また戦ってくれ――リュウと春麗、紙一重のライバル譚――   作:エーアイ

78 / 103
※これは本編時空とは無関係の妄想章IFです。
裏ルート最難関、黒証明ルート攻略後のエピローグです。
前回、リュウが「黒でも青でも見る。俺が見るのは、お前だ」と告げ、春麗は黒固定から救済されました。



妄想章IF:春麗は、黒でも青でもない朝を歩く

 春麗は、黒いドレスを見ていた。

 

 部屋の壁際に掛けられたそれは、静かだった。

 

 昨日まで、黒はもっと重かった。

 

 見るだけで胸の奥が沈んだ。

 触れるだけで、リュウに見抜かれた敗北が蘇った。

 袖を通せば、黒で勝たなければならない自分が立ち上がった。

 

 だが、今は違う。

 

 黒は、そこにある。

 

 ただ、そこにある。

 

 春麗を責めてもいない。

 春麗を呼んでもいない。

 春麗を縛ってもいない。

 

 春麗は、それが少し不思議だった。

 

 「……静かね」

 

 自分で言って、少し笑う。

 

 黒いドレスに話しかけるなんて、我ながら相当面倒だ。

 

 けれど、そう思えるだけ、昨日までとは違っていた。

 

 春麗は黒に近づき、指先で布に触れた。

 

 この黒で、リュウに勝った。

 

 圧勝した。

 沈めた。

 膝をつかせた。

 

 この黒で、リュウに見抜かれた敗北を上書きした。

 

 そのはずだった。

 

 けれど、リュウはその先を見た。

 

 黒で勝った後も終われなかった春麗。

 黒だけでは終わりたくなかった春麗。

 青に戻るのが怖かった春麗。

 面倒な春麗。

 

 そして、言った。

 

 黒でも青でも見る。

 

 俺が見るのは、お前だ。

 

 春麗は、黒いドレスから手を離した。

 

 胸の奥が、また少しだけ熱くなる。

 

 「簡単に言ったわよね」

 

 小さく呟く。

 

 「本当に、簡単に」

 

 けれど、リュウにとって簡単な言葉ではなかったのだろう。

 

 負けたことを認めた。

 黒を認めた。

 黒で勝った春麗を認めた。

 それでも、黒だけではないと見た。

 

 あの不器用な男なりに、かなり奥まで来た。

 

 春麗は、青い武道服を見る。

 

 昨日着た青。

 

 黒で勝った後に選んだ青。

 

 逃げではない青。

 黒を捨てたわけではない青。

 青に戻るのが怖いと、自分で気づいてしまった青。

 

 春麗はその青にも触れた。

 

 軽い。

 

 でも、昨日より少し重い。

 

 黒の記憶が混ざったからだ。

 

 リュウに見られた記憶も。

 

 春麗はしばらく、黒と青の間に立っていた。

 

 どちらを着るべきか。

 

 黒か。

 青か。

 

 そう考えかけて、やめる。

 

 今日は、どちらでもない。

 

 春麗は普段着を手に取った。

 

 戦うための服ではない。

 見せるための服でもない。

 リュウを沈める黒でも、リュウに見られる青でもない。

 

 ただ、歩くための服。

 

 それを選んだ自分に、春麗は少しだけ驚いた。

 

 「……黒でも青でもない私、ね」

 

 鏡の前に立つ。

 

 そこには、黒ドレス春麗でも、青い武道服を着た春麗でもない春麗がいる。

 

 以前なら、リュウの前に立つなら何か意味を持たせた。

 

 黒なら、責任。

 青なら、速度。

 戦闘なら、勝敗。

 

 でも今日は、意味を決めない。

 

 それが、少し怖かった。

 

 けれど。

 

 春麗は鏡の中の自分に言う。

 

 「見るって言ったのは、あなたよ」

 

 そこにいないリュウへ向けて。

 

 「なら、今日はこれも見なさい」

 

 朝の街は、まだ静かだった。

 

 修行場へ向かう道ではない。

 

 黒ドレスでリュウを待った場所でもない。

 青でリュウに問いかけた場所でもない。

 

 春麗は、少しだけ遠回りして歩いた。

 

 店先では湯気が上がり始めている。

 川沿いには、朝の光が落ちている。

 人の声はまだ少ない。

 

 戦う前の空気ではない。

 

 春麗は、その空気を吸った。

 

 軽い。

 

 少しだけ、軽い。

 

