白亜紀からこんにちわ   作:VISP

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その16 地下世界の今昔

 204×年現在、何故地下世界が複数の大型怪獣の連合同士による覇権争いの場になっているのか?

 

 これには当然理由が存在した。

 白亜紀前期から中期、この時期は実は地下と地上双方の世界が平和な時期だった。

 モスラ・バトラの一対の世界のバランスを司る調停者の存在により、世界は均衡を保っていた。

 とは言え、彼女らも白亜紀前期生まれだったため、他の怪獣達に簡単にやられないようになるには幾度も転生と復活を繰り返さねばならなかったのだが、その過渡期さえ過ぎてしまえばその飛翔速度や豊富な技、高い知性から生き延びるだけならどうとでもなった。

 その白亜紀前期を支えたのが当時、未だ野生動物としての生き方が上手くなかったゴジラだった。

 当時、転生者だった頃の意識が擦り切れ、しかし常識や知識等はしっかり残っていたゴジラは未だ怪獣王と言うには振り切れていないという中途半端な状態で、しかし持ち前の「力」によって彼方此方で問題を起こしていた。

 具体的にはうっかり他の怪獣の縄張りとかを侵犯しては迎撃され、それを正面から撃破するとかしてた問題児だった。

 これを見たモスラ達は力では敵わぬが、しかし積極的に暴れる訳ではないゴジラを巧みに利用した。

 

 具体的には世界のバランスを崩す様な危険な存在の元へと誘導、時にそういった存在の方を誘導してぶつけ合わせたのだ。

 

 結果、バランス崩壊の原因の排除とゴジラの戦闘経験の蓄積により、見事にゴジラは怪獣王へと成り果せた。

 世界の調和、バランスを考え、それを維持して生きる「王の号令」を放つ怪獣達の王の誕生に、モスラ達は一先ず安堵した。

 実際、かなり長期間この三者と一部の温厚な怪獣達により地球のパワーバランスは保たれ、生態系が崩壊する様な事態が幾度も防がれた。

 しかし、永く続いた平和はある日唐突に呆気なく終わってしまった。

 

 宇宙からの侵略者、偽りの王ギドラの最初の襲来である。

 

 当時、宇宙からの脅威に殆ど無知だった地球の怪獣達は蹂躙された。

 強力かつ応用の利く引力光線、ゴジラ以上の巨体、それでいて当時のモスラに比肩する程の飛翔能力、何より頭が三つで隙も無いし近接戦闘での手数も豊富だ。

 そして何より、このギドラは「王の号令」を使えた。

 これにより地上と地下双方の怪獣達は敵味方に分かれて相争う大混乱に陥り、ギドラの狙い通り多くの種が絶滅の憂き目に遭った。

 漸くゴジラによってギドラが討伐された後、残ったのは荒れた地上・地下世界だった。

 この事態を憂いたゴジラ・モスラ・バトラは今後は地上にも担当者を配置して地球を守る事、同時に王の号令によって怪獣達が侵略者側に寝返らないように地下世界へと放逐する事を決めた。

 この決定に大いに困る者達がいた。

 ゴジラ達の縄張りで大型怪獣の猛威から守られてきた存在、所謂古代文明の人類だった。

 彼らの多くはゴジラ或いは自身が守護者として祀る怪獣達の縄張りで暮らしており、彼らの巣を整えたり、栄養源となる放射性物質を集める等して貢献していたのだが、この関係が大きく崩れたのだ。

 ギドラ襲来によって今まで穏やかだった怪獣達が暴れ回り、或いはそうした怪獣に倒されたり、ゴジラやモスラ達に倒された事によってゴジラとモスラ達以外の既存のパワーバランスが大きく崩れた事で庇護者を無くした古代文明の人類は現状を打破すべく様々な策を講じた。

 モスラ達に庇護を求める者、新たな庇護者となる怪獣を育てる者、新たに兵器や労働力として怪獣を使役せんとする者、或いは自らに都合の良い怪獣を造り出そうとした者。

 他にも新天地を探して旅立つ者、怪獣の少なくなった地上世界に出る者、或いは自らの身体を過酷な生存競争に打ち勝つために作り変えようとした者。

 各自が様々な方法で生き残りを図り、しかしその殆どが成功せずに滅び、途絶えていった。

 中には成功した他の古代文明へと合流して生き長らえた者達もいたが、その数は僅かだった。

 やがて再び情勢が安定してきた頃、とある怪獣達が地下世界で徐々に増え、勢力を拡大していった。

 それこそが後の地下世界の覇権種族、グレイトエイプと言われる類人猿型の大型怪獣である。

 特殊能力や高い耐久力こそ無いものの、気性穏やかにして力は強く、器用で賢く、群れを作る彼らは人類の庇護者として最適だった。

 種族として比較的近しい事、当時の王が温厚だった事もプラスに働いた。

 こうして、地下世界ではグレイトエイプとモスラ達による新たな秩序が構築され、地上では単為生殖を可能になったゴジラ達による宇宙への迎撃態勢が確立された。

 この時代が白亜紀末期であり、地上と地下双方が平和な最後の時期だった。

 

