また戦ってくれ――リュウと春麗、紙一重のライバル譚―― 作:エーアイ
黒いドレス姿の春麗とリュウが十度相打ちを続けた後、十一度目でついに決着がつく場合の分岐です。
前半は春麗が勝った場合、後半はリュウが場合です。
妄想章IF:続・春麗は、十度リュウと同じ高さに倒れる
春麗勝利パターン
十一度目の朝、春麗は鏡の前にいた。
黒いドレスを身につけている。
髪を下ろし、目元を整え、裾の位置を確かめる。
もう、何度も繰り返した動作だった。
けれど、今日は違う。
十度、リュウと同じ高さに倒れた。
十度、届いた。
十度、届かれた。
十度、最後に立てなかった。
その記憶が、黒いドレスの中に沈んでいる。
春麗は鏡の中の自分を見た。
「今日は、私だけが立つ」
声は静かだった。
強がりではない。
誓いだった。
修行場で、リュウは待っていた。
リュウも変わっている。
黒を待たない。
青も待たない。
春麗が何を選んでも、その意味ごと見る。
それはもう、春麗にもわかっている。
リュウは黒いドレスを見る。
下ろした髪を見る。
裾を見る。
素足の踏み込みを見る。
そして、待たない。
十度の相打ちで、リュウはそれを覚えた。
だから春麗も、もう見せてずらすだけでは勝てない。
今日の黒は、見せるための黒ではない。
立つための黒だった。
春麗は踏み込んだ。
リュウも来る。
一度目と同じように。
五度目と同じように。
十度目と同じように。
互いに、最後の場所を知っている。
だから、春麗は最後の一歩だけを変えた。
リュウが拳を届かせる瞬間。
春麗が掌底を入れる瞬間。
十度、二人が同時に倒れた場所。
そこで春麗は、倒れるための踏み込みをしなかった。
踏み込んだまま、軸を残した。
リュウの拳が肩口に入る。
痛い。
呼吸が止まる。
だが、春麗は倒れない。
足が土を噛む。
黒いドレスの裾が揺れる。
身体が沈む。
逃げない。
そのまま、春麗の掌底がリュウの胸元へ深く入った。
リュウの身体が止まる。
一瞬、二人の距離が固まった。
春麗は倒れなかった。
リュウの膝が土に落ちる。
春麗は立っていた。
黒いドレスの裾は土で汚れている。
肩は痛む。
腕も震えている。
息は乱れている。
それでも、立っていた。
十一度目にして、初めて。
春麗はリュウを見下ろした。
胸の奥が熱い。
勝った。
やっと。
やっと、同じ高さではなくなった。
春麗は、かすれた声で言う。
「……十一度目ね」
リュウは片膝をついたまま、春麗を見る。
悔しそうだった。
だが、折れていない。
その顔を見て、春麗はさらに満たされた。
「やっと、私だけが立ったわ」
リュウは静かに答える。
「届いたと思った」
春麗は微笑む。
「届いたわよ」
少し間を置いて、言葉を続ける。
「でも、今日は倒れなかった」
それが、春麗の勝利だった。
リュウに届かせなかったのではない。
リュウの拳は届いた。
それでも倒れなかった。
十度の相打ちで得た答えは、そこにあった。
春麗はリュウの拳を否定しなかった。
黒いドレスの自分を見られることも否定しなかった。
届かれることも恐れなかった。
そのうえで、最後に立った。
春麗は思う。
これが欲しかった。
リュウと届き合うことではない。
同じ高さに倒れることでもない。
届き合ったうえで、私だけが立つこと。
春麗はリュウを見下ろし、勝者として笑った。
「次は、あなたが倒れない方法を考えてきなさい」
リュウは拳を握る。
「そうする」
春麗は満足した。
この答えを待っていた。
黒いドレスの裾が、朝の風に揺れる。
十度、同じ高さに倒れた。
十一度目で、春麗だけが立った。
その瞬間、黒いドレスはまた意味を変えた。
敗北の黒でもない。
相打ちの黒でもない。
リュウに届かれたうえで、最後に立った黒。
春麗は静かに息を整えながら思う。
次も、あなたは来る。
でも、次も私が立つ。
今度は、最初からそのつもりで待っているわ、リュウ。
妄想章IF:続・リュウは、十度春麗と同じ高さに倒れる
リュウ勝利パターン
十一度目の朝、リュウは修行場にいた。
十度、春麗と同じ高さに倒れた。
黒いドレスの春麗に届いた。
だが、十度、倒しきれなかった。
拳は入っていた。
春麗の肩に。
胸元に。
呼吸を止める場所に。
だが、そのたびに春麗も届いていた。
掌底。
蹴り。
膝。
黒いドレスのまま踏み込んでくる春麗。
互いに届いて、互いに倒れた。
リュウは、その十度を思い返す。
待たなければ届く。
それはわかった。
だが、届くだけでは足りない。
届いた後、倒れない軸が必要だった。
春麗に届き、春麗の一撃も受け、そのうえで立つ軸。
リュウは、拳を握る。
今日は、そこまで行く。
春麗が現れた。
黒いドレス。
髪を下ろし、目元を整え、裾の位置も作られている。
今日の春麗も、本気で来ている。
十度、同じ高さに倒れた黒。
