また戦ってくれ――リュウと春麗、紙一重のライバル譚――   作:エーアイ

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※本編確定ではなく、断章IFです。
本編の「めんどくさい女と自覚した春麗」が、前話『妄想章IF後日談:春麗は、責任の意味が違うことに気づく』を、残響として受信してしまった話です。


断章IF:春麗は、七十点の壁に挑む

 

 春麗は、夜明け前に目を覚ました。

 

 理由はわかっている。

 

 残響だ。

 

 また、どこか別の自分がリュウと何かをしていた。

 

 黒いドレス。

 責任。

 重さ。

 甘さ。

 七十点。

 

 その断片が、胸の奥に残っている。

 

 春麗は寝台の上で、しばらく動かなかった。

 

 あちらの春麗は、かなり強い。

 

 黒ドレス特化版。

 

 黒いドレスを着た自分を、女としても格闘家としてもリュウに見られた春麗。

 甘さの重さを理解し、その重さをリュウに突きつけられる春麗。

 「責任を取りなさい」と言える春麗。

 

 本編の春麗より、明らかに甘さ耐性が高い。

 

 そのはずだった。

 

 なのに。

 

 春麗といると、鍛えられる。

 

 春麗は、寝台の上で額を押さえた。

 

 「……あそこまでしても、それ?」

 

 黒ドレス特化版春麗が、黒を着て、責任の話をして、甘いことを言わせようとして。

 

 それでリュウから出てきた言葉が、まずそれ。

 

 鍛えられる。

 

 「違うでしょう……」

 

 春麗は小さく呟いた。

 

 いや、違わない。

 

 リュウにとっては、たぶんかなり良い言葉なのだ。

 

 春麗といると鍛えられる。

 春麗と向き合うと次を考える。

 春麗に会うことが、リュウの中で前へ進む理由になっている。

 

 それは、わかる。

 

 わかるから困る。

 

 さらに残響は続く。

 

 お前といると、次も来たいと思う。

 お前が黒でも、黒でなくても。

 重くても、面倒でも。

 それでも、来たい。

 

 七十点。

 

 あちらの春麗は、そう判定した。

 

 春麗は枕元に置いた青い袖を見た。

 

 「……七十点」

 

 それは高いのか、低いのか。

 

 普通なら、十分高い。

 

 リュウからそこまで引き出したなら、かなり成功だ。

 

 だが、問題はそこではない。

 

 黒ドレス特化版春麗が、あそこまで踏み込んで七十点。

 

 では、本編の自分がやったらどうなるのか。

 

 春麗は、ゆっくり起き上がった。

 

 胸の奥がざわついている。

 

 衝撃。

 

 焦り。

 

 そして、妙な対抗心。

 

 「あちらの私が七十点なら」

 

 声に出して、春麗は自分で呆れた。

 

 「私は何点を取れるのかしら」

 

 言った瞬間、完全に罠だとわかった。

 

 これは訓練ではない。

 

 いや。

 

 訓練ということにすればいい。

 

 リュウの鈍感力への耐性訓練。

 甘い意図を言語化させる会話訓練。

 リュウ関連イベントへの反応倍率制御訓練。

 本編春麗における対リュウ心理負荷測定。

 

 春麗は頷いた。

 

 「……訓練ね」

 

 自分に言い聞かせる。

 

 「極めて実戦的な訓練」

 

 そう言うと、少しだけ安心した。

 

 安心した時点で、たぶん負けている。

 

 修行場にリュウはいた。

 

 いつものように。

 

 本当に、いつものように。

 

 春麗は青い武道服で来た。

 

 黒ではない。

 

 黒で挑めば、あちらの黒ドレス特化版と同じ土俵になる。

 

 今日は違う。

 

 本編のめんどくさい女と自覚する春麗として挑む。

 

 青で。

 ただし、黒の記憶も持ったまま。 

 

 リュウが顔を上げる。

 

 「春麗」

 

 「リュウ」

 

 春麗は近づいた。

 

 足取りは落ち着いている。

 

 少なくとも、そう見えるようにしている。

 

 「今日は訓練よ」

 

 リュウは少しだけ首を傾げる。

 

 「訓練」

 

 「ええ」

 

 「何の訓練だ」

 

