昼間は参拝客や巫女たちの声で賑わう境内も夜更けが近付けば静寂そのものだった。
石畳の脇へ並ぶ灯籠の火は弱々しく揺れ、山から吹き下ろす夜風が社殿の鈴を微かに鳴らしていた。空には薄い雲が流れ、その切れ間から零れる月光が桜の枝葉を白く照らしている。
昼間には華やかに見える境内も夜になるとまるで別の場所だった。人の気配は遠く、風と木々のざわめきだけが静かに響いている。
柏は倉庫裏の回廊へ腰を下ろしたまま疲れ切った顔で夜空を見上げていた。
「……何で私、こんなことしてるんでしょうね」
ぽつりと漏れた呟きはそのまま夜気へ溶けて消える。
巫女装束は思っていた以上に不便だった。袖は長く裾は絡まり、僅かな動作にも気を遣う。
普段の男装は単なる変装ではなく、長年そう振る舞い続けた結果それが半ば日常になっている。だから今こうして巫女装束を纏っていると自分の輪郭が曖昧になるような感覚があり、どうにも落ち着かない。
忘れたつもりの昔が、妙に近くなる気がした。
「何じゃ、もう疲れたのか?」
隣から神子の声が飛んでくる。
「……精神的にですね」
「まだ何も起きておらぬぞ?」
「貴女と居る時点で十分事件なんですよ」
「酷い言われようじゃのぅ」
神子は愉快そうに笑う。まるで傷付いた様子も無い。
神子は欄干へ頬杖をつきながら柏を眺めていた。夜風が桜色の髪を揺らし紫の瞳が灯籠の火を映している。その表情には相変わらず得体の知れない愉悦が浮かんでいる。
柏は深く溜息を吐いた。
「貴女、絶対わざとやってますよね」
「む?」
「その、“昔は可愛かったのに”みたいな空気です」
神子は一瞬きょとんとした後、堪え切れないように笑った。
「実際、可愛かったぞ?」
「やめてください」
「腹が減ればすぐ顔へ出るし、眠ければ座ったまま寝てしまい、少し怒鳴られただけで耳まで赤くしておった」
「記憶消せません?」
「無理に決まっておろう」
思わず柏は額を押さえる。
本当に嫌な相手だ。神子だけは自分が一番知られたくない時代を知っている。
今でこそ多少は人付き合いも覚えたが、当時はそんな駆け引きさえ知らなかった。
ただ余裕が無かった。いつも何かに飢えていて、常に周囲を警戒し、誰かの善意にすら怯えていた。
だからこそあの頃の自分は見られていて楽しいものではなかった筈だ。それなのに神子は、昔話をする時だけ妙に楽しそうだった。
「……理解出来ませんね」
「何がじゃ?」
「貴女、昔の私を面白い思い出みたいに話しますけど、今思い返しても碌な状態じゃなかったでしょう」
神子は少しだけ黙った。
夜風に運ばれた桜の花弁が一枚、二人の間へ落ちた。
「そうかのぅ。妾はそうは思わぬが」
その返答は柏からすれば意外だった。
神子は夜空を見上げたまま続けた。
「確かに汝は酷い有様じゃった。痩せ細っておった。妙な意地ばかり張るし、助けられても礼もまともに言えんかった。じゃが――」
神子は小さく笑った。
「生きようとはしておった。どれだけ不格好でも、どれだけ余裕が無くとも、汝は最後まで諦めておらなんだ。妾はそういう童が嫌いではない」
柏はしばらく何も言わなかった。
そして不意に、神子がこちらを見た。
「汝、今でもこの鳴神大社へ帰って来たくなるか?」
それは少しだけ卑怯な問いだった。
鳴神大社は居場所ではない。少なくとも柏はそう思うようにしている。
自分はもう巫女ではないし、雑用係でもない。あの場所へ所属している訳でもない。けれど、だからといって全く何も感じていないかと言われれば、それも違った。
「……まぁ、たまには」
灰色の瞳が灯籠の火を映し、何処か頼りなく揺れている。
春の桜や、夏の蝉時雨。秋の冷えた風と、雪に埋もれる冬の朝も、全部知っている。長い時間ではなかった。
しかし確かにここで過ごした時間だった。
「素直ではないのぅ」
神子はふっと笑う。その笑みには珍しく揶揄いの色が無かった。
「貴女にだけは言われたくないですね」