 そんな時だった、ギドラの二度目の襲来が起こったのは。

 

 超巨大な隕石の中に隠れて侵攻してきたギドラに対し、ゴジラが極大の熱線で迎撃する事で戦端が開かれた。

 戦いは苛烈だったものの、無事にゴジラ側の勝利に終わった。

 しかし、消滅し損ねた巨大隕石は地球に降り注ぎ、最も大きな破片は南米に着弾、地球は氷河期へと突入した。

 この大衝突の余波は地下世界にも及び、当時のグレイトエイプ達の縄張りの中心が崩落する事態となった。

 これにより当時のグレイトエイプ達の長が死亡、更に崩落の余波で吹き飛ばされて多くが死亡、生き残りも散り散りとなってしまった。

 静寂な極寒の世界となった地上と異なり、再びパワーバランスが崩れた地下世界はまたも戦乱の時代に逆戻りしてしまった。

 再び庇護者を失った古代文明の人類だったが、二度目となれば彼らも無策ではなかった。

 事前の取り決め通り、敢えて複数のグループへと分散して絶滅を防ぐべく活動を開始した。

 生き残った有力なグレイトエイプの群れと接触して協力関係を結ぶ者、モスラ達の活動に協力する代わりに庇護を受ける者、嘗ての文明の研究データを活かして自分達を庇護してくれる怪獣を育てる者、そして人類である事を止めて精神生命体とでも言うべき存在になる者など、様々な手段が試案され、実行された。

 一体の庇護者で養える人口には限界がある。

 また、一体の庇護者に依存してはもしその庇護者が倒れれば滅びるしかないが故の方策だったが、これは意見の食い違う者達を穏便に分けて人類同士の争いを抑止する狙いもあった。

 元々、古代文明の人々はその過酷な生存環境から現代人と比べると高い身体能力の他、テレパシーや念動力の様な超能力を行使可能な人間が多数存在しており、彼らはその力で怪獣達ともコンタクトを取って暮らしていた。

 他にも原始的ながらも確かな技術力を持っており、地下世界独特の鉱物や動植物を用いた確かな文明も持っていた。

 

 そんな彼らだったが204×年現在、大体三つのグループを除いて全滅してしまっている。

 

 モスラの庇護を受け、その卵を守り、地上へのポータルを隠す等の協力をしているイーウィス族。

 グレートエイプの群れと共に生き、技術的な面から協力している様々な部族。

 そして嘗て海底や沿岸部にて文明を築いていた、怪獣の使役を研究していたシートピア族である。

 だが、モスラの氏族を除いた人類は現在、極めて重大な問題を抱えていた。

 グレートエイプの群れと共に生きている部族は群れ毎に異なる集団であり、時に争い、時に協力する等、纏まりに欠けていた。

 その中であらゆる手段を用いて他の群れを取り込み続け、最も大きくなったグループが偽りの王となったスカーキングに率いられたグループであり、他のあらゆる勢力に対して侵略戦争を行っている。

 その数、なんと実働戦力のグレートエイプだけでも300を超える。

 技能奴隷である人間こそ100にも届かない程度だが、その兵数だけでも脅威である。

 このスカーキング、二度目のギドラ襲来から長い時を生きた事で「王の号令」を使えるようになったグレイトエイプなのだが・・・その気性は極めて残忍で凶悪、群れの部下すら些細な失敗をすれば処刑して晒し首にしたり、自分の身を守る盾として使い捨てたり、降伏した敵を虐殺したりとやりたい放題の暴虐の限りを尽くしている暴君だった。

 現在、地下世界が戦乱の時代となっている最大の原因でもあり、モスラ達にとって目下最大の排除対象であった。

 一方、他にはゴリラ系のグレートエイプであるコング族の王として若いながらも「王の号令」を使える気性穏やかで善良かつ勇敢なキングコングが率いるグループも存在し、更にこちらに付き従う複数のグループがいたりするが、実働戦力は30程度しかおらず、残りは生き残った女子どもや老成の個体と人間しかいない。

 ではシートピア族はと言うと、嘗て怪獣の使役・家畜化を目論んだ技術力に勝る集団の系譜であり、長い歴史の中で様々な成功と失敗、紆余曲折の果てに多数の分派に分かれては集まってを繰り返し、最後には地下と地上に別れた技術者集団だった。

