白亜紀からこんにちわ   作:VISP

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その22 後始末

 「事態は解決したな、ヨシ!んじゃ帰りまーす。」

 「Dr.サカヨリ、各国の大統領と芹沢博士連名でご指名です。」

 「嫌だー!私はもう日本に帰るんだー!放せー!」

 「錯乱しておられる様だ。丁寧に運んで差し上げろ。」

 「テレビ会談は2時間後ですから、それまでに準備しておきましょうねー。」

 

 勿論、事件は解決しましたハイ目出度し!で済む訳が無いのである。

 軽傷の者は兎も角、重傷者に関しては流れ弾もあってイーウィス族にも被害が出ている。

 そりゃ多くは避難したとしても迂闊に動かせない者や三連ピラミッドを衝突させるための人員は残っていたのだから仕方ない。

 そうした人員は何とか持ち込んでいた救急キット等で延命しつつ、警戒とイーウィス族との交流のための人員を残して、行きと同様の方法で地上へと帰還していく。

 帰還して現地解散した地上世界一行ことゴジラ&AT部隊であったが、元いたチリ・ペルー海溝へと帰ったG5に対し、AT部隊はリオデジャネイロ市内の施設で治療及び一次待機の後、用意された市内の高級ホテルにて隔離される事となった。

 これは実は行きの際も実施されており、迂闊に長らく断絶していた両世界で交流した際、お互いにパンデミックを発生させないための措置だった。

 現代で再びアステカ文明の滅亡みたいな事態を引き起こす訳にはいかないと、厳重な監視下で隊員らと同行したモナーク職員らには消毒・殺菌措置が再び行われた。

 その上で現地では飲食は必要最小限、排泄は配布されたサバイバル用簡易トイレで全て済ませるように指示されていた程だ。

 が、滅茶苦茶頑張ってくれた彼ら相手にそれは酷であるとして、せめて待機場所と飲食物はリオデジャネイロ市内でも最高級のものが選ばれた。

 持ち込まれたモゲラ達を始めとした兵器類も徹底洗浄の後にデータの吸い出しと機体の解析がネジ1本やパーツ一個単位で行われる事となり、技術者らは大忙しだった。

 なお、洗浄後に出た排水や隔離中の隊員らの排泄物等も一カ所に集められ、調査した後に廃棄の予定となっている。

 隊員らが隔離を終え、その成果に相応しい処遇を受けるには実に一週間もかかる事となった。

 

 『芹沢博士に酒寄博士、今回の一件は誠にご苦労だった。』

 『記録映像はこちらでも見させてもらった。凄まじいとしか言えないよ。』

 『予想されてはいたものの、地下世界がああも危険とは・・・。』

 

 一方その頃、モナーク総責任者の芹沢博士と外部研究員である酒寄博士は世界中の偉い人達と電話会談をしていた。

 何でこんな所に私呼ばれてる訳?嘘でしょ?と内心で白目剥いている彩葉であったが、それを外には一切出さず、日本人では割とよくある取り敢えずの笑顔こと外向けアルカイックスマイルで対応していた。

 

 『やはり、地下世界への進出は時期尚早と見るべきだろうか?』

 「その通りかと。確認できただけでも数百もの大型怪獣が組織だって活動し、それ以外にも無数の怪獣が確認されています。最大規模の群れはリーダーを失って解散しましたが、現状の技術力では先ず勝ち目はありません。」

 『そうか・・・AT部隊の働き次第では各国でも対怪獣特化部隊の創立も有り得たのだが、残念な事だ。』

 『とは言え、現状地下世界への進出に割けるリソースなんてそう無いでしょう。へドラ事件以降、各国の重工業力は随分と下がりましたもの。怪獣被害の復興と被災者への支援、それにへドラ再出現を防ぐための環境保護活動はまだまだ終わりませんわ。』

 『むぅ・・・仕方ない。地下世界の調査は慎重に慎重を期してモナークに一任すべきでしょうな。』

 『大人数で行っても向こうを刺激する可能性もありますからね。』

 