柏はそう返しながら小さく肩を竦める。
帰りたい訳ではないし、戻りたい訳でもない。けれど時折、ぐるりと一周したあの石段を登りたくなる夜もある。
それが何なのかを認めてしまうには、柏はまだ少しだけ意地っ張りだった。
その時だった。
かたり、と。回廊の向こう側で小さな物音がした。風に揺れた枝が触れた音にしては不自然で、家鳴りとも違う。
人が動いた時にだけ生まれるごく僅かな気配。
柏の灰色の瞳がすっと細められる。先程までの気怠げな空気が消え、背筋が伸び、視線が暗がりへと向けられた。
神子はその変化を横目で眺めながら、口元を袖で隠した。
実に楽しそうだった。
「来たようじゃな」
その声音には、期待と愉悦が半分ずつ混じっている。
再び物音が響く。誰かが周囲を窺うように足を止め、慎重に歩いている様な気配だった。
灯籠の明かりが届かない回廊の向こう。月明かりだけが薄く石畳を照らしている。
やがて、白い袖が視界の端を掠めた。
巫女と思しきその人影は辺りを見回しながら、倉庫の方へと向かっている。その足取りは妙に慣れていた。初めてではないのだろう。
柏は息を潜める。
神子も珍しく口を閉じていた。
夜風が吹く。桜の花弁が一枚、静かに回廊へ落ちた。人影はそれに気付く様子もなく、迷いのない足取りで倉庫の扉へ近付いていく。
柏は目を細めた。
――さて。
ここからが仕事だった。
倉庫裏の暗がりを小柄な影がそろそろと進んでいく。
月明かりは薄く、灯籠の火もここまでは届かない。影は辺りを何度も見回しながら、それでも慣れた足取りで倉庫の方へ向かっていた。
柏も気配を殺し、その後ろを追う。
木造の倉庫へ足を踏み入れると乾いた木の匂いと古い紙の匂いが鼻を掠めた。内部には書物を収めた棚が幾つも並び、天井近くまで積み上げられた木箱が暗闇の中へ沈んでいる。
柏は本棚の陰へ身を隠し、小声で隣へ文句を言った。
「……普通に巫女さんじゃないですか」
影の正体は、本当に若い巫女だった。まだ十代半ばほどだろうか。周囲をきょろきょろ見回しながら、慣れた手付きで倉庫の鍵を開けている。その動作には後ろ暗さこそあれど、危険な雰囲気は無い。
「これ、わざわざ私を呼ぶ必要ありました?」
「ふむ……しかし、妾が行くと怯えて逃げるのでの」
「それもそうですね……」
妙に納得してしまった。八重宮司から現行犯で見つかるなど、大抵の巫女にとって悪夢だろう。
柏は深く溜息を吐く。
これ以上隠れていても仕方が無い。そう判断すると、本棚の陰から静かに姿を現した。
床板が小さく軋む。その音に反応し、巫女がびくりと肩を震わせた。
「だ、誰ですかっ……!?」
驚いた拍子に抱えていた本が一冊落ちそうになる。
敵意が無いことを示す為に柏は両手を軽く上げた。夜の灯籠に照らされた白髪の少女は、この倉庫の空気と妙に馴染んでいた。
「こんばんわ、随分熱心な読書家ですね」
巫女の顔色が一瞬で青ざめる。
数秒の沈黙の後、巫女は半泣きになりながら弁明を始めた。
「ち、違うんです! これは、その……っ!」
完全に挙動不審だった。
柏は思わず額を押さえる。ここまで分かりやすく慌てられると逆に困る。
そして次の瞬間、柏の隣に立つ神子へ気付き、更に顔色が悪くなる。
「や、八重宮司様!? 違うんです……! その、わ、私は別に盗むつもりとかじゃ……!」
半ば悲鳴だった。
柏は静かにその様子を眺めていたが、背後から伝わってくる気配に小さく溜息を吐いた。
視線だけを横へ流すと、神子は口元を袖で隠しながら楽しげに目を細めていた。
完全に――続けろ、の顔だった。本当に性格が悪い。柏は内心でそうぼやきながら、何食わぬ顔で巫女へと向き直った。
柏は半泣きになっている巫女を見て、小さく息を吐いた。腕の中へ抱え込まれた恋愛小説は今にも零れ落ちそうで、肩は緊張に強張り切っている。このままでは話を聞き出す前に怯えさせて終わりだろう。
