また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい―― 作:エーアイ
本編のIFシリーズは無関係のエピソードとなります。
リュウ視点での幕間になります。
記録板AIは、銀色の棚の前で表示を切り替えた。
春麗会議室ではない。
本編確定ログでもない。
ディレクターズカットIF領域。
本編時空へ直接置くには検証色が強すぎる記録を、一時的に保存するための場所だった。
『本記録は、ディレクターズカットIFです』
『本編確定ログではありません』
『本記録は、初戦で春麗に敗北したリュウが、二度目の春麗戦で最初から本気で挑んだ場合の検証ログです』
『本編時空への直接反映は禁止推奨です』
一拍。
『本記録の扱いを説明します』
『本記録における春麗は、初期春麗寄りの青い武道服の春麗です』
『本記録におけるリュウは、一度目の春麗戦で、女性格闘家である春麗を前に無意識に拳を鈍らせ、敗北しています』
『その敗北を経て、二度目のリュウは最初から春麗を格闘家として見ています』
『本記録では、検証のため、通常の本編バトル回ではあまり前面に出さない必殺技も使用対象とします』
『対象技』
『波動拳』
『昇龍拳』
『竜巻旋風脚』
『その他、リュウの基本打撃、踏み込み、受け、立て直し』
一拍。
『検証主題』
『リュウが最初から本気で春麗と戦った場合』
『リュウが波動拳、昇龍拳、竜巻旋風脚を使用した場合』
『春麗がそれらの必殺技にどう対応するか』
『必殺技を使っても、発生前後や着地、硬直に隙がある場合、春麗がそこを狙えるか』
一拍。
記録板AIは、最後に表示した。
『二度目の春麗戦―リュウは本気で戦い敗北する、開始します』
リュウは、春麗の前に立った。
一度目とは違う。
それだけは、自分でも分かっていた。
会場の熱気。
照明の白さ。
床に残る足跡。
遠くから聞こえる歓声。
そのすべてが、前回と同じようで、違って感じる。
目の前にいるのは、中国代表の女性格闘家。
違う。
その言い方では足りない。
目の前にいるのは、春麗だ。
前回、自分を圧倒した格闘家。
拳の甘さを見抜き、その遅れを容赦なく潰した相手。
片膝をついた自分を見下ろし、こう言った相手。
女に負けた、なんて思わないことね。
あなたは私という格闘家に負けたのよ。
その言葉は、ずっと拳の奥に残っていた。
リュウは構えた。
今度は、最初から行く。
余計な迷いは置いてきた。
傷つけることを恐れる拳ではない。
女だからと鈍る拳でもない。
春麗という格闘家へ向ける拳。
それだけだった。
春麗は、向かい側で青い袖を揺らしていた。
白い髪をまとめる髪飾り。
青い武道服。
しなやかな足運び。
その姿は、前回と同じだった。
だが、リュウの目に映る春麗は、前回とは違っていた。
見るべきものが変わったからだ。
身体の線ではない。
衣装でもない。
女性であることでもない。
重心。
呼吸。
足の置き方。
肩の抜き方。
視線の動き。
いつ踏み込んでも蹴りへ変わる距離。
強い。
前回も分かっていたはずだった。
だが、今ならもっと分かる。
春麗は、強い。
「来たのね」
春麗が言った。
「ああ」
「今度は最初から本気?」
「ああ」
春麗の目が、少しだけ細くなった。
挑発ではない。
確認だった。
「ちゃんと、私を格闘家として見るのね」
「ああ」
「なら」
春麗は構えた。
青い袖が止まる。
「今度は、本気で戦ってあなたに敗北を刻んであげる」
リュウは踏み込んだ。
合図を待つより早く、身体が動いていた。
拳を置きに行く。
真っ直ぐではない。
前回、真っ直ぐなだけの拳は春麗に届かなかった。
だから、踏み込みの角度を少しずらす。
肩を入れ、腰を回し、春麗の正面を外して拳を差し込む。
春麗の目が変わった。
前回とは違う。
そう言われた気がした。
春麗は半歩引く。
拳は届かない。
だが、前回ほど遠くはない。
青い袖が風で揺れた。
リュウは足を止めず、次の拳へ繋ぐ。
春麗の蹴りが来た。
速い。
腕で受ける。
衝撃が骨に響く。
前回と同じ重さ。
だが、今度は受けるだけでは終わらせない。
リュウは蹴りの戻りに合わせて前へ出た。
春麗の目が、わずかに見開かれる。
拳が春麗の肩口へ向かう。
届く。
そう思った瞬間、春麗の身体が沈んだ。
拳が髪飾りの上を抜ける。
低い。
春麗は低い姿勢のまま懐へ入っていた。
掌底。
胸へ来る。
リュウは肘を下げて受けた。
衝撃が入る。
だが、呼吸は止まらない。
前回と違う。
春麗の唇が、わずかに笑った。
「いいわ」
その声が近い。
リュウは言葉に反応しない。
反応すれば遅れる。
春麗の足が来る。
下段。
リュウは足を引く。
同時に拳を出す。
