ヘドラ事件以後一ヶ月の間、地下世界と繋がる大穴から出て来た大型怪獣は2体のみ。
中型はおらず、小型は問題なく処理できたため、対応の焦点はこの2体となった。
そして、大方の(最悪の)予想通りにその怪獣達はゴジラに迎撃される事なく南米とロシアの大地に上陸した。
一体目、南米に上陸した個体はマンモスの様な牙とバクの様な短めの鼻、ゴリラの様な骨格とナックルウォークでの歩行、オオナマケモノやアリクイの様な鋭い爪という哺乳類をチャンポンした様な特徴の他、耐火性の高い毛皮に表面が苔むした甲殻を背中に持つ怪獣ベヒモス(学名タイタナス・ベヒモス)と名付けられた。
ヘドラ事件で疲弊した南米諸国には抵抗する術も無いと絶望されていたのだが、この怪獣、なんとアマゾンの森林地帯に到達するとそこで静かに暮らし始めた。
しかも植物を大量に食べこそするものの、それ以上にその排泄物には不毛な土地に生命を吹き込むほど栄養豊富な堆肥や燃料としての効果があった。
この排泄物の効果により過剰な伐採や焼き畑で荒れていたアマゾンの熱帯雨林が急速に回復を始め、絶滅危惧種とされる動植物の繁殖すら確認された。
アマゾンの熱帯雨林は膨大な二酸化炭素を吸収・貯蔵し、酸素を供給することから「地球の肺」と呼ばれている。
また、ここでは約4000億本の樹木が「空飛ぶ川」と呼ばれる程に水分を大気中に放出し、地球の気候調整に不可欠な役割を果たしている。
それが回復する事は即ち地球の持つ環境維持システムの回復であった。
この事態を受けて調査に当たっていたモナーク及び南米諸国はベヒモスの存在に対して事態が悪化の兆候を見せるまでは監視に徹する事を決定した。
これは先のヘドラ事件を参考にし、迂闊な刺激は与えるべきではないとしてベヒモスの縄張りには原則関係者以外立ち入り禁止となった。
一緒に現れた小型怪獣に人が食われてる?
そいつら密猟者や犯罪者だから気にしなくていいよHAHAHA★
一方、ロシアに現れた樹木で構成された身体を持つ2体目の大型怪獣アムルックは真逆の凶暴な性質を持っていた。
樹木で構成された逞しい両腕と短い4本の足を生やした巨人のような姿をしつつ、頭部は深海魚のような顔つきで黄色く発光する複数の目とイカの触腕のような4本の触手がついており、ボディには青い血管のようなものが絡まっている。
今まで前例の無い動物と植物双方の形質を持ったアムルックだが、実は動物の方が本体であり、こちらが植物に対してテレパシーで命令を下して自在に操作する事が出来る。
頭部と背骨以外は操っている植物で形成されており、そのため頭部以外を物理的に攻撃しても効果がない。
更に自由に手足を伸ばして攻撃できる他、純粋な膂力も強く、多くの他の怪獣を圧倒できる。
また、纏う植物を伸縮したり動かすだけでなく形態変化も可能であり、種子の発射を用いた砲撃や瞬間的な加速等も行える他、海に浮かぶ島や海岸沿いの森等に擬態する事も出来る。
身に纏っている植物側は植物側でアムルックと共生する事で広範囲に種子をばら撒き、また外敵から身を守る事が出来る上、平時はアムルックから栄養を吸収する事も出来る。
主導権こそアムルック側にあるものの、植物側にも大いに恩恵のあるWinーWinの共生関係なのだ。
一方、中身のアムルック(学名タイタヌス・アムルック)は肉食であり、積極的に他者を攻撃する。
その性格は極めて攻撃的であり、後に他の個体の行動から洪水の発生、他者を溺死させる事、水を赤く腐らせることを好む事が判明している。
しかも自分の気に入った土地を全て縄張りにしたがる傾向にあるため、縄張り意識の強さに反して活動範囲は広い。
その上で水棲怪獣でもあり、積極的に植物が豊かで水資源が豊富な土地を好む。
そんな土地は動物も多い=餌に困らず、動物を溺死させて水に浸す事で自身にとって心地よい水質へと変えていくという凄まじく厄介な性質を持っていた。
また、水質の変更は死体を沈めて腐らせるだけでなく、アムルック自身が放つ毒の影響で通過する全ての水を汚染し、縄張り周囲の水域を有毒な「死の池」に変えることのできる厄介な性質を持っていた。
こんな諸々の性質から、ロシア方面の民間伝承では"疫病の悪魔"と呼ばれ、恐れられていた事が確認されている。
今回はロシアのウラル山脈の西側、ペルミ地方オルダ郊外に位置するオルダ洞窟が突如崩壊、中型怪獣なら通過可能な地下世界への穴が出現し、そこからアムルックが出現した。
大型怪獣のアムルックが何故中型サイズの洞窟から?と疑問に思うのも当然だが、共生する植物で手足他を構成しているアムルックは身体の形状を頭部と背骨を除いて自在に変形可能であり、かなりの融通が利く。
なんと百足の様な細長い形状に全身を変形させ、無理矢理に洞窟を通過してきたのだ。
