白亜紀からこんにちわ   作:VISP

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その26 王の目覚め

 ソレと初めて遭遇した時、彼らは既存の常識を捨て去り、ただ逃げ惑う事しか出来なかった。

 ソレの成す尋常ならざる災禍により、彼らの日常は跡形もなく崩れ、多くのものを失った。

 失ったものは故郷であり、帰るべき家であり、財産であり、家族であり、魂であり、矜持であり、人生だった。

 しかし、不運にもそれを認識してしまった後も生き残った者達も多くいた。

 生き残った者の多くは絶望と悲嘆で叫んだ後は何の余力もなく、ただただ生き残るための行動に終始した。

 

 だが、逆に命を捨ててでも報復を叫ぶ者達がいた事も事実だった。

 

 彼らは自らの大切な多くのものを奪った相手への報復を目的とし、団結した。

 思想・宗教・出身・人種・年齢・性別・言語・・・etcetc

 それら既存の差別や隔意の元となる要素は彼らにとって何の意味も無かった。

 ただ、報いを。

 自分達の人生を壊した、大切なものを奪った奴に受けて当然の裁きを与える。

 そう、彼らこそ復讐者。

 怪獣災害によって全てを無くし、怪獣達の、ゴジラの殺害のみを目的として生きる日陰者達だ。

 彼らの志は上から下まで全ての構成員で共通していた。

 しかし、意思だけではどうにもならないとも理解していた。

 何せ相手は事実上の地球の覇者だ。

 他の有象無象の怪獣共を幾ら殺した所で、ゴジラを殺せねば何の意味も無い。

 故に、彼らはモナークや米国とその軍需産業に積極的に協力し、雌伏の時を過ごした。

 何時か、何時の日か、自分達の研いだ刃が王の身を貫くと信じて。

 そうして、漸く好機が巡ってきた。

 対怪獣兵器という巨大ロボット兵器の登場に、彼らは一縷の希望を見た。

 そして、それをゴジラに届くようにするにはまだ足りないとも気付いていた。

 故に彼らはまだ待った。

 斜陽となった産油国と渡りを付け、資金は何とか確保出来たが、まだだ。

 今日の彼らの凋落を招いた怪獣達を殺し尽くすための兵器を作るという誘いに乗ってくれはしたが、仲間達が苦労して盗み出したモゲラの設計図から作った劣化品の性能ではまだ遠く及ばない。

 そんな彼らの下へと、漸く最後のピースが揃った。

 

 嘘か真か、月から来たという者達が技術的協力を申し出てくれたのだ。

 

 怪しい事この上ないが、彼らの技術力は本物だった。

 自立思考金属体ナノメタルという所謂ナノマシンを用いたそれは既存のどの対怪獣兵器よりも高性能であり、そのカタログスペック通りならば確かにゴジラを撃破し得るものだった。

 故に、彼らは自分もそうだが胡散臭い連中と手を組んだ。

 それで本当に怪獣を、ゴジラを殺せるのなら本望なのだから。

 そう、彼らは復讐以外の全てを無くした復讐者。

 胡散臭かろうが別の目的があろうが、復讐の一点さえ遂行できるのならばそれで良いのだ。

 こうして着手した対ゴジラ抹殺兵器だが、その建造は性能の根幹たるナノメタルの鋳造の難易度が故に時間がかかった。

 このままではもしかしたら邪魔が入るかもしれない。

 怪獣共が消えれば、自然環境は再び不安定化する可能性が大きい事はモナークの発表通りだ。

 だから怪獣は殺すな?生かして利用しろ?

 地下から、宇宙から来る怪獣共への防衛費を確保できない?

