白亜紀からこんにちわ   作:VISP

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その13 対怪獣兵器

 米国国防総省、エイペックス社を始めとした西側軍需産業、そしてモナークと酒寄ロボット工学研究所の連名で試作型の対怪獣兵器とその補助兵器が発表された。

 

 YATー00 MOGERA

 Anti Titanusの型式と試作機0号機を意味するYと00。

 そして名称はMobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-type (対ゴジラ作戦用機動ロボット)の略である。

 関係者での通称は後の正式版を考慮してプロト・モゲラとなっている。

 と言っても、現状この名前は余りにも高望みで現実的ではないが、こうした方がスポンサーが多く付くのでこの名前となった。

 ゴジラの細胞サンプルや戦場跡地から入手した極限環境微生物類から発見された通称抗核バクテリア(学名ゴジラモナークワーム)の持つ核分裂と核融合反応双方を鈍化、最終的に停止させる能力を安全装置に転用した試作型核融合炉を主動力として搭載している。

 全高50mと怪獣としてはギリギリ大型に分類されるが、本機はあくまでデータ取り用の試作機であり、本命の100m級を開発するためのテストヘッドである。

 そのため、テストの最終段階として中型怪獣を実戦で撃破するためにこのサイズまで抑え込まれている。

 また、巨大ロボット兵器という余りにも浪漫全振りな兵器であるために信頼性も有効性も各方面から疑問視されているため、予算確保に難渋したという背景もあって、紆余曲折の果てにこのサイズになった。

 対ゴジラの前に大型、更にその前に中型、それ以前に怪獣相手に十分戦えると実証するための機体であり、現時点での人類側の持つ科学技術の粋を集めた機体でもある。

 だが、動力がまだ試作品の核融合炉と補助バッテリーという事もあり、エネルギー消費の激しい熱光学兵器は牽制・自衛用の一つしか搭載されておらず、それ以外の射撃兵装は基本的に実弾兵器、しかも外装式のみである。

 肩部上面、腕部側面、大腿部側面の合計6カ所のハードポイントに多連装ロケット弾ポッド等を装備して使用するが、これら弾頭はM270 MLRS(多連装ロケットシステム)と同規格のものを使用しており、同システムの既存の弾頭は全て運用可能となっている。

 具体的には対怪獣用ナパーム弾や新開発の冷凍ロケット弾等もそのまま運用できる。

 大型怪獣相手では火力不足が指摘されそうだが、本機は単体ではなく既存航空機や攻撃ヘリ、無人攻撃機といった既存兵器との連携を前提としている。

 怪獣の撃破よりも損耗の激しい通常戦力を温存させ、相手怪獣のヘイトを稼ぐタンク役をしつつ、既存兵器と連携して中型怪獣を撃破・撤退させる。

 これこそが現状想定されているモゲラの運用方法なので、特に問題視されなかった。

 外観はほぼ平成モゲラのそれだが、合体変形や腕部ランス(何とドリルではない!)の開閉や腹部ハッチの開閉・収納などのギミックは一切なく、信頼性を最優先とした構造を取っている。

 これは万が一試作品の核融合炉がメルトダウンしてしまった際、その被害を機体の装甲を用いて内部に抑え込むための構造となっている。

 そんな構造のために勿論装甲材質は現状最高のものが採用されている。

 あのへドラの乗ってきた隕石の組成を参考とした超耐熱チタン合金を主に採用、正面装甲の重要部位に人工ダイヤモンドミラーコーティングを施してある程度の高熱や光線などへの耐久力を高めている。

 背面の背鰭状のユニットは放熱板であり、融合炉のオーバーヒートを防ぐ役割を持っている。

 また、蓄積した熱量を用いたヒートブレード機能を有しており、背面からの奇襲や巻き付かれた際の対抗手段として機能する。

 また、両腕部のランス状ユニットは当初五指のマニュピレーターを採用予定だったが、近接時の強度面の問題が解決できなかったため、打突武器兼防御手段として使用するべくランス状の打撃用部位となった。

