また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい――   作:エーアイ

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※本編確定ではなく、断章IFです。


断章IF:本編春麗は、次に会う約束を春麗会議室へ持ち帰る

 その夜。

 

 春麗が自宅の扉を開けた時、時刻は午後十時を少し過ぎていた。

 

 玄関の明かりをつける。

 靴を脱ぐ。

 鞄を置く。

 

 いつもと同じ自宅。

 

 しかし、出かける前とは一つだけ決定的に違うことがあった。

 

 春麗には、次にリュウと会う予定がある。

 

「……あるのよね。本当に」

 

 誰もいない玄関で、春麗は確認した。

 

 食事が終わった後、次に会う日時と場所を二人で決めた。

 

 今度はリュウからの伝言を待つ必要はない。

 ケンへ電話する必要もない。

 偶然の再会を期待して、いつもの場所へ行く必要もない。

 

 四日後。

 午後一時。

 街の中央広場にある噴水の前。

 

 春麗は休み。

 リュウも、それまでは街にいる。

 二人はそこで会う。

 

 すでに決まっていた。

 


 

 春麗は居間へ入った。

 

 机の上には、出かける前に置いた紙が残っている。

 

『三日後、午後七時』

 

『前に食事をした店の前』

 

『初めて、事前に日時と場所を決めて会う』

 

 春麗はその紙の横へ、今日使った手帳を置いた。

 四日後の日付を開く。

 そこには春麗自身の字で、新しい予定が書かれていた。

 

『午後一時』

 

『中央広場・噴水前』

 

『リュウ』

 

 春麗は三行を見つめた。

 

「……名前だけなのは、予定の内容がまだ決まっていないから」

 

 言い訳のように、自分へ説明する。

 何をするかは完全には決めていない。

 

 街を歩く。

 リュウが普段は通り過ぎるだけの場所を春麗が案内する。

 昼食もどこかで食べる。

 

 それくらい。

 

 試合の予定はない。

 宿題の話をする予定もない。

 正式回答について続きを出す予定もない。

 

 ただ会う。

 四日後にも、もう一度会う。

 

「……それだけ」

 

 春麗は手帳を閉じなかった。

 

「それだけの予定を、わざわざ書いたのよ」

 

 これまで、リュウとの再会予定を自分の手帳へ書いたことはなかった。

 試合の日程や、宿題の答えを受け取る時期が記録されたことはある。

 だが、ただ会うための予定を、仕事の予定と同じ手帳へ書いたことはない。

 

 紙の中に四日後のリュウがいる。

 物語が突然現れさせるリュウではない。

 春麗と約束したリュウ。

 

 その事実を、春麗はまだ完全には普通のものとして受け取れなかった。

 


 

 今日の食事は、前回より少しだけ長かった。

 二人は店へ入り、前回とは違う席へ座った。

 

 リュウは量の多い料理を選んだ。

 春麗は前回とは違う料理を選んだ。

 注文した後、短い沈黙があった。

 

 会いたいと伝えた。

 互いに会いたかったと確認した。

 その後、同じ席へ着いて何を話せばよいのか、春麗には一瞬分からなくなった。

 

 そこでリュウが先に聞いた。

 

「仕事は、今日は問題なかったのか」

 

「ええ。急な呼び出しもなかった」

 

「そうか」

 

「あなたは、本当に三日間ずっと歩いて戻ってきたの?」

 

「ああ」

 

「途中で休んだでしょう」

 

「ああ」

 

「では、『三日間ずっと歩いた』という表現は正確ではない」

 

「歩いて戻った」

 

「……そうね」

 

 食事が届く。

 リュウはいつものように食べ始めた。

 春麗はその姿を見ながら、少しだけ安心した。

 電話の向こうではなく、目の前にいる。

 

 白い道着。

 赤い鉢巻。

 迷いのない食べ方。

 

 何も変わっていない。

 それでも、この席にいる理由だけは今までと違った。

 

「リュウ」

 

「何だ」

 

「今日、本当に正式回答の続きを聞かないのね」

 

「ああ」

 

「気にならないの?」

 

「気にはなる」

 

 春麗の箸が止まった。

 

「なるの?」

 

「ああ」

 

「では、なぜ聞かないの?」

 

「春麗が、まだ持てないと言った」

 

「ああ」

 

「だから、春麗から話すまで待つ」

 

 それだけだった。

 

 電話でも。

 待ち合わせ場所でも。

 そして食事の席でも。

 

 リュウの答えは変わらない。

 

 春麗が「会いたい」と言ったことを、正式回答への返事へ変えない。

 今日会えたことだけを、今日の出来事として受け取る。

 

「……正確ね」

 

「何がだ」

 

「何でもない」

 


 

 食事の途中。

 春麗はリュウへ聞いた。

 

「この後、またすぐに旅へ出るの?」

 

「すぐには出ない」

 

 予想していなかった答えだった。

 

「そうなの?」

 

「ああ」

 

「なぜ?」

 

「街の外れの道場で、数日稽古を手伝うことになった」

 