 そんな世迷い言、断じて認める訳にはいかない。

 故に、月の連中と共に各地で騒動を起こした。

 経済不況とそれによる治安悪化、そして破滅的災害への対策の格差による社会不安が限界まで高まっていたから簡単な事だった。

 こんな時、宗教は実に便利だ。

 どんなに胡散臭い事を言ってても、悩みを抱えた人間に真摯に寄り添えば簡単に転がる。

 社会秩序の要の一つたる既存宗教を攻撃し、時にその分派を取り込み、各地で新興宗教団体を肥え太らせた。

 その過程で月の連中によって多くの人間が洗脳されて人形の様になったり、こちらの人員が入信した事もあったが、復讐が叶うならば全てが些事だ。

 こちらの邪魔をするであろう国や組織はこの紛争騒ぎで自分達を止めようにも出来まい。

 対ゴジラ用超重質量ナノメタル製決戦兵器が7体全て完成した時こそ、我々の計画の最終段階が発動する。

 それまで何とか時間を稼がねばならない。

 失敗すれば、間違いなく次は無い程の弾圧を受け、志半ばで死ぬだろう。

 だが、それでも彼らは躊躇わない。

 何故なら彼らは復讐者。

 復讐以外にもう何も残っていないが故に。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 酒寄彩葉にとって、ゴジラとは何か。

 地球の生態系の庇護者であり、全生命体の支配者であり、嫁にとっての友人で、自分にとっての恩人である。

 言葉にすれば短いが、そこに込められた思いは本当のものだ。

 そんな恩人に愛する嫁(の故郷)のために直訴する。

 嫁経由のホットラインは今回は使えない。

 多くの人を巻き込むが故に、多くの人に認められるやり方でなければならない。

 これが凄く大事な事で、人々に納得と理解双方を与える必要がある。

 方法自体は見当が付いていた事もあり、割とスムーズにいった。

 元々、ゴジラは音声と脳波(つまりテレパシー)の他、電磁波を用いた通信と索敵を行える。

 これは副次的なもので、本来の用途は極めて大出力な電磁気の発生と精密な操作による荷電粒子ビームと非対称性透過シールドの発生にある。

 これが意味する所は、ゴジラは現在人類が主に使用している電磁波による通信を感知・干渉できるだけの能力があるという事だ。

 これは普段ヤチヨとの通信でも使用されており、ゴジラ自身もネットで動画を視聴する事からも明らかになっている(全部実用的な内容らしい)。

 つまり、ちゃんとチャンネルを合わせれば、既存の電子機器でも十分お話できる事を意味する。

 しかし、それだけならば8000年もの間、あの人好きされる魔性の女かぐやを相手に無言を貫き通す事は出来ないだろう。

 つまり、何かしら対話するには不都合があるのだと考えるべきだ。単なるツンデレでは?

 ゴジラにこちらの言葉を通すだけでなくその先、ゴジラの意思をモスラの仲介なく人類と直接やり取りするにはそれだけでは足りない。

 だからこそイーウィスの民とテレパシー関連研究、そして改良したオルカが必要となる。

 一応彩葉独力でテレパシーの研究はしていたのだが、発せられる脳波の出力を機械的に増幅する事は出来ても0から機械で発生させる事はどうしても出来なかった。

 これが出来たら脳機能の再現という面で全身義体化の技術が更にランクアップするのだが今はさておき。

 なので、テレパシーを生活の一部として習熟しているイーウィスの民の協力が必要だった。

 改良型オルカを用いて人類の言葉をゴジラが理解できる内容に翻訳して音波放送、同時に機械で人間の限界以上の出力に増幅したテレパシーを用いてこちら側の意見を伝える。

 そして、ゴジラが何らかの反応を示した際、音声ならばオルカで解析、電磁波なら各種通信機器で解析、そして何も発さずにいるのなら体外からでも僅かに観測できる脳波をテレパシー増幅装置を用いて観測可能な出力に引き上げ、解析する。

 声を出さずにいる事は人間にも出来る。

 しかし、脳波を消す事は生き物である以上脳死か仮死状態になりでもしない限りは不可能だ。

 これなら強引極まるものの理論上何とかゴジラとコミュニケーションを取る事が出来る。

 幸いにも事前に行った実験、普通の動物の言語翻訳や相手の国の言語を知らない外国人同士での実験も成功した。

 一応、捕獲に成功した小型怪獣でも問題無く対話できた(餌と交尾相手を要求されたが)。

 ちょっと時間がかかったのは兄と友人達の説得だった。

 まぁ今まで決して前線に出される事なく、後方で研究や解析に従事していたのだから、そりゃそうもなろう。

 特に兄と芦花の説得は難儀した。

 真実だって二人程言葉には出さないけど表情は雄弁だし、心配してくれている事は十分伝わってくる。

 まさか幼い頃の様に二人で一緒に寝たり、学生時代の様に気楽に遊ぶ事になるとは思わなかったが、それでも何とか説得は成功した。

 まさか渋る皆の説得の最中、ほぼ10年ぶりにゴジラが活動を再開した事がニュース速報のライブ映像で流れたとなれば、皆も納得せざるを得なかった。

 

