また戦ってくれ――リュウと春麗、紙一重のライバル譚――   作:エーアイ

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※これは本編時空とは無関係の妄想章IFです。
裏ルート最難関、黒証明ルートの続きです。
前話で、リュウは春麗に圧勝されたうえで、それでも「黒で勝った後のお前は、終わった顔をしていなかった」と踏み込みました。
今回は、その言葉を受けた春麗が、さらに重い黒でリュウを沈めようとする回です。


妄想章IF:春麗は、終わっていない黒で待つ

 

 リュウとの邂逅後、一度自室戻った春麗は、黒いドレスを前にしていた。

 

 まだ着ていない。

 

 ただ、見ている。

 

 黒は静かだった。

 

 昨日、リュウを沈めた黒。

 

 リュウの手首狙いを空にした黒。

 肩への到達を許さなかった黒。

 黒の起点を変え、リュウの記憶ごと沈めた黒。

 

 その黒で、春麗は圧勝した。

 

 負けたのはリュウ。

 膝をついたのもリュウ。

 立っていたのは春麗。

 

 だから、終わっていいはずだった。

 

 少なくとも、黒初戦でリュウに見抜かれた傷は、あれで上書きされたはずだった。

 

 なのに。

 

 春麗は、リュウの言葉を思い出す。

 

「あの黒で勝った後のお前は、終わった顔をしていなかった」

 

 春麗は唇を噛んだ。

 

 嫌な言葉だった。

 

 黒を否定しない。

 負けを認める。

 そのうえで、黒で勝った後の春麗を見る。

 

 あの男は、本当に嫌なところを見る。

 

 「……終わっていない?」

 

 春麗は低く呟く。

 

 「勝ったのよ、私は」

 

 黒で勝った。

 

 リュウを沈めた。

 

 黒を使えていないなどとは、もう言わせない。

 

 それなのに、リュウは勝敗の奥を見ようとしている。

 

 黒そのものではない。

 黒で勝った春麗の、その後を見ようとしている。

 

 春麗は黒いドレスに手を伸ばした。

 

 指先が布に触れる。

 

 重い。

 

 けれど、もう怖くはない。

 

 この黒は春麗のものだ。

 

 そう言い切れる。

 

 少なくとも、そう思いたかった。

 

 「なら、見せてあげるわ」

 

 春麗は黒を持ち上げる。

 

 「終わっていない黒を」

 

 袖を通す。

 

 黒が、肩に落ちる。

 

 髪を下ろす。

 

 唇に色を置く。

 

 鏡の中に、黒い春麗が立つ。

 

 昨日よりも、さらに静かだった。

 

 怒りはある。

 

 悔しさもある。

 

 しかし、それ以上に、待っている。

 

 リュウが何を見るのか。

 

 黒の強さか。

 黒の奥か。

 それとも、黒で勝っても終われなかった春麗か。

 

 春麗は鏡の中の自分を見て、笑った。

 

 「見られる前に、沈めればいいだけよ」

 

 声は冷たい。

 

 だが、胸の奥は冷たくなかった。

 

 熱い。

 

 リュウが来る。

 

 また来る。

 

 昨日あれだけ沈めたのに、それでも来る。

 

 その事実が、黒をさらに重くしていた。

 

 再度修行場に着くと、リュウはすでに立っていた。

 

 白い胴着。

 赤い鉢巻。

 乱れのない構え。

 

 昨日、春麗に圧勝された男には見えなかった。

 

 だが、胸にはまだ痛みが残っているはずだ。

 

 膝にも。

 肩にも。

 呼吸にも。

 

 それでもリュウは来た。

 

 春麗は、ゆっくり歩いた。

 

 黒いドレスの裾が、夜気の中で揺れる。

 

 リュウは春麗を見る。

 

 昨日と同じように。

 

 いや、違う。

 

 昨日よりも、さらに静かに見ている。

 