 このランス腕には最新の人工ブルーダイヤモンドミラーコーティングが施されており、先の人工ダイヤモンドミラーコーティングよりも更に耐久性に優れている。

 つまり、ゴジラの様な常時電磁バリアを展開している相手だろうが、近接戦闘に限りそれを突破できるのだ。

 この機能は本来搭載予定に無かったのだが、対ゴジラ兵器と銘打っているがため、つまりはスポンサーへの忖度として搭載された。

 移動方法に関しては歩行も一応可能だが、メインは足裏に搭載されたローラーシステムと大腿部に内蔵された熱核ジェットホバーを併用した高速移動である。

 他にも姿勢制御用スラスターを全身に配備してあり、迅速な方向転換や転倒からの復帰を可能としている。

 安定性を重視した故に歩行が何とか出来る程度の脚部・下半身構造のため、尻尾にはバランス制御用と放熱板追加のためのスペース、そして近接格闘時の攻撃手段と怪獣に寄せた形状にする事で怪獣からより意識される事でヘイトタンクとして機能するべく設置されている。

 対して、上半身はかなり間接の可動域が広く取られている。

 首と腰部は360度旋回が可能であり、肘関節も前後300度、左右ロール360度とかなり広く動かす事が出来る。

 これは多くの怪獣が生物として当然の間接の可動域故に背面に死角が大きく、自身が背面を取った際に経験的に油断する事が多く確認されたためである。

 これは視覚と攻撃の死角を減らしてほしいという軍部からの要望に応えた結果だった。

 また、これに伴い射撃兵装は既存兵器のM270 MLRS(多連装ロケットシステム)と同規格のロケット砲の他、頭部のカメラアイに内蔵されたサーチライト機能に付随したレーザー砲が左右合わせて2門搭載されている。

 このレーザー砲の出力は大型怪獣の外皮を焼くには弱く、威力不足が指摘されているが、これの目的は接近戦時に怪獣の眼球や粘膜へと攻撃して接近を牽制するための自衛装備であり、頭部という柔軟に稼働する台座に備えられた対空砲としての役割が主となっている。

 飛行可能な小型怪獣やロケット弾染みた生体組織の射出(例:ヘドロ弾)を迎撃するための装備であり、米軍や自衛隊でレーザーCIWSとして採用済みのものをより高出力に改良したものである。

 そして、一際目立つ生物なら口、口吻に類する位置にあるドリルユニットだが、これもまた自衛のための装備である。

 通常の怪獣が摂食のためにも行う噛みつきに対し、ロボットで機械的にそれを再現する事は出力・強度的に難しいし、余り意味が無い。

 そのため、他に使用可能な武装が無く、敵の接近を許して組み付かれてしまった際の保険として開閉などせずそのまま突いたり、叩き付けられるドリルが選ばれた。

 とは言え、回転機構はおまけみたいなもんなので余り重要視されていない。

 操縦方法に関しては機体内部の核融合炉に対して未だパイロットの安全性が完全に担保しきれないとして連携する反重力推進輸送機に詰まれた専用設備でAIからの情報支援の下で遠隔操縦を行う予定となっている。

 情報の送受信は基本レーザー通信だが、ムートー種の様なEMPパルスを喰らって遠隔操縦がダウンした際の事を警戒し、念のため背中側の首の付け根にハッチのある緊急操縦用のコクピットブロックが用意されている。

 このように、全体的に予算が限られた試作機という範疇ながらも、信頼性を重視した設計となっている。

 

 YAGー00 UWAV

 Anti Glavityの型式と試作0号機を意味しており、その名称はUnderground World Aerial Vehicles(地下世界で飛行可能な乗り物)の略である。