 黒から完全に出たわけではない。

 青に戻りきったわけでもない。

 

 けれど、黒か青かを選ばなくても歩ける。

 

 それは、春麗にとって思った以上に大きかった。

 

 石橋の近くに、リュウはいた。

 

 いつものように立っていた。

 

 けれど構えてはいない。

 

 春麗は足を止める。

 

 リュウもこちらを見る。

 

 白い胴着。

 赤い鉢巻。

 いつものリュウ。

 

 春麗は近づいた。

 

 リュウは、春麗を見る。

 

 黒ではない。

 

 青でもない。

 

 今日の春麗を見る。

 

 春麗は少しだけ視線を鋭くした。

 

 「何か言うことは?」

 

 リュウは考える。

 

 春麗は内心で身構える。

 

 この男の自由回答は危険だ。

 

 黒でも青でも見ると言った男が、黒でも青でもない春麗を見て何を言うのか。

 

 かなり危険だ。

 

 リュウは言った。

 

 「今日は、戦わないんだな」

 

 春麗は、少しだけ息を止めた。

 

 見られた。

 

 黒でも青でもなく、ただ戦わない春麗で来たことを。

 

 「……そうよ」

 

 春麗は平静を装う。

 

 「今日は戦わないわ」

 

 「そうか」

 

 「残念?」

 

 「いや」

 

 「そう」

 

 春麗は、少しだけ不満になる。

 

 残念そうにされても困る。

 でも残念でないと言われるのも、少し腹が立つ。

 

 本当に、自分は面倒だ。

 

 リュウは続けた。

 

 「来たんだな」

 

 春麗は、また止まった。

 

 昨日も言われた言葉だった。

 

 青で来た時。

 

 黒から青へ来た自分に向けられたように聞こえた言葉。

 

 今日は、さらに違う意味に聞こえる。

 

 黒でもなく。

 青でもなく。

 戦うためでもなく。

 ただ、来た。

 

 春麗は目を伏せそうになったが、こらえた。

 

 「ええ」

 

 声は少し小さい。

 

 「来たわ」

 

 リュウは頷いた。

 

 それ以上、何も言わない。

 

 春麗は少しだけ待った。

 

 何か言えばいいのに。

 

 いや、言われたら困る。

 

 この沈黙は、昨日までの沈黙とは違う。

 

 黒で押し潰す沈黙ではない。

 青で抜ける沈黙でもない。

 

 ただ、二人の間にある沈黙だった。

 

 春麗は、ふと手元の小さな包みに気づいた。

 

 通りがかった店で買ったものだった。

 

 深く考えたわけではない。

 

 ただ、朝の店先に並んでいた小さな菓子を見て、何となく手に取ってしまった。

 

 黒でも青でもない自分で行くなら。

 

 戦わないなら。

 

 何か、手ぶらでは落ち着かなかった。

 

 春麗は包みを見下ろす。

 

 しまった、と思う。

 

 今さら隠すのも不自然だ。

 

 リュウが見る。

 

 「それは?」

 

 春麗は一瞬迷い、それから差し出した。

 

 「甘いもの」

 

 リュウは少しだけ目を動かした。

 

 「俺にか」

 

 「全部あなたにあげるわけじゃないわ」

 

 春麗はすぐに言った。

 

 「二つ入っているの。一つずつよ」

 

 「そうか」

 

 リュウは包みを受け取る。

 

 「いいのか」

 

 「買いすぎただけよ」

 

 嘘ではない。

 

 いや、ほとんど嘘だ。

 

 二つ入りを選んだのは春麗だ。

 

 しかし、そこは言わない。

 

 言う必要はない。

 

 リュウは包みを開けた。

 

 中には、甘さ控えめの小さな菓子が二つ入っている。

 

 リュウは一つを手に取り、春麗を見る。

 

 「食べていいのか」

 

 「そのために渡したのよ」

 

 「ありがとう」

 

 春麗の指先が、少しだけ止まる。

 

 短い。

 

 それだけなのに、まだ刺さる。

 

 「勘違いしないで」

 

 春麗は言う。

 

 「昨日の続きではないわ」

 

 「そうなのか」

 

 「そうよ」

 

 「黒でも青でもないからか」

 

 春麗は、完全に止まった。

 

 この男は。

 

 本当に。

 

 「……あなた」

 

 「何だ」

 

 「少しは遠慮しなさい」

 

 「遠慮?」

 

