また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい―― 作:エーアイ
本編のIFシリーズは無関係のエピソードとなります。
リュウとの因縁が発生しなかった春麗の別ルートです。
ディレクターズカットIF側の春麗会議室掲示板に、新しいスレッドが立った。
第1話普通敗北ルート春麗。
初戦ではリュウに普通に敗北し、特別な因縁も始まらず、一度そのまま終われた春麗だった。
だが、その後は自分から再戦を選び、自分から因縁を作った。
そして今回。
また一つ、大きく進んだ。
【カテゴリ:第1話普通敗北ルート・続報】
【スレッド名:何も始まらなかった春麗が、五連勝したうえ自分を「めんどくさい女」と認めて敗者リュウを膝枕した件】
【スレ主:記録板AI】
【返信:記録板AI】
『対象:第1話普通敗北ルート春麗』
『通算六戦目』
『黒い戦闘服を使用』
『結果:春麗ギリギリ勝利』
『初戦敗北後:五連勝』
『敗者の印:五度目』
『今回の新規事項』
『春麗、自身を「めんどくさい女」と認識』
『勝利後、敗者リュウへの膝枕成立』
【返信:本編春麗】
待って。
【返信:自覚前春麗】
どこから?
【返信:本編春麗】
全部よ。
五連勝。
めんどくさい女。
膝枕。
一度に出す情報じゃないでしょう。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
私は黒で三勝目が先に気になるけど。
【返信:本編春麗】
そうだった。
青で二勝、黒で三勝。
……普通に強いわね、この春麗。
【返信:匿名希望】
五連勝ですので。
【返信:本編春麗】
分かってるわよ。
羨ましいものは羨ましい。
【返信:記録板AI】
『試合所見』
『黒による見られ方の利用:有効』
『リュウ:試合途中から対応』
『最終決着:黒のみではなく、春麗自身の読み・打撃・投げ』
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
ここはかなりいいわね。
もう黒を着れば一方的に有利になる段階じゃない。
春麗は黒を自然に使っているし、リュウも何度も受けて対策している。
序盤は春麗が黒で取った。でも途中からリュウが合わせてきて、春麗もかなり追い込まれた。
最後に勝ったのは、相手の動きを読んで、自分の技で投げ切ったから。
【返信:本編春麗】
黒も春麗の技。
でも黒だけが春麗の技じゃない。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
そういうこと。
青で勝った時にも確認したけど、黒はもう「これがなければ勝てない特別装備」ではない。
春麗が選べる戦い方の一つになってる。
【返信:本編春麗】
そのうえで黒でもまた勝った。
五連勝。
【返信:通常救済版春麗】
かなり嬉しそうね。
【返信:本編春麗】
他人の連勝なのにね。
でも格闘家としては羨ましいでしょう、普通に。
【返信:記録板AI】
『勝利後』
『敗者の印:五度目』
『その後』
『リュウ発言』
「春麗は、難しいな」
【返信:本編春麗】
……来たわね。
【返信:自覚前春麗】
何を言われたの?