 春麗は目を細めた。

 

 「来たのね」

 

 「ああ」

 

 「昨日、あれだけ沈められたのに?」

 

 「ああ」

 

 「本当に、懲りない人」

 

 「そうだな」

 

 春麗は笑った。

 

 「褒めていないわ」

 

 「わかっている」

 

 「なら、どうして来たの?」

 

 リュウは春麗を見る。

 

 「見るために来た」

 

 春麗の胸が跳ねる。

 

 だが、それを顔には出さない。

 

 「私の黒を?」

 

 「お前を」

 

 春麗の表情が、わずかに止まった。

 

 まただ。

 

 また、この男はそこへ来る。

 

 黒を否定しない。

 黒に勝とうとするだけでもない。

 黒の奥にいる春麗を見ようとする。

 

 春麗は一歩近づいた。

 

 「昨日、あなたは私に負けた」

 

 「ああ」

 

 「私の黒に負けた」

 

 「ああ」

 

 「それでもまだ、黒だけじゃないと言うつもり?」

 

 リュウは頷く。

 

 「言う」

 

 春麗は笑った。

 

 危うい笑みだった。

 

 「なら、今日はその目を沈めてあげる」

 

 リュウは構える。

 

 「行く」

 

 「ええ」

 

 春麗も構えた。

 

 黒いドレスが、静かに揺れる。

 

 「来なさい」

 

 戦いは、静かに始まった。

 

 リュウは、すぐには踏み込まなかった。

 

 昨日のように手首を狙わない。

 肩へ直線で入らない。

 黒の起点を探しているようにも見えない。

 

 ただ、見ている。

 

 春麗は、それが腹立たしかった。

 

 昨日、黒の中で沈めた相手が、今日は黒の外からではなく、黒の奥でもなく、春麗そのものを見ようとしている。

 

 なら、黒で隠す。

 

 春麗は踏み込んだ。

 

 速くはない。

 

 だが、重い。

 

 黒が空気を沈める。

 

 リュウの呼吸が一拍遅れる。

 

 春麗はその一拍を取った。

 

 掌底。

 

 リュウは受ける。

 

 腕が沈む。

 

 だが、昨日ほど崩れない。

 

 春麗は目を細める。

 

 「少しは耐えるようになったのね」

 

 リュウは答えない。

 

 拳を返す。

 

 春麗は外す。

 

 黒の裾が遅れて揺れる。

 

 リュウの視線は、裾へ落ちない。

 

 春麗へ戻る。

 

 戻るのではない。

 

 最初から、そこにある。

 

 春麗は胸の奥がざわつくのを感じた。

 

 「見すぎよ」

 

 膝が走る。

 

 リュウは受ける。

 

 だが受けきれない。

 

 身体が揺れる。

 

 春麗は追う。

 

 「昨日、負けたのに」

 

 肘。

 

 「まだ見るの?」

 

 蹴り。

 

 「黒で沈められたのに」

 

 掌底。

 

 「まだ、私を見るつもり?」

 

 リュウは三撃目で後ろへ下がった。

 

 胸に春麗の掌底が入る。

 

 浅くはない。

 

 だが、膝は落ちない。

 

 リュウは言った。

 

 「見る」

 

 春麗は笑った。

 

 「そう」

 

 黒がさらに重くなる。

 

 「なら、見ていなさい」

 

 春麗は黒の起点を消した。

 

 手首でもない。

 肩でもない。

 裾でもない。

 

 今回は、呼吸だった。

 

 春麗が息を吸う。

 

 その瞬間、黒が沈む。

 

 リュウは反応する。

 

 遅れる。

 

 春麗は内側へ入る。

 

 「そこも見える?」

 

 リュウの脇腹へ蹴りが入る。

 

 リュウが歯を食いしばる。

 

 「まだ浅いわ」

 

 春麗の声は低い。

 

 「あなたが見たいものは、もっと奥でしょう?」

 

