白亜紀からこんにちわ   作:VISP

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その11 メギドの火と明日への歩み

 上海にて遭遇した大型ヘドラと赤熱状態のゴジラは互いに互いを認識した瞬間、それぞれが互いに遠距離攻撃を行った。

 ヘドラからはその巨大な眼球の白目(ヘドラのは赤いが)から放たれるヘドリューム光線、ゴジラからは赤色熱線がそれぞれ放たれ・・・両者の中間地点で衝突し、大爆発を起こした。

 直後、直ぐさま二射目を放ったゴジラに対し、ヘドラは突撃を選択した。

 平坦な地形の広がる上海では普通に走っても良い的にしかならない。

 故にヘドラは背部と下半身の一部から飛行形態と同じく毒ガスを噴出、それを推進力にして遮二無二突撃を敢行した。

 対するゴジラは慌てず騒がず急速に接近してくる大型ヘドラ相手に赤色熱線を発射し、その下半身を消し飛ばした。

 だが、ヘドラは群体生物であり、適宜離散と集合、形態変化を行う事の出来る宇宙怪獣だ。

 下半身が消し飛んだ程度では行動に支障を来す事は無い。

 寧ろ邪魔な重りが無くなったと飛行形態に移行してそのままゴジラに突進、生えた尾をゴジラの首に巻き付けてそのまま引きずり倒した。

 

 GUWOOOOOOOOOO!?

 

 驚きの声を上げながら、しかしゴジラにダメージらしいダメージは無い。

 普段ならば省エネのためにも表皮一枚下に展開されている電磁バリアを毒対策に体外に展開していた事もあり、ヘドラの肉体に触っても猛毒で溶かされる事も無いし、毒ガスもそもそも水中で長期間潜伏可能なゴジラなら息を止めてしまえば問題ない。

 想像以上の機動性に脅威度を上方修正しつつ、空かさず三射目の準備に入ろうとして・・・直後、ビル群へと叩き込まれる。

 更にまだゴジラによって焼き払われていない市内から小型から成長したやや小ぶりな中型ヘドラが多数現れ、盛大な粉塵を上げながらビル群諸共倒れ込んだゴジラ目掛けて半数が突撃していった。

 残った半数は大型ヘドラの上半身と合流、即座に先程までのサイズを取り戻していた。

 だが、大型ヘドラが再生するまでの間、巻き上げられた粉塵とそこに突撃した中型へドラ達は内部から放たれた超高熱波攻撃により、崩れ落ちたビル群や瓦礫も中型へドラ達も諸共に超高熱の衝撃波を浴びて、塵一つ残さず蒸発した。

 

 シャガーラコロコロコロコロ!!

 

 つまり、熱線を放つには溜めが足りていないという事だ。

 大型ヘドラは再び毒ガスを噴出、その巨体からは想像できない速度でゴジラへと接近、その大きな右腕を振り上げ、熱波の奥から現れたゴジラへと叩き降ろした。

 ゴジラの持つ電磁バリア、それを突破する方法を未だ人類は保有していない。

 しかし、そのバリアを貫通する方法自体は存在する。

 それこそが未だ人類が実現できていない巨大質量の衝突による運動エネルギーである。

 通常の砲弾やミサイル等はバリアで蒸発し、衝突時の運動エネルギーは一瞬で消えてしまう。

 だが、巨大質量での殴打による運動エネルギーはミサイルや砲弾のそれよりもとてもゆっくり発生し続ける。

 しかもその質量故にバリアで蒸発しきる事は無く、ゴジラに対しても十分なダメージを見込める。

 

 そんな欠点、ゴジラが把握していない訳が無かった。

 

 ゴジラは熱線のエネルギーを左腕へと集中、白熱化させながら大型ヘドラの右腕を受け止めた。

 瞬間、衝突のインパクトにより大気が震え、瓦礫と地面が波打つように捲れ上がり、ゴジラを中心とした深さ50m以上の巨大クレーターが出来上がり、その巨体を支える両脚と尾が大地にめり込む。

 しかし、ゴジラは無傷だった。

 元々のサイズと質量差、そして突撃の運動エネルギーと振り下ろしの位置エネルギー。

 それら全てを費やしてなお、ゴジラには些かの痛痒も与えられなかった。

 熱線の体内放射、それを全方位に放つのではなく身体の一部位へと集中させて局所的に放つ事で打撃や防御、時に推進力として用いる。

 言わば局所放射、ゴジラが長年の戦いの中で編み出した極めて効率的なエネルギー運用方法だった。

 

 GYAWOOOOOOOON!!