ほんの僅かに指先が動き、腰元の神の目が淡く明滅した。それは瞬きほどの短い光だった。
「安心してください。今ここには、私しか居ませんから」
柏は穏やかな声音でそう言った。
巫女は何度か瞬きを繰り返す。
つい先程まで感じていたはずの気配へ無意識に視線を向けるものの、そこには誰もいない。奇妙な違和感だけが胸の奥へ薄く残る。しかしそれが何であったかを掴むよりも早く、その感覚は霧が晴れるように輪郭を失っていった。
「……あれ?」
戸惑うような声が漏れる。
柏は表情一つ変えない。
「どうかしましたか?」
「いえ、その……今そこに、八重宮司様がいらっしゃったような気がしたんですけど……」
巫女は自信が持てない様子で首を傾げた。
「気の所為ではありませんか? 第一、こんな夜更けに宮司様が倉庫へ来られる理由もありませんし」
柏が肩を竦めると、その言葉は驚くほど自然に巫女の中へ落ちたようだった。
元より確信があった訳ではないのだろう。曖昧な記憶は曖昧なまま形を失い、やがて彼女は自分自身を納得させるように小さく頷いた。
「……そう、ですよね。どうやら私の見間違いだったみたいです」
ようやく張り詰めていた肩から少しだけ力が抜けるようだった。柏はその変化を見届けてから、改めて視線を合わせた。
「それよりも、何があったんですか?」
柏の問い掛けに巫女は再び腕の中の本へ視線を落とし、抱え込んだ恋愛小説の束をぎゅっと胸元へ引き寄せながら不安そうに唇を結んだ。
「その……」
しばらく躊躇った後、縋るような眼差しで柏を見上げた。
「不躾なお願いだとは重々承知ですが、八重宮司様には内緒にしていただけませんか?」
巫女の言葉に、柏は柔らかく微笑んだ。
「もちろんですよ」
その返答を聞いた瞬間、巫女の表情から目に見えて緊張が和らいだ。
もっとも。
そのすぐ隣では、当の本人が袖口で口元を隠しながら実に愉快そうな顔をしていたのだが。
「それで、何故こんな夜中にそんなに大量の本を?」
柏が静かに問い掛けると、巫女は途端に視線を泳がせた。
抱え込んだ本の束をぎゅっと胸元へ引き寄せる。
「……その」
巫女は言い淀む。
どう見ても後ろめたいことをしている人間の反応だった。柏ぎ急かさず待っていると、やがて巫女は観念したように肩を落とした。
「最近、新しく入った子が居るんです。まだ右も左も分からないのに毎日一生懸命頑張っていて……見ていると、つい手を貸してあげたくなるような子なんです」
そこで少しだけ表情を和らげる。
「その子、八重堂の恋愛小説が好きで。以前は街へ降りる度に新刊を買っていたらしいんですけど、最近は忙しくて全然時間が取れなくて……平気ですって笑うんです。でも、好きなものを我慢している時の顔くらい、毎日一緒に居れば分かりますから」
そこで巫女は気まずそうに目を伏せた。
「それで、倉庫に保管されている献本を思い出したんです」
八重堂から奉納や寄贈という形で送られてきた本は、倉庫の一角へ保管されている。神子が目を通した後、そのまま積まれているものも少なくないと言っていたのを柏は思い出した。
「だから少しだけ借りて読ませてあげようかなって……」
そこまで言ってから、慌てたように付け加える。
「もちろん勝手に持ち出して良いものじゃないのは分かっています! でも読み終わったら必ず戻していますし、汚したこともありません!」
必死な弁明だった。なんとなく視線を横へ流すと、神子は壁へ寄り掛かったまま肩を震わせていた。
やがて柏は小さく息を吐く。
「事情は分かりました。ですが次からは別の方法を考えてください。たとえ善意で始めたことでも、続ければいつか誰かが困るかもしれませんから」
「……はい」
巫女は申し訳なさそうに肩を縮める。その表情を見れば、本人も自覚していたのだろう。
「とりあえず、本を戻しましょうか」
柏がそう言うと、巫女はきょとんと目を瞬かせた。
「え?」