 リュウは、春麗を見る。

 

 その目に、春麗は一瞬だけ苛立ちを覚えた。

 

 なぜ、沈まない。

 

 なぜ、折れない。

 

 なぜ、あれだけ負けても、まだその目をしている。

 

 春麗は距離を詰める。

 

 黒いドレスの裾が、リュウの足元をかすめる。

 

 リュウは踏み込もうとする。

 

 春麗は待っていた。

 

 掌底。

 

 胸。

 

 深い。

 

 リュウの身体が沈む。

 

 昨日と同じ場所。

 

 しかし、リュウは膝をつかなかった。

 

 半歩だけ、横へずれた。

 

 春麗の掌底を受けながら、黒の中心から外れる。

 

 春麗の目がわずかに動く。

 

 「……今の」

 

 リュウは息を吐く。

 

 「黒に勝とうとしたら沈む」

 

 春麗は止まる。

 

 リュウは続けた。

 

 「だから、黒の外へ逃げるんじゃない」

 

 拳を握る。

 

 「お前が沈めたい場所から、半歩だけ外れる」

 

 春麗は笑った。

 

 「それで勝てると思う?」

 

 「まだわからない」

 

 「正直ね」

 

 春麗は一歩踏み込む。

 

 「でも、足りないわ」

 

 黒が一段重くなる。

 

 春麗は、リュウの半歩先へ黒を置いた。

 

 リュウが外れるなら、外れた場所へ沈める。

 

 リュウが見ているなら、その視線の先へ黒を置く。

 

 リュウが春麗を見ようとするなら、春麗自身を黒で包む。

 

 「あなたがどこを見ようと」

 

 春麗は低く言う。

 

 「私は黒でそこへ行く」

 

 リュウは受ける。

 

 蹴り。

 

 肘。

 

 掌底。

 

 三連。

 

 リュウは二つ受け、一つをかわす。

 

 かわした瞬間、春麗の黒がそこにあった。

 

 「遅い」

 

 春麗の掌が、リュウの肩を押す。

 

 打撃ではない。

 

 重さだった。

 

 リュウの体勢が崩れる。

 

 春麗の膝が腹へ入る。

 

 リュウが息を詰める。

 

 春麗はさらに踏み込もうとして――

 

 リュウの手が、春麗の黒い裾ではなく、春麗の腕の外側をかすめた。

 

 触れた。

 

 強くはない。

 

 掴んでもいない。

 

 だが、春麗は止まりかけた。

 

 「……っ」

 

 リュウは言った。

 

 「今の黒は、怒っている」

 

 春麗の顔から笑みが消えた。

 

 「何を」

 

 「昨日より、強い」

 

 リュウは息を整えながら言う。

 

 「だが、昨日より苦しそうだ」

 

 空気が落ちた。

 

 春麗の黒が、重くなる。

 

 「……黙りなさい」

 

 「黒は強い」

 

 リュウは逃げない。

 

 「俺は負けた」

 

 「黙りなさいと言ったわ」

 

 「だが、黒で俺に勝った後も、お前は終わっていなかった」

 

 春麗の踏み込みが鋭くなる。

 

 黒が怒りを得る。

 

 速い。

 

 重い。

 

 リュウは受けきれない。

 

 肩に入る。

 

 胸に入る。

 

 腕が弾かれる。

 

 春麗はリュウを押し込む。

 

 「終わっていない?」

 

 声が震えていた。

 

 「終わっていないのは、あなたでしょう?」

 

 掌底。

 

 リュウが下がる。

 

 「何度負けても、まだ来る」

 

 蹴り。

 

 リュウの膝が揺れる。

 

 「沈めても、まだ見る」

 

 肘。

 

 リュウの呼吸が乱れる。

 

 「私の黒を、私の奥を、私の終わっていないところを」

 

 春麗は一気に入る。

 

