白亜紀からこんにちわ   作:VISP

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その27 助走

 G0の活動開始及びG2からG7による核廃棄物の再処理・貯蔵施設の襲撃を受け、モナークは各国政府と緊急のテレビ会談を行っていた。

 

 「先ず間違いなくゴジラの目的はエネルギーの確保です。来るべき戦いに備えるための。」

 

 その芹沢博士(すっかり白髪&禿げ)の言葉に、各国の政府首長はやはりか・・・と確信を強めた。

 

 『芹沢博士、猶予はあるのかね?あるとしたらどれ位だ?』

 「正確な時間は分かりませんが、そう残っていないのは確かです。NASAを始め民間含む天文台に問い合わせましたが、へドラ事件と同程度のサイズの天体が地球に到来するのは半年後です。」

 『ゴジラによる人類への攻撃ではないのだな?』

 「それは有り得ません。現に今回の一件での人的被害には負傷者はいても死者はいません。加えて、原子炉及び核融合炉が破壊されていません。これはゴジラが人類の使う原子力を減らす意図は無く、あくまで有効活用できていない放射性廃棄物に狙いを絞ったからだと思われます。」

 

 今回、襲撃されたのはどれも放射性廃棄物に関連する施設や場所だけだった。

 日本なら青森県六ケ所村にある日本原燃の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、茨城県東海村の日本原子力研究開発機構の研究施設、そして福島原発跡地である。

 アメリカだとネバダ州ユッカマウンテン地下の貯蔵庫、フィンランドの地下最終処分場オンカロ等々、世界各地の放射性廃棄物の処理施設或いは保管施設のみを狙い撃ちにしている。

 一部の原発の敷地内に保管庫が併設されている場所でも態々保管庫の方のみを襲撃し、原発そのものには一切手出しをしていない。

 更に、発生した怪我人も怪獣災害警報の発令による避難途中での転倒や事故によるもので、ゴジラの攻撃によるものではなかった。

 というのも、今回の各地の襲撃において、ゴジラの移動速度は物凄く遅かったのだ。

 その速さ、実に時速20km!

 他の大型怪獣と比しても競歩とか早歩きとか一切なく、ゆったり歩いてきたという感覚であり、だからこそ人員の避難は十分間に合った。

 

 『この事態は何時まで続くんだ?宇宙からの襲来が来るまでか?』

 「いえ、これは直ぐに終わるかと。余りにも少量ではエネルギー効率も悪ければ移動分の消費で足が出かねません。」

 『いっそ、こちらから放射性廃棄物を集めて誘導する事は可能ですか?』

 「場所や廃棄物の量、必要な人員と作戦内容の検討は必要ですが、可能だと思われます。」

 『となると、これ以上の被害が出る前に一カ所に纏めてしまった方がマシか。』

 「これ以上は確保できないと判断すれば、動きを止めて体内の原子炉からのエネルギーチャージに移行するでしょうから、そこまで行けば落ち着くかと。」

 『分かった。その方針で行こう。』

 

 事前の研究と現在届いている情報から、芹沢博士の回答はほぼ満額と言えた。

 事実、普段のゴジラならばその予測通りに動き、一度活動を停止しただろう。

 問題は、今は普段とは異なるという点だった。

 それは一週間後、各国での放射性廃棄物の集荷作業が終わり、ゴジラがそれを吸収した事を確認した後に起こった。

 

 『ゴジラ、移動を開始しました!』

 『予測通りだな・・・何処に向かっている?』

 『これは・・・予測とは異なる進路を取っています!』

 『なにぃ!?』

 

 なんとG0を含む残り全ての個体が予測とは全く異なる方向へと移動を開始したのだ。

 北極、北欧のフィヨルド、北米のモントレー湾、ロシアのベーリング海、インドネシアのジャワ海溝、日本の日本海溝、南米のペルー・チリ海溝。

 そうした本来いた場所に戻る事なく、それぞれの個体が移動を開始した。

 基本的に海路を利用しているために人的・物的被害は極めて少ないが、それでも各所での混乱は大きい。

 前例のない事態にその道のプロばかりのモナークの人員にも緊張が走った。

 

 『予測進路は?』

 『それぞれの進行方向の延長線上は・・・中東の様です。』

 『よりにもよってか・・・。』

 

 現在、中東諸国は核融合炉の実用化と世界中の工業地帯の壊滅に伴い、その根幹たる石油産業の業績を大きく落としていた。

 この原因をアメリカを始めとした核融合炉の生産・保有国にあるとして強く非難し、日本とアメリカ含む世界各国でテロ活動を支援し、緊張状態となっていた。

 これにより現在は先進国全てから睨まれており、何かあれば開戦すら有り得る。

 現地の政府やメディアが現在の経済的苦境は先進国によるものだと煽った事により表向き反欧米一色となっており、そんな場所ではモナークは勿論国連軍ですらまともに活動できる状態ではない。