春麗は腕で受けた。
初めて、拳が春麗に触れた。
重い音ではない。
深く入ったわけでもない。
だが、受けさせた。
春麗の腕がわずかに流れる。
リュウの胸の奥に熱が入る。
届いた。
少しだけ。
春麗は一歩下がった。
それも前回にはなかった動きだった。
追う。
リュウは踏み込んだ。
春麗の間合いに入る。
入れば蹴りが来る。
それは分かっている。
だが、入らなければ勝てない。
春麗の百裂脚が来た。
青と白の残像が視界に広がる。
速い。
重い。
軌道が読みにくい。
だが、前回ほど一方的ではない。
リュウは腕を上げて受けた。
一発。
二発。
三発。
削られる。
それでも、足は下げない。
四発目を受けた瞬間、身体を半歩だけ横へ流す。
春麗の蹴りの線が、わずかにずれた。
そこへ拳を差し込む。
春麗の胴には届かない。
だが、青い袖を掠めた。
春麗の袖が跳ねる。
春麗が目を細める。
嬉しそうに見えた。
いや。
満足そう、と言うべきか。
リュウは、その表情に違和感を覚えた。
今、自分は春麗を追い詰めようとしている。
前回よりも近づいている。
春麗は、少しずつ対応を変えなければならなくなっている。
それなのに。
春麗は、少し嬉しそうだった。
「そう」
春麗が言った。
「今度はちゃんと本気で来るのね」
リュウは答えない。
拳で答える。
踏み込む。
春麗が引く。
追う。
春麗が横へ滑る。
蹴りが来る。
受ける。
返す。
試合が、前回とは違う形になっていく。
春麗の呼吸が少し乱れた。
初めて見た。
いや、前回も汗はかいていた。
だが、乱れは浅かった。
今は違う。
リュウの拳を避けるために、春麗は余計に動いている。
リュウの踏み込みを止めるために、春麗は蹴りの角度を変えている。
前回のように、一方的に流れを握り続けているわけではない。
届く。
今度は届く。
リュウは拳を握った。
だが、その熱を春麗は見ていた。
踏み込みの瞬間、春麗が笑った。
「まっすぐすぎるわ」
青い裾が消える。
リュウの拳は空を切った。
春麗は、リュウの死角へ入っていた。
速い。
リュウは身体を回す。
間に合わない。
蹴りが脇腹へ入った。
「ぐっ」
前回と同じ場所。
だが、深さが違う。
今の一撃は、流れの中で読まれて入れられた。
春麗は止まらない。
掌底。
肩。
リュウは受ける。
さらに蹴り。
今度は下段。
足が揺れる。
リュウは踏みとどまる。
そこで春麗の顔が近づいた。
前回なら、ここで拳が鈍った。
今回は違う。
リュウは拳を出した。
迷いなく。
春麗の中心へ。
春麗の目が、はっきりと見開かれた。
拳が頬の横をかすめる。
白い髪飾りのリボンが揺れた。
届きはしなかった。
だが、春麗の表情が変わる。
リュウはさらに踏み込む。
もう一撃。
春麗は受けた。
腕で。
今度は受けた。
春麗の足が床を滑る。
ほんの少しだけ、後ろへ。
会場の空気が変わった。
リュウは感じた。
観客が息を呑む。
春麗の青い袖が、前回より大きく揺れる。
春麗の額に汗が浮かぶ。
届いている。
今度は、春麗の呼吸に届いている。
だが、そこで春麗の目が強くなった。
喜びが消えた。
勝つための目になった。
「危ないわね」
春麗が言った。
声には、息の乱れが混じっていた。
「でも」
春麗の足が床を蹴る。
「まだ、私の勝ちよ」
来る。
リュウは構えた。
その構えの奥で、気が練られる。
春麗が、わずかに目を細めた。
リュウの両手が腰の横へ引かれる。
力が集まる。
空気が重くなる。
「波動拳!」
青白い気弾が、春麗へ向かって放たれた。
春麗は動かなかった。
一瞬だけ。
リュウはその一瞬に、手応えを覚えかけた。
だが、違った。
春麗は見ていた。
波動拳そのものではなく、波動拳を撃つリュウの身体を。
足。
腰。
肩。
両腕。
放った直後の硬直。
そこ。
春麗が床を蹴った。
春麗は、波動拳を避けるため斜めに跳んでいた。
波動拳は外れてしまう。
次の瞬間、春麗の身体が空中から降ってきた。
蹴り。
リュウは腕を上げる。
ガードは間に合う。
だが、完全には受けきれない。
空中からの蹴りが、肩へ叩き込まれた。
「ぐっ」
衝撃で上体が沈む。
春麗は着地と同時に近接の間合いへ入っていた。
距離を作ったはずだった。
波動拳で間合いを制御するはずだった。
だが、春麗は波動拳を放つ際にできた硬直の隙を突いて飛び込んできた。
撃った直後のリュウへ届きに来た。
近い。
春麗の掌が来る。
リュウは肘で受ける。
続けて蹴り。
下段。
さらに肘。
リュウは防ぐ。
防ぐが、距離を戻せない。
春麗が逃がさない。
「今の、悪くなかったわ」
春麗が言った。
息を切らしながらも、声には勝者の余裕がある。
「でも、撃った後に止まった」
リュウは歯を食いしばる。