 事実、地下世界は余りにも広大で未知に溢れ、僅かな滞在中も有用な新物質などが多数発見されたものの、それ以上の危険地帯だった。

 二桁の大型怪獣の群れが当たり前に存在し、まさか三桁もの群れまであって、尚且つそれらが地上への侵攻を企図していたという大事件。

 その他にもゴジラとタイマンできる強力な怪獣シーモの存在、戦闘力は最上位とは行かずともテレパシーで地上へ干渉できる極めて高度な知性を持ったモスラとその対となるバトラの存在、地下世界の人類に寄り添い共に生きるグレートエイプやメガロ、ベヒモスの存在など、今までの地上の常識では有り得なかったそれらに各国上層部は頭を抱えていた。

 もし地下に進出した場合、最悪こいつら全部+怪獣王まで敵に回す可能性があるとなれば、そりゃ慎重にも成ろうものだ。

 もしそうでなくとも、数十もの大型怪獣の群れはただそれだけで国家所か人類滅亡案件だ。

 迂闊な真似は即座に死を意味するともなれば、誰もが慎重になるだろう。

 であれば火中の栗はモナークに拾わせ、多少期待よりも減ったとしてもリターンが配分されるのならば許容できる。

 幸い、発見したものを即利益に変換してくれそうな天才もいるのだし、彼ら各国上層部からしても決して悪い話ではない。

 

 「今後は各地のポータルの先に前哨基地や警報装置を設置し、地下世界でポータル付近で怪獣の活動があれば感知できるようにしていく予定です。その後、徐々に探索を続けていきます。」

 

 今回の一連の事件、地上世界の人類はその予兆を全く掴めていなかった。

 その上モスラがもし悪意を以てテレパシーを使用していた場合、世界人口は大きく目減りしていた可能性があった。

 それだけの存在が今日まで一切知られていなかった。

 その意味を考えると、彼らも背筋が冷える思いだった。

 つまり、何時人類を絶滅し得る存在が地下世界に誕生しても、彼らは察知する術が無いという事に他ならない。

 

 『Dr.サカヨリ、申し訳ないが人類のためだ。貴方には今後も協力を求めます。』

 『同意する。君には苦労をかける事になるが事が事だ。』

 『その分、今後も我々の方でしっかりサポートを行っていく事は約束しよう。』

 「えぇ、分かっています。皆さんも、今後ともよろしくお願いします。」

 

 内心でまた仕事が増える・・・と目の幅涙を流しながら、彩葉は人類の存続のためという大義名分の下、自分が扱き使われる事を了承するしかないのだった。

 結果、彼女とその所員達が研究所に帰れたのは実に半年後、入手した大凡のサンプルの解析を終えた後の事だった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 一方の地下世界でもまた戦後処理が進んでいた。

 生き残ったレッドストライプスの中で最も年嵩かつ強い個体とキングコングが纏め役となって、捕虜となった者達は素直に対スカーキング連合に従う事となった。

 とは言え、この数の怪獣の食料を賄う事は並大抵の苦労ではない。

 スカーキングの群れが侵略を続けていたのも、そうしないと群れの数を維持・増加させる事が出来ないという事も大きい。

 そのため、スカーキングの群れも対スカーキング連合も解散、各地に散って荒れた嘗ての住処を復興していく事になった。

 諸悪の根源であるスカーキングが討たれた事で何とか被害者達も溜飲を下げたが故だったが、そうでなくば勝った所で掃討・追撃戦か、或いは終わりの無い絶滅戦争が始まっていたかもしれなかった。

 そういう点では地上よりも遙かに死が身近なこの地下世界の方が死生観は乾いている、否、野生の掟、生存競争に忠実という事なのだろう。

 

 「オーライオーライ、もっとこっち!もう少し!」

 UHO?

 

 そんな場所で共闘したからか、残ったAT部隊の人員も無事受け入れられ、現在はイーウィスの里周辺の復興作業に従事していた。

 イーウィスの民のテレパシーやAT部隊の人員の身振り手振りでの指示の下、グレイトエイプ達が作業していく。

 生半可な重機よりも遙かにタフで力強いグレイトエイプ達のお陰で作業は手早く進んでおり、荒れた森も幼体ベヒモスのお陰でそう遠くない内に再び豊かになるだろう。

 しかし、瓦礫の中には時折グレイトエイプや兵士達の死体もあり、中には生き残っていた者達もいるので、そういう場合は作業が止まり、医療班の出番となる事もある。

 増えるボディパックに暴れるグレイトエイプのせいで再び増える瓦礫により、作業の進捗は今ひとつだった。

 

 「よし、これも採取しよう。」

 「了解。」

 