 

 大ぶりの一撃を防がれ、動きの止まった大型ヘドラの隙を、ゴジラは見逃さなかった。

 再び放たれた超高熱波攻撃により大型ヘドラはその表皮を丸焦げにされてしまう。

 間接も骨格も無いヘドラはそれ故に自在な動きが可能だが、その分表面が熱により乾燥や炭化してしまえばその特性は大きく減ずる。

 内部の無事な部位のみで逃げ出すには時間が無く、もし分離できた所で眼前の脅威が消え去る訳ではない。

 つまり、詰みだった。

 放たれた三度目の超高熱波攻撃、そして念入りな止めのために放たれた赤色熱線により、大型ヘドラは消滅した。

 これにより地上で活動中の中・大型ヘドラは消えた。

 しかし、激戦の跡地となった上海は代償として瓦礫と炎と灰、放射線だけが残るこの世の地獄へと変わり果てていた。

 この事態が動くのは一ヶ月後、各地でゴジラの残した放射線が僅か一ヶ月で消えた後の事だった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 北米 モナーク本部

 

 『ご覧ください!こちら上海上空、ヘリからの光景です!ヘドラ事件から一ヶ月経過した現在も未だに瓦礫の撤去すらままなりません!未だ行方不明の人々が多数いる中、中国政府は広州市へと緊急遷都した後はこれといって復興等の指示を出しておりません!被害者の家族や友人が必死に行方不明者を捜索しようとしていますが、ヘドラの撒き散らした猛毒が未だ残留しているため危険であるとして封鎖されています!封鎖線には多数の民間人や報道陣が詰めかけており制止されています!一連の政府の対応の遅れを受け、地方では独立運動が過激化しており・・・』

 

 『こちら南米のブラジル南東部、リオデジャネイロです。一ヶ月前、ヘドラによる被害を受けたこの場所ですが、現在はゴジラの放った放射線も消えており、瓦礫の撤去が始まっています。また、ヘドラの毒により不毛の大地と化していたと思われるこの場所ですが、現在は草木が大量に芽吹き始め、自然が回復しつつあります。この現象は他の地域でも確認されており・・・』

 

 『ヘドラ事件による死者・行方不明者は現在判明しているだけでも全世界で2億人にも上り、これは今後増える事はあっても減る事は無いだろうと言われています。また、生き残った一次被害者だけでも3億人、二次・三次被害者に至っては計測不能と言われています。一連の事件の被害総額に至っては天文学的とさえ言われており、現在も各地の復興と被害者の救済のために複数の政府が特別予算を組み・・・』

 

 『現在、世界各地でゴジラとヘドラの戦闘跡に残っていた放射能汚染が全て消えた事が各国の調査機関や軍、モナークより報告されています。これは一体どういう事なのでしょうか?スタジオの○○さん、どうぞ。』

 『はい、○○です。これはつまりゴジラの放つ放射線は既存の放射線とは大きく異なる性質を持っているという事ですね。通常、放射線・放射能には半減期があって、放射性物質が崩壊して、放射能の強さが元の半分に減少するまでの時間の事を言ってます。これは結構まちまちで数秒で崩壊するのもあればウラン238みたいな45億年もかかるだろうと言われてるのもあります。けどゴジラのはおかしいんですよ。半減期って文字通り半分ずつ減っていくんです。で、また時間が経つと更に半分になって消えていくんです。ゴジラの放つ放射性物質は一度半減するとすっと消えていくんですよ。今までの法則に全然当てはまらないんですよ。勿論熱線とかに当たったり、今回みたいにゴジラが本気で戦ってる時の放射線は致死量超えてるんですけど、それらが全部すっと消えてるんですよ。意味分かんなくてですね』

