また戦ってくれ――リュウと春麗、紙一重のライバル譚―― 作:エーアイ
黒いドレスの裾が、まだわずかに揺れていた。
戦いは終わっている。
勝ったのは春麗だった。
圧勝ではない。
けれど、今日は余裕があった。
リュウは来た。
黒を見た。
揺れた。
それでも踏み込んできた。
だが、春麗は崩れなかった。
見られることも。
リュウが来ることを期待していることも。
その期待に応えようとする拳を、さらに上から押さえることも。
全部、引き受けていた。
だから勝った。
黒いドレスの春麗として。
面倒な自分を隠さない春麗として。
リュウは石畳に片膝をついていた。
肩で息をしている。
右腕が少し下がっている。
胸に入った掌底のせいで、呼吸も浅い。
春麗は、それを見た。
見てしまった。
その瞬間、勝利の余韻とは別の何かが胸の奥で強く跳ねた。
痛んでいる。
リュウが。
自分が打った場所で。
自分の黒を受けに来た身体が。
春麗は、わずかに眉を寄せた。
おかしい。
ただの戦後確認のはずだった。
どこに入ったか。
どれだけ効いたか。
次にどう立て直してくるか。
それを見るのは、格闘家として当然のこと。
なのに、リュウの腕が下がっているだけで、思った以上に気になる。
肩の動きが悪いだけで、胸の奥が少しざわつく。
自分で打ったくせに。
勝ったくせに。
春麗は内心で舌打ちした。
本当に、反応が大きい。
自分がめんどくさい女だと自覚してから、こういうところが厄介になった。
リュウが少し深く来るだけで満たされる。
リュウが少し遅れるだけで不満になる。
リュウが自分の選択を見抜きかけるだけで、胸が騒ぐ。
そして今は、リュウが傷んでいるだけで、気になっている。
勝者として見下ろしていればいい。
次も来なさい、と煽ればいい。
なのに。
リュウは立とうとした。
「大丈夫だ」
その一言で、春麗の中のざわつきが別の形に変わった。
苛立ち。
かなり強い苛立ちだった。
大丈夫。
この男は、いつもそう言う。
負けても。
打たれても。
膝をついても。
明らかに身体がきしんでいても。
大丈夫だと言う。
その言葉が、今日はやけに腹立たしかった。
大丈夫かどうかを、なぜあなたが勝手に決めるの。
私が打ったのよ。
私が崩したのよ。
私が、あなたのどこにどれだけ入ったか、一番わかっているのよ。
そこまで考えて、春麗はまた自分に腹が立った。
何をそんなに反応しているの。
たかが、リュウが大丈夫だと言っただけ。
なのに、刺さりすぎている。
春麗はゆっくりリュウへ近づいた。
黒いドレスの裾が、石畳の上を静かに揺れる。
リュウが顔を上げる。
「春麗」
「動かないで」
声が思ったより強く出た。
リュウは止まった。
春麗はリュウの前に膝をついた。
黒いドレスのまま。
勝者が敗者の前に屈む形になる。
本来なら、あまり見せたい姿ではない。
それでも春麗は、リュウの肩に手を伸ばした。
リュウの身体がわずかに強張る。
「大丈夫だと言った」
「聞いたわ」
春麗は、リュウの肩に指を置いた。
熱を持っている。
打撃を受けた部分が固い。
腕も上がりにくい。
思ったより悪い。
そう判断した瞬間、胸の奥がまた跳ねた。
大きすぎる。
ただの確認なのに。
リュウの傷の程度を見ただけなのに。
春麗は、少しだけ指に力を込めた。
「大丈夫かどうかは、私が見て決めるわ」
リュウは黙った。
春麗は布を取り出し、リュウの肩へ当てた。
戦いの後に使うための簡単な手当て道具。
格闘家なら持っていて当然。
自分の怪我にも、相手の怪我にも、最低限の処置ができるのは当然。
そう。
これは当然のことだ。
これは気遣いではない。
次もちゃんと戦える状態で来てもらわないと困るから。