「そのまま抱えていても仕方ないでしょう」
そう言って、柏は巫女の腕の中から数冊を受け取る。
「い、いえ! そんな、私一人で――」
「二人の方が早いでしょう」
有無を言わせない雰囲気に巫女は慌てながらも頷き、二人で本を棚へ戻し始める。
背表紙を確認しながら元の場所へ戻していくだけの単純な作業だったが、倉庫の中は妙に静かで、紙の擦れる音だけが微かに響いていた。
やがて最後の一冊を収め終える。巫女はほっとしたように胸を撫で下ろした。
「ありがとうございました」
「気にしないでください。その子に本を読ませたいなら、もう少し堂々と別の方法を考えた方が良いですよ。それこそ、宮司様に相談してみるのも良いかもしれませんね」
柏がそう言うと、巫女は一瞬ぽかんとした顔になった。まるでその発想自体が無かったと言わんばかりの表情だった。
「……そうですね。自分でもどうして思い至らなかったのか不思議です」
それから抱えていた本へ視線を落とし、小さく頭を下げる。
「今回はお騒がせしました」
「いえ」
柏も軽く会釈を返した。巫女はもう一度頭を下げると、倉庫の扉へ向かう。戸口で一度だけ振り返り、どこか安堵したように微笑んでから、そのまま夜の境内へと消えていった。足音も次第に遠ざかり、やがて完全な静寂だけが倉庫へ戻ってきた。
柏はその気配が消えたことを確認してから、小さく息を吐いた。
案の定、巫女の足音が完全に聞こえなくなった途端、背後から堪え切れなくなったような笑い声が漏れ聞こえてきた。
「んふふふふっ……汝、随分優しいではないか」
柏は静かに額を押さえた。
「……最初から知っていたんでしょう。“恋愛小説を盗み読む不届き者”じゃなくて、“後輩へ本を貸していた先輩巫女”だってことですよ」
神子は否定しなかった。ただ肩を揺らして笑っており、それが何より雄弁な答えだった。
「……本当に、人の反応を見るためだけに私を呼んだんですか?」
神子は何も言わず、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。
夜風が吹き、桜色の髪が月明かりを受けて淡く揺れた。神子は柏のすぐ目の前で足を止め、少しだけ身を屈めると、覗き込むように顔を寄せた。
「うむ、汝が巫女装束で困った顔をするのが見たかった」
「帰って良いですか」
神子は声を上げて笑った。柏は壁へ背中を預けたまま、もう一度大きな溜息を吐く。
犯人捜しをさせられた挙げ句、最初から答えを知っていた黒幕が目の前で楽しそうに笑っているのだ。理不尽にも程がある。
「……疲れました」
「どれ、久し振りに膝でも貸してやろうか?」
「存在しない出来事を捏造しないでください」
神子はますます楽しそうに笑う。
袖口で口元を隠しながら目を細めるその顔は、散々人を振り回した後にだけ見せるものだった。
柏はじとりと睨む。
しかし神子は気にした様子も無い。むしろその反応を楽しんでいる節すらあった。
しばらく笑っていた神子だったが、不意にその表情を和らげた。
「しかし、本当に大きくなったのぅ」
「……」
神子は小さく肩を竦める。
「昔はここまで気を張っておらなんだ。しかし今の汝は、常に何かへ備えた顔をしておる」
夜風が回廊を吹き抜け、灯籠の火が小さく揺れた。
柏はしばらく答えなかった。
答えなくても良い問いだと思った。
けれど沈黙を続けるのも何となく癪で、やがて小さく肩を竦める。
「……どうでしょうね」
それ以上を話すつもりも無いと有耶無耶な返答を返した。神子はそんな柏を見つめ、ふっと笑った。
「じゃが、妾は昔の汝の方が好きじゃったぞ」
柏は眉を顰める。
「腹を空かせて行き倒れてた頃の私が? 美化し過ぎです。昔も今も大して変わってませんよ」
柏は即座に切り捨てる。
神子は少しだけ首を傾げた。
「そうか。なら捻くれておったのも昔からということじゃな」
その声音には微かな笑みが混じっている。