 

 プツ、とテレビの電源が落ちた。

 

 「どうやら世間でも情報公開の許可が出たみたいだね。」

 「サカヨリ、例の極限環境微生物の名前決まったかい?」

 「あー、もうテキトーにゴジラモナークワームで良いんじゃないですかね?」

 「「「「テキトーすぎる!!」」」」

 

 げらげらげらげらと職員食堂に爆笑の声が響いた。

 皆連日の徹夜や残業で大分理性が振り切れているが、それも当然だろう。

 彼らモナーク所属研究員らは先日、漸くゴジラの秘密のヴェールを一つ解き明かしたのだ。

 

 「噛みついても飲み込んでる場面が一つも無い・・・・・・そうだ、食べてないんだ。」

 

 切っ掛けは過去のゴジラの戦闘記録を眺めていたDr.酒寄彩葉の一言だった。

 ゴジラのエネルギー源は長らく体内の原子炉、より正確に言えば核分裂炉によって賄われていると思われていた。

 しかし戦闘が激しくなった場合、どうしても分裂炉一つでは賄えない程のエネルギー消費が起きており、サブのエネルギー機関や自身の撒いた分含めて周辺の放射線を極めて効率良く吸収して再利用しているのではないかと推測されてきた。

 だが、実際は違った。

 北極の氷床の下のG0の存在がその証拠だった。

 北極の氷床に蓄えられた太陽風エネルギー、それをG0が吸収・貯蔵し、何らかの方法で他のG1~7までの個体へと供給している事が判明した。

 これは北極基地で収集されたデータからも明らかであり、解明できればエネルギー伝達の分野に革命が起きるだろう。

 また、今回のゴジラの戦闘跡地を無人探査用ロボットで調べた所、未発見の特殊な微生物が多数発見された。

 これらの生物は放射線を受けたか放射性物質を摂食した際にそれらを無害な栄養に変換する他、核分裂と核融合反応双方を鈍化、最終的に停止させる微生物まで発見された。

 他にも未だ解析待ちの微生物が多数発見されており、ゴジラは一体どれだけの生物と共生関係にあるのか見当もつかないとモナーク所属研究員らは逝っちゃった目で大変興奮しながら語った。

 更に最新のゴジラの細胞サンプルを解析した結果、1000年前のミイラ化したサンプルよりも遺伝子情報が増加しており、現在では人類のソレの10倍近い遺伝子を有している事が確認できた。

 他にも仮説段階だが、今まで理解不能と匙投げ世界記録挑戦の題材となっていた「何故ゴジラは超高温と通常の生体反応を両立できるのか」という問いにも、この微生物群と電磁バリアの合わせ技で絶縁ならぬ絶熱構造を体内に有しているとすれば説明がつく。

 更に更に、白亜紀(前期か後期かは別として)から生きると言えども一個の生物としては余りにも驚異的な進化速度をしているのは、元素変換を連鎖的に行って身体構造を元素レベルで再構築させているのではないかという説まで浮上してきている。

 これらを証明して理論的に説明するにはまだまだ実験も物証も不足しているが、それでもあの神が如き生物の神秘へと人類の叡智が指をかけている事に間違いはなかった。

 因みに後の調査と実験で判明するのだが、ゴジラの体内の原子炉は内臓の様な器官ではなく、極限環境微生物の作る特別な膜構造の集合体が肉体の各所で局所的に超高磁場を作り、その中で核分裂・核融合を順番に繰り返していたりする。

 これによって僅かな呼吸だけで生存に必要なエネルギーを確保でき、またG0からのエネルギー供給も併せて本来のエネルギー生産能力以上の戦闘力を発揮、ガス欠知らずで暴れ回る事が出来るのだ。

 これを知ったモナーク・政府・軍関係者は揃って匙投げ遠投の自己ベスト記録を更新したという。

 