「いつ決めたの?」

 

「戻る途中で」

 

「戻る途中に、どうやって?」

 

「前に世話になった師範へ、立ち寄ると伝えてあった」

 

 春麗は少し考えた。

 つまりリュウは、春麗に会うために街へ戻ると決めた後、以前世話になった道場にも連絡し、数日間この街へ滞在できるようにしていた。

 

「では、四日後もこの街にいる?」

 

「ああ」

 

 リュウは答え、料理を一口食べた後、春麗を見た。

 

「春麗は、四日後は仕事か」

 

「四日後?」

 

「ああ」

 

 春麗は頭の中で予定を確認した。

 

「休みの予定よ」

 

「予定?」

 

「捜査の状況によっては呼び出しが入る可能性はある。でも、今のところは休み」

 

「そうか」

 

 リュウは少しだけ間を置いた。

 

「では、四日後も会うか」

 

 春麗は箸を落としかけた。

 

「……今、何と言ったの?」

 

「四日後も会うかと聞いた」

 

「あなたから?」

 

「ああ」

 

「私に?」

 

「ああ」

 

「四日後も?」

 

「ああ」

 

「一度止めて」

 

 リュウは食べる手を止めた。

 

「そうではなく、会話を止めて」

 

「止めた」

 

 春麗は目を閉じた。

 自分から「会いたい」と伝えた。

 それによって、今日の再会が成立した。

 

 今度はリュウの方から、「次も会うか」と聞かれた。

 春麗がすべてを始め続けなければならないわけではない。

 一度、春麗が道を作ったことで、リュウもその道を使い始めている。

 

「……四日後」

 

 春麗はゆっくり目を開けた。

 

「午後なら空いている」

 

「そうか」

 

「午後一時。中央広場の噴水前」

 

「ああ」

 

「待って」

 

「何だ」

 

「まだ何をするか決めていない」

 

「会えばいい」

 

「それだけ?」

 

「ああ」

 

「あなた、本当に目的がなくても会えるのね」

 

「春麗も今日、会いたいと言った」

 

 春麗は反論できなかった。

 

「……そうね」

 

 少し考える。

 

「では、街を案内する」

 

「案内?」

 

「あなた、この街へ何度も来ているのに、道場と試合場所と安い食堂くらいしか知らないでしょう」

 

「宿も知っている」

 

「増えていないわよ!」

 

「そうか」

 

「中央広場から少し歩く。昼食も、その時に決める」

 

「分かった」

 

「四日後。午後一時。中央広場の噴水前」

 

「ああ」

 

「紙は?」

 

「持っている」

 

 リュウは道着の内側から、小さな紙と短い鉛筆を取り出した。

 

 春麗は完全に言葉を失った。

 

「……持つようになったのね」

 

「ああ」

 

「私が持てと言ったから?」

 

「ああ」

 

 春麗の精神が少し削れた。

 

「そこも少し考えて答えなさい」

 

 リュウは一拍だけ置いた。

 

「ああ」

 

「だから!」

 


 

 食事は、それだけでは終わらなかった。

 リュウがケンへ連絡した時の話にもなった。

 ただし、ケンが春麗についてどこまで尋ねたのか、リュウは最初そこまで話さなかった。

 

「ケンは、私の伝言を聞いて何も言わなかったの?」

 

「俺に聞いた」

 

「何を?」

 

「春麗は、俺にとって何なのか」

 

 春麗は飲んでいた水を危うくこぼしかけた。

 

「何と答えたの?」

 

 すぐに聞いた。

 聞いてから、聞くべきではなかったと思った。

 だが、もう遅い。

 

 リュウは少し考えた。

 

「強い格闘家だと」

 

 春麗はわずかに肩の力を抜いた。

 

「……そう」

 

「宿題を出した相手だとも言った」

 

「そこまで?」

 

「ああ」

 

「正式回答についても?」

 

「ああ」

 

「九十九点も?」

 

「ああ」

 

「まだ持てないことも?」

 

「ああ」

 

 春麗は額へ手を当てた。

 

「どうして、そこまで話したのよ」

 

「聞かれた」

 

「聞かれたことへ全部答える必要はないでしょう!」

 

「ケンは伝言役だから、それくらい聞く権利があると言った」

 

「……ケン。次に電話した時、覚えていなさい」

 

「何をするんだ」

 

「本人へ言う」

 

「何を」

 

「聞きすぎだと!」

 

 リュウは少しだけ笑った。

 春麗はその笑いを見た。

 

「今、笑った?」

 

「ああ」

 

「何がおかしいの?」

 

「春麗がケンへ言うところを考えた」

 

「笑うところではないでしょう!」

 

 それでも、春麗も少しだけ笑ってしまった。

 


 

 食事が終わった後。

 二人は店の外へ出た。

 夜の通りは、来た時より人の数が減っていた。

 店の前で別れる。

 

 リュウは街の外れにある道場へ。

 春麗は自宅へ戻る。

 

「四日後」

 

 春麗が言った。

 

「午後一時。中央広場の噴水前」

 

