白亜紀からこんにちわ   作:VISP

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超難産でしたが頑張って完結まで連続更新していきたいと思います
多分一度止まれば書けなくなるので


その28 宣告

 今回の一件、中東の方は洗脳された連中含めた敵勢力の撃滅で片付くが、もう一方が面倒だなぁ・・・やだなぁ・・・というのがゴジラの感想だった。

 

 『今回は彩葉が貴方と人類のために頑張るんだからね!ちゃんと答えてあげてね!』

 

 8000歳BBAの通信爆撃(今日だけで17回目)ではこう言われたが、これから中東を焼け野原にしに行くのに人類側とコンタクト取ってもなぁ・・・というのが正直な所だ。

 人類とコンタクトを取った結果、人類への配慮が今後より必要となる事、又は要請される事も考えられる。

 言葉が通じるという事はそういうデメリットが今後発生する事を意味する。

 しかし、昨今の情勢を思うと短期的にはメリットの方が勝る。

 現在の人類の技術力、特にかぐや/ヤチヨの執着する酒寄彩葉によって劇的に数世代は向上した軍事力は決して油断ならない(私が助長したようなものだが)。

 スーパーモゲラ級の戦力を量産してもらった場合、対ギドラ戦においては数合わせになる事だろう。

 

 或いは彼女が全力でその道を進めば、半世紀後には私を超えるやも知れない。

 

 だが対ギドラ戦が終わった後、人類が地球から巣立つのではなく、地下も含めて全てを手中にしようとした場合、これは逆に大きなデメリットとなる。

 人類ならば「後の事は後の世代が考える!」と投げっぱなしが出来るが、こちとら既に億年超えで寿命など実質存在しない種族だ。

 長期的な思考が身についている以上、それを無視する事は出来ない。

 要は後の人類側がやらかす可能性が拭えない以上、手を取り合う事は難しい。

 

 『あら?私としてはもうそろそろちゃんと話し合うべきだと思いますが?』

 

 まぁ女王はそうだろうな。

 お前は元々地下世界のヒト種と交流して長い。

 黒い女王も、お前がそうだからこそ敢えてあの距離感を保っているのだろうしな。

 

 『もう少し知性体としての能力を信じてあげても良いと思いますよ。まぁ心配になるのも理解できますが、知性体なら早々自滅への道は進まないでしょうし。』

 

 それは認識が甘過ぎる。

 ヒト種の歴史は分類問わず流血を伴う過ちによってマニュアル化されている。

 今後、口減らしも宇宙への巣立ちもせずにダラダラと生き続けるためだけにこちらを攻撃しようとする者達は絶対に湧いてくる。

 断言しても良いが、多様性こそが売りのヒト種が真に一致団結する等有り得ん。

 賢い個体が正しく判断して行動しても、一定数が必ず感情論や既存の利益のみでそれに反対し、愚かな選択をする。

 事実、今回の中東のヒト種もそういった手合いがかなりの割合紛れているようだからな。

 

 『であれば、尚更でしょう。こちらが筋を通したのですから、人類にも筋を通してもらう。あちら側こそが愚かな選択をしたと言い切るためにも、先ずはこちらから歩み寄るべきです。』

 

 で、実際に裏切られたら相応の報いを与え、そうでないなら喜んで関係を続けると。

 相変わらず強かだな、女王は。

 

 『貴方は実直が過ぎるのです。もう少し本音と建て前を分ける事を覚えるべきでしょう。』

 『斯く言うお前は大らかが過ぎる。数だけは多い小猿など、一息に減らせば良いものを。』

 

 おや、珍しく黒の女王が口を出してきた。

 

 『お前もお前だ。地上はお前の管轄故に黙っていたが、余りにも小猿共に甘過ぎる。そんなだから奴らが増長し、増え過ぎたのだ。これを期に減らせ。あの汚泥共ではまだまだ足りん。』

 

 耳が痛い、凄く痛い。

 自覚があるだけに余計痛いが、しかし今それをするのは悪手だろう。

 どの道、負けるにしろ勝つにしろ、地上は壊滅的打撃を被る事は確定している。

 最低でも数億は減る事を考えれば、それで出来た猶予の内に宇宙へ旅立つ選択を促すべきだろう。

 