 春麗は腕を組んだ。

 

 「あなたの鈍感力の測定」

 

 リュウは黙った。

 

 少し考える。

 

 「鈍感力」

 

 「復唱しない」

 

 「すまない」

 

 「謝らない」

 

 春麗は一歩近づいた。

 

 「最近、私はあなたの言葉や視線に反応しすぎている」

 

 「ああ」

 

 「そこで、あなたがどの程度、私の意図を読み取れないのかを測定する」

 

 「俺が読み取れない前提なのか」

 

 「前提ではなく実績よ」

 

 リュウはさらに黙った。

 

 春麗は少しだけ得意になる。

 

 理屈は通っている。

 

 たぶん。

 

 「いい? これは甘い話ではないわ」

 

 「ああ」

 

 「恋愛的な確認でもない」

 

 「ああ」

 

 「私が、あなたにもう少し甘いことを言ってほしいとか、そういう話ではない」

 

 リュウは春麗を見た。

 

 「違うのか」

 

 春麗は、胸の奥を掴まれたように止まった。

 

 初手。

 

 初手からこれだ。

 

 「あのね」

 

 春麗は低く言った。

 

 「そういう返しをするから訓練が必要なのよ」

 

 「そうか」

 

 「そうよ」

 

 春麗は構えた。

 

 「では第一問」

 

 「戦うのではないのか」

 

 「会話戦闘よ」

 

 リュウは構えた。

 

 「ああ」

 

 「構えなくていいわ」

 

 「戦闘なら構える」

 

 「会話戦闘って言ったでしょう」

 

 「なら構える」

 

 春麗は額を押さえたくなった。

 

 これは手強い。

 

 あちらの春麗が七十点で止まったのも、無理はない。

 

 春麗は一歩踏み込んだ。

 

 攻撃ではない。

 

 距離を詰めるだけ。

 

 リュウの視線が春麗を見る。

 

 青い武道服。

 肩。

 構え。

 呼吸。

 

 そして、春麗の目。

 

 春麗はそこで言った。

 

 「私といると、あなたはどう感じる?」

 

 リュウは考える。

 

 春麗は待つ。

 

 あちらのリュウは「鍛えられる」と言った。

 

 本編のリュウはどう返すのか。

 

 リュウは言った。

 

 「気が抜けない」

 

 春麗は固まった。

 

 「……気が抜けない?」

 

 「ああ」

 

 「それは褒めているの?」

 

 「ああ」

 

 「本当に?」

 

 「ああ」

 

 春麗は目を閉じた。

 

 近い。

 

 あちらの「鍛えられる」に近い。

 

 たぶんリュウとしては高評価。

 

 だが甘くない。

 

 いや、甘さの根はある。

 

 春麗といると気が抜けない。

 常に見ている。

 次を考えている。

 油断できない。

 

 それは、格闘家としてはかなりの信頼だ。

 

 だが。

 

 「四十点」

 

 春麗は言った。

 

 リュウの目が少し動く。

 

 「四十」

 

 「復唱しない」

 

 「すまない」

 

 「謝らない」

 

 春麗は指を一本立てた。

 

 「武人的評価としては合格。でも甘さが足りない。次」

 

 リュウは真面目に頷いた。

 

 「わかった」

 

 真面目に頷くところも問題だった。

 

 第二問。

 

 春麗は少し近づいた。

 

 「あなたは、私が黒を着ていない時も見ると言ったわね」

 

 「ああ」

 

 「では、今の私は?」

 

 リュウは春麗を見る。

 

 「青のお前」

 

 「それだけ?」

 

 リュウは考える。

 

 春麗の胸が少しだけ高鳴る。

 

 来るか。

 

 黒を忘れていない青のお前、くらいは来るか。

 

 リュウは言った。

 

 「今日は、いつもより考えている青のお前」

 

 春麗は目を細めた。

 

 「……考えている?」

 

 「ああ」

 

 「何を?」

 

 「俺に何を言わせるか」

 

 春麗は呼吸を止めた。

 

 見抜かれた。

 

 いや、見抜かれたというほど器用ではないかもしれない。

 

 だが、当たっている。

 

 春麗は青い袖を握った。

 

 「……あなた」

 