十一度目でも、春麗はそれを着てきた。
リュウは見る。
黒いドレスを見る。
春麗の足を見る。
目を見る。
呼吸を見る。
そして、そのすべてに反応する自分も見る。
待たない。
だが、今日はそれだけではない。
倒れない。
戦いが始まる。
春麗は深く踏み込んできた。
黒いドレスを見せるためではない。
黒いドレスのまま届きに来る。
十度の相打ちの後、春麗も変わっている。
最後の一歩を残そうとしている。
倒れないための軸を作ろうとしている。
リュウと同じ高さに落ちないために。
リュウにはそれがわかった。
春麗も、今日は立つつもりだ。
それでいい。
そうでなければ困る。
中盤、二人はほとんど同じ速度で読み合った。
春麗が踏み込む。
リュウが半歩入る。
春麗が軸をずらす。
リュウが拳を置く。
春麗が黒い裾ごと距離を詰める。
リュウは退かない。
相打ちの流れが、何度も生まれかける。
そのたびに、どちらかが一歩を変える。
十度重ねた相打ちの記憶が、二人を縛り、同時に磨いていた。
最後。
春麗が来る。
リュウにはわかった。
これは勝ちに来る一歩だ。
相打ちではない。
逃げでもない。
黒いドレスのまま、自分だけが立つための踏み込み。
リュウも踏み込む。
春麗の掌底が来る。
十度なら、ここで同時に倒れていた。
リュウの拳も春麗に入り、春麗の掌底もリュウに入り、二人とも足が残らなかった。
だが、今日は違う。
リュウは拳を届かせた後の軸を残した。
春麗の掌底が胸元に入る。
衝撃。
息が詰まる。
だが、足を引かない。
膝を落とさない。
踏み込んだ足を、土に沈める。
リュウの拳が、春麗の肩口へ入る。
深い。
春麗の身体が止まる。
それでも春麗は倒れまいとした。
黒いドレスの裾が揺れる。
足が土を噛む。
目は折れていない。
だが、リュウはもう一歩、軸を残していた。
拳を打った後、崩れない。
春麗の一撃を受けても、倒れない。
春麗の膝が、先に土へ落ちた。
リュウは立っていた。
息は乱れている。
胸は痛い。
春麗の掌底の重さが、まだ身体の奥に残っている。
けれど、立っていた。
十一度目にして、初めて。
春麗が見上げている。
黒いドレスのまま。
悔しそうに。
けれど、目は強いまま。
リュウは静かに息を吐いた。
勝った。
だが、誇る気持ちより先に、重さが来た。
十度、同じ高さに倒れた春麗を、今日は見下ろしている。
それは軽いものではなかった。
春麗が、かすれた声で言う。
「……立ったのね」
リュウは答える。
「ああ」
春麗の唇が、悔しそうに歪む。
「私だけが立つつもりだったのに」
リュウは短く言う。
「俺もだ」
春麗は一瞬黙った。
そして、悔しそうに笑う。
「そう。なら、今日はあなたの勝ちね」
その言葉は、春麗にしては素直だった。
だからこそ、リュウには深く刺さった。
春麗は続ける。
「でも、勘違いしないで」
リュウを見る目が鋭くなる。
「次は、私が立つわ」
リュウは頷く。
「来い」
春麗は小さく息を呑む。
それから、笑った。
「言うようになったじゃない」
リュウは、拳を下ろさなかった。
春麗はまだ終わっていない。
今日、リュウは立った。
だが、春麗が折れたわけではない。
むしろ、ここからだ。
十度の相打ちで、リュウは届くことを覚えた。
十一度目で、届いた後に立つことを覚えた。
だが次は、春麗もそこを越えてくる。
リュウはわかっている。
春麗は、この敗北を持ち帰る。
黒いドレスで見上げたこと。
十度同じ高さに倒れた後、十一度目でリュウだけが立ったこと。
その悔しさを、次の黒に入れてくる。
リュウは思う。
次の春麗は、もっと深い。
だから、自分もここで止まれない。
春麗はゆっくり立ち上がろうとする。
リュウは手を出さない。
春麗も求めない。
それでいい。
春麗は自分で立つ。
黒いドレスの裾についた土を払いながら、春麗はリュウを見る。
「十一度目でやっと、ね」
リュウは答える。
「十度、倒れたからだ」
春麗は目を細める。
その言葉は、春麗にもわかったのだろう。
十度の相打ちは無駄ではなかった。
リュウだけではない。
春麗にも積み上がっている。
だが、今日はリュウが立った。
春麗は背を向ける前に、もう一度だけ言った。
「次は、同じ高さにもさせないわ」
リュウは静かに返す。
「俺もだ」
春麗は笑った。
今度は、はっきりと悔しそうに。
その背中を見送りながら、リュウは拳を握る。
届いた。
立った。
だが、終わっていない。
黒いドレスの春麗に勝った。
けれど、それは春麗を終わらせる勝利ではない。
次の春麗を呼ぶ勝利だ。
リュウは、胸に残る掌底の痛みを感じながら思った。
次も、待たない。
次は、立った先でもう一歩進む。
Q:自分がめんどくさい女と自覚する前の黒いドレス姿の春麗の色々な煽りパターンについて教えて?