 「勝手に見るんじゃないわよ!」

 

 掌底が深く入った。

 

 リュウの身体が後ろへ飛ぶ。

 

 膝が落ちる。

 

 片膝。

 

 昨日と同じように。

 

 春麗は息を乱していた。

 

 昨日とは違う。

 

 黒いドレスも、少し乱れている。

 

 リュウは片膝をついたまま、顔を上げた。

 

 春麗はそれを見下ろす。

 

 勝っている。

 

 押している。

 

 また沈めた。

 

 だが、圧勝ではない。

 

 昨日より、リュウは近くにいた。

 

 その事実が、春麗の胸を荒らした。

 

 「……どう?」

 

 春麗は言った。

 

 「これでも、見る?」

 

 リュウは静かに答えた。

 

 「見る」

 

 春麗は笑う。

 

 怒りと、悔しさと、なぜか泣きそうな何かが混ざった笑みだった。

 

 「本当に、あなたは」

 

 リュウは立とうとする。

 

 春麗は、今度は止めなかった。

 

 立たせた。

 

 リュウはふらつきながら立つ。

 

 春麗は目を細める。

 

 「まだ続ける?」

 

 「ああ」

 

 「次は、両膝をつかせるわよ」

 

 「それでもいい」

 

 「よくないわ」

 

 春麗は即座に言った。

 

 自分で言って、自分で止まる。

 

 リュウも春麗を見る。

 

 春麗は唇を引き結ぶ。

 

 「……違う」

 

 何が違うのか、自分でもわからない。

 

 リュウが倒れるのはいい。

 

 膝をつくのもいい。

 

 負けるのもいい。

 

 でも。

 

 それでもいい、と言われるのは違う。

 

 春麗は黒いドレスの裾を握った。

 

 「あなたは、そうやって何でも受けるから」

 

 声が低くなる。

 

 「私が余計に面倒になるのよ」

 

 リュウは静かに聞いている。

 

 春麗は顔を上げた。

 

 「今日は終わりよ」

 

 リュウは少しだけ目を動かした。

 

 「なぜだ」

 

 「私が決めたから」

 

 「まだ決着は」

 

 「ついたわ」

 

 春麗は言う。

 

 「今日も私の勝ち」

 

 それは事実だった。

 

 リュウはまだ春麗を倒せていない。

 

 春麗はリュウを沈めた。

 

 ただし、昨日のように圧勝ではない。

 

 「でも」

 

 春麗は続ける。

 

 「あなたが見たものは、認めてあげる」

 

 リュウは春麗を見る。

 

 春麗は視線を逸らさなかった。

 

 「私は、黒で勝っても終わっていなかった」

 

 その言葉は、春麗自身にも重かった。

 

 言ってしまった。

 

 認めてしまった。

 

 けれど、認めた瞬間、黒がほんの少しだけ軽くなった気がした。

 

 ほんの少しだけ。

 

 春麗はすぐに言葉を重ねる。

 

 「勘違いしないで」

 

 「していない」

 

 「まだ何も言っていないわ」

 

 「そうか」

 

 春麗は少しだけ笑いそうになった。

 

 だが、すぐに黒い顔へ戻る。

 

 「終わっていなかったからといって、あなたが何かを救ったわけじゃない」

 

 「ああ」

 

 「私の黒が弱くなったわけでもない」

 

 「ああ」

 

 「次も黒で来るわ」

 

 「ああ」

 

 「そして、次はもっと深く沈める」

 

 リュウは頷く。

 

 「それでも見る」

 

 春麗は目を伏せた。

 

 その言葉は、今の春麗にはまだ救いではなかった。

 

 だが、昨日のような敵意だけでもなかった。

 

 黒の中に、ほんの小さな亀裂が入る。

 

 リュウはそこへ拳を入れたわけではない。

 

 ただ、見た。

 

 見続けた。

 