 『そんなだから甘いのだ貴様は。猶予なら既に十二分に与えた。最早我慢ならん。これ以上湧いて星を食い潰すなら駆除、いや滅ぼすべきだ。アレらはもうこの星を食い潰さんとする癌だ。』

 『まぁまぁ落ち着いて。どの道、今回は何かを正式に取り決めようというお話ではありませんし。お互いのスタンスの確認と宇宙からの侵略者への対応についてだけなのですから。』

 『お前もお前で間怠っこしいのだ。お前達の慈悲を受けた所で、あの小猿共が自重する訳が無い。多様性と統一感の無さを一緒にするな。アレらはもうこの星にはいらん。』

 

 はぁ・・・・・・これだから話し合いなんて面倒なんだ。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 GYAWOOOOOOOOOOOOO・・・・・・

 

 低い咆吼と共にズシン、ズシン、という足音が近付いてくる。

 もうレーダーや双眼鏡を使う必要も無い。

 既に肉眼で確認できる距離、つまりゴジラにとって必殺とも言える間合いの内側にいる事をその場の面々は分かっていた。

 それでも逃げずにこの場に留まっているのは、迂闊な行動は実験の失敗と死を意味するからだ。

 現状地下世界で唯一活動するゴジラG1はG0に次ぐ高齢かつ大柄の個体だ。

 その全高なんと200m超、推定重量約8万tという巨体が、ゆっくりとこちらに向けて歩みを進めている。

 その光景を見て、作業に当たるモナークと酒寄ロボ研の面々は冷や汗が止まらない。

 ただ生物としての本能が伝えてくる。

 曰く、ここから逃げろと。

 しかし、もう手遅れだと理性が告げる。

 だからこそ、意思が必死に肉体の手綱を取って、作業を続ける。

 でなくば、何も成せず、何も残せず、ただ無為に死ぬだけだから。

 そんな中、不意にズン・・・という僅かな揺れと音と共にG1の歩みが止まった。

 

 「目標の進行停止を確認。こちらを見ています。」

 「話すならこの距離で十分って事でしょう。実験を開始します。」

 

 前哨基地から僅か500mというゴジラにとっては超至近距離で、その歩みは止まった。

 立ち止まったG1がじっとその眼をこちらに向けている。

 その年齢故か、それとも種族か性格か、彩葉にだって分からない。

 でも、向けられるその瞳が余りに奥深く慈愛に満ちていて、気を抜けばそのまま呑み込まれてしまう様な錯覚を覚えてしまう。

 そして、高みから向けられるその視線は今は下手な言葉よりも雄弁だった。

 

 さぁ、どうする?

 

 こちらを見下し、試している。

 まるで大人が漸く赤子から幼児となった子供のする事を見守る様な、そんな視線。

 敵意は一切含まれていないにも関わらず、圧倒的格上からの眼差しに知らず冷や汗を流しながら、それでも彩葉は止まるつもりなんて更々無かった。

 

 「システム、オールグリーンです。」

 「後はお願いします、Dr.サカヨリ。」

 「OKOK・・・マイク繋いで。記録は取ってるわね?よし、始めます。」

 

 さぁ酒寄彩葉、人生大一番の始まりだぞ。

 内心で気合いを入れ直し、口を開いた。

 

 「はじめまして、ゴジラ。今日は貴方と話をしたいと思い、この場に呼ばせて頂きました。」

 

 改良型オルカと脳波増幅機械サイコ・コミュニケーターとイーウィスの民の協力により、音波とテレパシー双方で彩葉の言葉は翻訳・拡大され、ゴジラへと届けられる。

 それをゴジラが聞き届けた瞬間、周辺機器に異常が現れた。

 

 「な、あ、モニターが!?」

 「周辺に電磁パルスの異常値を検出!G1から発せられています!」

 「あーそう来たか・・・。」

 

 相手はこの地球で一番長く電磁波を操ってきた専門家だ。

 そりゃ人類の電子機器位どうとでもなるだろうなと彩葉は感心しつつ、それをここで見せる意味に内心で頭を抱えた。

 生半可な電子技術ではただ叩き潰されるだけだという示威行為。

 この場の人間が動揺する中、彩葉だけは何かを察した様に成り行きを見ていた。

 ザザザザ・・・ガーピーピーピー・・・

 そんな不協和音の電子音が数秒流れた後、全ての画像が切り替わり、スピーカーが勝手に音声を発し始めた。

 