 リュウが答える。

 

「覚えているのね」

 

「ああ」

 

「紙も?」

 

 リュウは書いた紙を見せた。

 

「よし」

 

「また師匠みたいだな」

 

「あなたが確認させるからでしょう」

 

「では、四日後に」

 

「ええ」

 

 リュウは道場の方向へ歩き始めた。

 春麗はその背中を見た。

 以前なら、ここで別れれば次にいつ会えるか分からなかった。

 また物語が会わせるまで待つしかなかった。

 

 だが今は違う。

 

 四日後。

 午後一時。

 中央広場。

 噴水前。

 

 次がある。

 

 春麗は、去っていくリュウの背中へ、不安よりも予定を感じていた。

 

「リュウ」

 

 呼び止める。

 リュウが振り返った。

 

「何だ」

 

「今日は、来てくれてありがとう」

 

「ああ」

 

「それと……四日後、待っている」

 

 リュウは短く頷いた。

 

「俺も待っている」

 

 今度は、その言葉を春麗は逃げずに受け取った。

 


 

 そして現在。

 自宅。

 春麗は手帳に書かれた、

 

『午後一時』

 

『中央広場・噴水前』

 

『リュウ』

 

 という三行を見ている。

 今日の食事は終わった。

 だが、関係はまた停止しなかった。

 次の予定を二人で作った。

 

 今度は、春麗だけが必死に電話をかけた結果ではない。

 

 リュウから「四日後も会うか」と聞いた。

 春麗が日時と場所を決めた。

 二人で作った予定だった。

 

「……これを報告するのよね」

 

 春麗は少しだけ嫌な予感がした。

 

 春麗会議室。

 

 自覚前春麗。

 通常救済版春麗。

 行き遅れに恐怖する春麗。

 記録板AI。

 

 全員が、今回の一連の記憶を同期によって受け取る。

 

 ケンへ二度電話したこと。

 会いたいと伝えたこと。

 リュウから電話が来たこと。

 リュウも会いたいと言ったこと。

 自分から呼んだリュウと、約束した場所で再会したこと。

 本人へ「来てほしかった」「会いたかった」と直接言ったこと。

 そして食事の席で、四日後にも会う約束をしたこと。

 

「……情報量が多すぎない?」

 

 誰も答えない。

 

「一度に全部知られるの?」

 

 当然だった。

 接続した瞬間、本編春麗の記憶は会議室側へ同期される。

 

「少しずつ報告する権利はないのかしら」

 

 ない。

 春麗は大きく息を吐いた。

 

「でも今回は、報告しなければならない」

 

 会議室へ接続できなかった間、春麗は一人で行動した。

 それを、なかったことにはしたくない。

 

 言えなかったことも。

 できたことも。

 次の約束を作ったことも。

 

 すべて、本編春麗の物語として記録してほしかった。

 


 

 春麗は寝室へ入り、着替えてベッドへ入った。

 目を閉じる。

 円卓を思い浮かべる。

 これまで何度も同じことをした。

 

 電話が鳴らない夜。

 主人公補正による再会を、一度だけ期待した夜。

 ケンへ電話できなかった夜。

 一度目の電話で、伝言を残せなかった夜。

 二度目の電話で、会いたいと伝えた夜。

 リュウから電話が来た夜。

 

 どの夜も、春麗会議室は開かなかった。

 だが今日は違う。

 リュウへ実際に会った。

 自分から呼んだ相手の前へ、自分で立った。

 

 食事をした。

 そして、次に会う約束も作った。

 

「ここまでやったのだから、開きなさいよ」

 

 意識がゆっくりと沈む。

 

 暗闇。

 次の瞬間。

 春麗の足が、固い床へ触れた。

 


 

 円卓。

 椅子。

 白い壁。

 正面には記録板AI。

 見慣れた春麗会議室だった。

 

 春麗は目を開いた。

 

「……開いた」

 

 その声と同時に、円卓の周囲にいた三人の春麗が一斉に本編春麗を見た。

 

 自覚前春麗。

 通常救済版春麗。

 行き遅れに恐怖する春麗。

 そして三人の表情が、同時に変わった。

 本編春麗の記憶が同期された。

 


 

「ちょっと待って」

 

 最初に声を出したのは、自覚前春麗だった。

 

「あなた、ケンへ二回も電話したの?」

 

「そこから?」

 

「一回目は、リュウへの伝言を聞かれて何も言えず、連絡先を確認しただけで切ったの?」

 

「確認は必要だったのよ!」

 

「二回目で、リュウに会いたいと伝えた?」

 

「……ええ」

 

「自分から?」

 

「自分からしか伝えられないでしょう!」

 

 通常救済版春麗は口元へ手を当てていた。

 

「それから、リュウから電話が来たのね」

 

「ええ」

 

「リュウも、あなたに会いたいと」

 

「そこは大きな声で確認しなくていい」

 

「三日かけて戻ってきたの?」

 

 行き遅れに恐怖する春麗が椅子から立ち上がった。

 