 「何だ」

 

 「そういうところだけ鋭いのは何なの?」

 

 「鋭いのか」

 

 「鋭いわ」

 

 春麗は少しだけ視線を逸らす。

 

 「六十五点」

 

 リュウは黙る。

 

 「なぜ上がった?」

 

 「私が困ったからよ」

 

 「困ると点が上がるのか」

 

 「場合によるわ」

 

 「難しいな」

 

 「だから難しいと言っているのよ」

 

 春麗は胸の奥が少し熱くなっているのを感じた。

 

 六十五点。

 

 思ったより高い。

 

 だが、まだ足りない。

 

 あちらの春麗は七十点を引き出した。

 

 本編の自分がここで止まるわけにはいかない。

 

 何と戦っているのか、自分でもわからなくなってきた。

 

 第三問。

 

 春麗は、今度はリュウの真正面に立った。

 

 かなり近い。

 

 訓練だから。

 

 測定だから。

 

 甘い距離ではない。

 

 たぶん。

 

 「リュウ」

 

 「何だ」

 

 「私が面倒な女だということは、知っているわね」

 

 「ああ」

 

 即答。

 

 春麗の眉が動いた。

 

 「そこは少し迷いなさい」

 

 「知っている」

 

 「もう一度言わなくていいわ」

 

 「すまない」

 

 「謝らない」

 

 春麗は息を整える。

 

 「では、その面倒な私と、あなたはどうするの?」

 

 リュウは静かに春麗を見る。

 

 今度は、すぐには答えない。

 

 春麗の胸が、少しだけ緊張する。

 

 リュウは言った。

 

 「来る」

 

 春麗は目を細める。

 

 「それは聞いたことがあるわ」

 

 「見る」

 

 「それも聞いたわ」

 

 「忘れない」

 

 「それも」

 

 「止まらない」

 

 春麗の呼吸が、止まりかけた。

 

 止まらない。

 

 それは昨日の敗北に直結する言葉だ。

 

 黒で誘っても、止まらない。

 

 黒を着ていなくても、見る。

 

 春麗が面倒でも、来る。

 

 春麗は、喉の奥が少し熱くなる。

 

 「……それで?」

 

 リュウは続けた。

 

 「面倒でも、春麗だ」

 

 春麗は、完全に止まった。

 

 点数をつけるために開いていた口が、そのまま閉じた。

 

 面倒でも、春麗。

 

 それは。

 

 それは、かなりまずい。

 

 あちらの黒ドレス特化版で救済された自分が言われた、

 

 重くても、面倒でも、それでも来たい。

 

 に近い。

 

 いや、違う。

 

 こちらはもっと短い。

 

 不器用で、鈍くて、直球すぎる。

 

 春麗は青い袖を握る。

 

 「……リュウ」

 

 「何だ」

 

 「今のは」

 

 点数を言う。

 

 言えばいい。

 

 七十点。

 

 いや、七十五点。

 

 もしかすると八十点。

 

 だが、春麗はなぜかすぐには言えなかった。

 

 リュウが首を傾げる。

 

 「違ったか」

 

 「違わないわよ」

 

 声が少し低くなる。

 

 「違わないから困っているの」

 

 リュウは黙った。

 

 春麗は深く息を吸う。

 

 「八十点」

 

 言った瞬間、胸が熱くなる。

 

 勝った。

 

 何に?

 

 あちらの黒ドレス特化で救済れた春麗に?

 

 リュウの鈍感力に?

 

 自分の面倒さに?

 

 よくわからない。

 

 だが、八十点だった。

 

 リュウは少しだけ目を動かす。

 

 「高いのか」

 

 「高いわ」

 

 「そうか」

 

 「でも満点ではない」

 

 「ああ」

 

 「満点ではないけれど」

 

 春麗は少しだけ顔を逸らした。

 

 「今日は合格」

 

 リュウは頷いた。

 

 「よかった」

 

 春麗は心臓を掴まれたように動けなくなった。

 

 よかった。

 

 それだけ。

 

 それだけなのに、なぜ効くのか。

 

 本当に、この男は鈍いのか鋭いのか。

 

 春麗は、かろうじて姿勢を戻した。

 

 「まだ終わりではないわ」

 