 【 話とは何だ ヒト種 】

 

 そんな言葉が地上のあらゆる言語で画面に表示され、同時に地上のあらゆる音声で発せられた。

 それが誰の意思によるものか、その場の全員が瞬時に理解した。

 なお、彩葉の目の前の画面には分かりやすく中心に日本語が表示されていた。気遣い上手かよ 

 

 「嘘だろ・・・。」

 「馬鹿な、こんな事が・・・。」

 

 一部の人員が呆然とした様子で天を見上げる。

 そこには地上の、この星の王が静かにこちらを見下ろしている姿があった。

 電子機器という人類にとって最大の発明、その中でも最先端のそれを身動き一つせず自在に乗っ取り、操作し、自らの意思を伝える。

 未だ70億を超す人類の中の上澄みであるこの場の人員であってもなお呆然とするに足る事象が今起きていた。

 

 「現在、貴方達が地上にて進めている活動について。そしてこの星を今後どの様に治めていく予定なのか。私達が聞きたい事はその2点です。」

 

 【 知ってどうする? 弱いお前達が知っても意味は無い 】

 

 「戦いに備え、今後も生きていくためにです。」

 

 お前馬鹿か天才かよ!?天才だったわ!という視線をその背に受けながら、彩葉は一切物怖じせずに話を続ける。

 失敗すれば次は無い。

 その事を理解しているが故に彼女は幾度となく思案してきた内容をゴジラが聞き入れてくれるように、事前に交渉や対話の専門家の知恵を借り、その重責への責任感から何とか重圧に負けずに口を開く。

 精神科医や噺家、米軍の情報部門の尋問官、そして忌避していた母親とも専門家の一人として相談した。

 そうして出た結論は、ただ正直に、物怖じせずに話す事だけだった。

 

 【 良いだろう 戦う意思ある者は歓迎する 】

 

 直後、周辺の電子機器に大量の情報が送信され始めた。

 勿論、送ったのはG1だ。

 膨大な量のデータが送信され続ける中、モニターの一つが世界地図、それも中東を中心としたそれを映し出す。

 そこには中東へ向け移動する青い光点が7個、そして中東から移動する赤い光点が7個表示されていた。

 

 【 現在、侵略者の尖兵と交戦する直前だ 洗脳されたヒト種や月の民を用いて兵器を用意し、こちらへの攻撃を予定していたため、奴らの兵器が完成する前に先制攻撃を行う 】

 

 ザワザワ、と動揺が広がる。

 地上でG0を含むゴジラ達が活動を開始した事は知っていたが、事前の情報収集含めてこうも具体的な戦略・戦術を以て戦いに臨んでいるとは思っていなかったのだ。

 ゴジラの知性は彼らの想定外に高く、その知覚範囲と精度もまた高かった。

 

 「この赤い光点が敵ですか?」

 

 【 そうだ 侵略者の用意した兵器 お前達の持ち込んでいるものと似ているがもっと強いものだ 】

 

 これにはAT部隊の面々もざわざわと動揺を露わにするが、直ぐに静止する。

 今考えるのは宇宙からの侵略者の事ではない(滅茶苦茶大事だが)。

 目の前の怪獣王の動向と思考で、それを知るために何としてもDr.サカヨリに仕事を完遂してもらう。

 そして、駄目なら全滅覚悟で時間を稼いでDr.サカヨリを逃がす。

 たったそれだけのシンプルで、しかし今まで受けたどの作戦よりも困難なものだ。

 

 【 月の民は嘗てこの星に住まう者だった 今は命の循環から外れ、私の庇護を抜けた者達 故にアレらに配慮はしない 】

 

 「全ての月人がそうなのでしょうか?また、命の循環とは何でしょうか?」

 

 【 あくまで一部が侵略者に汚染されたのみ 命の循環とはこの星で生命を育むあらゆる働きを意味する 月の民は肉体を捨てて精神体となり月へと移住したこの星の枠組みから抜けた者達だ 】

 

 「では、この星の生態系の一部ならば貴方の庇護下にあるという事でしょうか?」

 