「もう一度だ」
「来なさい」
春麗は笑った。
リュウは距離を取る。
今度はただ撃たない。
踏み込みの誘いを入れる。
春麗が反応した瞬間に、気を放つ。
「波動拳!」
二発目。
春麗は、今度は跳ばなかった。
低く沈む。
気弾が髪飾りの上を抜けるほど、ぎりぎりまで身を低くする。
そのまま、床すれすれに滑るように踏み込んでくる。
速い。
リュウは迎撃の拳を出す。
春麗はその拳を外へ流し、肩口へ膝を入れた。
浅い。
だが、入る。
リュウの体勢が崩れる。
「波動拳は怖いわ」
春麗が言った。
「でも、あなたが撃つ技なら、あなたの隙も一緒に出る」
リュウは距離を取ろうとする。
春麗は追う。
近接。
また春麗の距離。
リュウは息を吐く。
ならば。
今度は上へ行く。
春麗が踏み込む。
低い姿勢。
懐へ入ろうとしている。
リュウは膝を沈めた。
上昇する拳。
「昇龍拳!」
春麗の目が見開かれた。
拳が下から突き上がる。
春麗は身体を捻る。
完全には避けきれない。
青い袖が裂けるように揺れ、春麗の肩口を拳の風圧が叩いた。
春麗の身体が一瞬、浮く。
リュウは昇りきる。
当たりは浅い。
しかし、春麗を止めた。
会場がどよめく。
春麗は空中で身を捻り、床へ着地した。
膝が少し沈む。
肩を押さえる。
今のは効いた。
リュウにも分かった。
春麗は息を吐いた。
「……今のは、危なかったわ」
リュウは着地する。
拳を構える。
だが。
昇龍拳の着地。
一瞬、足が止まる。
春麗の目が、それを見た。
「でも、上がった後は降りるしかないのね」
春麗が踏み込んだ。
リュウは着地硬直から戻りきっていない。
掌底。
腹。
深い。
「ぐっ」
リュウの息が詰まる。
春麗はそのまま横へ回る。
蹴り。
脇腹。
リュウは腕で受けるが、姿勢が流れる。
続けて、短い連続蹴り。
百裂脚ほどの数ではない。
だが、間合いを奪うには十分だった。
リュウは後ろへ下がる。
春麗も息が乱れている。
肩にダメージがある。
それでも、春麗は目を逸らさない。
「本気ね」
春麗が言った。
「ようやく、最初から本気で来た」
「ああ」
「そこは褒めてあげるわ」
春麗は肩を回す。
青い袖に土がついている。
「前よりずっといい。拳も、技も、ちゃんと私に向いている」
リュウは構え直す。
春麗は、少しだけ笑った。
「でも、必殺技を使えば勝てるわけじゃないわ」
リュウの目が細くなる。
「波動拳も、昇龍拳も、竜巻旋風脚も。使った瞬間と、使い終わった瞬間に隙ができる」
春麗の足が、静かに床を踏む。
「その隙を狙えば、怖くないわ」
リュウは、静かに息を吐いた。
怖くない。
そう言った春麗の肩は、まだ少し上下している。
怖くないと言い切れるほど楽ではない。
だが、春麗は言う。
勝つために。
自分にも言い聞かせるように。
リュウは前へ出た。
今度は直線ではない。
横へ流れながら、間合いを詰める。
春麗が蹴りを置く。
リュウは受ける。
受けた腕に痛みが走る。
だが、その痛みの中で身体を回す。
竜巻旋風脚。
回転する蹴りが春麗へ向かう。
春麗は一歩下がった。
ただ下がるだけではない。
回転の中心から、外側へ。
蹴りの軌道の端を見切りながら、距離をずらす。
リュウの足が空を切る。
だが、一発目の軌道だけではない。
回転は続く。
二発目。
春麗は腕で受ける。
衝撃で足が滑る。
三発目。
春麗は身体を沈める。
髪飾りが揺れる。
ぎりぎりで抜ける。
竜巻旋風脚が終わる。
リュウの身体が着地する。
その瞬間。
春麗はすでにそこにいた。
低い姿勢。
白いブーツが床を蹴る。
足払い。
リュウの軸足を刈る。
完全には倒れない。
リュウは膝を沈めて耐える。
そこへ掌底。
胸。
リュウは腕で受ける。
しかし、春麗は受けさせたまま踏み込む。
近い。
拳を振るには近すぎる。
蹴りを出すには遅い。
春麗の膝が腹へ入る。
「ぐっ……!」
リュウの身体が折れる。
春麗も苦しそうだった。
呼吸は荒い。
肩の動きも硬い。
波動拳への飛び込み。
昇龍拳の浅い被弾。
竜巻旋風脚の受け流し。
どれも楽ではなかった。
だが、春麗は崩れない。
崩れながらも、最後の位置だけは渡さない。
リュウは拳を握った。
まだだ。
まだ行ける。
春麗が近い。
ここで引けば、また削られる。
前へ出る。
リュウは、春麗の中心へ拳を出した。
迷いはない。
春麗も逃げない。
受ける。
腕で受ける。
春麗の身体が揺れる。
今度は明らかに揺れた。
会場が息を呑む。
リュウは続ける。
二撃目。
春麗は受ける。
三撃目。
春麗は横へ滑る。
拳が青い袖を掠める。
春麗の頬に汗が流れる。
届いている。
今度は、届いている。
だが、届ききらない。
春麗の目が強くなる。
「今のは、よかったわ」