弱ったリュウを倒しても、何も面白くないから。
ここまで来る男を、雑に壊してしまうのは惜しいから。
それだけ。
本当に、それだけ。
春麗はそう自分に言い聞かせた。
だが、その言い聞かせが必要な時点で、すでに面倒だった。
春麗は布を巻きながら言った。
「勘違いしないで」
リュウが春麗を見る。
その視線だけで、また少し指先が遅れた。
見ないで。
いや、見なさい。
違う。
今はそういう場面ではない。
春麗は内心で自分に呆れた。
「あなたが弱ったままだと、次の勝負がつまらないだけよ」
声はうまく出た。
勝者の声。
少し冷たく、少し余裕があって、少し突き放す声。
リュウは真面目に聞いていた。
疑わない。
茶化さない。
深読みもしない。
ただ、静かに頷く。
「助かる」
それだけだった。
春麗の手が止まった。
完全に、止まった。
助かる。
短い言葉。
ただのお礼。
何の飾りもない。
春麗の言い訳を暴くわけでもない。
こちらの面倒な内心を覗くわけでもない。
それなのに、深く刺さった。
刺さりすぎた。
春麗は胸の奥で、何かが熱く広がるのを感じた。
やめなさい。
ただの礼でしょう。
勝った相手に手当てされて、礼を言っただけでしょう。
それなのに。
リュウが自分の手当てを受け入れた。
春麗の手を拒まなかった。
春麗の言い訳ごと、そのまま受け取った。
それが、妙に嬉しい。
嬉しいと思った瞬間、春麗は腹が立った。
本当に面倒。
リュウの一言で、ここまで反応するなんて。
以前なら、もう少し軽く流せたはずだった。
「当然よ。次はもっと粘りなさい」とでも言って終わらせられた。
でも今は違う。
自分がリュウに何を求めているかを知ってしまっている。
来てほしい。
届いてほしい。
見てほしい。
でも負けたくない。
倒した後も、次にまた来られる状態でいてほしい。
そこまで全部わかっているから、反応が逃げ場を失う。
春麗はようやく手を動かした。
「……そういうところよ」
「何がだ」
「何でもないわ」
少しだけ強く布を締める。
リュウが小さく息を漏らした。
春麗はすぐに手を緩めた。
「痛かった?」
「少し」
「なら最初からそう言いなさい」
「大丈夫だ」
春麗の目が鋭くなる。
「今それを言ったら怒るわよ」
リュウは黙った。
その沈黙が妙に素直で、また春麗の胸に引っかかった。
本当に、手間がかかる。
リュウの肩を固定しながら、春麗は思う。
この身体が、また来る。
この腕が、また拳を出す。
この肩が、また春麗の黒の中へ入ってくる。
この呼吸が、また近くなる。
そう思っただけで、次の戦いが少し楽しみになっている。
手当てをしている最中なのに。
自分で傷ませておいて。
春麗は、唇を引き結んだ。
黒いドレスで勝った後の自分は、もっと余裕があるはずだった。
勝者として、リュウを見下ろして、責任をまだ取りきれていないわねと笑えばよかった。
それなのに今、自分はリュウの肩に布を巻いている。
しかも、その一挙手一投足にいちいち反応している。
面倒。
本当に面倒。
でも、この面倒さをもう否定できない。
自覚してしまったから。
自分は、リュウ関連のことになると、明らかに反応が大きくなる。
リュウが来れば嬉しい。
リュウが遅れれば不満。
リュウが痛んでいれば気になる。
リュウが礼を言えば刺さる。
それを知っている。
知っていて、それでも手を止めない。
春麗は最後の結び目を作った。
「これで少しは動くでしょう」
リュウは腕を軽く動かした。
表情はあまり変わらない。
だが、痛みはあるはずだ。
春麗はそのわずかな肩の硬さを見逃さなかった。
見逃さない自分にも呆れた。
「助かった」
また言った。