 機体本体は既存の高速輸送機を母体にしつつ、重力反転現象へ耐久と反重力推進装置の全面的な採用を目的に設計された。

 反重力推進装置の基礎理論はDr.サカヨリのものであり、彼女の全面的な協力を得てエイペックス・サイバネティック社が地下世界での運用を主眼として開発した機体である。

 全長約15m、全幅約10mと航空機としては並程度の大きさと重さだが、合計4基の反重力推進装置をオスプレイやバローの様に垂直・水平に可動させる事で垂直離着陸が可能になっている。

 また、着陸時は反重力推進装置そのものが着陸脚として機能する。

 加速性・運動性も極めて良好であり、最大速度こそ音速を超える事は無いが、既存のどの航空機よりも高い運動性と小旋回半径を持つ事、推進剤に一切依存しない事からテストパイロット達からは好評だった。

 内部容積も中型輸送ヘリ程度に確保されており、武装の搭載も可能で既存の12.7mm機関砲×2基、多目的小型ミサイル×8発を搭載可能となっている。

 問題となったのは肝心の反重力推進装置の起動には「サンフランシスコが一週間稼働するだけの電力」が必要とされた事だった。

 当初は研究所に設置された試作の核融合炉を用いて起動、内部に搭載したバッテリーで稼働させてテスト飛行を行っていたのだが、余りにも飛行可能時間が短い事が問題となった。

 そのため、Dr.サカヨリ及び急遽呼び出された酒寄ロボット研究所の面々が主体となって開発した板状のマイクロウェーブ受信装置を機体の装甲全てに採用、基地に設置されたマイクロウェーブ送信装置から給電する事で飛行可能時間がほぼ無制限になった。

 また、バッテリーが不要になった事で重量も軽減、再び内部容積も広くなり、モゲラとその後継機の支援用に採用され、現在は通常仕様2機、モゲラ操縦用2機が建造され、テスト運用する予定だ。

 しかし、これにより本機は地上部隊との連携が不可避となった事で当初予定されていた地下世界への探索用乗機としての採用は逃してしまう。

 後にモナークの有する超大型航空司令船USS ARGO / アルゴに同マイクロウェーブ送信装置と核融合炉を採用する事で広範囲を移動可能になる。

 が、それはそれとして、このアルゴやモゲラ、UWAVのデータを活かしてエイペックス社は本命の地下世界探索用航空機の開発に着手する事となる。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 「やぁDr.サカヨリ楽しんでいるかな?」

 「これは、シモンズ社長。」

 「ありがとう。君達の協力のお陰でうちの会社は潰れずに済んだよ。」

 「そんなご謙遜を。貴社でしたらあのままでも十分世界的大企業のままでしたとも。」

 「それこそ君の方が謙遜が過ぎるとも。我が社のスタッフも優秀だが、君達はそれ以上だ。悔しい事だが一緒の仕事が出来て幸運だったよ。」

 「えぇ、私達としても喜ばしい事でした。」

 

 モゲラとUWAVの発表を終え、関係者での記念パーティーの最中、彩葉は出資者にして共同開発者のエイペックス社の社長ウォルター・シモンズと歓談していた。

 

 「所で、一つ質問よろしいだろうか?あぁ、これはセリザワ博士にも既にしたものだから緊張しないでもらいたい。」

 「いえ、私に答えられる事なら喜んで。」

 

 その前置きに彩葉は悟った。

 これ厄ネタだ、絶対厄ネタじゃん!間違いねぇ!!