「待って! 情報が多い! 何から処理すればいいの!?」

 

「私に聞かないで」

 

「本人へ、会いたかったとも言ったの!?」

 

「……言った」

 

「そして食事をしたの!?」

 

「それは最初からその予定だったでしょう」

 

「その食事中に、次に会う約束までしたの!?」

 

 本編春麗は黙った。

 

「したのね!?」

 

「……四日後。午後一時。中央広場の噴水前」

 

 行き遅れに恐怖する春麗は両手で頭を抱えた。

 

「あなた、私たちが見ていない間に何段階進んだのよ!」

 

「私だって好きでまとめて進めたわけじゃないわ!」

 


 

『同期処理完了』

 

『本編春麗、春麗会議室への再接続成立』

 

『同期された記録を保存します』

 

「その前に!」

 

 本編春麗は記録板AIへ指を向けた。

 

「抗議がある!」

 

『受理します』

 

「電話もかけた!」

 

『はい』

 

「一度失敗しても、もう一度かけた!」

 

『はい』

 

「会いたいとも伝えた!」

 

『はい』

 

「リュウからの電話にも出た!」

 

『はい』

 

「日時と場所も決めた!」

 

『はい』

 

「実際に、自分から呼んだリュウにも会った!」

 

『はい』

 

「食事もした!」

 

『はい』

 

「次に会う予定まで決めた!」

 

『はい』

 

「そこまで終わるまで、本当に一度も開かなかったのよ!」

 

『観測記録・一致』

 

「一致ではない! なぜなの!」

 

『記録板AIに、接続許可権限および接続拒否権限は存在しません』

 

「分かっている!」

 

『はい』

 

「分かっているけれど、一人でやるのは大変だったのよ!」

 

 会議室が静かになった。

 通常救済版春麗が、ゆっくりと本編春麗のそばへ来た。

 

「そうね。大変だったのね」

 

「……ええ」

 

「私たちは今、全部知った」

 

「ええ」

 

「あなたが最初の電話で言えなかったことも。二度目をかけたことも。会いたいと伝えたことも。自分から呼んだリュウの前へ立ったことも」

 

 通常救済版春麗は、本編春麗を見た。

 

「今、知ったから」

 

 本編春麗は、以前同じ言葉を聞いたことを思い出した。

 一週間近くリュウを探した後、春麗会議室へ帰った時。

 通常救済版春麗は、自分たちが何も知らなかったことを謝った。

 今回も同じだった。

 会議室の住人たちは、本編春麗をここで待ちながら、同じ三日や四日を過ごしていたわけではない。

 春麗が戻った瞬間、同期によって初めて知った。

 

「……ただいま」

 

 本編春麗は小さく言った。

 通常救済版春麗は少しだけ笑った。

 

「おかえりなさい。今度は、次の約束まで持って帰ってきたのね」

 

 本編春麗は手帳を思い浮かべた。

 

『午後一時』

 

『中央広場・噴水前』

 

『リュウ』

 

「……ええ。持って帰ってきた」

 


 

「それで」

 

 自覚前春麗が円卓へ身を乗り出した。

 

「食事中、正式回答の話はどこまでしたの?」

 

「ほとんどしていない」

 

「ほとんど?」

 

「リュウから、今日は聞かない。次に会った時も、私から話すまで聞かないと」

 

「言われたの?」

 

「ええ」

 

「会いたいと伝えたことも、正式回答を持てたという意味には取らないと?」

 

「ええ」

 

 記録板AIが新しい表示を出した。

 

『リュウ』

 

『正式回答と現在行動の分離・継続認識』

 

『本編春麗』

 

『会いたい・現在の意思』

 

『正式回答』

 

『関係全体への回答』

 

『混同』

 

『リュウ側・なし』

 

「……本当に」

 

 自覚前春麗は言った。

 

「問題は、リュウ側にはなかったのね」

 

 本編春麗の精神HPが少し削れた。

 

「今、それを言う必要はある?」

 

「事実確認よ」

 

「記録板AIだけで十分でしょう!」

 

『事実確認』

 

『本編春麗側の混同が主要障害でした』

 

「あなたも追加しなくていい!」

 


 

「次の約束は、リュウから聞いたのね」

 

 通常救済版春麗が尋ねた。

 

「ええ」

 

「四日後も会うか、と」

 

「ええ」

 

「あなたはその場で答えられた?」

 

 本編春麗は少し考えた。

 

「……電話ほどは時間をかけなかった」

 

「会う理由は?」

 

「ない」

 

「ないの?」

 

 行き遅れに恐怖する春麗が、また立ち上がった。

 

「正確には、試合や宿題のような外部の用件はない」

 

「では完全に、会うために会う予定なの!?」

 

「街を案内する!」

 

「後から決めたのでしょう!?」

 

「昼食も食べる!」

 

「それも会うことの一部でしょう!」

 

「何が言いたいのよ!」

 

 行き遅れに恐怖する春麗は円卓を叩いた。

 

「それは、ほぼデートでしょう!」

 

「違う!」

 