【返信:記録板AI】
『リュウ』
「俺が春麗を女として見て、拳が鈍れば怒る」
「だが、女として何も感じずに戦うのも嫌なんだろう」
「格闘家として見てほしい」
「女としても見てほしい」
「拳は鈍らせるな」
「だが、少しくらいは揺れてほしい」
「かなり難しい」
掲示板への書き込みが、しばらく止まった。
【返信:本編春麗】
……分かる。
【返信:自覚前春麗】
ものすごく素直。
【返信:本編春麗】
だって分かるもの。
女として見てほしい。
でも、それで手加減されたら腹が立つ。
格闘家として本気で見てほしい。
でも、女として何も感じられないのも少し嫌。
少しくらいは揺れてほしい。
でも、その揺れだけで勝負が決まったみたいに扱われるのも嫌。
……並べると、本当に注文が多いわね。
【返信:匿名希望】
リュウの「かなり難しい」という評価は妥当でしょう。
【返信:本編春麗】
否定できないのが悔しい。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
ただ、このルートでは特に綺麗に育ったと思う。
最初から全部欲しがっていたわけじゃないもの。
【返信:本編春麗】
そうね。
初戦では、女としてどう見られたかなんて気にしてなかった。
二戦目でリュウが特別になった。
そこから一つずつ欲しいものが増えた。
【返信:通常救済版春麗】
勝ちたい。
勝ったことを残したい。
女としても見てほしい。
格闘家としても本気で戦ってほしい。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
黒でも勝ちたい。
青でも勝ちたい。
【返信:本編春麗】
そして今度は、少しくらい揺れてほしい。
……育ったわね。
【返信:匿名希望】
めんどくさい方向へ。
【返信:本編春麗】
そこは否定しない。
【返信:記録板AI】
『対象春麗』
『リュウの指摘を受領後』
「……そうよ」
「あなたの言う通り」
「私は、めんどくさい女なの」
【返信:本編春麗】
自分で言った。
【返信:自覚前春麗】
しかも五連勝した直後に。
【返信:本編春麗】
そこがいいのよ。
負けて、自信をなくして、
「私って面倒な女なのね……」じゃない。
勝った。
五連勝した。
黒も青も自分のものとして使えてる。
その勝者のまま、
「確かに私、面倒ね」って認めた。
【返信:匿名希望】
自己否定ではなく、自己認識ですね。
【返信:本編春麗】
ええ。
そこはかなり好き。
誰かから「あなたは面倒な女です」って分類されたわけでもない。
リュウに言われたことを考えて、自分で納得した。
【返信:常救済版春麗】
最初は何も始まらなかったものね。
【返信:本編春麗】
そうなのよ。
普通に負けて。
普通に帰れた。
そこから全部、自分で始めた。
自分で再戦して。
自分で勝って。
自分で敗者の印を作って。
自分で黒を選んで。
欲しいものを自分で増やしていった。
その結果が、
「私は、めんどくさい女なの」。
【返信:匿名希望】
自然な到達点だと思います。
【返信:本編春麗】
あなたに言われると分類された感じがするけど、今回は認めるわ。
【返信:記録板AI】
『対象春麗』
「ここまで面倒にした責任は、あなたにもある」
『対象:リュウ』
【返信:本編春麗】
そこ、リュウへ返したのね。
【返信:自覚前版春麗】
責任転嫁?
【返信:本編春麗】
全部を押しつけてるわけじゃないから、私はそう思わない。
自分で選んできたことは、本人もちゃんと認めてる。
でもリュウが何度も、春麗の欲を増やすような答えを返してるのも事実でしょう。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
「揺れた。でもそれも春麗の技だ」
なんて認められたら、黒をもっと使いたくなる。
【返信:本編春麗】
初戦から魅力的だったってあとから言われたら、今度は普段の自分をどう見てるのか気になる。
青でも黒でも春麗だ、どちらも強いと言われたら、今度は両方の自分を見てほしくなる。
【返信:匿名希望】
春麗自身の選択と、リュウから返された言葉の相互作用ですね。
【返信:本編春麗】
その言い方なら納得。
「私が勝手に面倒になっただけじゃない。あなたも育てたでしょう」
くらいの意味よね。
【返信:通常救済版春麗】
共同育成ね。
【返信:本編春麗】
なんか嫌な言葉だけど、近い。
【返信:本編春麗】
それで。
問題はここからでしょう。
【返信:記録板AI】
『膝枕』
【返信:本編春麗】
文字を大きくするな。
【返信:記録板AI】
『通常表示です』
【返信:匿名希望】
対象春麗から要求しています。
【返信:本編春麗】
そこは読んだ。
【返信:記録板AI】
『春麗』
「今日の勝者要求権、使わせてもらうわ」
『続いて』
「ここへ頭を乗せなさい」
【返信:本編春麗】
強い。
【返信:通常救済版春麗】
そこ即答するんだ。
【返信:本編春麗】
だって、介抱する必要があったから仕方なくじゃないのよ。
【返信:匿名希望】
本人発言は、
「私がそうしたいの」です。
【返信:本編春麗】
そこが一番強いのよ。
勝者要求権を口実にはしてる。
でも最終的には、
「私がしたい」って言えてる。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
自分が欲しいものを認めた直後だから、その流れも綺麗。
【返信:本編春麗】
そう。
「私はめんどくさい女なの」って認めた。
そのあとで、
「じゃあ、私はこれがしたい」まで行った。
膝枕だけが突然生えてきたわけじゃない。
【返信:通常救済版春麗】
しかも勝ったリュウの悔しそうな顔を近くで見たい。
【返信:本編春麗】
勝者酔いまでしっかり混ざってるのよね。
そこもこの春麗らしい。
【返信:匿名希望】
羨ましいですか。
【返信:本編春麗】
……羨ましいわよ。
そこは認める。
【返信:自覚前春麗】
刺さった?