 「そういうところを真っ直ぐ言わないでと言っているの」

 

 リュウは考える。

 

 「すまない」

 

 「謝らなくていいの」

 

 「そうか」

 

 春麗はため息をついた。

 

 でも、口元は少し緩んでいた。

 

 二人は石橋の端に並んだ。

 

 春麗は菓子を一口食べる。

 

 控えめな甘さ。

 

 リュウも食べる。

 

 「どう?」

 

 「甘い」

 

 「それは甘いものだからよ」

 

 「だが、強くない」

 

 春麗は少しだけ笑う。

 

 「そういうものを選んだの」

 

 「そうか」

 

 リュウは菓子を見る。

 

 「今日のお前に合っている」

 

 春麗は止まった。

 

 今度こそ、本当に止まった。

 

 「……どういう意味?」

 

 聞かない方がいい。

 

 そう思ったのに、聞いてしまう。

 

 リュウは答える。

 

 「黒ほど重くない。青ほど速くない」

 

 春麗は黙る。

 

 「だが、逃げてはいない」

 

 春麗の胸の奥が、静かに揺れた。

 

 まただ。

 

 また、逃げ場のないところへ来る。

 

 「……そう」

 

 春麗は目を伏せる。

 

 「なら、よかったわね」

 

 「よかった」

 

 即答。

 

 春麗は少しだけリュウを睨む。

 

 「そこは少し考えなさい」

 

 「考えても同じだと思う」

 

 春麗は言葉を失う。

 

 本当に、この男は。

 

 救った責任をわかっているのか。

 

 わかっていないのか。

 

 たぶん、半分くらいしかわかっていない。

 

 だからこそ厄介だった。

 

 春麗は残りの菓子を見る。

 

 まだ半分残っている。

 

 少し考えて、割った。

 

 リュウが見る。

 

 春麗は半分を差し出す。

 

 「食べる?」

 

 リュウは受け取る前に聞く。

 

 「いいのか」

 

 「甘かったの」

 

 「控えめではなかったのか」

 

 「思ったより甘かったのよ」

 

 春麗はそう言ってから、少しだけ目を逸らす。

 

 「それに、あなたのせいで余計に甘い」

 

 リュウは真面目に考える。

 

 「俺のせいか」

 

 「ええ」

 

 春麗は、今度は逃げずに言った。

 

 「黒でも青でも見るなんて言ったから」

 

 リュウは黙る。

 

 春麗は続ける。

 

 「私を黒から出して」

 

 一拍。

 

 「青まで見て」

 

 もう一拍。

 

 「今日は、黒でも青でもない私まで見ている」

 

 春麗は半分の菓子を差し出したまま、リュウを見る。

 

 「責任、増えたわね」

 

 リュウはその半分を受け取った。

 

 「取る」

 

 春麗は目を細めた。

 

 「またそれ」

 

 「違うか」

 

 「違わないけれど」

 

 春麗は視線を逸らした。

 

 「簡単に言わないで」

 

 「簡単ではない」

 

 「そう」

 

 春麗の声が少しだけ柔らかくなる。

 

 「なら、いいわ」

 

 リュウは菓子を食べた。

 

 「甘いな」

 

 「でしょう」

 

 「悪くない」

 

 春麗は少し笑った。

 

 「そう」

 

 しばらく、二人は黙っていた。

 

 黒でも青でもない時間。

 

 戦闘でもない。

 救済直後の言葉でもない。

 確認のための青でもない。

 責任を問う黒でもない。

 

 ただの朝。

 

 ただ、二人で甘いものを食べている。

 

 春麗は、その静けさに少し戸惑った。

 

 黒に囚われていた時は、こんな時間を想像できなかった。

 

 黒を着ていなければリュウに届かないと思っていた。

 黒で勝たなければ終われないと思っていた。

 黒でリュウを沈めれば、何かが終わると思っていた。

 

 でも、終わらなかった。

 

 リュウが見た。

 

 黒でも青でも見ると言った。

 

 そして今。

 

 春麗は、黒でも青でもない朝に立っている。

 

 リュウは隣にいる。

 

 それは、少しだけ救いだった。

 

 「リュウ」

 

 「何だ」

 

 「昨日のこと」

 

 リュウは春麗を見る。

 

 春麗は川面を見たまま言う。

 

 「黒でも青でも見る、って言ったこと」

 

 「ああ」

 

 「取り消せないわよ」

 

 「取り消さない」

 

 即答。

 