春麗はリュウを睨んだ。
「二回も言わなくていいわ」
「そうか」
「そうよ」
「だが、助かった」
春麗は言葉に詰まった。
二回どころか、三回目を言いかけている。
やめなさい。
本当にやめなさい。
そんな真面目な顔で言わないで。
春麗は立ち上がった。
黒いドレスの裾を軽く払う。
勝者の姿に戻る。
少なくとも、外側だけは。
指先には、まだリュウの熱が残っていた。
肩に触れた感触。
布越しの体温。
痛みをこらえる微かな緊張。
全部、残っている。
残りすぎている。
春麗は内心で深く息を吐いた。
これも、あのデメリットね。
そんな言い方をするなら、まさにそうだった。
自分がめんどくさい女だと自覚したことで、黒も青も強くなった。
けれど代わりに、リュウに関する何もかもが余計に刺さるようになった。
言葉も。
視線も。
怪我も。
沈黙も。
「助かる」の一言まで。
リュウはゆっくり立ち上がる。
少しふらついた。
春麗は反射的に手を伸ばしかけて、止めた。
リュウは自分の足で立った。
春麗はそれを見て、ほんの少しだけ安心した。
安心した自分に、また腹が立った。
「次は、その腕を言い訳にしないことね」
リュウは静かに答えた。
「言い訳にはしない」
「でしょうね」
春麗は少しだけ笑った。
「だから手当てしたのよ」
「次のためか」
「そう。次のため」
春麗は即答した。
早すぎるほどに。
リュウは頷く。
「なら、次も来る」
春麗の胸が、強く跳ねた。
まただ。
また、たった一言で。
次も来る。
それだけで、春麗の中の何かが満たされる。
同時に、不満にもなる。
来るなら、もっと深く来なさい。
でも、壊れて来られても困る。
弱ったままでは嫌。
でも、強くなりすぎても困る。
矛盾だらけ。
面倒そのもの。
春麗は視線を逸らしそうになり、逸らさなかった。
「来なさい」
声は勝者のものだった。
「今度は、手当てする必要がないくらい上手く倒れてみせなさい」
リュウは少しだけ考えた。
「倒れないようにする」
春麗は目を細める。
「そういう返しは嫌いじゃないわ」
嫌いじゃない。
かなり好きだ、とは言わない。
言うわけがない。
春麗は背を向けた。
これ以上そばにいると、余計なことを言いそうだった。
勝者の煽りではなく。
格闘家としての評価でもなく。
もっと面倒な言葉を。
黒いドレスの裾が、夜の空気に揺れる。
背中に、リュウの視線を感じた。
春麗は振り返らない。
振り返ったら、きっとまた何かに反応する。
それがわかっているから、振り返らない。
「リュウ」
それでも名前を呼んでしまった。
「何だ」
「次は、もう少し避けなさい」
リュウは短く答える。
「努力する」
「努力じゃ足りないわ」
声には、少しだけ柔らかさが混じった。
春麗はそれに気づき、すぐに歩き出した。
聞かれていない。
たぶん。
聞かれていても、リュウなら意味を取り損ねる。
それが少し腹立たしくて、少しだけ安心だった。
次もちゃんと戦える状態で来てもらわないと困る。
ただ、それだけ。
本当に、それだけ。
春麗は自分に言い聞かせる。
だが、指先に残ったリュウの熱は、しばらく消えなかった。
黒いドレスで勝った春麗は、勝者のまま修行場を後にした。
ただし、その胸の奥では、リュウの「助かる」という一言が、勝利の余韻よりも長く残っていた。
めんどくさい女と自覚した春麗にはデメリットとして『リュウ関連イベントへの感情反応倍率上昇』が常時パッシブスキルとして発動しています。
Q:断章を見ると『リュウ関連イベントへの感情反応倍率も上昇』のデメリットは結構大きい気がしますが、このマイナススキルは戦闘時には影響しないという認識であっていますか?