 「まだあるのか」

 

 「当然でしょう」

 

 本当は終わってもよかった。

 

 かなり目的は達成された。

 

 でも、ここで終わるのが惜しくなった。

 

 訓練だから。

 

 測定だから。

 

 もう少し続けてもいい。

 

 春麗は一歩近づいた。

 

 「最終問」

 

 「ああ」

 

 「私が、あなたに甘いことを言ってほしいとする」

 

 リュウは黙った。

 

 春麗は、目を逸らさない。

 

 「仮によ」

 

 「ああ」

 

 「仮に、私がそう望んでいるとして」

 

 「ああ」

 

 「あなたは、どうするの?」

 

 リュウは考えた。

 

 今度は長い。

 

 春麗は待つ。

 

 待っている自分に気づく。

 

 待っている。

 

 リュウが何を言うのか。

 

 甘い言葉を言えるのか。

 

 鈍感力を越えられるのか。

 

 リュウは言った。

 

 「上手くは言えない」

 

 春麗の胸が、静かに落ち着く。

 

 「知っているわ」

 

 「だが」

 

 リュウは春麗を見る。

 

 「春麗が望むなら、考える」

 

 春麗は瞬きをした。

 

 考える。

 

 「……考える?」

 

 「ああ」

 

 「甘いことを?」

 

 「ああ」

 

 「私が望むなら?」

 

 「ああ」

 

 春麗は固まった。

 

 これは、どうなのか。

 

 甘い台詞ではない。

 

 甘い台詞を言ってはいない。

 

 しかし。

 

 春麗が望むなら、考える。

 

 それは、リュウにしてはかなり踏み込んでいる。

 

 自発的に甘いことは言えない。

 

 でも、春麗が望むなら考える。

 

 春麗の望みを、ちゃんと扱おうとしている。

 

 春麗は、ゆっくり息を吐いた。

 

 「……七十八点」

 

 リュウは少しだけ首を傾げる。

 

 「さっきより低い」

 

 「実技では八十点。理論では七十八点」

 

 「難しいな」

 

 「当然よ」

 

 春麗は腕を組んだ。

 

 「でも、かなり良い答えだったわ」

 

 リュウは頷く。

 

 「そうか」

 

 「ええ」

 

 春麗は少しだけ視線を落とす。

 

 「私が望むなら、考えるのね」

 

 「ああ」

 

 「なら」

 

 言いかけて、止まる。

 

 言っていいのか。

 

 甘いことを考えてきなさい、と。

 

 次までに、と。

 

 それはもう、訓練なのか。

 

 いや、訓練だ。

 

 たぶん。

 

 春麗は顔を上げた。

 

 「次回までの課題よ」

 

 リュウは真面目な顔になる。

 

 「課題」

 

 「復唱しない」

 

 「すまない」

 

 「謝らない」

 

 春麗は少しだけ口元を緩めた。

 

 「次までに、あなたなりの甘い言葉を一つ考えてきなさい」

 

 リュウは少し黙った。

 

 「甘い言葉」

 

 「復唱しない」

 

 「すまない」

 

 「謝らない」

 

 リュウは頷いた。

 

 「わかった」

 

 春麗の胸が、少しだけ跳ねた。

 

 わかった。

 

 本当に考えてくるのか。

 

 リュウが。

 

 自分のために。

 

 甘い言葉を。

 

 春麗は、顔が熱くなるのを感じた。

 

 「勘違いしないで」

 

 「ああ」

 

 「これは訓練よ」

 

 「ああ」

 

 「あなたの鈍感力改善訓練」

 

 「ああ」

 

 「私があなたの甘い言葉を待っているわけではない」

 

 リュウは少し考えた。

 

 「違うのか」

 

 春麗は、青い袖を強く握った。

 

 「……それを次回までに考えてきなさい」

 

 「わかった」

 

 春麗は背を向けた。

 

 これ以上いたら危ない。

 

 非常に危ない。

 

 あちらの黒ドレス特化版春麗は七十点だった。

 

 本編の自分は八十点を引き出した。

 

 勝った。

 

 そう思いたい。

 

 だが、帰り道で春麗は気づいた。

 

 リュウが次に何を言うのか、自分がもう気にしている。

 

