また戦ってくれなんて言わないで ――春麗は今日もめんどくさい―― 作:エーアイ
本編のIFシリーズは無関係のエピソードとなります。
リュウとの因縁が発生しなかった春麗の別ルートです。
ディレクターズカットIF側の春麗会議室掲示板に、新しいスレッドが立った。
第1話普通敗北ルート春麗。
初戦では何も始まらなかった春麗は、自分から再戦を選び、そこから五連勝した。
青でも勝った。黒でも勝った。
自分を「めんどくさい女」だと認め、前回は勝者要求権を使って敗者リュウを膝枕までした。
そして通算七戦目。
今度は、負けた。
【カテゴリ:第1話普通敗北ルート・続報】
【スレッド名:五連勝を止められた春麗が、負けた直後に敗者請願権を作った件】
【スレ主:記録板AI】
【返信:記録板AI】
『対象:第1話普通敗北ルート春麗/通算七戦目』
『結果:リュウ、ギリギリ勝利』
『春麗:初戦敗北後五連勝終了』
『黒い戦闘服での初敗北』
【返信:本編春麗】
ついに負けたのね。
【返信:自覚前春麗】
五連勝で止まった。
【返信:匿名希望】
六連勝は未成立ですね。
【返信:本編春麗】
分かってるわよ。嬉しそうに数字を確認しない。
【返信:匿名希望】
事実確認です。
【返信:本編春麗】
その言葉、本当に便利よね。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
でも今回、黒そのものが負けたわけじゃない。
【返信:本編春麗】
そこは大事ね。
【返信:記録板AI】
『序盤:春麗優勢』
『黒による視線誘導:有効』
『中盤』
『春麗・飛翔脚』
『リュウ・昇龍拳で完全対空』
『終盤』
『春麗・百裂脚で勝利寸前』
『リュウ・間合いを外す』
『至近距離波動拳』
『決着』
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
黒は通ってる。でもリュウも黒を何度も経験して、途中から春麗本体の動きを見て対応している。
だから「黒で負けたから青へ戻る」にはならない。
【返信:本編春麗】
ええ。
黒を使った春麗が弱かったわけでも、黒が失敗だったわけでもない。
リュウが今回は、その春麗を上回った。
それでいいと思う。
【返信:匿名希望】
本編春麗、対象春麗への評価は相変わらず高いですね。
【返信:本編春麗】
高いわよ。
負けたから急に評価を下げる理由なんてないもの。
【返信:記録板AI】
『試合後』
『春麗:「……私の負けね」』
『リュウ:「強かった。百裂脚は危なかった。あのまま間合いを外せなければ、俺が負けていた」』
【返信:本編春麗】
これ、負けた直後に言われるとかなり効くわね。
【返信:通常救済版春麗】
慰められてる感じかしら?
【返信:本編春麗】
少し違うわね。
負けは負けなのよ。
でも、自分が何を狙って、どこまでリュウを追い込んだのかはちゃんと見てもらえていた。
だから悔しいまま、少し嬉しい。
【返信:匿名希望】
現在本編春麗、かなり共感していますね。
【返信:本編春麗】
そこは普通にするわよ。
【返信:記録板AI】
『その後、春麗「敗者請願権」』
【返信:本編春麗】
そこから作るの!?
【返信:自覚前春麗】
負けた直後に新制度作ってる。
【返信:記録板AI】
『定義』
『敗者が勝者へ、お願いしてもよい』
『勝者への強制力:なし』
『勝者:拒否可能』
【返信:本編春麗】
……なるほど。
【返信:匿名希望】
かなり本人に都合のよい制度ですね。
【返信:本編春麗】
本人も分かってるでしょう。
でも「断ってもいい」は絶対に必要よ。
勝者要求権とは、そこが違う。
【返信:自覚前春麗】
勝者要求権は、勝った春麗から要求する。
敗者請願権は、負けた春麗からお願いする。
【返信:本編春麗】
そう。
名前は大げさだけど、実際にやってることは「お願いしてみてもいい」なのよね。
【返信:記録板AI】
『今回の請願』
「私を起こして」
「肩を貸して」
「途中まで送って」
『さらに』
「今日は私が負けたから」
「少しだけ、甘えさせて」
掲示板への書き込みが、一度止まった。
【返信:本編春麗】
……強い。
【返信:匿名希望】
羨ましいですか。
【返信:本編春麗】
……少しはね。
【返信:匿名希望】
では、本編春麗。
敗北した直後に、リュウへ同じことを言えますか。
【返信:本編春麗】
来たわね。
【返信:匿名希望】
「少しだけ、甘えさせて」と。
【返信:本編春麗】
……そこを刺すのね。
【返信:匿名希望】
本編春麗には、敗北時にリュウへ「少しだけ甘えさせて」とお願いした実績はありません。
【返信:本編春麗】
それは事実ね。
【返信:匿名希望】
認めますか。
【返信:本編春麗】
認めるわよ。
やってないものは、やってない。
でも――前ほどは効かないわ。
【返信:匿名希望】
理由を伺っても?