A:
はい。基本認識としては 「戦闘中には直接デバフとしては発動しない」 でよいです。
ただし、完全に無影響ではなく、正確にはこうです。
戦闘中はマイナススキルではなく、燃料・感度・読みの強化として働く。
戦闘後や幕間では、感情反応の増幅としてデメリットが表面化する。
この整理が一番しっくり来ます。
戦闘中はむしろ強化寄り
自覚後の春麗は、リュウ関連イベントへの反応が大きくなっています。
リュウが来る。
リュウが踏み込む。
リュウが見てくる。
リュウが届きかける。
リュウが黒や青の意味を読もうとする。
これらに対して春麗は大きく反応します。
ただ、戦闘中の春麗は、その反応をかなり高い精度で 戦闘資源に変換できる。
だから戦闘中は、
リュウへの期待が集中力になる
リュウへの苛立ちが踏み込みになる
リュウへの嬉しさが読みの鋭さになる
リュウに届かれた焦りが即座の切り替えになる
リュウを待っている自覚が責任圧になる
という形で、むしろバフとして機能します。
RPG的に言うなら、戦闘中はこのスキルは、
感情反応倍率上昇:ON
ただし春麗の戦闘変換率が高いため、精神バフとして処理される
という状態です。
戦闘後にデメリット化する
問題は戦闘後です。
戦闘中は、勝つ・読む・避ける・踏み込むという目的があるため、感情が行動に変換されます。
でも戦闘が終わると、変換先がなくなる。
すると、リュウの一言や怪我や視線が、そのまま春麗の内側に残る。
今回の断章がまさにそれです。
リュウが傷んでいる。
リュウが「大丈夫だ」と言う。
リュウが「助かる」と言う。
リュウが「次も来る」と言う。
戦闘中なら、これらは読みや圧に変換される。
でも戦後なので、春麗の感情に直接刺さる。
だから、
戦闘中=制御できる高出力エンジン
戦闘後=出力が余って内側で暴れる
という感じです。
戦闘中でも例外はある
ただし、戦闘中にまったくマイナスがないわけではありません。
例外的に、リュウが春麗の予想外の方向から深く刺してきた時は、戦闘中でも揺れます。
たとえば、
リュウが春麗の選択の意味を即座に読む
春麗が待っていない場所から来る
春麗の責任圧を逃げずに外す
リュウが戦闘中に春麗の本質を短く言語化する
春麗が「この一手は私の中になかった」と感じる
この場合は、戦闘中でも一瞬だけ感情反応倍率上昇がデメリット化します。
ただし春麗は強いので、その揺れをすぐ戦闘に戻します。
つまり、戦闘中の影響は、
通常時:バフ
予想外のリュウの本質到達時:一瞬デバフ
戦後:明確なデメリット
です。
黒ドレス時は特に戦後反動が大きい
黒ドレス春麗は、リュウに見られることや責任を求めることを前提にしています。
だから戦闘中は強い。
でもそのぶん、戦後にリュウから返ってくるものが刺さりやすい。
今回の「助かる」はかなり効きました。
なぜなら、黒ドレス春麗は戦闘中に、
見なさい。
来なさい。
責任を取りに来なさい。
とリュウへ圧をかけている。
その後でリュウが素直に、
助かる。
次も来る。
と返す。
これは春麗の内部に直接入ります。
黒でリュウを揺らした春麗が、戦後にリュウの素直さで揺らされる。
この反動がデメリットです。
結論
認識としては、
戦闘時には基本的にマイナススキルではない。
むしろ春麗は感情反応の大きさを戦闘力へ変換できる。
で合っています。
ただし、
戦闘後・幕間・断章では、変換先がなくなるため、リュウの言葉や怪我や視線がそのまま刺さる。
その時に「リュウ関連イベントへの感情反応倍率上昇」がデメリットとして表面化する。
という設定が一番おいしいです。
一言でまとめるなら、
戦闘中の春麗は、リュウへの過剰反応を武器にできる。
でも戦闘が終わると、その武器が自分の胸に刺さる。
この扱いが、本作の自覚後春麗にはかなり合っています。
Q:この断章の春麗について解説して?
A:
執筆者として見ると、この断章の春麗はかなり重要です。
この春麗は、単に「リュウを心配している春麗」ではありません。
もっと正確に言うと、自分がリュウを気にしていることを理解してしまっているのに、それを“次の勝負のため”という言い訳で処理しようとしている春麗です。
そして、その言い訳がもう本人にも完全には通用していない。
この春麗は勝者なのに、心理的には少し負けている
戦闘結果だけ見れば、春麗の余裕勝ちです。
黒ドレスで勝った。
リュウは傷んでいる。
春麗は立っている。
リュウは片膝をついている。
構図としては完全に春麗が上です。
でも断章内の心理を見ると、春麗はリュウの一挙手一投足にかなり揺らされています。
リュウの腕が下がっているだけで気になる。
「大丈夫だ」に苛立つ。