A:
1. 見ていることを刺す煽り
「見ているわね、リュウ」
「目は逸らさないのね。そこは褒めてあげる」
「でも、見ているだけじゃ届かないわ」
「足を見ていたの? それとも、私を見ていたの?」
「ちゃんと見て。見逃したら、次は受けられないわよ」
「見なければ負ける。見ても遅れる。大変ね、リュウ」
「今、拳に出たわよ。私を見たこと」
「隠さなくていいわ。あなたの拳は、あなたより正直だから」
2. 黒ドレスの特別感を匂わせる煽り
「この姿で戦う時に、余計な目はいらないわ」
「観客がいたら、あなたの目が濁るでしょう?」
「今日は、あなたの拳だけを見に来たの」
「この黒を前にして、いつも通りでいられる?」
「青い私とは違うわよ。今日は、ちゃんと黒い私を相手にしなさい」
「この姿で来た意味くらい、拳で答えてみせなさい」
「私が黒を選んだ理由、あなたならわかるでしょう?」
3. リュウの遅れを刺す煽り
「遅いわ。今の一拍、命取りよ」
「踏み込みが浅いわね。黒に遠慮しているの?」
「拳が硬いわ。見たものをまだ沈めきれていない」
「今のあなた、半歩だけ優しいわよ」
「その半歩で、私は勝つわ」
「迷ったわね。ほんの少しだけ。でも、私には十分」
「見てから拳に戻すまでが遅いのよ、リュウ」
「惜しいわね。届く前に、あなたの呼吸が先に乱れた」
4. 「捕まえる/逃がす」系の煽り
「捕まえるつもりなら、もっと深く来なさい」
「その手で私を捕まえるつもり?」
「触れただけで捕まえた気にならないことね」
「残念。そこは、もう私が逃げる場所じゃないわ」
「捕まえに来た手を、また使わせてもらうわよ」
「今のは惜しかったわ。あと半歩で、私を怖がらせられたのに」
「逃げているように見えた? 誘っていたのよ」
「捕まえたと思った瞬間が、一番危ないのよ」
5. 勝者の余裕がある煽り
「今日はよく見えているわ、リュウ。あなたの遅れが」
「悪くないわ。でも、悪くないだけじゃ私は倒せない」
「その目は好きよ。でも、その拳はまだ足りない」
「悔しがる準備はできている?」
「今日は、あなたが追いつく前に終わりそうね」
「いい顔になってきたわ。でも、まだ勝者を見る顔じゃない」
「もっと来なさい。私が退屈する前に」
「その悔しさ、次に持ってくる前に、今日は倒れておきなさい」
6. ギリギリ勝利後の煽り
「危なかったわ。でも、危なかっただけよ」
「届きかけたわね。届きかけただけだけど」
「今の拳、少しだけ怖かったわ。少しだけね」
「あと一拍早ければ、違ったかもしれないわね」
「でも、その一拍を取ったのは私よ」
「今日は私が立っている。それが全部でしょう?」
「悔しい? なら、その顔を覚えておきなさい」
「次はもっと来なさい。今日のあなたでは、まだ足りないわ」
7. 相打ち後の煽り
「……同じ高さなんて、納得できないわね」
「黒い私と一緒に倒れるなんて、贅沢ね」
「勝っていないのに、少し満足している自分が腹立たしいわ」
「今日は待たなかったのね。やっとわかってきたじゃない」
「でも、同じ高さで満足しないことね。私は次、立つわ」
「引き分けで終わったと思わないで。これは次の前置きよ」
「あなたと仲良く倒れるために、この黒を着ているんじゃないわ」
「次は、私だけが立つ。あなたはそこで見上げていなさい」
8. 春麗が負けた後の負け惜しみ系
「……よくも、私に見上げさせたわね」
「今日だけよ、リュウ」
「黒い私に勝ったくらいで、全部わかった顔をしないことね」
「届いたわね。でも、次も届くと思わないで」
「その拳、覚えたわ。次は私が先に潰す」
「勝者の顔をするなら、もっと堂々としなさいよ」
