白亜紀からこんにちわ   作:VISP

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その23 戦後

 地下世界での戦いは幕を下ろしたものの、その余波は全方位へと波及した。

 

 地上においては情報公開によってAT部隊の詳細な戦闘記録がモナークと連名で公開され、今まで詳細不明だった地下世界側の情報が知れ渡ったのが丁度半年後、Dr.サカヨリらが日本へ帰国したタイミングだった。

 これにより地下世界の豊かかつ強靱な生態系が明らかとなり、地下世界の探索を求める声も多く出たが、同時にそれ以上に地下世界の危険性を叫ぶ声が大量に上がる事となる。

 何せ三桁に及ぶ大型怪獣同士の激闘の他、常時二桁の大型怪獣の群れが生息する魔境である。

 加えて言えば、ゴジラに比肩する戦闘力を持ったシーモの存在や大型怪獣らが実は高度な知性を持っている事から、下手な介入は地下世界の大型怪獣と人類の一致団結からの地上人類の排除行動に移りかねない。

 更に言えば、ここ十数年で慣れたとはいえ、地下世界由来の病原菌やバクテリア、ウイルス類等の微生物に特殊な植物や小動物等々、未知の存在が目白押しである。

 モナークを始め各国の研究機関が頑張って研究しているが、パンデミックが何時発生してもおかしくないのが現状だ。

 そういった意味でも地上の各国は地下世界の迂闊な手出しは厳禁とされ、国連を通じて国際法として制定する動きも出ている。

 また、対大型怪獣(ゴジラ含む)を目的として設立されたAT部隊だが、同数以下の怪獣なら兎も角、多数の怪獣相手が予想され、整備や補給も満足に出来ないだろう地下世界ではやはり不利だという結論が出た。

 もし地下世界へと本格的な派兵を行うのなら、今の部隊規模の100倍は最低でも必要であるとの試算が成され、流石に国庫に穴が空くとして議会でも否定意見が多数派を占める事となった。

 米国以外の国?あんな魔境に手出し出来る余力なんてありません。

 後、中国政府の党主席が正式にお亡くなりになり、中華の大地は大方の予想通り完全なる戦国時代に突入した。

 そして今までやらかしたため、周辺から多数の旧式武器が密輸され、逆に各種資源が捨て値で買い叩かれる事となった。

 おまけで朝鮮半島と香港には難民が殺到し、治安を大幅に悪化させる事態にもなり、混乱が続く事となる。

 なお、世界中の華僑はこれ幸いと本国を切り捨て、独立独歩に切り替えていった。

 何処の国も中国の今までのやらかしを知っているために何が起きても介入する事は無いのだが、荒れ果てた沿岸部もそのままのため、何れはへドラの再出現からの国連軍による戦略級爆撃の可能性も指摘されている。

 そんな情勢の中、業績が落ちつつある分野がある。

 

 石油関連企業、所謂オイルメジャーである。

 

 何せ安全かつ高出力の核融合炉が実用化されたのだ。

 商業利用には未だクリアすべき課題が幾つかあるが、それでも抗核バクテリアを用いた安全機構によって今までの原子力発電に比較すれば遙かに安全に稼働できるのは大きな魅力だった。

 そのため、現在も米国で盛んに研究が進められており、今後10年以内の商業発電を行っていく予定だ。

 日本でもそれに追従する動きが出ており、何れは世界規模で行われるかもしれない。

 そんな情勢なので、オイルメジャーは生き残りに必死だ。

 しかし、へドラ事件の被害が余りなかったからか(元々そうだったが)中東は相変わらずの政情不安であり、何時また中東危機からのオイルショックが起きるとも分からない。

 それが故にロシアや米国の様な自前の油田を持っている国々を始め、今まで中東から石油を輸入している国々もまた石油離れの準備をし始めていた。

 これに困ったのが石油の輸出によって財を成してきた中東諸国だ。

 彼らも何とか石油以外の産業を育てようと今まで頑張ってきたが、その複雑怪奇な情勢故に上手くいっておらず、資源の呪いから抜け出せずにいた。

 今まではそれでも良かっただろうが、最早頼みきりに出来ないと代替手段を見つけた国々は徐々に関係を疎遠にしていった。

 これはへドラ対策の環境保護活動も密接に絡んでおり、最早この流れを押し留めるのは通常の手段では不可能だった。

 そのため、余力がある内に原子力関連へと切り替えていく者達も出たが、人は早々に過去の成功体験を忘れる事は出来ない。

 それが先細りするだけと知りながらも、しかし嘗ての栄光と目減りしながらも多くの資産や柵が踏み出す事を躊躇させた。

 故にもうにっちもさっちも行かなくなった時、彼らは藁にも縋る思いで差し出された手を取る事となる。

 それが余りにもリスキーだと分かっていても、既にそれ以外の選択肢は無かったが故に。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 一方の地下世界もまた、変革の時を余儀なくされていた。