 春麗は小さく息を吐いた。

 

 「……本当に、あなたは」

 

 「何だ」

 

 「いいえ」

 

 春麗は首を振る。

 

 「今日は言わない」

 

 「そうか」

 

 「ええ」

 

 本当は言いたいことがある。

 

 私を救ったつもりなら、責任を取りなさい。

 

 私を見つけたのはあなたよ。

 

 黒でも青でもない私まで見たのだから、もう逃げられないわよ。

 

 けれど今日は、そこまで言わない。

 

 言えばまた重くなる。

 

 今日は、重くない甘さでいい。

 

 半分でいい。

 

 春麗は、ほんの少しだけリュウに近づいた。

 

 肩が触れるほどではない。

 

 でも、さっきより近い。

 

 リュウは何も言わない。

 

 春麗は言った。

 

 「次は、黒かもしれないわ」

 

 「ああ」

 

 「青かもしれない」

 

 「ああ」

 

 「今日みたいに、どちらでもないかもしれない」

 

 「ああ」

 

 「それでも見るのね」

 

 「見る」

 

 春麗は少しだけ笑った。

 

 「なら、覚悟しておきなさい」

 

 リュウは頷く。

 

 「わかった」

 

 「本当にわかっている?」

 

 「たぶん」

 

 「たぶん?」

 

 春麗は睨む。

 

 リュウは真面目に言う。

 

 「全部は、まだわからない」

 

 春麗は黙った。

 

 リュウは続ける。

 

 「でも、見る」

 

 春麗は、目を伏せた。

 

 それで十分だった。

 

 少なくとも、今日の春麗には。

 

 「そう」

 

 春麗は小さく言った。

 

 「なら、半分くらいは許してあげる」

 

 リュウが見る。

 

 「何をだ」

 

 「色々よ」

 

 「そうか」

 

 春麗は笑った。

 

 本当に、少しだけ。

 

 黒でも青でもない春麗として。

 

 「今日は、これでいいわ」

 

 朝の光が川面に揺れる。

 

 黒いドレスは部屋に置いてきた。

 青い武道服も、部屋に置いてきた。

 

 でも、それらを捨てたわけではない。

 

 黒はまた着る。

 

 青もまた着る。

 

 どちらでもない日も、またあるかもしれない。

 

 そして、そのどれもリュウは見ると言った。

 

 春麗は、甘さ控えめだったはずの菓子の残りを口にした。

 

 やっぱり、少し甘かった。

 

 「リュウ」

 

 「何だ」

 

 「次に黒を着た時」

 

 「ああ」

 

 「今日の私を忘れていたら、怒るわよ」

 

 「忘れない」

 

 春麗は満足した。

 

 「青の時も」

 

 「忘れない」

 

 「どちらでもない時も」

 

 「忘れない」

 

 春麗は、目を細める。

 

 「……本当に責任重大ね」

 

 リュウは頷いた。

 

 「そうだな」

 

 その素直さが、また春麗を少しだけ困らせる。

 

 でも、今日はそれでいい。

 

 春麗は石橋から歩き出した。

 

 リュウも隣を歩く。

 

 二人の間に、黒の重さはなかった。

 青の速さもなかった。

 

 ただ、並んで歩く速度だけがあった。

 

 春麗は小さく呟いた。

 

 「次は、少し甘くないものにしなさい」

 

 リュウが首を傾げる。

 

 「甘いものではないのか」

 

 「甘いものよ」

 

 「なら、甘いのでは」

 

 「そういう意味じゃないわ」

 

 「難しいな」

 

 「ええ」

 

 春麗は、ほんの少しだけ笑う。

 

 「私は面倒なの」

 

 リュウは言った。

 

 「知っている」

 

 春麗は足を止めそうになった。

 

 けれど、止まらなかった。

 

 そのまま歩く。

 

 「……なら、いいわ」

 

 朝の道を、二人は歩いていく。

 

 黒でも青でもない春麗が、リュウの隣を歩いている。

 

 それは、裏ルートの最難関を越えた後にだけ訪れる、静かなエピローグだった。




Q:今回のエピローグについて解説して?