 【 然り 私は私が生きるためにこの星と命の循環を守る 】

 

 これが世界で初めて「ゴジラがその目的や意図を明確にした瞬間」だった。

 

 【 しかし、此度の私は侵略者との戦いに注力する 地表の生物を守る余裕は無い 月の民も枠組みから抜けた以上は庇護下にあらず 】

 

 地上世界のほぼ全ての生物を影響下に納め、圧倒的能力で全てを下してきた生態系の王、星の覇者が告げる決定。

 それはもう何も守らず、戦うだけだという宣言だった。

 それはつまり、それ程の脅威が迫ってきている事を意味していた。

 

 「その場合、地上はどうなるのでしょうか?」

 

 【 多くが滅ぶ 嘗てあった一度目と二度目がそうであったように 】

 

 モニターに映像が出力される。

 それに彩葉は見覚えがあった。

 夢の中、混線する意識の中で見たそれと同じものだったからだ。

 

 【 二度の侵略で星は荒らされた 多くが途絶え滅びた 守るためには切り捨てねばならなかった 】

 

 言い訳の様な言葉だが、しかし事実なのだろう。

 三つ首の黄金龍、ギドラに屈した怪獣達と隠れ蓑にした巨大隕石。

 それらによって齎された終末的光景に、その場の人員は皆息を呑んだ。

 一度目は地上全土、二度目はそれに加えて地下の一部を戦場にして、壮絶な戦いは繰り広げられた。

 一度目で地上は荒れ果て、復活した後にはしかし二度目によって氷河期へと突入した。

 もしまた同じ事が起きた場合、人類はその過半数、否、その殆どが他の地上の生命体共々死に絶える地獄となるだろう。

 

 【 侵略者の尖兵が現れた以上、最早侵略者の到来まで間が無い 死にたくないならば力を尽くし、抗え 】

 

 そこまで一方的に告げて、G1はゆっくりとその身体を背後へと振り向き、背を向ける。

 話すべき、告げるべき事を告げた以上、これ以上言う事は無いという事だ。

 

 「待ってください!最後にこれだけを教えてください!私達が手を取り協力する事は可能ですか!?私達人類が命の循環を壊してしまった場合、貴方はどうするのですか!?」

 

 彩葉の立場上確認せねばならないその問いにG1は首だけを振り向かせ、その奥深くも鋭い眼差しを向けた。

 

 【 弱い者では足手纏いだ 循環を乱す者はこの星で産まれた者だとしても星の癌として滅ぼすのみ 今までもそうだった 】

 

 画像に新たに映るのは、三種の怪獣だった。

 あらゆる生物をその毒で殺戮し、その死体を苗床に無尽蔵に繁殖する菌糸類。

 地底のマグマを操り、火山を自在に噴火させ、無秩序に全てを蹂躙しようとした巨大翼竜。

 そしてあらゆる化学汚染物質を吸収して急速に増殖、猛毒を撒き散らす巨大な群体を構築するへドラ。

 どれもこれも単一種で地球の生態系を破壊し、事実その寸前まで行った者達だ。

 その全てが例外なくゴジラによって滅ぼされた。

 全てはこの星の命の循環を守るために。

 

 【 お前達がそうならない事を切に願う 】

 

 それだけを言い残し、G1はその場を立ち去った。

 後に残ったのは苦く深い沈黙、そして地上からの緊急連絡を知らせる着信だけだった。

 

 

 




正直今回は悩みました
基本的に日本のゴジラ=人類の業を表す怪物ですが、本作はかなりモンスターバースのゴジラ=自然の守護者、怪獣達の王としての属性が強めです
しかしそれでも共通項の一つとして「人語を解さない人外」があります
某人形師曰く「一つ、怪物は言葉を喋ってはならない。二つ、怪物は正体不明でなければいけない。三つ怪物は、不死身でなければ意味がない」
これを破るか否かは最後まで悩みました。

悩んで悩んで悩んで、このお話の大元は超かぐや姫!であり、そもそも人語解してるやんけ!と気付きましたw

と言う訳で最終章開始です
今回のゴジラの発言内容は大分バトラの意見でキツめにされてますが、これで反応伺うから!初手皆殺し宣言だけは止めて!と説得された結果です
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