ロシア政府は即座に即応部隊の派遣を決定、爆撃機と攻撃機、更に攻撃ヘリ多数を出撃させた。
当初は通常弾頭だったものの、戦闘中にアムルックが炎を苦手とする事が判明したため、一度撤退して態勢を立て直し、改めて準備をしてから攻撃を再開する事となった。
この当時、ロシアでは対へドラ向けに多数のナパーム弾を生産・保有しており、それらを用いれば十分アムルックを撃破できる見込みがあった事がその判断を後押しした。
しかし翌日、ロシア軍はアムルックを見失うという大失態をしてしまう。
後に判明した事だが、この時アムルックは植物操作を用いた擬態でロシア軍機の目を掻い潜っていた。
また、水棲怪獣だけあって他の怪獣よりもそもそもの体温が低く、頭部と背骨以外は植物なために赤外線にも碌に反応しないという特性があった。
後でこの事実を知ったロシアの政府と軍関係者は頭を抱えた。
このほぼステルス怪獣とかどないせいと。
だがまぁ、幸いな事に昼間捜索活動中だった歩兵達がたまたまアムルックの背中の植物が現地の植生と異なる事に気付き、次いで閉じられた瞼を発見して探り撃ちをした事で擬態が解かれ、アムルックは活動を開始し、無事?発見された。
そして捜索中だった歩兵部隊がほぼ全滅した事と引き換えに予定通りナパームを主軸にしたアムルック撃破作戦が開始された。
植物の蔦を伸ばし、触手の様に振り回して攻撃ヘリを多数叩き落としたアムルックだったが、弱点とするナパーム弾の飽和攻撃に空かさず撤退を選択、逃げようとしたのだがロシア軍は執拗にこれを追跡した。
アムルックはウラル山脈に豊富にある湿原に突っ込んで消火しようとしたものの、ナパーム弾がそう簡単に消える訳もなし。
結局、アムルックは一度身体の多くを構成する植物を捨て、無防備な姿になってから再び周囲の植物へとテレパシーを送信して操り、新たな身体の一部とした。
ウッソだろオイ!とロシア軍が驚く中、無事な肉体となったアムルックは今度は逃走せずに頭部から伸ばした植物ではない触手をアンテナの様に周囲に伸ばした後、全方位へと高出力のテレパシーを放った。
植物を操るためではなく攻撃のための一撃であり、他者の精神に強引に衝撃を与えるためのものだった。
これにより周辺に布陣していたロシア軍の航空戦力はパイロットが即死して壊滅、アムルック自身もまた本来有線で行うテレパシーを無線で強引に最大出力で放った反動から植物への操作能力が大幅に低下して動きが鈍った。
しかし、既にロシア軍に追撃するだけの余力は無く、追加の部隊が到着する前に逃げ切られるだろう。
だが、天はロシアを見捨ててはいなかった。
一ヶ月の休養期間を経て、遂にゴジラが活動を再開したのだ。
後は語るまでもない。
病み上がりの通常形態とは言え、炎を天敵とするアムルックがゴジラに勝てる道理は無い。
ゴジラの存在を確認した時点で戦意を喪失して跪き、αコールによる号令を受けて直ぐさま地下世界へと踵を返した。
こうして、ゴジラ不在の一ヶ月は人類に己の無力さを知らしめる形で終わりを告げた。
なお、アマゾンでのんびりしているベヒモスはゴジラも害は無いと判断したのか放置する事にしたらしく、特にお叱りも受けずに今ものんびりと暮らしている。
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現在、世界経済は大変な事になっていた。
具体的には怪獣災害、特にヘドラ事件の余波のせいで。
当初、宇宙からの贈り物ともて囃された汚染物質を食べてくれる鉱物生命体は実際は宇宙怪獣の幼体であり、各地の汚染物質を食べ増殖、後に合体して前例の無い群体生物としての怪獣ヘドラとなり、各地に深刻な被害を刻んだ。
最終的にゴジラ達によって怪獣化したヘドラ達は殲滅されたものの、未だ被害を受けた工業地帯の多くは瓦礫の片付けしか出来ていない。
酷い場合では完全に政府に見放され、放置されている所すらある。
世界各地の工業地帯がそんな事になったもんだから、当然ながらあらゆる工業製品は大幅に値上がりした。
幸いにも中東の産油国はその乾燥ぶりからヘドラ被害は殆ど受ける事が無かったが、港やタンカーが襲われた事例もあり、また輸出先の国々の貯蔵タンクが大破していたりと受け入れ先が消えていて出荷できない等の問題も起きていた。
幸いにして激戦跡地は僅か数ヶ月でゴジラの放射線とヘドラの汚染が消えた事から人の出入りが可能になったものの、往事と同じほどの生産活動が再開されるには数年は待たねばならないだろう。
これによりあらゆる化学製品は暴騰、ものによってはどれだけ金を出しても買う事が出来ない事態になった。
何せ海上・航空輸送もリスクが大幅に上昇している昨今、更に生産設備まで大打撃を受けたのだから極端な品薄も当然だろう。
もはや怪獣大恐慌、タイタンショックと言っても過言ではない情勢だった。