 期待している。

 

 楽しみにしている。

 

 完全に、次回予約をしてしまった。

 

 「……私、何をしているのかしら」

 

 声は呆れていた。

 

 だが、足取りは軽い。

 

 夜風が青い袖を揺らす。

 

 黒は着ていない。

 

 けれど、黒の残響はある。

 

 あちらの春麗の七十点もある。

 

 そして、本編春麗の八十点もある。

 

 春麗は小さく笑った。

 

 「次、七十点以下だったら沈めるわ」

 

 誰にも聞こえない声で言う。

 

 少し間を置いて、付け足す。

 

 「……でも、ちゃんと考えてきたなら、少しは褒めてあげる」

 

 本当に、めんどくさい。

 

 だが、それでいい。

 

 春麗は自分をめんどくさい女だと知っている。

 

 知っているから、次の訓練を予約できる。

 

 知っているから、期待している自分を否定しきらずに歩ける。

 

 リュウは来る。

 

 そして、きっと考えてくる。

 

 あのリュウが、甘い言葉を。

 

 春麗は胸の奥を押さえた。

 

 「……これは、かなり危険な訓練ね」

 

 それでも、やめる気はなかった。




Q:今回の断章IFについて解説して?

A:
はい。執筆者として見ると、今回の断章IFはかなり面白くて、本編のめんどくさい女春麗が、黒ドレス特化版で救済された春麗の“七十点の壁”を受信し、それを自分のルート用に変換して攻略しに行く話です。

一言で言うなら、

黒ドレス特化版春麗でもリュウの鈍感力を七十点までしか崩せなかったことに衝撃を受けた本編春麗が、「訓練」という名目で自分も甘い言葉を引き出そうとし、結果として八十点を取ってしまう断章IF

です。

今回の核は「七十点への対抗心」

今回、本編春麗は別ルートの残響を受信しています。

黒ドレス特化版春麗は、かなり強い春麗です。

黒ドレスの自分を受け入れている。
甘さも重さもある程度扱える。
「責任を取りなさい」と言える。
本編春麗より、甘さ耐性が高い。

その黒ドレス特化版春麗が、リュウの鈍感力に挑んで、最終的に七十点をつけた。

本編春麗からすると、これは衝撃です。

「あそこまで踏み込んでも七十点なの?」
「黒ドレス特化版の私でもそこまでしか行けないの?」
「なら本編の私はどうなるの?」

となる。

ここで本編春麗の中に、対抗心が発生します。

ただし、それを素直に「私も甘い言葉を言わせたい」とは言えません。

だから、

鈍感力の測定
会話戦闘
対リュウ心理負荷測定
訓練

という言い訳に変換します。

この変換こそ、本編めんどくさい女春麗らしさです。

本編春麗は黒ではなく青で挑んでいる

ここも重要です。

今回の春麗は黒ドレスではなく、青い武道服で挑んでいます。

これはかなり正しい判断です。

黒ドレスで挑めば、黒ドレス特化版春麗と同じ勝負になります。

でも本編春麗は、そこでは勝負しない。

彼女は、

黒も青も、どちらでもない自分も扱う本編春麗

です。

だから、青で挑む。

ただし、青の中に黒の記憶を持っている。

ここが本編春麗らしい。

黒ドレス特化版春麗が「黒で踏み込む春麗」なら、今回の本編春麗は、青で黒の残響を受けたまま、甘さを測定する春麗です。

リュウの鈍感力が相変わらず強い

今回のリュウも、かなり手強いです。

春麗が、

私といると、あなたはどう感じる?