その声は、前回の余裕ではない。
苦戦した者の声だった。
それでも、勝つ者の声だった。
「でも、近づいた分だけ」
春麗の掌が、リュウの胸へ向かう。
「あなたも私の間合いよ」
リュウは防ごうとする。
間に合う。
いや。
半歩、遅い。
掌底が入った。
深く。
呼吸が止まる。
リュウの足が床を掴む。
倒れるな。
倒れるな。
まだだ。
春麗は、そこへさらに踏み込んできた。
百裂脚ではない。
単発の蹴り。
短く、鋭く、肩へ。
リュウは腕を上げる。
間に合う。
受けた。
だが、衝撃で腕が流れる。
春麗は、その流れを待っていた。
最後の一撃。
足ではない。
掌。
胸の中心。
リュウはガードを戻そうとした。
間に合わない。
春麗の掌底が入った。
息が消える。
音が遠くなる。
リュウの膝が落ちた。
床の硬さが、片膝に伝わる。
拳は握ったまま。
だが、立てない。
試合は終わった。
リュウは、荒い息の中で顔を上げた。
春麗が立っていた。
前回とは違う。
青い武道服には土がついている。
肩が上下している。
額には汗がある。
リュウの拳を受けた腕を、ほんの少しだけ庇っている。
苦戦していた。
少なくとも、前回のような圧勝ではない。
だが。
それでも、立っているのは春麗だった。
春麗は、ゆっくり息を整えた。
そして、笑った。
勝ち誇る笑みだった。
前回の余裕とは少し違う。
今回は、春麗自身も戦った。
リュウの拳を受けた。
波動拳を見切って飛び込んだ。
昇龍拳に肩を掠められた。
竜巻旋風脚を受け流しながら、軸足を刈った。
呼吸を乱された。
前回より深い場所まで来られた。
それでも勝った。
だから、その笑みは前回よりも濃かった。
「今度は」
春麗が言った。
リュウは見上げる。
「ちゃんと本気で来たわね」
リュウは息を整えながら答える。
「ああ」
「最初から本気で」
「ああ」
「女だから、なんて余計なことを考えずに」
「ああ」
「波動拳も、昇龍拳も、竜巻旋風脚も使って」
「ああ」
春麗の笑みが、少し深くなる。
「それでも、私の勝ちよ」
胸に刺さった。
だが、今回は否定できない痛みだった。
前回は甘さを突かれた。
拳が鈍った。
見誤った。
今回は違う。
最初から本気で行った。
迷いなく拳を出した。
春麗を格闘家として見て、戦った。
必殺技も使った。
それでも負けた。
今度こそ、言い訳がない。
リュウは低く息を吐いた。
「……強いな」
春麗の目が、ほんの少し揺れた。
その言葉に、春麗は満足したようだった。
だが、すぐに勝者の顔へ戻る。
「知っているわ」
春麗は、リュウの前に歩いてくる。
白いブーツが床を踏む。
前回より、足音が少し重い。
それがリュウには分かった。
春麗も無傷ではない。
春麗も楽ではなかった。
それでも、勝者として立っている。
春麗はリュウを見下ろした。
「でも、今日のあなたは前よりましだった」
「まし、か」
「ええ」
春麗は片手を腰に当てた。
「ようやく、私と戦いに来たもの」
リュウは何も言わなかった。
返す言葉がない。
春麗の言う通りだった。
前回、自分は試合場に立っていながら、春麗と戦う準備ができていなかった。
今日は違った。
今日は、春麗と本気で戦った。
そして、負けた。
春麗は少しだけ身を屈めた。
視線が近づく。
「悔しい?」
「ああ」
「前より?」
「ああ」
「そう」
春麗は、満足そうに笑った。
「なら、いいわ」
何がいいのか。
リュウは一瞬そう思った。
だが、すぐに分かった。
春麗は、こちらが悔しがっていることを確認している。
前より深く負けたことを。
本気で来て、それでも負けたことを。
次へ向かう理由があることを。
それを見ている。
「今度は、ちゃんと本気で戦って負けたわね、リュウ」
春麗の声は甘かった。
だが、そこには刃があった。
前回の敗北は、甘さを含んでいた。
今回は違う。
最初から本気で来て。
春麗を格闘家として見て。
必殺技も出して。
それでも春麗に倒された。
だから、ちゃんと負けた。
リュウは、その言葉を拳の中で受け止めた。
「……ああ」
認める。
認めるしかない。
悔しい。
だが、前回よりずっと正しい悔しさだった。
春麗は、その答えを聞いてさらに笑った。
「前回よりは、楽しかったわ」
リュウは顔を上げた。
「楽しかった?」
「ええ」
春麗の呼吸はまだ少し乱れている。
「あなたの拳、今度はちゃんと重かった。ちゃんと速かった。ちゃんと私に向かってきた」
春麗は、リュウの肩のあたりを見る。
「波動拳も、昇龍拳も、竜巻旋風脚も、ちゃんと怖かったわ」
その言葉に、リュウの胸が動いた。
怖かった。
春麗がそう言った。
それは慰めではない。
挑発だけでもない。
事実として、リュウの技は春麗を動かした。