 「で、現在王様達はどうしてるんで?」

 「全個体が塒に戻ってるよ。他の怪獣は放置してな。」

 「やっぱりあの赤い姿、意図して熱暴走起こしてるから消耗が激しいみたいですね。」

 

 現在、ゴジラ達は本来の地上と地下を繋ぐ大穴、ポータルの監視を行っていない。

 全ての個体が所定の塒へと戻り、ここ一ヶ月近く姿を現していない。

 その原因が先日のヘドラ事件による消耗である事は明らかだった。

 人間で例えると、油を被って自分に火を着けたまま敵と戦うという戦闘終了前に死ぬ完全なる自殺行為が先日の対ヘドラ戦だった。

 寧ろよく全個体生きてたな???と研究者一同は思った。

 

 「復帰は何時になるのやら・・・。」

 「早い所戻ってもらわないとヤバいぜ。」

 

 研究員らの懸念通り、現在では以前と同じペースで怪獣達が穴から地上へと這い上がってきている。

 しかし、それらを制止するゴジラ達は現在消耗激しく休息中だ。

 故に現在、対怪獣戦闘は人類独力で行わねばならない状態だった。

 

 「月に一体、それだけでも人類を追い込むに余りあるってのがまた・・・。」

 「ヘドラ程ヤバくないけど今の人類には多すぎるのよね・・・。」

 

 ヘドラによって世界中の工業地帯を荒らされた上、大量の武器弾薬を消費した現在、各国軍は内心どう思っていても碌に出撃できない状況にあった。

 対ヘドラ作戦で多数の人員と装備、弾薬を損耗した彼らは動きたくとも動けない半死人と化していた。

 それでもアメリカは意地もあったので旧式装備やモスボール処置を解除した艦艇や車両を出して、額面上の戦力は回復したように見せる事はできた(その後実際に出撃する羽目になったが)。

 そんな事も出来ない者達は怪獣に国土を蹂躙されており、このままでは遠からず亡国と成るだろう。

 

 「で、対怪獣兵器の進捗はどうなの?」

 「それ私に聞きます?」

 「だってサカヨリが一番専門家だろう?」

 「・・・黙秘で。」

 「まぁそうだよな。」

 

 Dr.酒寄彩葉は現在、モナークの外部研究員として活動している。

 本籍は日本の酒寄ロボット工学研究所(と言う名の総合研究所だが)なのだが、モナークと米国政府、日本政府(とヤチヨ)の間の綱引きによりモナークの外部研究員として招聘される事となった。

 そして現在、ゴジラ関連研究とそれに付随して対怪獣兵器の開発も米国国防総省ととある企業とも協賛して進めている。

 勿論機密も機密なので、モナークの研究員仲間にも詳しい事は言えない。

 が、どっかの電子生命体は自分のボディ関連でもあるので大体の機密は既に暴き済みであるし、その内人手不足から駆り出される事になるだろうが。

 

 「セリザワ博士、渋い顔してたな。」

 「芹沢博士はいっつもあんな顔してるよ。」

 

 モナークの総責任者にしてゴジラ信者とも言われる博士を軽くディスりつつ、話は続く。

 

 「でも、必要な研究だよ。私の専門分野でもあるし、人類が怪獣と戦うためにも。」

 

 全ての怪獣がゴジラの様に人類と共生する事は出来ない。

 以前から言われ、彩葉自身も思っていた事だが、今回のヘドラ事件で世界中に明らかになった。

 怪獣脅威論に託けて全ての怪獣を駆除するというのは行き過ぎだが、人類と自然環境にとって害となるのなら話は別だ。

 現在、そのための兵器が米国内の軍需産業を国防総省、そしてモナーク出向中の研究員らの間で行われていた。

 モナークとしてはそれに苦言を呈しつつも、その必要性を理解しているからこそ強く止められずにいた。

 

 「でも軍事利用ばっかは悔しいから、絶対私の理想通りに医療分野にも転用してやるんだ。」

 「うーん流石はサカヨリ博士、挫けないなぁ。」

 

 こうして、人類は極大の苦難を辛うじて乗り越え、大きな悲しみと痛みを背負いながら次のステップへと進むのだった。

 

 

 

 

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