そんな中、先進国の中で一国だけ何故か怪獣災害を殆ど受けておらず、繁栄を謳歌している国があった。
そう、日本である。
現在、貴重な怪獣災害を受けていない先進国として、世界各地の富裕層から資産と人命の避難先TOPとして有名になっている日本である。
何故かゴジラ達は日本だけは絶対に怪獣を上陸させんと奮起しており、大抵の怪獣は海上で始末される。
お陰で怪獣警報が鳴っても市民がパニックになる事は無く、地震警報と同じ程度には落ち着いて慌てず騒がず避難する習慣が付いてすらいた。
そんな日本の経済状況は世界中からの投資によって大幅に上向いていた。
現在、日本経済は極端な円高傾向にあるものの、先も上げた通りに市場にものが無い品薄のため、多少高くとも品質が安定して高い日本製品を挙って買いに走る状況な事から作った端から商品が売れていくのだ。
勿論、日本だって加工貿易や国内消費のための原材料や原油の輸入に関しては高騰している事から問題視しているが、それでも暴騰や品薄からの開店休業状態の各国よりは遙かにマシな状況だった。
こうして経済状況こそ上向きなのだが、食料品の輸入先として何だかんだ最有力だった中国が実質滅亡・分離独立状態なので、食料の輸入に関しては割とガチで困っていたりする。
なので各地の耕作放棄地や買い手のいない農地を国が一括購入してから希望者に農地として様々なサービス付きで格安で販売する制度が出来たりもした。
これは後述するある問題への対策も兼ねた政策の一環であり、その問題に関しては政府も国民も一様に頭を抱えていた。
そう、難民・移民問題である。
実質滅んで戦国時代の中国にお隣の半島を始め、怪獣災害を受けた故国から必死に逃げてきた人々が安全な日本へと殺到してきたのだ。
勿論、外務省及び税関はパンク状態である。
しかし、ここで手を抜いて素通りさせようものなら数十年前に大きく取り沙汰された外国人問題が一気に再燃し、国内に大量の不穏分子を抱える事になる。
そんな事態には絶対させぬと外務省は己のメンツが潰れるよりも国益が大事だと他省庁への協力も要請し、職務に励んだ。
以前の問題から改正された各種法令もあり、犯罪歴のある外国人は一律強制退去、また国内で犯罪を起こした場合も国内法に則って対応した後に強制退去、それ以外の人間も観光は兎も角就労ビザに関しては先んじて国内企業からの内定と煩雑な手続きと審査を経なければ配布されない等の法を混乱時とは思えぬ程厳格に実行し続けた。先の農地補助制度も無主の土地を減らして、身元不明の外国人資産家や企業に買われないようにするためのものだった。
それにより順番待ちの外国人が既に国内に入っている同胞と共に届け出の無いデモ行為を起こした事件もあったが、法律通り速やかに対応が成された。
残った入国待ちの外国人の多くはこれに背筋を正し、税関付属の難民キャンプ(としては結構清潔でしっかりした箱物)で暫く生活する事を納得し、出来ない者達はやらかしが発覚した後に法に則った対応をされる事となった。
常の日本とは思えぬ強硬な対応を見た各国は驚き非難声明を出したものの、米国はこれを支持し、それによって表向きは非難の声は消えた。
その裏側で8000年前から日本の裏で暗躍する電子生命体とそれに頭の上がらない日本政府の人達とかゴジラに人類見限られるような真似してんじゃねーよと切実に思ってる米国政府&モナークの思惑とか色々あるが、取り敢えず日本はまだ何とかギリギリ辛うじて平和を謳歌できそうであった。
「漸く、漸く出来た・・・。」
「これが反重力推進装置かね。」
「サイズと安定性両方実用段階をクリア。これを搭載した輸送機が完成すれば漸く地下世界の本格的な探索が出来ます。」
「後は実機テストですな。それは予定通り我々米軍にお任せを。Dr.サカヨリは引き続き対怪獣兵器の開発をお願いします。」
「と言っても基礎理論と設計は終わって、後は試験機の実働データ待ちですけどね。出来ればこの反重力推進装置ももっと高性能化してロボに搭載したいですし。」
「またまた~。そう言って君本来の医療用義体の設計も進めてるのは知ってるんだよ。完成した暁には是非我がエイペックス社も噛みたいものだね。」
「そうは言っても市場に出るまで後10年は必要ですよ。今は試作1号機が漸く完成してデータ取りしてる所なんですから。量産に当たっての生産ラインの敷設もどれだけ必要か分からないですし、そもそも正式量産仕様の設計もしなくちゃ。」
「商品化の際は是非米軍にもご一報を。軍人に傷病者は付き物ですからな。」
一方その頃、世界のDr.サカヨリは大事に大事に酷使されていた。
ゴジラ主「仕方ねーから今回はある程度は目溢ししてやるか」
という訳で今回ベヒモスとアムルックは処されませんでした
余裕あったら地下に叩き返されるか処されてました