「助かる」が深く刺さる。
「次も来る」で胸が跳ねる。
つまり、勝負では勝っているのに、感情の反応ではリュウにかなり持っていかれている。
ここが非常に良いです。
「感情反応倍率上昇」がよく出ている
この断章の春麗は、自覚後のデメリットがかなり発動しています。
リュウが怪我をしている。
普通なら「効いたわね」で済む。
でもこの春麗はそうならない。
自分が打った場所で、リュウが傷んでいる。
という事実に過剰に反応してしまう。
さらにリュウの「助かる」というただの礼にも反応する。
これはまさに、
リュウ関連イベントへの感情反応倍率上昇
です。
リュウの一言が、普通の一言で終わらない。
リュウの痛みが、ただの戦闘結果で終わらない。
リュウの「次も来る」が、ただの再戦宣言で終わらない。
全部が春麗の中で増幅されます。
春麗の言い訳がかなり春麗らしい
この断章で一番春麗らしいのは、手当ての理由をこう処理しているところです。
次もちゃんと戦える状態で来てもらわないと困るから。
弱ったリュウを倒しても、何も面白くないから。
ここまで来る男を、雑に壊してしまうのは惜しいから。
これは全部、本当です。
春麗は本当に、弱ったリュウでは満足できない。
ちゃんと立って、ちゃんと向かってきて、ちゃんと春麗を焦らせるリュウでなければ嫌なのです。
でも、それだけではない。
リュウの痛みを気にしている。
リュウが自分の手当てを受け入れたことが嬉しい。
リュウが礼を言ったことが刺さっている。
つまり、春麗の言い訳は嘘ではないが、全部でもない。
ここが面倒です。
黒ドレス春麗なのが効いている
この断章は、青い武道服ではなく黒ドレスだからこそ強いです。
黒ドレス春麗は、リュウに責任を取りに来させる側です。
見なさい。
来なさい。
揺れても止まらず踏み込みなさい。
私をここまで期待させた責任を取りなさい。
そういう圧をかける側。
なのに戦後、今度は春麗の方がリュウの状態に反応してしまっている。
つまり、黒ドレスでリュウを揺らした春麗が、戦後にはリュウの「助かる」に揺らされている。
これはかなり良い反転です。
春麗は黒で勝った。
でも、黒で勝った後の余韻を、リュウの短い一言に上書きされかけている。
ここが自覚後春麗のデメリットとして非常においしいです。
この春麗は「優しい」のではなく「面倒に気にしている」
重要なのは、この春麗を単純に優しい春麗として読むと少し違うことです。
もちろん優しさはあります。
でも本人はそれを認めない。
それに、純粋な慈愛だけで手当てしているわけでもない。
リュウには次も来てほしい。
強い状態で来てほしい。
弱ったままでは嫌。
でも壊れてほしくもない。
自分が倒したい。
でも自分が傷めた場所が気になる。
礼を言われると刺さる。
これは優しさというより、リュウに対する期待と所有に近い気遣いです。
「壊れたら困る」
「次も来ないと困る」
「弱ったまま来られても困る」
この“困る”が春麗の本音です。
リュウの素直さが春麗をさらに面倒にしている
リュウは本当に厄介です。
春麗の言い訳を疑わない。
「助かる」と素直に言う。
「次も来る」と当然のように言う。
「倒れないようにする」と返す。
どれも短い。
でも全部、春麗に刺さる。
春麗からすると、リュウは無自覚に春麗の反応倍率を踏み抜いてきます。
リュウは計算していない。
だから余計に効く。
春麗がどれだけ勝者の顔を作っても、リュウの素直な一言で内側が揺れる。
これは本作の二人の関係としてかなり強いです。
この断章の春麗は「自覚後の弱点」を見せている
本編の春麗は、自覚後に強くなりました。
黒を言い訳にしない。
青にも面倒さを還元できる。
責任圧も使える。
リュウの待ち方も読める。
でもこの断章では、その強化の代償が見えています。
自覚したことで、春麗はもう自分の反応をごまかせない。
リュウを気にしていないふりはできる。
でも、気にしている自分を自分では見てしまう。
だから余計に面倒になる。
この春麗は、
強くなった春麗の、戦闘外での脆さ
を見せています。
結論
この断章の春麗は、非常に「自覚後春麗」らしいです。
黒ドレスで余裕勝ちした勝者。
でも戦後、リュウの傷と一言に過剰反応してしまう。
手当てを「次の勝負のため」と言い訳する。
その言い訳が嘘ではないから余計に面倒。
リュウの「助かる」「次も来る」が刺さりすぎる。
それでも最後まで勝者の顔を崩さない。
一言で言うなら、
この春麗は、黒ドレスでリュウを揺らして勝ったのに、戦後はリュウの素直な一言に自分が揺らされている春麗です。
そしてその揺れを自覚しているからこそ、非常に面倒で、非常に本作らしい春麗になっています。