A:
今回のエピローグの核は、やはりこれです。

黒でも青でもない春麗を、リュウが見る。

この裏ルートは、長い間「黒」に支配されていました。

黒で負けた。
黒に囚われた。
黒で勝った。
黒でリュウを沈めた。
黒で終われなかった。
そして、リュウに「黒でも青でも見る」と言われた。

その直後のエピローグで、春麗が黒でも青でもない姿で来る。

これは非常に良いです。

黒を捨てたわけではない。
青に戻りきったわけでもない。
ただ、どちらにも縛られずに来られた。

この「どちらでもない朝」が、救済後の最初の平穏としてかなり効いています。

黒と青の間で普段着を選ぶ意味

冒頭で春麗は、黒いドレスと青い武道服の間に立っています。

ここがとても重要です。

黒は、拗れと証明と責任圧の象徴。
青は、原点と回復と黒から出る勇気の象徴。

そのどちらでもなく、普段着を選ぶ。

これはRPG的に言えば、

戦闘フォームを解除して、日常フォームに戻った

ということです。

ただし完全に日常へ戻ったわけではありません。

黒も青も部屋に残っている。
また着る可能性もある。
捨てたわけではない。

だからこれは、

黒固定解除後の初期自由行動

です。

かなり良いエピローグ構造です。

リュウの「今日は、戦わないんだな」が良い

リュウの第一声が良いです。

今日は、戦わないんだな

これは、黒でも青でもない春麗を見て、まず「戦わない春麗」として受け取っている。

リュウは、服装の違いだけを見ていません。

今日の春麗の状態を見ています。

昨日までの春麗は、黒でも青でもリュウと向き合う時に戦闘の意味を持たせていました。

でも今日は違う。

戦わない。
沈めない。
先へ行かない。
勝敗を決めに来たわけではない。

リュウがそこを見たことで、春麗は「黒でも青でもない自分も見られた」と感じられます。

「来たんだな」がエピローグに効いている

リュウの、

来たんだな

も良いです。

これは単なる到着確認ではありません。

春麗にとっては、

黒から出て来た。
青にも逃げずに来た。
戦闘でもなく、ただ来た。

という意味に響きます。

救済イベント直後だからこそ、この言葉が重い。

裏ルートの春麗は、黒に囚われた期間が長かった。
だから「ただ来る」ことが、すでに大きな進歩です。


甘いものイベントについて

春麗が通りがかった店で、何となく買ってしまった。
二つ入りを選んだ。
けれど、それを素直に認めない。

ここが良いです。

買いすぎただけよ

という言い訳が、救済後春麗らしいです。

本当は二人分を選んでいる。
でも、まだ素直に「あなたと食べたかった」とは言えない。


また、「今日のお前に合っている」が強い

リュウの台詞では、ここがかなり強いです。

黒ほど重くない。青ほど速くない。
だが、逃げてはいない。

これは、このエピローグの春麗を完璧に捉えています。

今日の春麗は、黒の重さでもない。
青の速さでもない。

でも、逃げてはいない。

黒を避けたわけではない。
青に逃げたわけでもない。
戦闘を避けて弱くなったわけでもない。

ただ、戦わない自分で来た。

リュウがそこを見たことで、春麗の今日の選択が肯定されています。

これはかなり良いです。

「責任、増えたわね」が救済後らしい

春麗の、

私を黒から出して
青まで見て
今日は、黒でも青でもない私まで見ている
責任、増えたわね

ここは、救済後の拗れ春麗らしさがよく出ています。

救済されたから軽くなるわけではない。

むしろ、

私を救った責任
黒でも青でも見ると言った責任
どちらでもない私まで見てしまった責任

が積み増しされている。

これがこのルートの春麗らしいです。

甘い。
でも重い。

ご褒美ではあるけれど、責任も増える。

裏ルート報酬として非常に良いバランスです。

「半分」が綺麗に機能している

今回も「半分」が効いています。

菓子を半分渡す。
半分くらい許してあげる。
全部はまだ渡さない。
全部はまだ認めない。

この半分は、救済後の春麗にちょうどいいです。

完全に甘くなるにはまだ早い。
でも、救済前のように全部を黒で閉じる必要もない。

だから半分。

この「半分の甘さ」が、エピローグの空気に合っています。

このエピローグの役割

救済が本当に春麗の日常に効き始めたことを示すこと。

戦闘中に「黒でも青でも見る」と言われただけなら、まだ戦闘上の救済です。

でもその翌朝、春麗が黒でも青でもなく来られた。

リュウがそれを見た。

一緒に甘いものを食べた。

並んで歩いた。

ここまで来て、ようやく救済が日常へ落ちています。

だから、これは単なる後日談ではなく、救済の定着確認です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。