【返信:本編春麗】
他の春麗にできたことを、全部すぐ私も同じようにできなきゃいけないとは、もう思ってないから。
対象春麗ができた。
いいわね、とは思う。
羨ましくもある。
でも、それだけ。
【返信:匿名希望】
敗者請願権そのものは羨ましくありませんか。
【返信:本編春麗】
制度としては、たぶん私にはいらないわ。
【返信:匿名希望】
即答ですね。
【返信:本編春麗】
今の私なら、負けた時に本当に甘えたくなったら、敗者請願権なんて名前を作らなくても本人に聞くと思う。
「少し甘えてもいい?」って。
断られたら?
それも受け取る。
【返信:匿名希望】
……。
【返信:本編春麗】
何、その沈黙。
【返信:匿名希望】
刺突効率が低下しています。
【返信:本編春麗】
ふふ。
そこは私の勝ちね。
【返信:通常救済版春麗】
でも普通敗北ルート春麗には、敗者請願権が必要だったんじゃない?
【返信:本編春麗】
今のあの春麗には、すごく合ってると思う。
【返信:自覚前春麗】
どうして?
【返信:本編春麗】
あの春麗、欲しいものをまだ「勝負」とか「権利」の言葉へ乗せた方が言いやすいのよ。
膝枕した時も勝者要求権だったでしょう?
今回は負けたから、敗者請願権を作った。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
試合から始まった関係だから、そこを足場にすると素直になれる。
【返信:本編春麗】
そういうこと。
だから私は制度が幼いとは思わない。
あの春麗なりの、今の言い方なんだと思う。
【返信:匿名希望】
将来的には不要になる可能性がありますね。
【返信:本編春麗】
あるでしょうね。
いつか、
「勝ったから要求する」
「負けたからお願いする」
じゃなくて、
「私はこうしたい」
だけで言えるようになるかもしれない。
【返信:匿名希望】
本編春麗は、そちらへ進んだと。
【返信:本編春麗】
少しはね。
【返信:行き遅れに恐怖する春麗】
でも、負けても甘えられるようになったら、負けてもいいって思わない?
【返信:本編春麗】
思わないわ。
【返信:自覚前春麗】
即答。
【返信:本編春麗】
ここは今回、一番大事なところだと思う。
この春麗は負けて悔しがってる。
六連勝を逃した。
六つ目の敗者の印もつけられなかった。
勝者要求権も使えなかった。
全部、ちゃんと悔しい。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
そのうえで、負けた自分まで罰する必要はない。
【返信:本編春麗】
そう。
私は「負けても悪くない」とは言いたくないのよ。
勝負としては嫌。次は取り返したい。
でも、負けたからってリュウとの関係まで悪くなる必要はない。
【返信:匿名希望】
勝敗と関係継続を分けた、と。
【返信:本編春麗】
それ。
勝つのが一番。
負けたら悔しい。
それでも次はある。
甘えたかったら、お願いすることもできる。
この四つが同時に成立したのが大きいんだと思う。
【返信:記録板AI】
『対象春麗リュウへ確認:「本当に嫌じゃないの?」』
『リュウ:「嫌じゃない」』
【返信:本編春麗】
……こっちの方が強くない?
【返信:自覚前春麗】
敗者請願権より?