 しかも、人類が確認して以来一度として動く事の無かった北極の氷床の下にいたG0が動いたのだ。

 

 イーウィスの民の予言が遂に現実となってしまった訳だ。

 地下世界にいるG1はまだ出てきていないが、それも時間の問題だろう。

 モナークからの緊急連絡もあって皆からの許可は出たが、「必ず生きて帰ってくる事」は約束した。

 今回はもしもの時の護衛役としてヤチヨとかぐやも連れて行く。

 リミッターを外せば普通の人間の3倍程度の身体能力(瞬間的かつ自壊覚悟なら5倍はいける)もあるから、もしもの時は二人に抱えてもらって逃げよう。

 ツクヨミ内ほどじゃないが、全身義体の二人なら大抵の事は切り抜けられる・・・筈!

 だから、敢えてこう言おう。

 

 「「「いってきます!」」」

 「「「いってらっしゃい!」」」

 

 お兄ちゃんと芦花と真実に見送られ、私とかぐやとヤチヨは機上の人となるのだった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 「G0の放射線及び熱量の上昇を確認!今までにない上昇速度です!」

 「遂に来たか・・・!各員、予定通りこれより当施設を放棄!速やかに脱出に移れ!遅れれば死ぬぞ!」

 

 北極、その北緯90度緯度0度の場所にて、G0観測用のモナーク前線基地の人員に総員退避の命令が下された。

 何せここは北極の氷床の下にいるG0のほぼ真上に位置するのだ。

 G0が今までの沈黙を破り、活動を開始するのなら真っ先に影響を受ける場所だ。

 まぁもう少し距離取ったら?と言われそうだが、調査用に掘削とかする際にここ以外だとドリルで掘る距離が長くなるし、より詳細なデータを取るなら真上が都合が良かったのだ。

 それにG0は発見して以来一度として動いた事が無いからへーきへーきと思われていた。

 しかし、イーウィス族の石版に記された予言が公表されると状況は一変、何時動いても大丈夫な様に改めて避難の手順がマニュアル化され、訓練も行われた。

 その矢先の出来事であり、備えがちゃんと役立った訳だ。

 役立つ日が来ないでほしかったという研究員らの内心を余所に、人員は恙なく対処した。

 観測データは無人のまま機器が送信してくれるため、破壊されない限りは記録し続けてくれる。

 脱出艇、専用の大型水陸両用雪上車には最大10名以上が搭乗可能で、例え猛吹雪の日であっても安定した移動を保証してくれる優れものだ。

 全車が基地を出発後、その走破生を持って氷の上を転倒しないギリギリの全速で走り続ける。

 数分も経った頃、北極の氷床に不気味な地響きと共に亀裂が入り、やがて大きく割れ、砕け始めた。

 

 『総員、しっかり掴まれ!』

 

 基地司令の叫びはしかし、誰も返事を返さない。

 全員が生き残るために必死にベルトを掴み、或いはハンドルを握ってアクセルをベタ踏みする。

 

 GYAWOOOOOOOOOOOOO・・・・・・

 

 その彼らの背後から、巨大な唸り声が響き渡る。

 それが誰の放ったものなのか、彼らは痛い程に理解していた。

 だって、彼らはそれを観測・研究するためにこの人里離れた極地へとやってきただから。

 この星の王たる種族ゴジラの中で最古にして最大、王の中の王、紛れもない生態系の頂点。

 巨大な氷床を熱線も使わずにただ膂力のみで砕き、押しのけ、遂に地球の支配者がその姿を露わにした。

 

 GYAWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!

 

 彼こそが真なる怪獣王、G0とナンバリングされたゴジラである。

 この日以降、G0とG1を除いたゴジラ達が各地に上陸、放射性廃棄物の処理施設や貯蔵施設への襲撃を開始した。

 

 

 

 




ゴジラ主「気付いてない訳ないだろjk」

なので決戦前の腹拵えタイムです
G1?もしも突破された際の防衛担当です
前回シーモに任せたらえらい事になったので残当
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