「悔しいわ。ええ、悔しい。だから次は、あなたが悔しがる番」
「いい拳だったわ。だから余計に腹が立つのよ」
9. リュウの成長を認める煽り
「やっとここまで来たのね」
「遅いのよ、リュウ。でも、来たことは認めてあげる」
「前より深いわ。その拳」
「もう黒を待たないのね。少しは学んだじゃない」
「今日は、私を見ていたわね。黒だけじゃなく、私を」
「そう。その踏み込みよ。最初からそれを持ってきなさい」
「認めてあげる。今のあなたは、少し危なかった」
「でも、認めることと負けることは別よ」
10. メイク・準備込みの煽り
「今日は、鏡の前から私の勝ちだったのかもしれないわね」
「この黒を整えた時間まで、あなたは相手にしていたのよ」
「何も言わなかったわね。でも、拳には出ていたわ」
「見ていたでしょう? 目元も、裾も、踏み込みも」
「準備してきた私に、準備なしで勝てると思った?」
「黒を着る時は、戦いはもう始まっているの」
「あなたが私を見た時には、もう一拍遅れていたわ」
「次は、私が現れる前から構えておきなさい」
11. 青い武道服との比較煽り
「青い私なら、速さで置いていく。黒い私は、見たことを後悔させるわ」
「今日は青じゃない。反応の速さだけでは追いつけないわよ」
「青い私を待っていたの? 残念。今日は黒よ」
「黒い私を待っていたの? なら、その待ち方ごと崩してあげる」
「青でも黒でも、最後に立つのは私。そこだけ覚えておきなさい」
「どの私が来るかを読むところから、もう戦いは始まっているのよ」
「青い私には置いていかれる。黒い私には見透かされる。忙しいわね、リュウ」
12. 少し甘さがある煽り
「その目、嫌いじゃないわ」
「悔しそうね。そういう顔、悪くないわよ」
「もっと来なさい。今日は、そこまでは見てあげる」
「私を焦らせたいなら、もう少しだけ深く」
「今の拳、少しだけ嬉しかったわ。悔しいけど」
「そう、その顔よ。私が見たかったのは」
「負けた顔じゃないわ。次に来る顔をしている」
「だから、あなたと戦うのは困るのよ」
13. かなり強めの女王様寄り煽り
「膝をつきなさい、リュウ。今日はそこがあなたの場所よ」
「見上げる準備はできた?」
「私を捕まえるつもりで来て、あなたが落ちるのね」
「その悔しさ、綺麗に拳にしまっておきなさい。次も折ってあげる」
「今日は、私の黒に届かなかった。それだけよ」
「倒れるなら、ちゃんと私を見たまま倒れなさい」
「勝者を見る目は、悪くないわ」
「その顔を見られただけでも、この黒を着た甲斐があったわ」
14. リュウを燃やすための煽り
「悔しいなら、次はもっと深く来なさい」
「その程度の悔しさなら、拳に変える前に消えるわよ」
「私は待ってあげないわ。追いつきなさい」
「今日の負けを、次の一歩に変えてみせなさい」
「その拳、まだ私を焦らせきれていない」
「届きたいなら、見ているだけの時間を減らしなさい」
「私を倒したいなら、私を見た自分ごと越えてきなさい」
「次は、私が本気で焦るところまで来なさい」
15. 一番“黒ドレス春麗らしい”決め台詞候補
「見なければ負ける。見ても遅れる。大変ね、リュウ」
「黒を着る時は、戦いは鏡の前から始まっているの」
「何も言わなかったわね。でも、拳には出ていたわ」
「足を見ていたの? それとも、私を見ていたの?」
「捕まえたと思った瞬間が、一番危ないのよ」
「黒い私を待っていた分、少し遅れたわね」
「今日は待たなかったのね。やっとわかってきたじゃない」
「同じ高さなんて、納得できないわ。次は私だけが立つ」
「よくも、私に見上げさせたわね」
「私を見た自分ごと、越えてきなさい」