私は久々の友人、地下を担当する蛾の女王達からのテレパシーを受け取った。
しかし、それによって発生した事態に関してはこう言いたい。
お前ら何しとんじゃい!?
なんで世界中にテレパシー爆撃してるの???
お陰で人類所か色んな生物までパニックになったぞ。
そこの所どう責任取る訳?
こっちはやっとこさ事態が沈静化してきた所なんだが?
そんなこっちに意見に対する女王からの返信はこれである。
ゴメン!マジでゴメン!
貴方の細胞が世界中に広まってるとは想定してなかったの!
でもこっちも今凄い大変なの!
バトラもメガロもコッチ側の大猿達も頑張ってるけどもう無理!
お願いだから助けてー!
テレパシーで送られてくる戦況情報におぉ、もう・・・と私は頭を抱えた。
何だこの数的不利は。
今までよくぞ保たせたな・・・ふむ、ふむ、ふむ。
え、シーモが?氷の女王がなんで猿如きに・・・?
あー苦手な波長で従わされてる?
となると不味いな。
奴の冷気は私でも結構ヤバい。
何がヤバいってアレ、単純な冷気じゃなくこっちの分子運動を停滞・静止させてくるから私の電磁バリアでも何度も浴びると抜いてくるんだよな。
しかも蛾の女王達は卵から復活するが、基本的に打たれ弱い。
メガロは虫系怪獣の中では最もタフだが、アイツは器用な分近接以外の火力はやや低いし、高熱の熱線やビームには弱いし、多少の冷気耐性ではシーモの冷気は防げない。
大猿達は賢く器用だが、決定打にはならない。
そして数は10倍近く差がある上にシーモがいる。
あの赤い大猿の親玉の武器さえ破壊できれば形成は逆転出来るが、逆に言うとそれが出来ねば負ける。
蛾の女王達がいる地域が陥落すれば、嘗て崩落した南米の跡地が大猿達の手に落ちる。
あそこは嘗ての大崩落の影響で起きた様々な気候・地殻変動により、何時しかこの星最多の地上と地下を通じる穴がある場所となった。
もし大猿共の手に渡った場合、地上もタダでは済むまい。
確実に地下で事を収めるためには、相応の戦力を派遣する必要がある。
先ず、北極の本体は地下では使えない。
地下で本体が本気で戦闘すれば、それは地下世界そのものに壊滅的なダメージを与えかねない。
となると、一番目の個体から順繰りに数体送り出すべきか。
・・・ん?何か人類も準備してるな。
ははぁ、あの全方位迷惑テレパシー爆撃で地下への介入を決定したのか。
「ちょっとちょっと!何よ何なの何なのさ!いきなりこっちに変な通信送ってくるとか何なのよモー!」
うわ来た(n億回目)
あ、事情聞きに来たのは分かるがそれは送った当人に聞いてくれ。
翻訳機能付き中継チャンネルを設置して・・・よし、私に構わず情報交換し始めたな。
じゃぁ後は年寄り二人でごゆるりと・・・私は出発の準備を・・・
「ちょい待てぇい!こういう時こそ人類と連携すべきでしょ!彩葉達が作ってくれたロボット達が地下に向かうから一緒に行って!」
えー・・・人類基本一枚岩になる事無いじゃん。
まぁ数が必要だし行くのを止める気は無いが・・・多分死ぬぞソイツら。
シーモが相手だと全滅すら普通に有るし。
「警告してくれてる?一応、彩葉達が可能な限り凍結対策してるけど・・・何処まで行けるかは未知数だよ。」
広範囲冷凍光線で即全滅しない程度なら戦力として数えられるか・・・?
それなら一応案内はしてやるか。
今モスラ達の縄張りに近いのは・・・南米、ブラジルのリオデジャネイロの穴からのルートか。
よし、そこで南米担当の個体を待たせておくから合流しろ。
出来なければ置いていく。
状況が動けば即突入も有り得るからな。
女王、猶予はどれ位だ?
人類の時間単位で言うと・・・2~3週間位?