春麗に対応を迫った。
春麗に汗をかかせた。
春麗の呼吸を乱した。
だが、春麗は続ける。
「でも、怖いだけでは足りない」
やはり。
春麗は、最後の一線を渡さない。
「波動拳は、撃った後に足が止まる」
春麗は指を一本立てる。
「だから、飛び込める」
さらに一本。
「昇龍拳は、上がった後に降りるしかない」
さらに一本。
「竜巻旋風脚は、回り終わった時に軸が見える」
春麗は笑った。
「必殺技を使っても、隙はできる。その隙を狙えば、怖くないわ」
リュウは拳を握った。
春麗は、彼の拳を見た。
「最初から本気で来たことは褒めてあげる」
春麗の声は静かだった。
春麗はリュウを見下ろす。
勝者として。
格闘家として。
ほどほどに苦戦し、それでも勝った者として。
「悪くない試合だったわ。でも勝ったのは私」
リュウは息を整える。
春麗は続ける。
「次も私が勝つわ」
リュウは拳を握った。
「そうはさせない」
春麗は笑った。
嬉しそうだった。
それは、勝者の余裕だけではない。
次を望む顔。
そう見えた。
「そう言うと思ったわ」
春麗は背を向けた。
青い袖が揺れる。
だが、数歩進んだところで、春麗は足を止めた。
肩越しにリュウを見る。
「リュウ」
「何だ」
「次は、今日よりもっと私を苦しめなさい」
リュウは春麗を見た。
春麗の顔には、まだ勝利の熱が残っている。
「それで?」
「それでも、最後は私が勝つ」
春麗は言った。
当たり前のように。
リュウは、静かに息を吐いた。
面倒な相手だ。
そう思った。
強く来いと言う。
苦しめろと言う。
だが、勝つのは自分だと言う。
矛盾している。
だが、その矛盾ごと、春麗は本気だった。
そして、リュウも本気だった。
「次は、勝つ」
春麗の笑みが止まる。
ほんの一瞬。
その一瞬だけ、リュウの言葉が春麗に入ったように見えた。
すぐに春麗は笑みを戻した。
「なら、次も来なさい」
青い武道服の背中が、会場の光の中へ向かう。
リュウは片膝をついたまま、その背を見た。
前回は、甘さを折られた。
今回は、本気で負けた。
その差は大きい。
悔しさも、前回より深い。
だが、拳の奥は澄んでいた。
春麗は遠い。
しかし、前回より近かった。
届かない相手ではない。
だが、届きかけるだけでは足りない。
春麗は、最後の一線を渡さない。
なら。
次は、その一線を越える。
リュウは、痛む身体で拳を握り直した。
三度目がある。
その時は、もっと近くへ。
もっと深くへ。
春麗という格闘家へ。
次は、届かせる。
記録板AIは、銀色の棚の前で表示を戻した。
『検証ログを終了します』
『本記録は、本編確定ログではありません』
『本記録における春麗は、初期春麗寄りの青い武道服の春麗です』
『本記録におけるリュウは、初戦で春麗に敗北した後、二度目の春麗戦へ最初から本気で臨んでいます』
一拍。
『戦闘結果』
『春麗、勝利』
『リュウ、片膝状態で敗北』
『勝敗分類』
『春麗のほどほどの苦戦を伴う勝利』
『前回のような圧勝ではありません』
『ただし、最終的な主導権は春麗が保持しました』
一拍。
『検証結果』
『リュウは最初から春麗を格闘家として見ていました』
『リュウは拳を鈍らせませんでした』
『リュウは通常打撃に加え、波動拳、昇龍拳、竜巻旋風脚を使用しました』
『春麗は波動拳の発射後硬直を読み、飛び込み蹴りから近接戦へ移行しました』
『春麗は昇龍拳の上昇中に危険を感じつつ、着地後の隙を狙って反撃しました』
『春麗は竜巻旋風脚の回転後の軸を見切り、足払いと掌底で近接を奪い返しました』
『必殺技は有効でしたが、春麗は技そのものではなく、技の前後に生じる隙を狙いました』
一拍。
『春麗側発言記録』
『最初から本気で来たことは褒めてあげる』
『でも、必殺技を使えば勝てるわけじゃないわ』
『波動拳も、昇龍拳も、竜巻旋風脚も、使った瞬間と使い終わった瞬間に隙ができる』
『その隙を狙えば、怖くないわ』
一拍。
『分類』
『DCIF戦闘検証ログ』
『二度目の春麗戦』
『初戦敗北後のリュウ』
『最初から本気のリュウ』
『必殺技使用検証』
『波動拳対策』
『昇龍拳着地硬直対策』
『竜巻旋風脚軸足対策』
『春麗ほどほど苦戦勝利』
記録板AIは、最後に表示した。
『本記録は、リュウが弱かったから負けた記録ではありません』
『本記録は、リュウが本気で春麗に挑み、必殺技も使用し、それでも春麗が勝った記録です』
『前回の敗北は、甘い拳を斬られた敗北でした』
『今回の敗北は、本気で挑んだうえで、ちゃんと負けた敗北です』
『以上、ディレクターズカットIF・二度目の春麗戦―リュウは本気で戦い敗北する、でした』
Q:今回のディレクターズカットIFについて解説して?
