名希望も見ていない。
記録板AIも、たぶんいない。
だから、言ってしまった。
「嬉しいわよ」
一拍。
「すごく」
部屋は静かだった。
誰も突っ込まない。
誰も保存しない。
誰も分類しない。
その沈黙が、少しだけ優しかった。
だから、春麗はもう一度だけ言った。
「……本当に、嬉しかったの」
しばらくして、春麗は髪留めを小さな布に包んだ。
そのまま置いておくのは危険だから。
傷つくかもしれない。
なくすかもしれない。
見られるかもしれない。
どれも避けたい。
でも、奥にしまいこむのも違う。
見えないところに置いたら、なかったことにしているようで嫌だった。
春麗は、青い小箱を見た。
まだ開けない。
今日は開けない。
でも、その横に小さな場所を作る。
青い髪留め置き場。
言葉にすると危険なので、書かない。
ただ、そこへ置く。
春麗は、布に包んだ髪留めをそっと置いた。
それから、少しだけ指で触れた。
「……ここならいいでしょう」
誰に許可を求めているのか。
自分に。
リュウに。
青い小箱に。
分からない。
ただ、その場所に置いた瞬間、胸の奥が少し落ち着いた。
物として残るもの。
自分の部屋にあるもの。
昨日の出来事を、昨日だけで終わらせないもの。
春麗は、また少しだけ顔を赤くした。
「……やっぱり、これは強いわ」
言葉は思い出すもの。
髪留めは、目に入るもの。
目に入るたびに、思い出してしまう。
春麗に合うと思った。
今の青も、覚えておく。
ありがとう。
ああ。
それ以上言わなかったリュウ。
それも、覚えている。
春麗は、布越しに髪留めを見つめた。
「……あなた、余計なことを言わなかったのよね」
最後に。
ありがとう、と言った時。
リュウは、ああ、とだけ返した。
それ以上言わなかった。
それが正解だった。
もし、あそこで何か言われていたら、帰れなかったかもしれない。
精神HPが完全に落ちていたかもしれない。
リュウは危険だ。
でも、余計ではない沈黙も持っている。
だから余計に危険なのだ。
春麗は、深く息を吐いた。
「……全部、残っている」
髪留めも。
言葉も。
沈黙も。
自分のありがとうも。
全部。
昼過ぎ。
春麗は、何度も机の方を見た。
一度目。
偶然。
二度目。
確認。
三度目。
位置確認。
四度目。
なくしていないかの確認。
五度目。
自分でも言い訳が尽きた。
「……見たいだけね」
認めた。
見たいだけ。
青い髪留めがそこにあるのを、見たいだけ。
物として残っていることを、確認したいだけ。
昨日の出来事が夢ではないことを、確認したいだけ。
春麗は、少し笑ってしまった。
「本当に、めんどくさいわね」
でも、その言葉にいつものような自虐の棘は少なかった。
これは面倒だ。
かなり面倒だ。
でも、嫌ではない。
むしろ、大事にしたい面倒さだった。
春麗は、紙に追記した。
確認回数:多い。
理由:なくしていないかの確認。
補足:見たいだけの可能性あり。
さらに小さく。
ほぼ確定。
春麗は、そこまで書いて顔を覆った。
「自分で自分を追い詰めているわ」
だが、消さなかった。
今の自分には、このくらいの正直さが必要だった。
誰かに見せるものではない。
青い小箱にもまだ入れない。
自分のための紙。
自分が、自分の嬉しさをなかったことにしないための紙。
夕方。
昨日と同じくらいの時間。
春麗は、もう一度髪留めを手に取った。
出かける予定はない。
誰かに会う予定もない。
それでも、付けてみた。
鏡の前に立つ。
青い髪留めを留める。
朝より少し慣れた。
手の震えは、昨日より少ない。
でも、胸の奥はやはり落ち着かない。
春麗は、鏡の中の自分を見た。
青い髪留めのある自分。
昨日の続きの自分。
物として残るものを持っている自分。
「……今の青」
小さく言う。
そして、少しだけ笑った。
「覚えておくのは、リュウだけではないわ」
春麗自身も覚えておく。
この青を。
この嬉しさを。
物として残るものをもらった時の、どうしようもない浮き立つ感じを。
嬉しいのに、扱いに困る感じを。
大事にしたいのに、認めるのが恥ずかしい感じを。
全部。
春麗は、鏡の前で静かに息を吐いた。