こちら側の人類の最大拠点、イーウィス族の国の位置はまだ大まかにしか特定できていない筈。
突入してくれば直ぐ分かる。
見積もりが甘過ぎる。
シーモが雑に疑いのある範囲を薙ぎ払えば貧弱なヒト種ならソレで終いだ。
お前達の出力ではシーモの冷気を防げん。
他の連中も同様だ。
私が赤い大猿の親玉ならそうする。
つまり、猶予はもう1週間も無いと見るべきだ。
「一週間未満!?うぇぇぇ間に合うかなぁ・・・急がせてみるけどダメだったらゴメン。」
期待せず待ってるぞ。
損害気にしなければまぁどうにかしてやる。
・・・・・・・・・・・・・・・
『ごめん皆。テレパシーの内容解読した結果、猶予が一週間を切ったわ。』
モナーク北米本部内の館内放送で、Dr.サカヨリが嫌な情報を伝えてきた。
『地下世界で地上侵略を目論む勢力が反対勢力を滅ぼして地上に出てこようとしている。相手は大型の類人猿型怪獣の群れと大型へドラ以上のサイズを持った冷凍怪獣。類人猿型のボスと冷凍怪獣が最も強力だけど、配下も300近い数がいる。逆に反対勢力は強力な虫型怪獣含めて40もいない。今回世界中に送られたテレパシーは反対勢力側からのSOSだったの。』
余りの内容にそれを聞いた全員が絶句した。
でも、納得した。
だってDr.サカヨリだもん、この天才がそうだと言っているのなら事実なんだろうな、という今までの実績と能力、人格から来る信頼が彼女にはあった。
そして同時に彼らは嫌な予感も覚えていた。
『特に冷凍怪獣は強力で、現状の装備では一撃で全滅しかねません。なので急遽対抗装備をモゲラ達に追加します。勿論予定していた反重力推進装置の追加もです。』
モゲラ達の格納庫では、メーカー関係者や整備員、研究者達が身も世も無い叫び声を上げた。
タダでさえ休日返上、残業当然状態での作業が続いていた所にこれである。
唐突なデスマーチ、それもしくじると地上世界が壊滅しかねない事態に直結しているとなれば万に一つの失敗も許されない。
彼らは泣いた。
でも、泣いてもどうにもならない事だから、諦めて作業に没頭する事にした。
そうしないとどうにかなってしまいそうだったから。
F○○K!給料上げやがれ!とかもう寝かせて・・・とかオレ達何か悪い事したかなぁ!?とか各々思いながら、しかし此処で卒倒して離脱する訳にもいかないと気合いを入れ直して作業を続けた。
『対抗装備の設計はリアルタイムでやりますので、私も参加します。指定された人員はこれから直ぐに割り振られた作業をお願いします。』
メーカー側には部品や資材を注文しつつ、Dr.サカヨリもまたその手のタブレット型CPUに凄まじい勢いで入力しながら放送を続ける。
この辺のマルチタスクはライバー活動とかつての苦学生時代ですっかり身について久しいため、その動きに一切の迷いも遅滞も無い。
まぁやってる事は本来なら人類でも最上位の技術者らが時間を掛けて行う筈の開発計画なのだが、本人は「UWEVの既存機能の大型化でしょ。なら私一人で済ませるから皆は他の事をお願い」と言って今現在一人で済ませようとしている。
そんなだから君、色んな人達から恐れられるし狙われるんだぞ。
『時間は無い。予想よりも早く戦闘が始まるかも分からない。けど無いなりに全力を尽くしましょう。間に合わなければその時は水際での迎撃に切り替えなければなりませんが・・・大きな被害が出るでしょ。』
各端末に大まかなグレートエイプの情報が転送される。
大型の類人猿型怪獣であり、ゴリラ型、チンパンジー型、オランウータン型と複数種で構成されており、知能が高く、道具を自作して使い、連携を得意とする。
特殊能力は無しで耐久力こそそこまでではないが、パワーは高く小回りが利く。
こんな連中が例え十分の一でも地上に降り立てば、それだけで複数の国が簡単に滅ぼされてしまうだろう。
グレートエイプの群れというのはそういう類いの脅威なのだ。
地上側の人類の受ける被害を考えた場合、決して地上に出してよい戦力ではなかった。
『そんな事態にならないためにも、申し訳ないですが皆さんは各自ベストを尽くすようお願いします。』
こうして、モナーク北米本部はまたもデスマーチへと突入した。
・・・・・・・・・・・・・・・
一方その頃、北極のモナーク所有観測基地では氷床の下のG0の異変を捉えていた。
「G0の熱量及び放射線数値が上がっていきます。前例の無い上昇幅です。」
観測結果がリアルタイムで本部及び他の支部へと送られていく中、職員らはその本分を全うするために計器に齧り付き、必死に状況の把握に努めた。
「他の個体への供給状況は?」
「G1、G2、G5が熱量及び放射線数値の上昇を確認しました。」
「南極、ベーリング海、南米の個体か。」
ここ北極基地の職員らはモナーク所属でも特に優秀な人員が集まっている。
優秀なのだが彼らの多くは怪獣研究から始まって、現在はゴジラを研究すべくこの僻地に集まっている変わり者、研究者としてはよくいる者達の集まりでもあった。
故にこうした不意のゴジラの活動は彼らにとって貴重なデータを採取する絶好の機会なのだ。
研究者としてこれ以上無い環境だと言う彼らの目は不自然にギラギラと輝いていた
「このまま上昇していけば、二日後には通常の30倍のエネルギー貯蓄量になります。」
「とんでもないな・・・何か変化があれば直ぐに知らせろ。どんな些細な事も見逃すなよ。」
通常、G1~G7とナンバリングされたゴジラは体内の核分裂・核融合を交互に繰り返す事により、エネルギー不足に陥るという事は先ず無い。
しかし、強敵を相手にする際には自ら生産・貯蓄したエネルギーでは足りないと判断するのか、時折外部からの補給も行う。
具体的にはG0からの供給がそれだ。
今回はへドラ以上の強敵である事からG0は急遽エネルギーの供給量を大幅に増加、G1・G2・G5の三体は徐々にその全身の棘や背鰭が赤紫に輝き始めていた。
こうしてたった三日、間違いなく人類全体にとって貴重となる三日間は瞬く間に過ぎ去った。
残ったのは地下世界への突入も可能となったモゲラ2機とスーパーモゲラ1機、そして総数20を超えるUWAVの勇姿だった。
オプション山盛りの状態で挑めば簡単に小国を火の海の出来る部隊だが、パイロットや同行する整備兵達にも一切そんな気は無い。
戦わねば生き残れない。
それを学んだ人類は今、遂に怪獣達の楽園たる地下世界への突入作戦を実施しようとしていた。
最早自分達はゴジラにおんぶ抱っこではないと示すように。
向かう場所は南米、ブラジルのリオデジャネイロ。
そこにG5とナンバリングされたゴジラだけが人類の到来を待っていた。
なお、ここまで来てもヤッチョ/かぐやにゴジラ主は直接声をかけたりせずに感情だけを伝えてくる