「休みの日に! 午後一時から! 男女二人で! 街を歩いて! 昼食を食べる! では何なのよ!」

 

「……街の案内」

 

「言い換えただけ!」

 

 本編春麗は通常救済版春麗を見た。

 助けを求める。

 通常救済版春麗は少し考えた後、

 

「名前をつけなくても、いいのではないかしら」

 

 と言った。

 

「ほら!」

 

「ただし、一般的にはデートに見えると思う」

 

「助ける気がないでしょう!」

 


 

『次回予定の分類を実行します』

 

「しなくていい!」

 

『目的』

 

『相互に会うこと』

 

『内容』

 

『街歩き』

 

『昼食』

 

『試合・予定なし』

 

『任務・該当なし』

 

『正式回答・進行予定なし』

 

『当事者間の名称・未設定』

 

『外形上の分類』

 

『私的な男女二人の外出』

 

「そこで止めて!」

 

『俗称候補』

 

「表示しなくていい!」

 

 記録板AIの表示が一瞬止まった。

 

『本人要望により、俗称候補の表示を保留』

 

「保留もしなくていい!」

 


 

 自覚前春麗は、少しだけ表情を真面目なものへ戻した。

 

「でも、これは大きいわね」

 

「何が?」

 

「今日会えたことだけではない」

 

 本編春麗は自覚前春麗を見る。

 

「以前なら、一度会えた後、次がいつになるかまた分からなくなっていた」

 

「ええ」

 

「でも今回は、食事が終わる前に次の予定を作った」

 

「ええ」

 

「再会が、一度きりの奇跡に戻らなかった」

 

 本編春麗は何も言わなかった。

 その通りだった。

 今回リュウへ会えたことだけでも、大きな進展だった。

 だが、食事をしてそのまま別れ、次の予定を決めなければ。

 春麗はまた、会いたい時に連絡できるかという問題へ、すぐ戻っていたかもしれない。

 

 今回は違う。

 会っている間に次を決めた。

 四日後という近い時間に、次の接点を置いた。

 

「主人公補正が私たちを一回ずつ会わせていた時は、次の約束を作る必要がなかった」

 

 本編春麗は言った。

 

「ええ」

 

「物語が必要な時に、また会わせると思っていた」

 

「ええ」

 

「でも現実では、会えた時に次を作れる」

 

「ええ」

 

「今日会えたから、四日後の約束をその場で決められた」

 

 記録板AIが表示する。

 

『本編春麗』

 

『主人公補正非依存型・継続接触手順』

 

『第二段階へ移行』

 

『第一段階』

 

『会いたいと伝達』

 

『第二段階』

 

『会っている間に次回予定を決定』

 

『結果』

 

『次回再会の成立条件・すでに設定済み』

 

 本編春麗は表示を見た。

 

「……そう」

 

 一つずつ確認する。

 

「今度は、四日後まで探さなくていい」

 

『はい』

 

「主人公補正を期待しなくていい」

 

『はい』

 

「電話をかける理由を一から考えなくていい」

 

『はい』

 

「四日後、約束した場所へ行けばリュウに会える」

 

『はい』

 

 あまりにも当たり前のことだった。

 それでも本編春麗にとっては、長い物語を経てようやく手に入れた、新しい日常だった。

 


 

「正式回答は、まだ持てないのね」

 

 通常救済版春麗が静かに聞いた。

 

「ええ」

 

 本編春麗は迷わず答えた。

 

「今日リュウに会っても、食事をしても、次の約束をしても、それは変わっていない」

 

『正式回答の未保持・確認』

 

「でも」

 

 本編春麗は続けた。

 

「持てないから、会ってはいけないわけではない」

 

『はい』

 

「持てないから、関係を止めなければならないわけでもない」

 

『はい』

 

「正式回答を今すぐ全部持てなくても、今日会いたいとは言える」

 

『はい』

 

「次も会いたいなら、予定を決めてもいい」

 

『はい』

 

「私は、それを実際にやった」

 

『はい』

 

 本編春麗は少しだけ胸を張った。

 

「今回は、会議室に教えてもらわなかった」

 

『はい』

 

「記録板AIに分類してもらう前に、自分でやった」

 

『はい』

 

「一度、失敗もした」

 

『はい』

 

「でも二度目をかけた」

 

『はい』

 

「会いたいと伝えた」

 

『はい』

 

「本人にも、会いたかったと言った」

 

『はい』

 

「次の予定も決めた」

 

『はい』

 

『本編春麗、独力現実行動区間完了』

 

 会議室が静かになった。

 

 本編春麗は、その表示を見た。

 

「完了?」

 

『はい』

 

『本区間の到達条件』

 

『主人公補正によらない再会』

 

『および』

 

『継続可能な次回接点の形成』

 

『両方・成立済み』

 

「だから今日、接続できたの?」

 

『因果関係の断定・不可』

 

『ただし本編物語上の現実行動区間完了後、接続成立』

 

「……最後まで断定はしないのね」

 

『観測可能範囲を超えています』

 

「ええ。分かっている」

 


 