 地上にいったグループは怪獣の兵器・家畜化のために品種改良や遺伝子編纂を試み、当時の沖縄付近にニライカナイという都市国家を興した。

 そこまでは良かったのだが生体浄化システム兼兵器として開発したダガーラ及びベーレムの暴走により滅んでしまった(後にゴジラにより処理された)。

 一方の地下へいったグループは同じく沿岸部に都市国家を築いて怪獣の家畜化は行ったものの、気性の穏やかなベヒモスの様な種族を住環境を整え、子どもの頃に躾して労働力にしたりといった穏やかな方向性だったため、モスラ達からも気に掛けてもらえたが故に滅亡を免れた。

 現在は「王の号令」に対する耐性を獲得するように調教されたメガロを防衛戦力として運用している。

 なお、現在のメガロは三代目に当たり、大好物は地下世界の巨大樹より採れる樹液、次いで熟しすぎた果実の汁である。

 そんなシートピア族の戦力はメガロを筆頭に労働力兼防衛担当のベヒモス1体のみである。

 とてもではないが単独での防衛は何処の勢力も不可能だった。

 この様な状況なので、最も攻撃的で他グループを侵略して拡大し続けているスカーキングの一派に対し、他の勢力が連合を組んで対抗している構図となっている。

 結果、この戦いに加わっていない普通の怪獣達は双方の激戦の余波を避け、或いはスカーキングの王の号令や他のグレートエイプ達に追い立てられて地上へと逃げ出していった。

 勿論、地上に出た結果は怪獣王の縄張りたる地上なので、結果はお察しである。

 こんな感じの情勢が10年以上続いてつい最近まで膠着状態だった地下世界だったのだが・・・遂にこの膠着が大きく動いた。

 それもよりにもよってスカーキングの方へと。

 その理由は至って簡単、とある怪獣がスカーキングへと隷属する事となったのだ。

 

 その怪獣の名はシーモ、白亜紀以前から生きるとされる古の大怪獣である。

 

 このシーモ、体高だけでも160mを超え、全長たるやその倍以上の巨体であり、現在生存が確認されている怪獣の中ではG0を除けば最もデカくて重い。

 外見は四足歩行の爬虫類だが四肢の作りは恐竜やゴジラのような直立歩行型という一風変わったものになっている。

 これは恐竜以前の三畳紀の肉食爬虫類であるラウィスクス類やステゴサウルスが有名な装盾類を掛け合わせたかのような構造となっている。

 純白の鱗、後頭部から尾にかけて結晶に似た瑠璃色の棘を持ち、尾の先端はこの棘がスパイク状に生えている。

 これら外見的特徴から分かる通りに筋力と耐久力も凄まじく、嘗て白亜紀前期の頃には幾度となくゴジラを始めとした強敵と戦い、生き延びてきたという実績を持っている。

 特に耐久力に関しては当時、ゴジラの熱線の直撃を受けながら重傷を負わずに反撃、正面から突進で跳ね飛ばした事すらあるという、ゴジラと正面からド突き合って凌駕し得る数少ない実力者なのだ。

 また、特殊能力として極めて強力な冷気操作能力を持っている。

 特筆すべきはその出力と範囲であり、何と単体で大陸規模の大地を氷河期レベルにまで寒冷化させる程の能力を持っている。

 これとて嘗てギドラの一度目の襲来時に地下世界にギドラが侵入した際に全力で迎撃した余波で発生した現象であり、文字通り死力を尽くした死闘ではどれだけの範囲を凍て付かせるのか想像もしたくない程だ。

 ちなみにメスであり、氷の女王とも言われる事もある。

 何でこんなヤベー奴がスカーキング如きに隷属しているのかと言うと、現在スカーキングの愛用するワーバットの骨で作った鞭の先端には氷に似た鋭い結晶製の刃が装着されている。

 これがシーモにとって耐え難い苦痛を感じる波長を発する性質があったため、シーモは高い戦闘力を誇りながらスカーキングに逆らえなかったのである。

 この情勢の変化に遂にモスラはゴジラへの救援要請を決定し、イーウィス族他テレパシーを行使可能な者達の協力を得て、地上のゴジラへ向けて大出力のテレパシーを送る事にした。

 これが後に地上の人類までも巻き込んだ大騒動になる事を、この時誰もが知る由も無かった。

 

 

 

 

 

 まさかDr.サカヨリ他開発陣が頑張ったせいで、新型モゲラを筆頭にしたAT部隊が地下世界に降りてくるなんて、地下世界の住人にとっては全く想像できない事だったのだから。

 

 

 




・大凡のスカーキング側の戦力

スカーキング×1
グレートエイプ×300(内50が精鋭)
シーモ×1
他使役中の中・小型怪獣その他


・対スカーキング連合側の戦力

モスラ×1
バトラ×1
メガロ×1
ベヒモス×1
キングコング(斧持ち)×1
グレートエイプ×30
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