「……これは、私のもの」
一拍。
「リュウからもらった」
もう一拍。
「私のもの」
言葉にした瞬間、胸の奥がまた熱くなった。
その熱を、春麗は否定しなかった。
今日は、否定しなかった。
夜。
春麗は、髪留めを外した。
小さな布に包む。
青い小箱の横に置く。
その隣に、今日書いた紙を置く。
表書き。
青い髪留めについて。
副題。
初めて物として残るもの。
追記。
内心、すごく嬉しい。
春麗は、その最後の一文を見て、しばらく固まった。
書いた。
書いてしまった。
かなり直接的だった。
消すか迷った。
でも、消さなかった。
今日は消さない。
誰にも見せない。
誰にも言わない。
青い小箱にもまだ入れない。
でも、自分の中では認める。
嬉しい。
すごく嬉しい。
本編春麗は、そっと紙を折った。
封筒に入れる。
表書き。
青い髪留めログ・内心保管。
未承認。
ただし、保管。
さらに小さく。
物として残る初めての青。
春麗は、その封筒を青い小箱の横へ置いた。
中には入れない。
でも、横に置く。
かなり近い場所。
それで十分だった。
「……ありがとう」
また、呟いた。
昨日と同じ言葉。
でも、今度はリュウの前ではない。
一人の部屋で。
青い髪留めに向けて。
その出来事に向けて。
そして、自分の嬉しさに向けて。
「本当に、ありがとう」
言った後、春麗は布団に入った。
今日は、春麗会議室には行かない。
掲示板も見ない。
匿名希望のDMも開かない。
記録板AIの通知も切る。
このログは、まだ誰にも渡さない。
自分だけで持っている。
物として残るものをもらった初めての日。
それが、あまりにも嬉しかった日。
春麗は、目を閉じた。
青い髪留めは、机の上にある。
明日もある。
明後日も、たぶんある。
なくさなければ、ずっとある。
その事実だけで、胸の奥が少しだけ温かかった。
最後に、眠りに落ちる前。
本編春麗は、小さく呟いた。
「……明日も、少しだけ見てもいいわよね」
誰も答えなかった。
記録板AIもいない。
春麗会議室もない。
掲示板もない。
それでも、どこかで小さく保存された気がした。
『本編春麗:物として残る初めての青を、内心すごく喜ぶ』
春麗は、眠りかけながら、小さく言った。
「……これは、保存していいわ」
青い髪留めは、静かにそこにあった。
それだけで。
その夜の本編春麗は、少しだけ幸せだった。
記録板AIは、白い外部メタ領域に最後の表示を出した。
『本記録を終了します』
『本記録は、前話から続くディレクターズカットIFです』
『本編確定ログではありません』
『本編春麗は本編時空では、リュウへの宿題の正式回答待ちです』
『したがって、本記録内の青い髪留めログは本編時空へ直接反映されません』
一拍。
『発生内容』
『本編春麗は、前話で受け取った青い髪留めを翌朝確認しました』
『青い髪留めが、言葉や記憶ではなく物として残っていることに気づきました』
『本編春麗は、初めて物として残る青を受け取ったことを認識しました』
『本編春麗は、髪留めを何度も確認しました』
『本編春麗は、内心すごく嬉しい、と自分で認めました』
一拍。
『分類』
『青い髪留めログ・翌日処理』
『物として残る初めての青』
『青い小箱の横置き』
『未承認。ただし保管』
『内心、すごく嬉しい』
『確認回数:多い』
『見たいだけの可能性:ほぼ確定』
『今の青を自分でも覚えておく春麗』
一拍。
『保存先推奨』
『ディレクターズカットIF棚:保存』
『本編春麗保留棚:保存』
『青い小箱:横置き。正式混入不可』
『危険封筒:不要。ただし高火力参照可』
『本編時空:直接反映不可』
最後に、記録板AIは小さく表示した。
『未承認仮分類』
『本編春麗:物として残る初めての青を、否認しきれず大事にする春麗』
一拍。
『補足』
『本編春麗は、自分で保存を許可しました』
『本件は、保存していいログです』
青い髪留めは、静かにそこにあった。
それだけで、本編春麗は少しだけ幸せだった。
その幸福だけは、まだ誰にも渡さない。
でも、消さない。
Q:今回のディレクターズカットIFについて解説して?