 行き遅れに恐怖する春麗は、まだ手帳の予定へ精神的に引っかかっていた。

 

「四日後、本当に試合はしないの?」

 

「予定にはないわ」

 

「正式回答の話も?」

 

「それも予定していない」

 

「では、何を話すの?」

 

「分からない」

 

「決めていないの!?」

 

「会ってから考える!」

 

「それができるようになったの!?」

 

 本編春麗は言葉を止めた。

 以前なら、用件を決めなければ会えなかった。

 

 試合。

 宿題。

 正式回答。

 確認。

 

 何かしら正当な目的が必要だった。

 今度は明確な用件がない。

 会ってから何をするか考える。

 リュウも、それでいいと答えた。

 

「……できるようになったのかもしれない」

 

 行き遅れに恐怖する春麗は、ゆっくりと椅子へ座った。

 

「本編春麗が、用件なしで男性と休日に会う」

 

 一拍。

 

「世界が終わるのでは?」

 

「終わらないわよ!」

 

『世界状態・正常』

 

「記録板AIも反応しなくていい!」

 


 

 通常救済版春麗は、本編春麗の隣へ座った。

 

「楽しかった?」

 

 短い質問だった。

 本編春麗はすぐには答えなかった。

 

 料理。

 リュウとの会話。

 ケンに話した内容を聞いて慌てたこと。

 リュウが紙と鉛筆を持つようになっていたこと。

 次も会うかと向こうから聞かれたこと。

 店を出た後、四日後の約束をもう一度確認したこと。

 リュウへ「今日は来てくれてありがとう」と伝えたこと。

 

 そして、

「俺も待っている」

 と返されたこと。

 

「……ええ。楽しかったわ」

 

 通常救済版春麗は微笑んだ。

 

「それなら、よかった」

 

 記録板AIは発言信頼度を表示しなかった。

 分類も分析も出さなかった。

 ただ、本編春麗が「楽しかった」と答えた事実だけが、会議室へ残った。

 


 

 本編春麗は円卓の自分の席へ座った。

 以前ここへ帰ってきた時、春麗は日常の入口を持ち帰った。

 

 連絡先。

 住所。

 ケンを介した伝言経路。

 会えなくても、次を作るための方法。

 今回は、その入口を実際に使った。

 

 電話した。

 言葉を届けた。

 約束した。

 会った。

 食事をした。

 そして、次の予定を作った。

 日常の入口は、入口だけではなくなった。

 その先に、道ができ始めている。

 

『最終記録』

 

『本編春麗、正式回答受領済み』

 

『九十九点』

 

『未保持』

 

『正式回答一部運用』

 

『次も、俺に聞け』

 

『継続中』

 

『主人公補正によらない再会成立』

 

『再会後・食事完了』

 

『次回予定成立済み』

 

『四日後午後一時、中央広場・噴水前』

 

『目的』

 

『会うこと』

 

『本編春麗の独力現実行動区間完了』

 

『春麗会議室再接続成立』

 

 本編春麗は最後の表示を見た。

 

「正式回答は、まだ持てない」

 

『はい』

 

「でも、次に会う予定は持っている」

 

『はい』

 

「未来の全部は、まだ持てない」

 

『はい』

 

「でも、四日後なら持てる」

 

『はい』

 

『現在の本編春麗にとって適切な保持単位と判定』

 

 本編春麗は少しだけ笑った。

 

「そう。今は、それでいい」

 

 正式回答という、関係全体の未来はまだ青い小箱の中にある。

 だが。

 四日後という小さな未来なら、春麗は自分の手帳へ書き、持って帰ることができた。

 

 それは物語が勝手に用意した次回ではない。

 リュウと春麗が食事の席で、一緒に作った予定だった。

 春麗会議室へようやく帰ってきた本編春麗は、正式回答ではなく。

 その小さな未来を、自分の手で持っていた。




Q:今回の断章IFについて解説して?

A:

今回のエピソードでは、リュウとの再会後の食事を、本編春麗が春麗会議室へ持ち帰る記憶として描きました。

食事の場面を独立した一話として描くのではなく、春麗会議室への同期によって共有する形式にしたのは、今回の重要点が食事の内容だけではなく、
「本編春麗が会議室へ接続できなかった期間に、どこまで独力で進んだのか」
を一度に確認することだからです。

会議室側の春麗たちは、本編春麗と同じ時間を過ごしながら待っていたわけではありません。

本編春麗が接続した瞬間、同期によって初めて、
ケンへ二度電話したこと。
一度目は本当の理由を言えなかったこと。
二度目に「リュウに会いたい」と伝えたこと。
リュウから電話が来たこと。
互いに会いたいと確認したこと。
日時と場所を決めたこと。
主人公補正ではなく、自分たちの約束によって再会したこと。
食事をしたこと。
そして、その食事中に次に会う予定まで決めたこと。
それらを一度に知ります。

本編春麗にとっては、何日もかけて一段ずつ越えてきた出来事です。
しかし、会議室側には一度に流れ込むため、
「あなた、私たちが見ていない間に何段階進んだのよ!」
という反応になります。