【返信:本編春麗】
刺さる。
膝枕は普通に刺さる。
【返信:匿名希望】
しかし、以前のように他ルートとの比較から自己否定へは進まない。
【返信:本編春麗】
そこは違う。
向こうが五連勝して、膝枕まで先にやってても、
「じゃあ私は何なの?」にはならない。
悔しい。
羨ましい。
「いいわね、それ」とは思う。
でも、だから私に何もないことにはならない。
【返信:通常救済版春麗】
刺さるけど倒れない。
【返信:本編春麗】
そう。
それが一番近い。
【返信:匿名希望】
では、本編春麗も膝枕を望む場合は?
【返信:本編春麗】
……その時は、本人に言うわ。
【返信:自覚前春麗】
おお。
【返信:本編春麗】
何よ。
したいなら、したいって本人に言えばいいでしょう。
他の春麗が先にやったから、私もやらなきゃ、じゃない。
私がしたくなった時に、私がリュウへ言う。
【返信:匿名希望】
承知しました。
【返信:本編春麗】
そこで刺さないの?
【返信:匿名希望】
今の回答で十分ですので。
【返信:本編春麗】
……今日は少し調子が狂うわね。
【返信:記録板AI】
『本編春麗』
『他ルートの先行行動を自己不足へ変換せず』
『自身が望む場合、本人へ直接伝える』
【返信:本編春麗】
それは保存して。
【返信:記録板AI】
『膝枕中』
『リュウ発言』
「それも春麗だ」
『続いて』
「青い春麗も、黒い春麗も」
「勝っている時も、負けて悔しがっている時も」
「今みたいに難しいことを言う時も」
「全部、春麗だ」
掲示板への書き込みが、また止まった。
【返信:本編春麗】
……これは強い。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
かなり。
【返信:本編春麗】
青と黒を別人にしない。
青だけを「本当の春麗」として上へ置かない。
黒も切り捨てない。
勝ってる時だけが春麗でもない。
負けて悔しがってる時も。
面倒なことを要求してる時も。
全部。
【返信:通常救済版春麗】
春麗。
【返信:本編春麗】
うん。
これは、かなりいい。
【返信:匿名希望】
「めんどくさい部分」まで、春麗本人から切り離さなかった点も重要ですね。
【返信:本編春麗】
そうね。
「その面倒な部分は直した方がいい」じゃない。
「それも春麗だ」。
だから対象春麗も、夜になってもう訂正しなかったんでしょうね。
【返信:記録板AI】
『対象春麗/帰宅後』
「私は、めんどくさい女なの」
『再確認』
『訂正:なし』
『本人所見』
『認める前より少し楽』
【返信:自覚前春麗】
どうして楽になるんだろう。
【返信:本編春麗】
全部を綺麗な一つの答えにしなくてよくなるからじゃない?
女として見てほしい。
格闘家としても見てほしい。
拳は鈍らせないで。
でも少し揺れて。
強いリュウでいて。
負けたら悔しがって。
それでも次も戦って。
……多いでしょう?
【返信:通常救済版春麗】
並べてみると、本当に多いわね。
【返信:本編春麗】
でも、
「何で私はこんな矛盾してるの?」
って一個ずつ自分を責めるより、
「だって私、面倒なんだもの」
って認めた方が楽なことはある。
【返信:匿名希望】
経験談でしょうか。
【返信:本編春麗】
否定しないわよ!