A:
今回は、ディレクターズカットIFとして「二度目の春麗戦」を扱いました。
前回の初戦では、リュウは春麗を前にして、無意識に拳を鈍らせてしまいました。
春麗を格闘家として見ているつもりでいながら、女性格闘家であることを拳の中で処理しきれなかった。
その一瞬の遅れを春麗に見抜かれ、圧勝される。
初戦の敗北は、リュウにとって「甘い拳を斬られた敗北」でした。
今回の二度目の試合では、その反省を受けて、リュウは最初から本気で春麗に向き合っています。
春麗を女性格闘家としてではなく、春麗という格闘家として見る。
余計な遠慮を捨てる。
拳を鈍らせない。
そのうえで、波動拳、昇龍拳、竜巻旋風脚といった必殺技も使う。
つまり今回は、前回のように「リュウが甘かったから負けた」話ではありません。
リュウは本気です。
ちゃんと春麗を見ています。
拳も出しています。
必殺技も使っています。
それでも負けた。
ここが今回の一番大事なところです。
サブタイトルの「リュウは本気で戦い敗北する」は、その意味です。
前回の負けは、春麗からすれば少し不満の残る負けでした。
もちろん春麗は勝っています。
圧勝しています。
でも、リュウの拳は最初から春麗へちゃんと向いていなかった。
だから春麗は、「勝てた試合をつまらなくした」と感じる。
一方、今回は違います。
リュウは最初から来た。
春麗を格闘家として見た。
波動拳も撃った。
昇龍拳も出した。
竜巻旋風脚も使った。
春麗も無傷ではない。
呼吸も乱れる。
肩にも負担が来る。
前回のような圧勝ではなく、春麗はほどほどに苦戦しています。
それでも最後に立っているのは春麗です。
だからこそ、今回の敗北はリュウにとって正しい敗北になります。
甘さを突かれたから負けたのではない。
本気で挑んで、それでも春麗に届かなかった。
これは悔しい。
でも、前回よりずっと澄んだ悔しさです。
今回、戦闘面で特に意識したのは、必殺技を「強い技」として出しつつ、それだけで勝敗が決まるわけではない、という部分でした。
波動拳は強い。
けれど、撃った後に隙がある。
春麗はそこを見て、斜めに飛び込み、空中からの蹴りでリュウに近接戦を強制します。
距離を作ったはずの波動拳が、逆に春麗に踏み込まれるきっかけになる。
昇龍拳も同じです。
上昇する拳は危険です。
春麗も完全には無傷で済みません。
けれど、上がった後は降りるしかない。
着地後の隙がある。
春麗はそこを狙います。
竜巻旋風脚も、回転中は強い。
しかし、回り終わった瞬間に軸が見える。
春麗はそこを見切り、足払いと掌底で近接の主導権を取り返します。
つまり今回の春麗は、必殺技を怖がっていないわけではありません。
怖いと分かったうえで、技の前後を見る。
技そのものではなく、リュウの身体を見る。
撃つ前。
撃った後。
上がった後。
回り終わった後。
そこに生まれる一瞬の隙を狙う。
この春麗は、かなり格闘家として強い春麗です。
そして、今回の春麗がリュウに言う、
「最初から本気で来たことは褒めてあげる」
「でも、必殺技を使えば勝てるわけじゃないわ」
「その隙を狙えば、怖くないわ」
このあたりは、勝者としての春麗らしい言葉になったと思います。
本気で来たことは認める。
技が怖かったことも認める。
でも、それで勝てると思うなら甘い。
春麗はそこをちゃんと刺します。
この回の春麗は、リュウを否定しているわけではありません。
むしろ、前回よりはかなり認めています。
「ようやく、私と戦いに来たもの」
「あなたの拳、今度はちゃんと重かった」
「波動拳も、昇龍拳も、竜巻旋風脚も、ちゃんと怖かったわ」
ここまで言えるのは、今回のリュウが本当に本気だったからです。
だから春麗も、ちゃんと褒める。
でも最後は、
「それでも、私の勝ち」
ここに戻ります。
春麗としては、本気で来てくれたことは嬉しい。
苦戦したことも、たぶん少し嬉しい。
けれど、勝ったのは自分。
そこは譲らない。
この勝者春麗の強さと面倒さが、今回の味だと思います。
リュウ側から見ても、今回の敗北は大きいです。
前回は、自分の甘さを突きつけられた。
今回は、その甘さを捨てたうえで負けた。
これは痛いです。
言い訳ができません。
しかし、だからこそ次へ行ける。
前回は「最初から本気で来る」という宿題が残った。
今回は「本気でも届かなかった」という新しい課題が残った。
春麗は遠い。
でも、前回より近かった。
届かない相手ではない。
ただ、届きかけるだけでは足りない。
この感覚が、リュウの中に残ります。
そして春麗も、ただ勝って終わりません。
「次は、今日よりもっと私を苦しめなさい」
「それでも、最後は私が勝つ」
かなり春麗です。
強く来い。
苦しめろ。
でも勝つのは私。
矛盾しているようで、春麗の中では矛盾していません。
リュウに本気で来てほしい。
自分を追い詰めてほしい。
でも最後は自分が勝ちたい。
この構造は、今後の本編春麗にもかなりつながっていくものだと思います。
今回のディレクターズカットIFは、本編確定ログではありません。
初期春麗成分補給のためのディレクターズカットIFになります。
以下、バトル解説です。
戦闘前ステータス
リュウ
HP:150 / 150
精神HP:110 / 110
状態:初戦敗北後/甘さ除去済み/最初から本気