これは、本編春麗が会議室へ接続できなかったことの厳しさを示す一方、その期間が停滞ではなく、非常に密度の高い現実行動の時間だったことも表しています。

本編春麗は、会議室へ接続できない間、一人で正解を探したのではありません。
正解そのものは、途中から分かっていました。

会いたいなら連絡する。
連絡先はケンを通じて使える。
本当の理由は、リュウに会いたいということ。
問題は、それを実行できるかでした。

最初の電話では言えなかった。
それでも一度目を失敗として終わらせず、二度目をかけた。
正式回答と現在の「会いたい」を分け、「次も、俺に聞け」という一部分だけを生活上で使った。
そして、リュウへ言葉を届けました。

今回、記録板AIが、
「本編春麗・独力現実行動区間・完了」
と記録したのは、この一連の行動が再会だけでは終わらなかったからです。

本編春麗は、自分から呼んだリュウと実際に会いました。
さらに、食事をして別れる前に、次に会う予定まで作りました。
これによって今回の再会は、一度きりの成功ではなくなっています。

以前の本編春麗は、リュウと一度会えても、その後また連絡のない状態へ戻っていました。

次にいつ会えるか分からない。
物語が再び二人を同じ場所へ置くまで待つ。
会いたくなれば、いつもの場所へ行ってみる。
それが、主人公補正に依存していた頃の関係です。
しかし今回は、会っている間に次の接点を作りました。

四日後。
午後一時。
中央広場の噴水前。
春麗の手帳には、明確な予定としてリュウの名前が書かれています。
これは非常に小さなことに見えます。

現実の人間関係では、食事の後に次の予定を決めることは珍しくありません。
しかし、これまで物語によって会わせてもらっていた本編春麗にとっては、大きな変化です。
今までの再会は、次回が保証されていませんでした。
今回は、今日の再会が次の再会を作っています。
奇跡が一度起きて終わるのではなく、現在の接触から次の予定を生み出す。

本編春麗とリュウの関係が、ようやく継続可能な日常へ入り始めました。
今回の食事で、リュウ側から「四日後も会うか」と尋ねたことも重要です。

最初の再会は、春麗が始めました。
春麗がケンへ電話し、会いたいと伝えた。
その言葉を受け取ったリュウが戻ってきた。
つまり、今回の因果の始点は本編春麗です。
ただし、今後も毎回、春麗だけが苦労して次を作らなければならないわけではありません。

春麗が一度、自分から道を開いたことで、リュウもその道を使えるようになりました。
リュウは、食事中に春麗の休みを確認し、自分から「四日後も会うか」と聞いています。

これは、春麗が一方的に関係を動かし続ける状態から、二人が交互に次を作れる状態へ変わり始めたことを示しています。

本編春麗は、リュウから次の予定を提案された時、電話をかけるまでのような長い停止を起こしませんでした。
少し驚き、確認を重ねながらも、その場で日時と場所を決めました。

最初の一歩が最も重かった。
一度、自分から会いたいと伝え、その言葉にリュウが正確に応じた経験を持ったことで、二度目の約束は以前より自然に作れています。
これも、今回の成長です。

食事の内容としては、正式回答を進めていません。
リュウは正式回答が気にならないわけではありません。
気にはなる。
しかし、本編春麗がまだ持てないと言ったため、春麗から話すまで待つ。
その姿勢を崩していません。

本編春麗が会いたいと伝えたこと。
一緒に食事をしたこと。
次に会う予定を決めたこと。
それらを、正式回答を受け入れた証拠にはしません。
今回も、リュウは春麗が渡した分だけを受け取っています。

会いたいと言われたから会う。
次も会うことへ春麗が同意したから、四日後の約束を作る。
その行動を、正式回答の百点目へ勝手に変換しない。

この正確さがあるから、本編春麗は正式回答をまだ持てないまま、リュウとの関係を止めずに進められます。

今回、春麗会議室で改めて確認されたのは、
「正式回答を持てないことと、リュウへ会ってはいけないことは別」
という点です。

正式回答は、リュウが示した関係全体への答えです。

変わった春麗を見る。
前の春麗へ戻そうとは思わない。
今の春麗を、面倒なまま受ける。
面倒でもいい。次も、俺に聞け。
本編春麗は、その全部をまだ持てません。
未来全体を受け入れるだけの準備はできていません。
しかし、未来全体を持てないからといって、現在の関係まで停止させる必要はありません。

今日、会いたい。
四日後にも会いたい。
街を歩きたい。
一緒に昼食を食べたい。
その程度の小さな未来なら、今の本編春麗にも持てます。

終盤の、
「未来の全部はまだ持てない。でも、四日後なら持てる」
という言葉が、今回のエピソードの中心です。

本編春麗は、正式回答という大きな未来を持てないことに苦しんできました。
そのため、未来は全部持つか、何も持たないかの二択になっていました。
しかし今回、四日後という小さな単位なら持てると分かりました。