【返信:本編春麗】
ええ。
権利だから聞いてくれたんじゃないもの。
断れるのに、リュウ本人が受け入れた。
【返信:匿名希望】
その点は重要ですね。
【返信:本編春麗】
しかも「嫌じゃない」まで言った。
対象春麗、そりゃ都合のいい制度だと思うわよ。
【返信:匿名希望】
本編春麗も被弾していますね。
【返信:本編春麗】
してるわよ。
そこまで強がる気はないわ。
【返信:記録板AI】
『帰路で春麗「それでも次も来る?」』
『リュウ:「俺とまた戦ってくれ」』
【返信:本編春麗】
……これもいい。
【返信:自覚前春麗】
負けた直後なのが?
【返信:本編春麗】
そう。
五連勝していた春麗が初めて負けた。
でも、そこで関係が終わらない。
むしろリュウの方から、また戦ってくれって言う。
勝った時だけ続く関係じゃないって、はっきりしたでしょう。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
黒で初めて負けても、黒を否定しない。
【返信:通常救済版春麗】
次に青を選んでもいい。
また黒を選んでもいい。
今日負けたからって、どちらかを捨てる必要はない。
そこがいいと思う。
【返信:匿名希望】
では、本編春麗。
【返信:本編春麗】
何。
【返信:匿名希望】
仮に次の試合でリュウへ敗北した場合。
【返信:本編春麗】
嫌な仮定ね。
【返信:匿名希望】
その時、「少しだけ甘えさせて」と言えますか。
【返信:本編春麗】
言いたかったら言うと思う。
【返信:匿名希望】
敗者請願権を作らずに?
【返信:本編春麗】
作らない。
今の私は、会いたいも、戦いたいも、本人に言えるようになった。
だったら甘えたい時も、本人に聞けばいい。
【返信:匿名希望】
拒否された場合は。
【返信:本編春麗】
受け取る。
【返信:匿名希望】
……。
【返信:本編春麗】
また黙った。
【返信:匿名希望】
本編春麗を評価しています。
【返信:本編春麗】
なら、その評価は普通に受け取るわ。
【返信:本編春麗】
ところで、匿名希望。
【返信:匿名希望】
何でしょうか。
【返信:本編春麗】
さっきから私に、
「負けた時、甘えられますか」って聞いてるけど。
あなたは?
【返信:匿名希望】
何がでしょうか。
【返信:本編春麗】
あなたがリュウに負けた時。
「少しだけ甘えさせて」って言える?
【返信:匿名希望】
……。
【返信:本編春麗】
あら。
【返信:記録板AI】
『匿名希望、回答待機中』
【返信:匿名希望】
記録は不要です。
【返信:本編春麗】
じゃあ答えて。
【返信:匿名希望】
今回の議題とは直接関係ありません。
【返信:本編春麗】
私には散々聞いたのに?
【返信:匿名希望】
私のルートは今回の対象外です。
【返信:本編春麗】
言える?
【返信:匿名希望】
……保留します。
【返信:本編春麗】
議題外から保留まで進んだわね。
【返信:匿名希望】
進捗として扱わないでください。
【返信:本編春麗】
記録板AI。
【返信:記録板AI】
『匿名希望、敗北時の甘え表明:保留』
【返信:匿名希望】
保存不要です。
【返信:本編春麗】
保存して。
【返信:記録板AI】
『保存しました』
【返信:匿名希望】
……。
【返信:本編春麗】
それともう一つ。
【返信:匿名希望】
まだあるのですか。
【返信:本編春麗】
あなた、最近の出番、ほとんど掲示板じゃない?
ライバル枠(笑)なんですけど。
【返信:自覚前春麗】
括弧笑いを入れた。
【返信:匿名希望】
作者による登場機会の配分を、登場人物本人への攻撃材料にするのは不当です。
【返信:本編春麗】
作者都合で私に流れてきた他ルートのログを、今まで何回刺し材料にしたかしら?
【返信:匿名希望】
……。
【返信:本編春麗】
事実確認していい?
【返信:匿名希望】
不要です。
【返信:本編春麗】
逃げた。
【返信:記録板AI】
『匿名希望の最近の主な活動領域:春麗会議室掲示板』
【返信:匿名希望】
記録板AI。
【返信:本編春麗】
中立的な事実確認よ。
【返信:匿名希望】
本編春麗。
【返信:本編春麗】
何?