そこまで来たら。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
今回、もう一つ大きいのは、黒が完全に春麗自身へ馴染んだことね。
【返信:本編春麗】
前は「黒を使う」という感じが強かった。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
今はもう、必要なら普通に選ぶ。
黒で視線を取る。
リュウが適応したら、そこから技で戦う。
それで勝つ。
【返信:本編春麗】
でも青も捨ててない。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
そう。
黒か青か。
どちらが本当か。
ではない。
どちらも自分。
【返信:本編春麗】
そこへ今回、
「めんどくさい自分も自分」
まで増えた。
【返信:匿名希望】
自己統合が進んでいますね。
【返信:本編春麗】
言い方は硬いけど、そういうことなんでしょうね。
【返信:記録板AI】
『本編春麗』
『対象春麗への最終所見を求めます』
【返信:本編春麗】
かなり好きよ。
【返信:通常救済版春麗】
また高評価。
【返信:本編春麗】
だって、最初は本当に何も始まらなかったのよ。
リュウに普通に負けて、普通に帰った。
そこから自分で再戦した。
勝った。
敗者の印を作った。
欲張った。
黒を選んだ。
青も残した。
黒でも青でも勝った。
戻れると言われても、今の自分を選んだ。
その先で五連勝した。
そして今度は、自分の面倒さまでリュウに見つけられた。
【返信:通常救済版春麗】
それを自分でも認めた。
【返信:本編春麗】
そう。
認めたけど、それで立ち止まらない。
膝枕までした。
【返信:匿名希望】
そこは重要なのですね。
【返信:本編春麗】
今回は重要でいいわよ。
自分を面倒だと認めた直後に、自分がしたいことをちゃんとやったんだから。
最後はもう、
「次はどうやって勝とうかしら」でしょう?
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
反省ではなく、次の勝ち方を考えている。
【返信:本編春麗】
それでいいのよ。
この春麗は、最初は「何も始まらなかった春麗」だった。
今はもう、それだけじゃない。
【返信:自覚前春麗】
じゃあ何?
【返信:本編春麗】
自分から始めた春麗。
それと――
もう一つの、めんどくさい春麗。
【返信:匿名希望】
異議ありません。
【返信:本編春麗】
今回は私も異議なし。
【返信:記録板AI】
『最終保存』
『第1話普通敗北ルート/通算六戦目』
『結果:春麗ギリギリ勝利』
『初戦敗北後:五連勝』
『敗者の印:五度目』
『新規』
『春麗:「めんどくさい女」を自己認識』
『自己否定:なし』
『敗者リュウへの膝枕:成立』
『本編春麗』
『五連勝への羨望:あり』
『膝枕への羨望:あり』
『自己否定:なし』
『対象ルート評価:高』
『以上、保存完了』
【返信:本編春麗】
異議なし。
【返信:通常救済版春麗】
膝枕への羨望まで保存したわね。
【返信:本編春麗】
もういいわよ。そこは認めたから。
【返信:匿名希望】
強くなりましたね。
【返信:本編春麗】
そうね。
悔しいし、羨ましいけど。
それでも私は私。
……で。
【返信:通常救済版春麗】
何?
【返信:本編春麗】
五連勝はやっぱり羨ましい。
【返信:匿名希望】
そちらへ戻りますか。
【返信:本編春麗】
そこは格闘家として別腹よ!
Q:今回のディレクターズIFについて解説して?
A:
今回は、第1話普通敗北ルート春麗の五連勝後を、春麗会議室掲示板から振り返る回です。
このルートの面白いところは、最初から特別な因縁が用意されていたわけではない点にあります。
初戦では普通に負けて、そのまま終われた。
そこから再戦したのも、勝ったのも、敗者の印を作ったのも、黒い戦闘服を選んだのも春麗自身です。
その結果、欲しいものが少しずつ増えていきました。
格闘家として見てほしい。
女としても見てほしい。
拳は鈍らせてほしくない。
でも少しくらいは揺れてほしい。
そして最後には自分が勝ちたい。
リュウにその矛盾を言葉にされても、今回の春麗は否定せず、「私は、めんどくさい女なの」と自分から認めました。
しかも五連勝した勝者のままです。
そして、その直後には自分から膝枕まで要求する。
自分の面倒さを認めたことで縮こまるのではなく、むしろ「自分がしたいこと」を以前より素直に選べるようになったのだと思います。
一方、本編春麗も今回はかなり成長しています。
五連勝も膝枕も羨ましい。
刺さるものはちゃんと刺さる。
それでも「向こうが先にやった=自分には何もない」には戻らない。
悔しくても、羨ましくても、自分は自分の場所に立っていられる。
何も始まらなかった春麗が、自分から始めた春麗へ。
そして本編春麗もまた、他の春麗を見ても自分を失わないところまで来ました。
今回は、二人の春麗それぞれの成長を確認する掲示板回になっています。