 その影で、AT部隊に同行していたモナークの人員らは調査用のサンプル回収を行っていた。

 グレイトエイプの死体を始め、細かな動植物に土のサンプルを回収し、後日もっとミクロな調査を行う予定だ。

 

 「ん?これは・・・?」

 「どうした?」

 「・・・いや、何でも無い。」

 

 一人が何かに気付いたが、気のせいだと告げて他のサンプルを探し始めた。

 彼は瓦礫の中、僅かに残った透明なガラス状のものを見つけていた。

 しかし、採取しなかった。

 それがあのシーモを支配するのに使用された結晶構造体の欠片だと気付いたが・・・地上での悪用を恐れて、気のせいだと言ったのだ。

 それに加え、先程からこちらを監視している目の存在に気付いていた彼は自分自身の身の安全のためにもそれを見過ごす事にしたのだ。

 

 「あ、あの三連ピラミッドの欠片だ。石英に近いみたいだが・・・回収しておこう。」

 

 それはそれとして、原始的な方法で重力に干渉できる技術の元となっている素晴らしい物質はしっかり回収しておく。

 だって重力操作系の技術はまだまだ人類でも未発達の分野で利益も凄いだろうからね、仕方ないネ。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 スカーキングとその配下との戦闘も終わった今、G1は何処にいるのか?

 

 勿論、南極大陸のポータルが最も遠かったからというのもあるが、彼は幾つかの懸念事項を解消するために活動していた。

 1つ、破壊された自身の分体と地球の核エネルギーの悪用の可能性

 これはコング族の嘗ての宮殿と自身の分体の遺骨を燃やし尽くした事で解消された。

 2つ、知らん内にへドラが地下世界にまで浸透していた可能性

 こちらも問題無かった。

 少なくとも三体のゴジラの知覚範囲内にはへドラの存在は無かった。

 地下世界は元々環境汚染に繋がる化学物質もほぼ存在せず、放射性物質は寧ろ怪獣達にとっては重要な資源なので問題も無い。

 地上では時々小型~中型の個体が現れるが、予防方法も対処方法も周知徹底されている現在では余り問題になっていない。

 そして3つ目、現状ではこれが最も重要なものだ。

 

 新たなスカーキングの発生の可能性及び増え過ぎたグレートエイプへの対応である。

 

 嘗て、巨大な菌糸類が地下世界に繁茂し、全てを呑み込もうとした時があった。

 幸いにして高熱や乾燥に弱い事から、ゴジラがそれら全てを焼き尽くした事で地下世界の秩序は守られた。

 だが、もし地上にまで拡散していた場合、地上の広さもあって最早手の付けられない状態になっていたかもしれない。

 グレイトエイプもまた同じく、地上に進出しては手が付けられなくなる可能性があった。

 現地人類と協力体制を構築した場合、それがテロリストや思想団体、紛争国なら紛争やテロ、戦争に利用される可能性もあった。

 下手に賢く器用なため、人類と協調できる事が裏目に出てしまうのだ。

 また、スカーキングの様に群れの維持・拡大のために競合相手が多く存在する地下世界ではなく、地上世界を目指す可能性もあった。

 そう、全ては可能性だ。

 しかし、それらが可能性である内にその芽を摘むのもまた秩序を、法を敷く者、王たる者の務めでもある。

 

 GYAWOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!

 

 G1から天地を揺るがす程の大咆吼が放たれる。

 その向けられた先は禿げ山となった大勢のグレイトエイプ達の住処。

 そう、スカーキングの群れの住まう場所である。

 込められた意味は警告、この場からの退去を命じるものだった。

 

 WO、WO、WO!

 GOGAAAA!!

 