 それだけで、春麗は自分の黒の中にある終わっていなさを、少しだけ認めてしまった。

 

 春麗は背を向ける。

 

 「次に来る時は、覚悟しなさい」

 

 「わかった」

 

 「本当にわかっている?」

 

 「たぶん」

 

 「たぶんじゃ困るのよ」

 

 春麗は振り返る。

 

 黒いドレスの裾が揺れる。

 

 「あなたは、私をここまで拗らせたのよ」

 

 一拍。

 

 「そして今度は、私が終わっていなかったことまで見た」

 

 リュウは黙っている。

 

 春麗は言う。

 

 「責任、増えたわね」

 

 リュウは静かに答えた。

 

 「取る」

 

 春麗は、少しだけ息を止めた。

 

 その言葉。

 

 真面目で、短くて、逃げない。

 

 本当に腹立たしい。

 

 春麗は顔を逸らす。

 

 「……簡単に言わないで」

 

 「簡単ではない」

 

 「そう」

 

 春麗は歩き出した。

 

 今日も勝った。

 

 だが、昨日とは違う。

 

 昨日は、黒でリュウを黙らせた。

 

 今日は、リュウに一つ見られた。

 

 黒で勝っても終われなかった自分を。

 

 それは敗北ではない。

 

 まだ敗北ではない。

 

 しかし、救済の入口だった。

 

 春麗は、それを認めない。

 

 認めないまま、黒いドレスの裾を握る。

 

 「次も黒よ」

 

 誰にも聞こえない声で呟く。

 

 「でも」

 

 ほんの少しだけ間が空く。

 

 「……次は、何を見られるのかしらね」

 

 その言葉に、自分で腹が立った。

 

 春麗は夜の中へ歩いていく。

 

 黒はまだ重い。

 

 けれど、その奥に、リュウの視線が残っていた。




Q:今回の妄想章IFについて解説して?

A:
はい。執筆者として見ると、今回の妄想章IFは、黒証明ルートの最難関攻略が、ようやく「救済入口」に入った回です。

前回は、春麗が黒でリュウに圧勝し、黒への執着を正当化してしまった回でした。
今回は、その黒をリュウが力で破るのではなく、「黒で勝った後も終わっていなかった春麗」を見抜くことで、黒の奥に初めて亀裂を入れた回です。