 

 南極のポータル担当だったG1が地下世界にそのまま移住、地下世界各地を巡回し始めたのだ。

 

 モスラとバトラの古くからの盟友はこれを歓迎し、シーモを始めとした古くからの怪獣達は恐れ戦き、ゴジラを知らない若い怪獣達は自らの縄張りに入ってくるデカブツを相手に無謀にも喧嘩を売った。

 結果、死にはしないが動けなくなる程度にはボコボコにされた怪獣の山が積み上がった。

 モスラ達が比較的穏便に秩序を維持した結果、スカーキングの様な存在が現れた。

 ならば、一体位はこちらにも怖い警察がいて、睨みを利かせておいた方が良いという判断だった。

 後、一々通報からの戦力派遣は即応性に欠けるという判断に、もしも地上が壊滅する事態になっても地下の分体は生き残るだろうという計算もあった。

 これにより、地下世界各地は改めて怪獣王の下に秩序に組み込まれ、生存競争以上の過剰な争いは抑止される事となった。

 まぁオイタをすれば速攻で格上がやってきて殺しに来ると分かれば、決して馬鹿ではない怪獣達はそこそこ大人しくなった。

 そんな地下世界の情勢を知る事になってしまったモナークからの先行調査員達はSAN値チェックものだったが。

 彼ら先行調査員は残存したAT部隊のUWEVと共にキノコ雲の上がったスカーキングの根城があった場所へ、キングコングと共に赴いた。

 結果、彼らは周囲一帯が大量の放射線を伴う膨大な熱量と爆風、つまりは核爆発によって壊滅した事を改めて確認した。

 誰がやったのか?そんな事は聞くまでも無い。

 自分達とあの戦闘の際に合流しなかったゴジラ、G0を除いて最大の個体G1の仕業だ。

 発見当時、未だ人体に有害なレベルの放射線及び放射性物質が存在する根城跡地のクレーターを調査した結果、少なくとも20メガトン級の核爆発があった事が判明した。

 勿論、こんな僻地も僻地で水爆を投下する様な奴はいないし、そもそも出来ない。

 そしてグレイトエイプ達にそんな事が出来る能力が無い事も、隷属していた人類にそんな技術が無い事も確認済みだ。

 故にこれをやっただろう者はただの一体しか考えられない。

 この調査結果は即日モナークに届けられ、その直後に米国政府を通じて世界各国の上層部へと伝えられる事となる。

 これに世界各国の軍事関係者は頭を抱えた。

 今まで判明していた能力だけでもどうしようもねぇと匙投げしていたのに、この期に及んで戦略核兵器級の火力を有している等と知らされて、迂闊な手出しは厳禁になってしまった。

 もしもの時を考えてゴジラ対策は進められていたのだが、ここに来て構築していたプランは完全におじゃんと成ってしまった彼らの徒労感と絶望感は推して知るべし。

 そんな彼らは現在「だから、もう、頼れるのはDr.サカヨリしか・・・!」と連日の開幕土下座でようやっと日本の研究所に帰ってきたいろPの所へとお参りしていた。

 

 「お帰りください。」

 「そこを、そこを何とか!お金なら幾らでもお出ししますので!」

 「あぁもう良いから帰って!なんで見えてる核地雷なんて踏まなきゃいけないんですか!?どう計算しても私の残りの人生全部つぎ込んでもどうなるか分からないのにリターンの見込めない難題なんて挑めるか!私はもう人生守りに入っているの!お願いだから出て行って!」 

 

 なお、結果はこれである。

 余談だが、数少ないゴジラに対抗可能な怪獣たるシーモを研究(具体的にはスカーキングのやった使役)してゴジラへの対抗戦力にするという案もあったが、現在のシーモはそそくさと元々の縄張りである地下世界奥地へと帰ったため、現状では観測すら出来ない有様である。

 しかし、捨てる神有れば拾う神あり。

 対ゴジラ兵器の本格研究を断固として断るいろPの元へ、とある人物が電話会談を行った。

 

 『多忙な所に申し訳ないね、Dr.サカヨリ。』

 「いえ、プレジデントこそ後始末に大変でしょう。お時間を割いてもらって申し訳ありません。」

 『ふふ、世界一の研究者にそう言って貰えるとは光栄だ。このまま歓談していたい気分だが、申し訳ないので本題に入らせてもらうよ。』

 

 お互い暇ではない、寧ろ世界的に見ても多忙な二人は挨拶もそこそこに本題に入った。

 