 その咆吼を聞き、防衛のために残っていたレッドストライプスの居残り組が武器を片手にゴジラへと向かい駆け出す。

 その数は10を超え、前衛と後衛に別れた上で更に左右から挟撃する形で接近してくる。

 しかし悲しいかな、彼らが取るべき選択は迎撃ではなかった。

 その黒い巨影を目にした瞬間から、何もかも投げ捨てて逃げ去る事こそ彼らが生き残れる唯一の選択だった。

 自分のほぼ半分ほどの全高の相手だろうと、ゴジラは容赦しない。

 真っ先に到達したレッドストライプスが突撃の勢いと全体重、更にバットを振るう様に全身を用いてのフルスイングで棍棒を叩き込む。

 ほぼ同時、反対側から突撃したレッドストライプスが石斧の一撃を叩き込む。

 同サイズの怪獣ならば、それなり以上にダメージを与えただろう渾身の一撃だった。

 しかし、相手が悪過ぎた。

 自らの両脚に強かに叩き付けられた攻撃に、ゴジラは一切の痛痒を感じていなかった。

 だが、攻撃されたと認識した瞬間、相応の対応を行った。

 棍棒の個体は蹴り飛ばし、石斧の個体は踏みつけた。

 たったそれだけの動作で、二体のレッドストライプスは多数の骨を砕かれて戦闘能力を喪失した。

 その最中も牽制としてゴジラにとっては胡桃大の岩が投げられ続けていたが、そんなものがダメージになる筈がない。

 

 警告は発した。

 しかし無視され、攻撃を受けた。

 ならば、後は王としての裁定を下すだけだ。

 

 ゴジラの背鰭と棘が赤紫色に輝き、その体内で核反応が活発化する。

 体外に放出される余分な熱量と放射線だけで、グレイトエイプ達は近付く事すら出来ない。

 この時点で勘の良い個体は我先にと逃げ出していくが、殆どの個体はスカーキングによる長年の圧政の恐怖を覚えており、怯えながらも迂闊にその場を離れる選択も出来なかった。

 それが分水嶺だと知るのは、逃げた個体の中から生き延びた者が出た時だろう。

 通常、ゴジラは周囲への影響を考慮して、可能な限り放射線の発生を抑えた高加速荷電粒子ビームを使用している。

 これは普段は皮膚一枚下に展開している電磁バリア、非対称透過性シールドと同様に電磁パルスの応用であり、射程・威力もかなり融通が利くし、射角も喉奥から発射しないために使い勝手も良い。

 

 しかし、最大火力においては本来の放射熱線の方が優れている。

 

 全高200mの巨体の尻尾から頭に向けて、順番に背鰭が眩く光り出す。

 ガキン、ガキン、ガキン、ガキン・・・

 特徴的な背鰭が尾先から一枚ずつ根本から押し出されるように飛び出していき、頭部に近づくにつれて押し出されるまでのスパンが徐々に短くなっていく。

 やがて全ての背鰭が飛び出した所で大きく息を吸い込み、インプロージョン(爆縮)方式の原子爆弾が如く背鰭を撃鉄の様にガン!と一気に体内へと格納、これがトリガーとなり体内で生成されていた大量の核物質が一斉かつ均一に圧縮、超高密度になる事で核分裂連鎖が反応(臨界)を引き起こす。

 これにより発生した凄まじいエネルギーを極太の熱線として口から放つ。

 今回はこれに加え、本体から供給された分のエネルギーも上乗せされた一撃が、スカーキングの牙城の中心へと着弾する。

 同時、網膜を焼いて失明させる程の凄まじい閃光と鼓膜を破って脳を揺さぶる程の轟音、そして何もかも消し飛ばす超高熱と衝撃波、放射線が吹き荒れた。

 着弾地点は巨大なクレーターと化して地面はガラス化、逃げなかったグレイトエイプ達は炭すら残さずに蒸発し、爆発によって巻き上げられた粉塵により巨大なキノコ雲が発生した。

 その威力たるや、TNT火薬換算で実に約30メガトン(広島型原爆の約2000倍)にも及んだ。

 

 GYAWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!

 

 ここに王の裁定は下された。

 地上と地下双方に騒乱を巻き起こした偽りの王スカーキングの根城は焼き尽くされ、その群れは壊滅した。

 例え生き残りがいようとも、この日刻まれた恐怖と衝撃は彼らが生きる限り永遠に伝えられ続けるだろう。

 この日、王を知らぬ者はただ怯え、王を知る古くから生きる者達は頭を垂れた。

 

 今日この日、この大地の正統なる王が帰還した。

 

 




ちなみにスー子はお爺ちゃんコングと一緒に遠くに狩りに行って無事だった。
巣の方にデッカいキノコ雲を見て、お爺ちゃんコングが何故か頭を地面に擦り付けていたので不思議そうに見ていたが、きっとそれが正しいのだと思って真似をした。
その後、逃げてきた一部の巣の仲間から話を聞き、お爺ちゃんからゴジラの事を聞き、巣に戻る事なく旅に出た。
運が良ければ死ぬ事もなく、キングコングと出会うかもしれない。
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