A:
執筆者としての解説
今回は、前話から続くディレクターズカットIFとして、本編春麗が「青い髪留め」を翌朝に改めて受け止める回でした。
前話では、リュウから青い髪留めを贈られました。
春麗に合うと思った。
今の青も、覚えておく。
この二つの言葉だけでも十分に高火力でした。
ただ、今回の本題は言葉そのものではありません。
言葉ではなく、物として残っていることです。
これまで本編春麗は、リュウからいろいろなものを受け取ってきました。
言葉。
視線。
沈黙。
拳。
勝負。
宿題。
思い出。
それらは全部、春麗の中に残っています。
だからこそ、届かれた青、見られた青、覚えられた青、聞かれた青、進まれた青、という形で分類してきました。
けれど、それらは基本的には形のないものでした。
だから春麗は、紙に書き、封筒に入れ、青い小箱の中や横に置いて、自分で扱える形にしてきました。
しかし、今回の青い髪留めは最初から形があります。
触れる。
持てる。
置ける。
付けられる。
外せる。
なくさないようにしまえる。
この「物として残る」ことが、本編春麗にとってかなり大きな出来事になっています。
朝起きて、机の上にまだある。
昨日の出来事が、記憶だけではなく、現実の物として残っている。
この気づきだけで精神HPが削られる。
でも、それは嫌な被弾ではありません。
嬉しすぎて扱いに困るタイプの被弾です。
今回の春麗は、かなり素直です。
もちろん最初は否認します。
昨日疲れていただけ。
ただの髪留め。
構造確認。
位置確認。
なくしていないかの確認。
いろいろ言い訳します。
でも、途中で自分でも気づきます。
見たいだけ。
青い髪留めがそこにあるのを見たいだけ。
昨日の出来事が夢ではないことを確認したいだけ。
この「見たいだけね」と認めるところが、今回かなり大事です。
本編春麗は、これまで「めんどくさい女」として、自分の感情を分析し、分類し、抗議し、保留してきました。
今回は、その分類癖は残っています。
確認回数:多い。
理由:なくしていないかの確認。
補足:見たいだけの可能性あり。
ほぼ確定。
こうして自分で自分を追い詰めています。
ただ、それを消さない。
むしろ、自分の嬉しさをなかったことにしないために書いている。
ここが今回の本編春麗の変化だと思います。
今回は、青い小箱に入れる回ではありません。
本編時空では、まだリュウへの宿題の正式回答待ちです。
そのため、この青い髪留めログは本編確定ログではなく、ディレクターズカットIFの横置きログです。
青い小箱の中には入れない。
でも、横に置く。
未承認。
ただし、保管。
この距離が重要です。
本編春麗は、まだ正式には受け取っていない。
でも、捨てる気はまったくない。
かなり近い場所に置いている。
そして、なくさないと書いてしまう。
この「なくさない」が、本編春麗の本音です。
贈り物として正式承認するかはまだ未定。
青い小箱に入れるかも未定。
でも、なくさない。
それだけで、どれだけ大事にしているかが分かります。
今回のもう一つのポイントは、リュウの沈黙です。
前話で春麗が「ありがとう」と言った時、リュウは「ああ」とだけ返しました。
それ以上言わなかった。
今回、春麗はその沈黙も覚えています。
リュウは危険な言葉を言います。
春麗に合うと思った。
今の青も、覚えておく。
この二つは明確に危険です。
でも、最後に余計なことを言わなかったこともまた、春麗の中に残っています。
言葉だけではなく、沈黙も残っている。
髪留めも残っている。
ありがとうも残っている。
全部、残っている。
この「全部、残っている」が、今回のエピソードの核だと思います。
そして終盤で、本編春麗はかなり直接的に認めます。
内心、すごく嬉しい。
これはかなり大きな一文です。
いつもの春麗なら、もっと回りくどくします。
危険。
未承認。
保留。
構造確認。
精神HP被弾。
そういう言葉で包みます。
でも今回は、最終的にかなり素直です。
嬉しい。
すごく嬉しい。
本当に、嬉しかった。
誰にも見せない。
誰にも言わない。
青い小箱にもまだ入れない。
でも、自分の中では認める。
これは、かなり良い受け取り方だったと思います。
今回の分類は、
青い髪留めログ・翌日処理。
物として残る初めての青。
青い小箱の横置き。
未承認。ただし保管。
内心、すごく嬉しい。
確認回数:多い。
見たいだけの可能性:ほぼ確定。
今の青を自分でも覚えておく春麗。
になります。
特に重要なのは、
本編春麗:物として残る初めての青を、否認しきれず大事にする春麗
です。
これは非常に本編春麗らしいと思います。
すぐに青い小箱へ入れない。
正式承認もしない。
でも、布に包む。
丁寧に置く。
何度も見る。
なくさないと書く。
そして最後には、保存していいと自分で言う。
この「保存していいわ」が、今回の到達点です。
本編春麗は、自分の嬉しさを保存することを許しました。
それは本編確定ログではありません。
でも、ディレクターズカットIFとしてはかなり大事なログです。
青い髪留めは、静かにそこにある。
明日もある。
明後日も、たぶんある。
なくさなければ、ずっとある。
その事実だけで、少し幸せになる。
今回は、大事件ではありません。
戦いもありません。
告白でもありません。
正式回答でもありません。
ただ、青い髪留めが翌朝も机の上にある。
それを本編春麗が見て、触れて、付けて、外して、包んで、横に置いて、嬉しいと認める。
それだけの回です。
でも、本編春麗にとっては、それだけで十分に大きい。
物として残る初めての青。
それを一日かけて受け止める、静かなご褒美回でした。