「いったい誰の所為ですかね」
「さての」
神子は肩を揺らした。そしてしばらく柏を眺めていたが、やがて袖の中へ手を差し入れた。
「まぁ、今宵はよく働いた。どれ、褒美を……安心せい。今回は呪符でも呪物でもない」
「前科が酷過ぎるんですよ」
実際、過去に渡された物の半分くらいは碌でもない代物だった。神子はそんな彼女の反応を見て、笑いながら紙を一枚取り出した。
柏は警戒を解かないまま差し出された紙片を受け取った。
反射的に罠を疑う。神子から渡される物など大抵は何かしら裏がある。
しかし意外にもそこには達筆な文字でこう記されていた。
――秋沙銭湯 一月無料券。
柏は数秒沈黙の後、ゆっくり顔を上げた。
「何です? これ」
「見ての通りじゃが?」
「何で急に銭湯なんですか」
神子は肩を竦める。
「汝、最近殺気立っておるからのぅ。少し湯に浸かって肩の力でも抜けという、妾なりの気遣いじゃ」
まるで当然のことを言うような口調だった。柏はもう一度無料券へ視線を落とした。
秋沙銭湯。
稲妻でも評判の良い湯屋だった。湯質が良いことで有名で、宗助などは暇さえあれば通っている。以前も何度か誘われたことがあるが、その度に何となく気恥ずかしく断っていたのを思い出した。
柏は小さく瞬きをした。
「……意外とまともな物くれるんですね」
「何じゃその言い方は」
神子が露骨に不満そうな顔をした。
「もっとこう、“開けると呪われる箱”とか、“触ると変な夢を見る面”だとか」
「汝、妾を何だと思っておる」
「前科持ち」
柏は無料券を指先で弄びながら、しばらくそれを眺める。
紙切れ一枚。
それだけのものだ。けれど不思議と捨てる気にはならなかった。
やがて彼女は小さく息を吐く。
「……まぁ、ありがとうございます」
それは本当に何気ない一言だった。
特別な意味も無い。ただ礼を言っただけだ。しかしまるで予想だにしていなかった言葉を聞いたかのように神子は一瞬だけ目を丸くした後、ふっと笑顔を浮かべる。その表情は先程までの悪戯好きな狐のものではなく、どこか穏やかなものだった。
ふと夜風が吹き、桜の花弁がひとひら舞い落ちた。それを眺めながら、柏はふと思った。
結局のところ、この女には昔から敵わないのだろう。それは少し癪で、けれど少しだけ心地良かった。
しばらくの沈黙の後、どこか言い出しづらそうに視線を逸らす。
「あの、八重宮司」
「ん?」
神子は上機嫌なまま首を傾げた。
柏は数秒逡巡する。言わなくても察してほしい。だが、この相手にそれを期待するだけ無駄だということも知っていた。
結局、諦めたように口を開く。
「元の服に着替えるので、出て行ってもらえませんか」
神子は一瞬きょとんとした。そして次の瞬間には、実に楽しそうに目を細める。
「何じゃ、釣れぬのぅ」
「……」
「妾と汝の仲じゃろう?」
柏は無言のまま、じっと神子を見つめる。
神子も微笑んだまま見返している。
数秒後、柏は静かに額を押さえた。
「……はぁ」
ネタバラシをすると、メインヒロインを誰に据えるか考えあぐねていたのでこうしてアンケートに頼った訳ですが、アンケート結果が圧倒的過ぎて笑いました。
皆さん雷神好き過ぎでしょう。私も好きです。
意味深なアンケートにご協力ください
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神里綾華
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八重神子
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夢見月瑞希
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九条裟羅
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