 

 「今日に至るまで、多くの怪獣が撃破された。ゴジラの手によるもの、人類の手によるものを問わず、その死骸から多くの知見が得られ、また今日の技術的発展を支えるものとなった。その上で、踏み出してはいけないボーダーもあると私は考えている。」

 

 現在、大型から小型まで、サイズを問わなければ地上で屍を晒した怪獣の数は優に100を超える。

 へドラの様な厄介な特性を持ちながら短期間で大量発生するものを除き、それらの死骸はモナークや各国によって回収され、それらは大企業や大学などへサンプルが送られ、研究されている。

 それらによって有用な発見が数多くなされ、今日の怪獣災害に苦しむ人類を支える一助となっている。

 とは言え、時折へドラ事件程ではないが大失敗して痛い目を見るのもよくある事なのだが。

 

 「ボーダー、ですか?具体的には?」

 「怪獣由来技術の兵器転用は、もう止められまい。しかし、しかしだ。クローンやサイボーグ化、骨格をベースにロボット化して兵器にするのはリスクが大きすぎる。」

 「それは・・・はい、その通りかと。」

 

 対怪獣研究によって得られた技術を他分野へとフィードバックするのは別におかしくはない。

 古来より人類が行ってきた事であり、その程度は普通の事だ。

 だが、怪獣とその死骸、体組織等を直接的に兵器化するのは倫理的・技術的な問題が余りにも大きかった。

 

 「私は企業人だ。モナークや軍の様な崇高な使命は持っていない商売人だ。だからこそ、この際リスクははっきりしておきたい。だから現状この分野で最高の専門家である君の意見が聞きたかった。」

 「そうでしたか・・・。芹沢博士は何と?」

 「『王の怒りを買う』との事だ。」

 

 もし、人類がロボット化した怪獣やクローン等を自身の兵力として運用した場合、ゴジラはどう判断するのか?

 それは対怪獣研究に携わるあらゆる者が考え、しかし答えが出ない問いとして放置されている問題だった。

 仮にもし、それが実現できるだけの技術を人類が有した時、ゴジラは今現在の様に人類を敵視しないのか?

 それともへドラの様に地球を汚染する危険な存在として排除するのか?

 この答えの出ない、それでいて間違えれば致命的となる問いに、関係各位は頭を悩ませていた。

 

 「私も同意見です。現状の人類の技術、軍事力ではゴジラに勝てません。そして、ゴジラが本気になって排除に動く相手にも。」

 「宇宙怪獣か・・・。まさか地下だけじゃなく宇宙にすら、か。」

 

 シモンズがやれやれと嘆息する。

 彩葉の態度から、彼が考えていた怪獣の兵器転用プランは成功の見込み無しと考えたのだ。

 元々成功率も低く、リスクも極めて高いプランだったので乗り気ではなかったが、しかし多くの資本家や団体から問い合わせのある案件だったため、現状世界最高峰の頭脳の持ち主の返答を添えてお断りする事にしたのだ。

 一体や二体なら兎も角、合計8体のゴジラ(しかも内一体は通常の3倍近いデカさ!)が敵対する可能性が高いとなれば慎重にもなる。

 勿論、成功の算段が付いているのなら、それに乗っからせてもらいたかったが。

  

 「先ずはプロト・モゲラでデータ採取。後の正式版を複数体建造した上で地下世界へと降りる。」

 「そして怪獣災害を抑止して地上を安定、その余力で宇宙への備えを行う。それがモナークの主な意見だ。」

 「えぇ。今の人類では様々なものが足りていませんから。」

 「おや、興味深い話をしているね。私も混ぜてもらえないかね?」

 「おや大佐。今夜のテキーラはお気に召されませんでしたかな?」

 「ははは、社長がDr.サカヨリを口説いているのを見かけましてね。抜け駆けはいけませんぞ?」

 「「はっはっはっは」」

 (帰りてぇ・・・助けてかぐや・・・。)

 

 賑やかなパーティの一角で、しかし責任者らはその陽気な空気に呑まれる事なく、次へと向けた話し合い()を進めるのだった。

 

 

 

 




なお、へドラ事件でやらかした人々は責任取らされて総辞職・退職が穏当
市民団体や一部企業は被害者やその遺族による焼き討ち・リンチ
今回は警察も見て見ぬふりをした模様
生き残ったのはガチテロリストとして自前の兵力ある連中のみ

各国・各勢力によるいろPへの対応
「逃がさん、お前だけは絶対に」
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