 つまり、これから起きる事に在外米軍と規模を大幅に拡大したAT部隊は介入する事が出来ないという事だ。

 

 『やむを得ん。衛星及び偵察機による監視に留める。偵察機を出せ。』

 『はっ。』

 

 こうして、ステージは次の段階へと進む事となった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 ゴジラ達が中東へと移動を開始した頃とほぼ同時刻

 

 「本計画の内容はゴジラとの平和的コンタクトです。彼我の戦力差を考えれば、怒らせたら先ず死ぬと思ってください。」

 

 イーウィスの里郊外の広場に設置されたモナークの前線基地にて、彩葉は集まってくれた面々に改めて説明を行った。

 なお、周囲には増強されたAT部隊(スーパーモゲラ3機、通常モゲラ6機、UWAV24機他多数)がもしもの時に酒寄博士を逃がすために控えている。

 そのため、イーウィスの里近くに暮らす幼体のベヒモスやグレイトエイプ達からは怪訝な視線を向けられている。

 

 「地上では前日、遂にG0を含む全てのゴジラが活動を開始しました。しかし、我々は未だその原因を特定できていません。ゴジラの知覚範囲が我々の想定以上である事から、ゴジラが何かを感知した事は明白です。ゴジラとコンタクトを取り、平和的に本件の情報を得る事がこの計画の目的です。」

 

 表向きはそうだ。

 秘密のホットラインによってゴジラからある程度の情報を得る事は出来ている。

 しかし、それは表に出す事の出来ない経路故に、公表して大勢の人々を説得するための材料には出来ない。

 だからこそ、こうして表向きの理由を用意した上で、ゴジラと月人の件について話を付ける必要があった。

 随分と分の悪い賭けだな、と彩葉も内心で頭を抱えているが、それを一切表に出さず、あくまで理知的に振る舞う。

 

 「正直な所、何が起こるか予測不可能です。しかし、現状このまま何も知らずにいては何も出来ずに人類が滅びる可能性があります。それを防ぐためにも本計画は遂行されなければなりません。」

 

 事実、多少の情報は入ってくるが、それでも全てではない。

 全ての事情をヤチヨがゴジラ(と話せるモスラ)から知っていれば、そもそも現在の地上での活動についても聞く事が出来たのだ。

 しかし、モスラ達は地下、ゴジラは地上を担当するが故に完全に全ての情報を共有している訳ではない。

 現に、月人の一部が洗脳により離反、地上にて工作して現在の中東情勢を生み出している事しか聞いていない。

 来る宇宙からの脅威にそれがどう影響してくるのか、その詳細は未知数なのだ。

 

 「では、これより直訴作戦を開始します。各員、作業を開始してください。」

 『『『『『『『『了解!』』』』』』』』

 

 やる事自体はシンプルだ。

 先ずオルカによって人間の声とゴジラの声を合成した音声を作成、それを設置した大型スタジアム用スピーカーで増幅して地下にいるゴジラG1を呼ぶ。

 なお、声の内容は「もしもしこんにちは!お話しませんか!」というシンプルなものだ。

 それで首尾良くG1が来たら作戦続行、来なかったら根本的にどっか間違えてるだろうから失敗と判断する。

 で、G1が来たらオルカと同時にイーウィス族の人にお願いしてゴジラ向けに機械で増幅したテレパシーを用いてコミュニケーションを図る。

 また、返答されるゴジラの放つ音声やテレパシー、脳波や電磁波等は全て分析してその意思を解析・翻訳する。

 要は持ち込める範囲では最高性能のスパコンを用いてのリアルタイム翻訳だ。

 ここまでやって駄目なら、ゴジラ側には人類と接触する理由がないという事でもあり、それはそれで今後の指標の一つになる。

 そんな盛大な実験は開始から間もなく効果が見え始めた。

 

 「G1、進路変更を確認。真っ直ぐこちらに向かってきています!到達まで約2時間!」

 「取り敢えず、こっちの面を拝みに来てくれるみたいね。15分置きに再度発信して。」

 「モスラ、こちらに向けて飛行中。バトラも同様です。」

 「ん~問題無し!作業続行!翻訳機の準備しておいて!モスラとバトラの方が先にこちらと話してくれるならそれはそれでヨシ!」

 

 現在の地下世界を管理する王達が揃うという、スカーキング迎撃作戦以来初の出来事にその場の緊張が高まっていく。

 

 「AT部隊は絶対にこっちからの発砲は厳禁と改めて通達!一発でも撃てば皆殺しになるからね!」

 

 ギリギリの緊迫感の中、ゴジラの来訪まで2時間。

 泣いても笑ってももう戻れない状況で、Dr.サカヨリは獰猛な笑みを浮かべた。

 