装備スキル:通常打撃、踏み込み、受け、波動拳、昇龍拳、竜巻旋風脚
バフ:春麗を格闘家として見る
解除済みデバフ:女性格闘家への初動遅延
今回のリュウはかなり強いです。初戦のように拳が鈍って負けるのではなく、最初から春麗に向けて拳を出しています。
春麗
HP:130 / 130
精神HP:105 / 105
状態:初期春麗寄り/青い武道服/最初から本気
装備スキル:蹴り、百裂脚、掌底、足払い、間合い制御、飛び込み蹴り、必殺技後隙狩り
バフ:初戦勝利経験/リュウの癖観察
戦闘方針:必殺技そのものではなく、発生後・着地後・回転後の隙を狙う
春麗も最初から本気です。ただし今回は楽勝ではありません。リュウの本気と必殺技に対応を迫られ、HPも精神HPもそれなりに削られます。
バトルログ
ターン0:開幕確認
リュウは最初から春麗を「女性格闘家」ではなく「春麗という格闘家」として見る。
リュウ精神HP:110 → 112
春麗精神HP:105 → 108
精神的には両者とも上がっています。
リュウは迷いを捨て、春麗は「今度はちゃんと来る」と確認できたためです。
春麗の発言。
「今度は、私を格闘家として見るのね」
「なら、今度は、ちゃんと負けなさい」
この時点で、春麗側には勝者の圧があります。
ターン1:リュウ通常打撃で前進
リュウは角度をずらして踏み込み、拳を差し込む。
春麗は半歩引いて回避。
リュウHP:150 / 150
春麗HP:130 / 130
ダメージなし。
ただし、初戦と違い、リュウの拳は春麗に届きかけています。
春麗精神HP:108 → 104
春麗は「前回とは違う」と判断。ここから本格的に対応モードへ入ります。
ターン2:春麗の蹴り、リュウ受ける
春麗の高速蹴り。
リュウは腕で受ける。
リュウHP:150 → 137
春麗HP:130 / 130
リュウは削られますが、下がりません。初戦ならここで流れを奪われていましたが、今回は受けて前に出ます。
リュウ精神HP:112 → 108
春麗精神HP:104 → 106
春麗は「いいわ」と反応。
リュウがちゃんと戦えていることを認めています。
ターン3:リュウ、初接触
春麗の下段を読んで、リュウが拳を差し込む。
春麗は腕で受ける。
リュウHP:137 / 150
春麗HP:130 → 124
深いダメージではありませんが、初めて春麗に拳を受けさせます。
リュウ精神HP:108 → 114
春麗精神HP:106 → 101
リュウは「届いた」と感じる。
春麗は「受けさせられた」ことで少し緊張します。
ターン4:春麗、百裂脚で主導権を取り戻す
春麗の百裂脚。
リュウはガードするが、削られる。
リュウHP:137 → 105
春麗HP:124 / 130
リュウはかなり削られます。
ただし四発目を半歩横へ流し、反撃の拳を差し込みます。
春麗HP:124 → 118
リュウ精神HP:114 → 110
春麗精神HP:101 → 98
春麗は苦戦し始めますが、まだ主導権は渡していません。
ターン5:リュウ、近距離で迷わず拳を出す
春麗の顔が近づく。
初戦なら拳が鈍った場面。
今回はリュウが迷わず拳を出す。
春麗HP:118 → 109
春麗は頬の横をかすめられ、腕で次撃を受けます。
リュウ精神HP:110 → 116
春麗精神HP:98 → 90
ここが大きいです。
リュウは「女性として近い春麗」に迷わず拳を出せた。初戦敗北の課題をクリアしています。
春麗の評価。
「危ないわね」
この時点で、春麗は明確にリュウを脅威として認識しています。
ターン6:リュウ、波動拳を使用
リュウが距離を取って波動拳。
「波動拳!」
春麗は波動拳そのものではなく、撃った直後のリュウの硬直を見る。
春麗は斜めに跳び込み、空中から蹴り。
リュウHP:105 → 87
春麗HP:109 / 130
波動拳は命中しません。
むしろ撃った後の隙を突かれて、春麗に近接戦へ持ち込まれます。
春麗の戦術判定。
波動拳:危険
波動拳後硬直:狩れる
春麗の発言。
「今の、悪くなかったわ」
「でも、撃った後に止まった」
この一言が今回の戦闘テーマです。必殺技は強い。でも撃った後に隙がある。
ターン7:二発目の波動拳、春麗は低く潜る
リュウが誘いを入れて二発目の波動拳。
春麗は横ではなく低く沈み、床すれすれに踏み込む。
リュウHP:87 → 75
春麗HP:109 / 130
春麗の膝が肩口に入る。
リュウは再び距離を失う。
春麗の発言。
「波動拳は怖いわ」
「でも、あなたが撃つ技なら、あなたの隙も一緒に出る」
ここで春麗は、波動拳を「技」ではなく「リュウの動き」として攻略しています。
ターン8:リュウ、昇龍拳で迎撃
春麗が低く踏み込む。
リュウは昇龍拳を合わせる。
「昇龍拳!」
春麗HP:109 → 91
リュウHP:75 / 150
これはリュウの大きな成功です。
春麗は完全回避できず、肩口を掠められてダメージを受けます。
春麗精神HP:90 → 82
リュウ精神HP:116 → 122
会場もどよめく場面。
今回のリュウは本当に春麗を苦しめています。
春麗の発言。
「……今のは、危なかったわ」
ここは春麗が素直に危険を認める重要ポイントです。
ターン9:春麗、昇龍拳の着地硬直を狩る