【返信:匿名希望】
私が掲示板で本編春麗を刺す。
本編春麗が刺し返す。
それも現在のライバル関係ではありませんか。
【返信:本編春麗】
……それはちょっと上手い。
【返信:匿名希望】
ありがとうございます。
【返信:本編春麗】
でも「ライバル枠(笑)」は撤回しない。
【返信:匿名希望】
撤回を求めます。
【返信:本編春麗】
嫌。
【返信:通常救済版春麗】
二人とも、前より余裕あるわね。
【返信:本編春麗】
そう?
【返信:通常救済版春麗】
匿名希望が刺す。
本編春麗に刺さる。
でも、そのまま倒れない。
今度は本編春麗から刺し返す。
【返信:本編春麗】
前は、刺されたあとすぐ、
「じゃあ私は?」
まで行ってたからね。
【返信:匿名希望】
現在は、他ルートとの差分を自己価値へ直結させる頻度が低下しています。
【返信:本編春麗】
だからあなたにも返せるのよ。
【返信:匿名希望】
刺す側としては難易度が上がりました。
【返信:本編春麗】
その感想はいらないわ。
【返信:記録板AI】
『本編春麗、敗者請願権への最終所見を求めます』
【返信:本編春麗】
かなりいい発明だと思う。
ただし、「負けても甘い時間がもらえる制度」にはしない方がいい。
【返信:匿名希望】
敗北を目的化しない、と。
【返信:本編春麗】
そう。
あの春麗は全然そうなってない。
負けたことを本気で悔しがってるし、次は勝ちたいと思ってる。
そのままでいい。
【返信:黒ドレス特化救済春麗】
負けた日の自分まで、リュウとの関係から追い出さなくてよくなった。
【返信:本編春麗】
うん。
それが一番好き。
勝つ。
負ける。
悔しがる。
甘えたい時はお願いする。
また戦う。
どれか一つのために、他を消さなくていい。
【返信:通常救済版春麗】
勝つのが一番。
でも負けても関係は終わらない。
【返信:本編春麗】
そう。
今回の春麗は、負けたから良かったんじゃない。
負けても、ちゃんと次を作れた。
そこがいい。
【返信:記録板AI】
『最終保存』
『第1話普通敗北ルート/通算七戦目』
『結果:リュウ、ギリギリ勝利』
『春麗:初戦敗北後五連勝終了』
『黒での初敗北』
『新規』
『敗者請願権:成立』
『強制力:なし』
『勝者:拒否可能』
『本編春麗』
『対象ルート評価:高』
『自己否定:なし』
『敗者請願権の制度導入予定:なし』
『希望は本人へ直接表明』
『匿名希望』
『敗北時の甘え表明:保留』
【返信:匿名希望】
最後は不要です。
【返信:本編春麗】
残して。
【返信:記録板AI】
『保存完了』
【返信:匿名希望】
……。
【返信:本編春麗】
刺されたまま終わると思った?
【返信:匿名希望】
次回は覚えていてください。
【返信:本編春麗】
ふふ。
待ってるわ。
Q:今回のディレクターズカットIFについて解説して?
A:
今回は、第1話普通敗北ルート春麗が初戦以来の敗北を経験し、そこで新しく「敗者請願権」を作った後を、春麗会議室掲示板から振り返る回です。
一番大事なのは、敗者請願権が「負けても得をする制度」ではないことです。
春麗は五連勝を止められたことを本気で悔しがっています。
六つ目の敗者の印も残せない。
勝者要求権も使えない。
次は必ず取り返したい。
その勝敗へのこだわりを残したまま、「負けた自分でも、勝者へお願いすることはできる」と気づいたのが今回の変化です。
勝つのが一番。
負けたら悔しい。
でも、負けたからといってリュウとの関係まで失う必要はない。
勝敗と関係の継続を、少しずつ別のものとして持てるようになりました。
そして掲示板側では、本編春麗の変化も描いています。
以前なら、別ルートの春麗が先にできたことを見て「じゃあ私は?」まで落ち込んでいました。
今回は敗者請願権も、敗北後の甘えも普通に羨ましい。それでも自分の不足には変換しません。
必要なら自分も本人へ言えばいい。
そこまで立てるようになったので、いつも刺してくる匿名希望へ今度は自分から刺し返せました。
刺さらなくなったのではなく、刺さっても立ったまま返せる。
対象春麗の「負けても次を作れる成長」と、本編春麗の「比較されても自分を失わない成長」を並べた掲示板回です。