今回の核

今回の一番重要な台詞は、リュウのこれです。

「あの黒で勝った後のお前は、終わった顔をしていなかった」

これは、春麗の黒を否定していません。

ここが非常に大事です。

リュウは、

黒は弱い
黒に囚われている
黒をやめろ

とは言っていません。

むしろ、

黒は強い
俺は負けた

と先に認めています。

そのうえで、黒で勝った春麗自身がまだ終われていないことを見た。

これは、この裏ルート最難関の正しい攻略手順です。

リュウは黒に勝とうとしていない

今回のリュウは、戦闘的にはまだ負けています。

春麗にまた押し込まれた。
掌底を入れられた。
片膝をついた。
春麗を倒せていない。

だから勝敗だけ見れば、春麗の勝ちです。

でもリュウは、今回「黒に勝つ」ことを目的にしていません。

目的は、

黒で勝った後の春麗を見ること

です。

前回の圧勝で、春麗はこう思いました。

黒で勝てた。
黒を証明できた。
私は間違っていない。

普通ならここで黒証明ルートが固定されます。

でもリュウは、不屈で再挑戦し、しかも黒そのものではなく、黒で勝った後の春麗を見た。

だから、春麗の黒がほんの少し揺らぎました。

春麗が「認めてしまった」のが大きい

今回、春麗はついにこう言っています。

「私は、黒で勝っても終わっていなかった」

これは大事件です。

救済前の拗れ春麗は、自分の黒を正当化したがっていました。

黒で勝った。
だからこの黒は正しい。
リュウに勝ったのだから、私はもう証明した。

でも、リュウに見抜かれて、春麗自身も認めてしまった。

黒で勝っても、終わっていなかった。

これは黒証明ルートの最大の固定点に亀裂が入った瞬間です。

ただし、まだ救済ではない

ここは重要です。

今回の春麗は救われていません。

黒が軽くなったのは、ほんの少しだけです。

春麗はまだこう言っています。

次も黒で来る
次はもっと深く沈める
終わっていなかったからといって、あなたが何かを救ったわけじゃない

つまり、春麗はまだ防御しています。

リュウに見られたことは認めた。
でも、それを救済とは認めていない。

ここが非常においしいです。

完全に救われる前の、危険な境界線です。

今回の春麗は「黒で隠す春麗」

今回の春麗は、前回よりさらに重い黒で来ました。

理由は単純です。

リュウに、

黒で勝った後も終わっていなかった

と見られたからです。

つまり、今回は春麗にとって、黒は攻撃であると同時に防御です。

リュウに見られたくない。
でもリュウに見てほしい。
見られたら沈めたい。
でも見られたことを完全には否定できない。

だから黒が重くなる。

この黒は、単なる戦闘装備ではなく、自分の終わっていなさを隠す黒になっています。

リュウの「取る」が非常に危険

終盤の、

「責任、増えたわね」
「取る」

ここもかなり重要です。

春麗にとって、これは危険です。

本編春麗なら「私を面倒にした責任を取りなさい」。
裏の拗れルート春麗なら「私を拗れさせた責任を取りなさい」。
今回の春麗はさらに進んで、

私が黒で勝っても終われていなかったことまで見た責任を取りなさい

になっています。

リュウはそれに対して、逃げずに「取る」と言った。

これは春麗にとって、黒をさらに重くする言葉であり、同時に救済へ向かう言葉でもあります。

だから春麗は、

「簡単に言わないで」

と返す。

ここはかなり甘さと重さが混ざっています。

RPG的に見ると今回の進行

今回のイベントをRPG的に言うと、こうです。

前回:
春麗《黒証明》完全発動
リュウ圧敗
黒執着固定値上昇

今回:
リュウ《黒で勝った後を見る》発動
春麗《終わっていない黒》露呈
春麗が自己認識を一部獲得
救済ルート入口解放

戦闘結果は春麗勝利。

でも、イベント判定はリュウ側が成功しています。

つまり、

バトルには負けたが、救済フラグを立てた

回です。

今回のリザルト
春麗:
戦闘には勝利。
ただし「黒で勝っても終わっていなかった自分」を認めてしまう。
黒への依存はまだ高いが、黒証明の絶対性に亀裂。

リュウ:
戦闘には敗北。
ただし春麗の黒を否定せず、黒で勝った後の春麗を見抜く。
救済ルート進行。

関係性:
黒で沈める春麗 vs 黒の中の春麗を見るリュウ、という構図へ移行。
今回の一番おいしい点

一番おいしいのは、春麗が勝っているのに、リュウに一つ見られているところです。

春麗はまだ優位です。

戦闘では勝っている。
リュウを沈めている。
次も黒で来ると言っている。

でも、リュウは一つ見た。

黒で勝っても終われなかった春麗

ここを見られた時点で、黒証明ルートは完全固定ではなくなりました。

これはかなり良い進行です。

結論

今回の妄想章IFは、黒証明ルート最難関の救済入口回です。

春麗はまだ救われていません。
まだ黒で沈めようとしている。
まだリュウに対して責任圧をかけている。

でも、リュウが黒を否定せず、黒で勝った後の春麗を見抜いたことで、春麗自身が、

私は、黒で勝っても終わっていなかった

と認めてしまった。

一言でまとめるなら、

春麗は今日も黒で勝った。
でもリュウは、勝った春麗の中に残っていた“終わっていなさ”を見た。
そこから救済が始まる。

かなり良い裏ルート攻略回だと思います。
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