正式回答を全面的に受け入れなくても、次に会う予定は手帳へ書ける。
将来の関係へ名前をつけられなくても、午後一時に噴水前へ行くことは決められる。
リュウとの未来全部を約束できなくても、次の一日を一緒に過ごすことは選べる。
本編春麗は、未来を小さな単位へ分けて持ち始めています。

前話では、正式回答そのものを分解しました。

正式回答全体は持てない。
しかし、「次も、俺に聞け」だけなら生活上で使える。
今回は、未来そのものを分解しています。

関係全体の未来は持てない。
しかし、四日後なら持てる。

この二つは同じ進み方です。

本編春麗は、大きすぎて持てないものを否定したり、無理に抱えたりするのではなく、今の自分が扱える単位まで小さくして運用し始めました。
これは正式回答編における、本編春麗独自の解法です。

春麗会議室への再接続も、今回大きな意味を持っています。

本編春麗は、電話が鳴らない時から何度も接続を試みました。
しかし、会議室は開かなかった。
ケンへ一度目の電話をかけても開かない。
二度目の電話で伝言を残しても開かない。
リュウから電話が来て、日時と場所を決めても開かない。
実際に約束した場所へ行き、自分から呼んだリュウと会い、食事をし、さらに次の予定まで作った後、ようやく接続が成立しました。

記録板AIには、接続を許可したり拒否したりする権限はありません。
そのため、「何を達成したから会議室が開いた」と断定はしていません。

ただし、物語上の構造としては、
主人公補正によらない再会。
そして、その再会を一度きりにしない次回接点の形成。
この二つが成立したことで、独力現実行動区間が完了したと整理できます。

本編春麗は、会議室へ接続できなかったから成長したのではありません。
会議室へ接続できなくても、自分で行動できることを証明しました。
そして、自分で行動できるようになった後、会議室へ戻ってきました。

これは、会議室からの卒業ではありません。

本編春麗は今後も、他の春麗たちと話し、記録板AIの分析を使い、必要なら助けを求めます。
ただし、以前とは関係が変わっています。
会議室がなければ動けない主人公ではない。
一人で動いた後、その経験を持ち帰り、共有し、次へ活用できる主人公になっています。

通常救済版春麗の「おかえりなさい」も、以前とは少し意味が違います。
前回、本編春麗は、一週間近くリュウを探した経験と、日常の入口となる連絡先を持ち帰りました。
今回は、その入口を実際に使った結果と、さらにその先にある次の予定を持ち帰りました。

最初は連絡先という方法だけだった。
今回は、その方法から実際の再会と次回予定が生まれた。
日常の入口だったものが、継続する道へ変わり始めています。
また今回、行き遅れに恐怖する春麗から、四日後の予定が「ほぼデート」と判定されかけています。

本編春麗は、街の案内であると主張しています。
試合の予定はない。
任務でもない。
正式回答を進める予定もない。
休みの日に、男女二人で街を歩き、昼食を食べる。
外形上はかなり分かりやすいのですが、本編春麗本人はまだ名称をつけたくありません。

ここで重要なのは、名称を確定することではありません。
本編春麗が、用件が完全に決まっていなくてもリュウと会えるようになったことです。
以前の春麗には、会うための正当な目的が必要でした。

試合。
宿題。
正式回答。
確認事項。
何かしらの用件がなければ、会いたいだけで相手を呼ぶことができませんでした。

しかし四日後の予定は、会ってから何をするか考える予定です。
目的は、会うこと。
本編春麗が最も苦手としていた予定を、今度はリュウからの提案に応じる形で作ることができました。
さらに今回、本編春麗は、食事が楽しかったと認めています。

この場面では、記録板AIに発言信頼度を表示させませんでした。
「楽しかった」という感情を、分析対象や進行条件へ変える必要がないからです。
本編春麗は、何かを達成するために食事をしたのではありません。
正式回答を持つためでも、リュウの気持ちを確認するためでもありません。

会いたかったから会い、食事をして、楽しかった。
それだけで成立する時間です。
この「それだけ」を持てるようになったことが、今回のもう一つの成長です。

今回のエピソードによって、長く続いた一連の正式回答編は、一つの中間到達点へ着きました。

正式回答は、まだ未保持です。
九十九点も変わりません。
本編春麗とリュウの関係へ、正式な名前がついたわけでもありません。

しかし、二人はもう、物語の偶然だけに依存していません。
会いたければ連絡する。
会っている間に、次の予定を作る。
仕事で予定通りに動けない可能性も共有する。
会えないことを拒絶と混同しない。

正式回答を持てない状態と、現在会いたい気持ちを混同しない。
二人の間に、継続可能な生活上の手順が作られています。
本編春麗が今回持ち帰ったのは、正式回答ではありません。

四日後という小さな未来です。
大きな答えはまだ持てない。
それでも、小さな予定なら自分の手帳へ書ける。
その予定を持って、春麗会議室へ「ただいま」と帰ることができる。

今回のエピソードは、本編春麗が未来全体を持つ前に、まず次の一日を持てるようになった回です。
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