 「王様に直訴するんだから、これ位でへこたれない!背筋を伸ばして前を向いて、ビシッとお迎えするよ!」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 中東、ほぼ同時刻

 

 落ち目の産油国関係者、ゴジラへの復讐者達と離反した月人達は電話会談で今後の対応を話し合っていた。

 

 『話が違うぞ!何故ゴジラが我が国に向かってきている!こちらに有利な戦場に誘導して戦うのではなかったのか!?』

 「勿論その予定だった。しかし、ゴジラ側の探知能力は予想以上だった。こちらの準備が整う前に仕掛ける気だ。」

 『余裕そうだが対策はあるのかね?出資した対ゴジラ兵器は全てが完成した訳ではあるまい?』

 「現状、武装含めて完成したのが5機、武装無しが2機、組み立て中が1機ですな。まぁこれでもG0を除いた他の個体は十分撃破可能です。」

 

 通信に対応している復讐者達の纏め役は冷静だった。

 対ゴジラ兵器の性能とシミュレーターでの搭乗訓練は毎日毎日幾千通りも行われ、その中にはこうした状況のものも含まれている。

 G0に関しては分の悪い賭けになるが、それ以外に関しては勝率8割超えを出せている。

 

 『そして残ったG0に滅ぼされると?冗談ではない!』

 「ご安心を。G0に関しては別のプランが存在します。迎撃作戦ですが、奴の守りを崩し、確殺する予定です。」

 

 そして肝心のG0にしても、この迎撃都市に招き入れる事が出来た時点で勝利が確定する。

 確かに予定を前倒しにしているが、G0はその巨体故に移動速度が他の個体よりも遅く、またサイズと出力の違いから連携もし辛い。

 故にG0は単騎運用が前提で、他は数体で連携する可能性があるが、逆に言えばそれを下せるだけの戦力があれば十分勝機はある。

 

 「スポンサーの皆様にはお持ちのシェルターにてどうかご歓談を。では私はこれから準備があるので失礼。」

 『待て!話はまd』

 

 プツ、と通信が途切れる。

 

 「やれやれ、今更何を喚くのやら。」

 「指定のシェルターへの工作は完了した。これで良かったのかね?」

 「あぁ、ありがとう。我々だけでは出来なかった事だから助かったよ。」

 

 産油国の代表者達は当初、自分達を置いて発展し続ける欧米とその追従する国々の妨害を行うべく、復讐者達を捨て駒として招き入れたつもりだった。

 しかし、何時の間にか勝手に自分達の名前を使って各国へとテロ活動を開始した復讐者達へと大いに怒り、一時は排除しようとした。

 だが失敗した。

 月人達による政府や軍の高官、多数の民間人の洗脳により、既に自分達の方が下手な事をすれば簡単に処分される立場だったからだ。

 一人、また一人と虚ろな目となっていく見知った顔の者達を見て、産油国の代表者達は何時自分や家族がそうなるかを恐れ、以来彼らのする事にまともに口を挟めず、ただ金を出して身の安全を乞う立場となっていた。

 そして、それも間もなく終わる頃だろう。

 

 「最後は彼らが大事にしている石油で盛大に火葬してやろう。ここまでしてくれたせめてものお礼さ。」

 「使うのはガソリンだがな。」

 

 いけしゃあしゃあと宣う復讐者に対し、月人はただ機械的に感情のない眼差しを向けるだけだ。

 彼らにとって、お互いただ利用し合っているだけの関係に過ぎない。

 例え金や資材、土地を差し出してくれたスポンサーであっても、不要となれば簡単に切り捨てる。

 そう、たった今産油国の政府要人らの避難している各地の極秘シェルターが完全に密閉され、その内部に空気循環システムを用いて気化したガソリンが流れ込んでくる事態になった様に。

 

 「対ゴジラ用超重質量ナノメタル製決戦兵器・・・ここまで長かったな。」

 「全機完成できなかったのはこちらの落ち度だ。申し訳ない。」

 「いや、いい。これで同志達も喜んでくれるとも。君達がいなければここまで来れなかった。本当に感謝している。」

 

 思えば、復讐以外何もかも無くした身で、よくぞここまで来れたものだ。

 故郷を、妻子を亡くして生きた亡者となってから、実に20年近くだ。

 漸く、全てに落とし前を付ける事が出来る。

 

 「では、最後のパーツを組み込もう。外部からの操作は任せた。」

 「了解した。遅滞なく執り行おう。」

 

 こうして、各々が自らの戦いのための準備を終えていく。

 最後に笑うのは一体誰なのか、未だ見通せる者はいなかった。

 

 




地上・・・ゴジラ軍団 VS 復讐者達in対ゴジラ兵器
地下・・・もしもしゴジラさん?作戦進行中
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