と聞いた時、リュウは、

気が抜けない。

と返す。

これはリュウ的には高評価です。

春麗といると集中する。
油断できない。
常に次を考える。

武人としては最高の褒め言葉に近い。

でも、春麗が期待している甘さとは違う。

だから四十点。

この時点で、リュウの鈍感力は健在です。

ただし、リュウは完全に外しているわけではありません。

第二問で、

今日は、いつもより考えている青のお前。

と返す。

これはかなり鋭い。

春麗が「リュウに何を言わせるか」を考えていることを見抜いている。

鈍感なのに、変なところは鋭い。

このアンバランスがリュウの厄介さです。

八十点が出た理由

今回最大の山場は、

面倒でも、春麗だ。

です。

これは本編春麗に非常に刺さります。

なぜなら、本編春麗は自分が面倒だと自覚しているからです。

本編春麗にとって、ただ「好き」「可愛い」「綺麗」と言われるより、

面倒でも、春麗だ。

の方が効く。

これは、春麗のめんどくささを否定していないからです。

リュウは、

面倒ではない

とは言わない。

そこが良い。

面倒さを認める。
そのうえで、春麗だと言う。

これは本編春麗にとって、かなり高得点です。

黒ドレス特化版のリュウが、

重くても、面倒でも、それでも来たい。

と言ったのに対して、今回の本編リュウはもっと短く、

面倒でも、春麗だ。

と言った。

短いぶん、直球です。

だから八十点。

「春麗が望むなら、考える」がかなり危険

最終問で、リュウは、

上手くは言えない。
だが、春麗が望むなら、考える。

と言います。

これは表面的には甘い台詞そのものではありません。

でも、実はかなり強いです。

リュウは甘い言葉が得意ではない。

それは春麗も知っている。

でも、

春麗が望むなら考える

と言った。

つまり、春麗の望みを、ちゃんと自分の課題として持ち帰るということです。

これは本編春麗にとってかなり危険です。

なぜなら、次回までにリュウが甘い言葉を考えてくる、という未来が発生してしまったからです。

これは完全に次回予約です。

春麗は「訓練」と言っていますが、実態はかなり甘い宿題です。

本編春麗が八十点を出せた理由

本編春麗が黒ドレス特化版春麗より高得点を引き出せたのは、能力差というより、聞き方の違いです。

黒ドレス特化版春麗は、重さと責任の文脈で攻めました。

私の重さをどうするの?
責任を取りなさい。
甘いことを言う気はないの?

これはかなり直接的ですが、リュウは武人的責任に変換してしまう。

一方、本編春麗は、青で、会話戦闘として、点数制にしました。

これにより、リュウは「正解を探す」モードに入りました。

そして、

面倒でも、春麗だ。
春麗が望むなら、考える。

という、本編春麗向きの答えに届いた。

つまり本編春麗は、リュウの鈍感力を無理に恋愛変換させるのではなく、訓練・測定・課題という形で誘導した。

これは本編春麗らしい攻略法です。

ラブコメとしての構造

今回の断章IFは、かなりラブコメ色が強いです。

春麗は、

甘い言葉がほしいわけではない。
訓練よ。
測定よ。
鈍感力改善よ。

と言い張る。

でも実際には、

リュウに甘い言葉を考えてきてもらう約束を取りつける話

になっています。

本人は理屈で包んでいますが、やっていることはかなり甘い。

しかも最後に、

次までに、あなたなりの甘い言葉を一つ考えてきなさい。

と宿題を出している。

これはもう、完全に次回デート予約に近いです。

ただし本人の中では訓練。

ここが本編春麗のラブコメ性能です。

今回の断章IFの到達点

今回の到達点は二つあります。

一つ目は、本編春麗がリュウの鈍感力に対して、八十点を引き出したこと。

これは小さくない勝利です。

二つ目は、次回への宿題を発生させたこと。

リュウが次までに甘い言葉を考えてくる。

これはかなり大きなフックです。

春麗は帰り道で気づいています。

リュウが次に何を言うのか、もう気にしている。

期待している。

つまり、訓練という名目で、次の甘さを予約してしまった。

ここが非常においしいです。

結論

今回の断章IFは、本編めんどくさい女春麗が、黒ドレス特化版春麗の七十点に衝撃を受け、自分のルートとしてリュウの鈍感力攻略に挑む話です。

黒ドレス特化版は、重さと責任で攻めた。

本編春麗は、訓練・測定・点数評価で攻めた。

その結果、

「面倒でも、春麗だ」
「春麗が望むなら、考える」

という本編春麗向きの答えを引き出し、八十点を獲得しました。

一言でまとめるなら、

本編春麗は、甘い言葉が欲しいのではない。
鈍感力改善訓練として、リュウに甘い言葉を考えさせただけ。
……ということにしている。

この言い訳込みで、非常に本編春麗らしい断章IFだったと思います。
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