 『現状の備えで、ゴジラ達が全力で戦う事態になった時、人類は生き残れるかね?』

 「不可能です。断言しますが、ゴジラと敵勢力の戦闘の余波で地球環境は壊滅、最低でも激減するでしょう。その結果、地球表面は人類及び既存生物の殆どが生息不可能な環境になると思われます。」

 

 しかし、地下世界は生き延びるだろう。

 怪獣達の楽園と言われるだけあって、あの地は戦力に事欠かない。

 例のスカーキングの様な案件か星毎砕かれる様な攻撃でも受けない限り、地下世界は存続していくだろう。

 寧ろ防衛をゴジラに頼った地上世界の方が簡単に滅びそうだ。

 

 『ではそんな事態になった際、確実に人類がその文明を存続できる程度に生き残るにはどうすれば良いかね?』

 「地下世界への進出及び大深度シェルターの設置。そしてゴジラと共に戦えるだけの戦力の保持ですかね。最低でもスーパーモゲラ級の戦力をダースは持たないといけませんが。」

 

 三桁もの大型怪獣の侵攻ですら、ゴジラ達全員が動く事態にはならなかった。

 そんな怪獣王達が一族全員かつ全力で戦う様な事態とは、一体どれ程の地獄だろうか?

 彩葉は想像もしたくなかったが、しかし研究者としての性分により、その暗澹たる未来予想図を正確に思い描いていく。

 

 「へドラの入っていた隕石の事例を考えるに、宇宙から多数の侵略的宇宙怪獣が襲来するのが最も発生する可能性が高いです。」

 

 事実、現在の地球では大凡大事件に発展しそうな怪獣案件は全て片付けられている。

 例外としてシーモがいるが、本来は温厚らしく、支配が解けてからは暴れる様子は一切見せなかった。

 対スカーキング連合の解散と共に本来の住処に帰った彼女のその後を知る者はいないが、あの様子だと天敵もいなくなった今は穏やかに暮らしているのだろう。

 

 『そうなると、対宇宙の監視網と迎撃網を構築する必要があるかな?』

 「ですね。まさかこの時代にスターウォーズ計画再びと提言する日が来るとは思いませんでしたが。」

 

 スター・ウォーズ計画とは冷戦末期の1983年にアメリカのレーガン大統領(当時)が提唱した「戦略防衛構想(SDI)」の通称だ。

 旧ソ連から発射された大陸間弾道ミサイル(ICBM)を宇宙空間で迎撃・破壊し、アメリカ本土を守る壮大な計画だった。

 具体的な迎撃方法として衛星軌道上にミサイルやレーザー砲を装備した軍事衛星を配備し、地上のシステムと連携して宇宙空間でミサイルを撃ち落とす構想だった。

 しかし、天文学的なコストと技術的課題、そしてソ連との軍拡競争の激化が予想されるため、実現はしなかった。

 だが、そのための研究や戦略方針等は本土防衛のために継続され、後に現代のミサイル防衛システム(BMD)の基礎を築く事となる。

 今回は地上からのミサイルではなく、宇宙からの隕石や怪獣が目標となるが、必要となる技術はかなり似通っている。

 

 『そして、万が一迎撃に失敗して地球への侵入を許した際は既存戦力とゴジラ頼みになるという事か・・・。』

 「プレジデント、流石に全てを人類で賄う事は不可能です。」

 

 まぁ迎撃に失敗或いは撃ち漏らしが僅かでも発生したら、先のへドラ事件の様な事態になる可能性も否定できない。

 しかし、だからと言って国庫に穴を開ける勢いで軍拡をしようものなら議会と民衆からの反発を招く事となる。

 現在の地球で米国と一切関わりのない国なんて存在しない。

 米国が政情不安になってしまったら、それこそ誰も得をしない大恐慌が始まりかねない。

 

 『分かっているとも。しかし、もしそのXデイが来てしまった時、我々人類が何も出来ずに座して死を待つ事だけは認める事は出来ない。そのためにも今のモゲラでは不足だ。』

 「はぁ~~・・・・・・仕方ありませんね。ご注文承りました。全面協力とはいきませんが、それでもいつも通りの条件で協力させてもらいます。」

 『ありがとうDr.サカヨリ。この恩を我が国は決して忘れる事は無いだろう。』

 

 この電話会談により、人類は新たな局面へと向かっていく事となった。

 

 

 

 




G0・・・全高300m超
G1・・・全高200m
G2・・・全高160m
G3・・・全高150m
G4・・・全高140m
G5・・・全高130m
G6・・・全高120m
G7・・・全高100m

G7だけちょっと小さいのは先代G7が撃破され、後から追加で作られたから
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