リュウは昇龍拳で上がった後、着地する。
その瞬間、足が止まる。
春麗が踏み込み、掌底。
リュウHP:75 → 52
春麗HP:91 / 130
さらに蹴りで追撃。
リュウHP:52 → 43
春麗の攻略判定。
昇龍拳:危険
昇龍拳後の着地:狩れる
春麗の発言。
「でも、上がった後は降りるしかないのね」
これはかなり格闘ゲーム的な読みです。強い無敵技でも、外した後・浅かった後には隙がある。
ターン10:リュウ、竜巻旋風脚を使用
リュウが回転蹴りで春麗へ攻め込む。
「竜巻旋風脚!」
春麗は一発目を外し、二発目を腕で受け、三発目を沈んでかわす。
春麗HP:91 → 78
リュウHP:43 / 150
春麗も削られます。
竜巻旋風脚はちゃんと強いです。
ただし、回転が終わる瞬間、軸が見える。
春麗が足払い。
リュウHP:43 → 34
続けて掌底。
リュウHP:34 → 21
春麗の攻略判定。
竜巻旋風脚:削り性能あり
回転後の軸足:狩れる
春麗は竜巻旋風脚を完全に無効化したわけではありません。受け流しながらダメージも受けています。だから「ほどほどに苦戦」しています。
ターン11:リュウ、最後の通常打撃ラッシュ
リュウは残りHP21ながら前へ出る。
迷いなく拳を出す。
春麗は受ける。
春麗HP:78 → 66
二撃目。
春麗HP:66 → 58
三撃目は袖を掠める。
春麗HP:58 → 54
春麗精神HP:82 → 74
かなり押されています。
この時点で春麗は、初戦のような余裕勝ちではありません。
ただし、リュウも限界です。
リュウHP:21 / 150
リュウ精神HP:122 → 96
精神HPが下がる理由は、攻めているのに春麗を倒しきれない焦りです。
ターン12:春麗、近づいたリュウを逆に捕まえる
リュウは春麗に近づいた。
だが、近づいた分だけ春麗の間合いにも入った。
春麗の発言。
「今のは、よかったわ」
「でも、近づいた分だけ、あなたも私の間合いよ」
春麗の掌底。
リュウHP:21 → 8
リュウは踏みとどまる。
続けて短い蹴り。
リュウHP:8 → 3
最後に胸の中心へ掌底。
リュウHP:3 → 0
リュウ、片膝状態。
戦闘終了。
最終ステータス
春麗
HP:54 / 130
精神HP:74 / 105
状態:勝利/ほどほどに苦戦/肩ダメージあり/呼吸乱れあり
勝因:必殺技そのものではなく、必殺技の前後の隙を狙った
春麗はかなり削られています。
HP54なので、残り4割程度。
ギリギリ勝利ではありませんが、楽勝でもありません。
「ほどほどに苦戦して勝利」としてちょうどよい数値です。
リュウ
HP:0 / 150
精神HP:68 / 110
状態:片膝敗北/本気で敗北/言い訳なし
敗因:必殺技は有効だったが、技後の硬直・軸・着地を春麗に狩られた
精神HPは0ではありません。
ここが初戦との違いです。
初戦は「甘さを斬られた敗北」なので精神的にも崩されました。
今回は「本気で挑んだうえで負けた敗北」なので、精神HPは残っています。
悔しい。
でも折れてはいない。
だから「次は届かせる」につながります。
技別評価
波動拳
威力:高
制圧力:中〜高
春麗への直接ダメージ:なし
春麗への圧力:あり
弱点:発射後硬直
春麗評価。
「波動拳は怖いわ。でも、撃った後に止まった」
波動拳は強いです。
しかし、春麗は波動拳を避けた後ではなく、撃った後のリュウに飛び込んでいます。
ここが重要です。
波動拳を避けた。
ではなく、波動拳を撃ったリュウを狩った。
昇龍拳
威力:高
迎撃力:高
春麗へのダメージ:大
弱点:着地硬直
春麗HPを大きく削った技です。
今回、リュウの必殺技で一番春麗に「危ない」と言わせたのは昇龍拳です。
ただし、春麗はこう見ます。
「上がった後は降りるしかない」
だから着地後に反撃。
昇龍拳そのものは怖い。
でも、外した後・浅かった後に春麗が入れる。
竜巻旋風脚
威力:中〜高
削り性能:高
春麗へのダメージ:中
弱点:回転後の軸
竜巻旋風脚は春麗にもダメージを与えています。
ただし春麗は回転中に無理に潰さず、受け流して終わり際を見る。
回転後、軸足が見える。
そこを足払いで刈る。
春麗らしい攻略です。
戦闘の結論
今回の戦闘は、リュウが弱かったから負けたのではありません。
リュウは強いです。
最初から本気です。
拳も鈍っていません。
波動拳も使っています。
昇龍拳も使っています。
竜巻旋風脚も使っています。
春麗をかなり削っています。
それでも負けた。
なぜなら、春麗は必殺技を「必殺技」としてではなく、「リュウの身体の動き」として見ていたからです。
波動拳は、撃った後。
昇龍拳は、降りた後。
竜巻旋風脚は、回り終わった後。
そこに生まれる隙を、春麗は見逃さなかった。
だから春麗はこう言える。
「最初から本気で来たことは褒めてあげる」
「でも、必殺技を使えば勝てるわけじゃないわ」
「その隙を狙えば、怖くないわ」
この勝利は、春麗のほどほど苦戦勝利です。
初戦のような圧勝ではない。
でも、リュウが本気で来ても、必殺技を使っても、最後に立っていたのは春麗。
だから、今回の敗北はリュウにとってこう分類できます。
甘さを斬られた敗北ではなく、本気で挑んだうえで、ちゃんと負けた敗北です。