白亜紀からこんにちわ   作:VISP

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ちょっと長くなってしまった


その29 中東最後の日

 地下での人類とゴジラの初の対話から数時間後、中東を目指して7体ものゴジラ達が向かっていた。

 本来の予定では、彼らは未だエネルギーの貯蓄に励んでいる筈だった。

 しかし、彼らの予想よりも遙かに早く事態は深刻化していたが故に、攻勢を早めなければならなかった。

 

 その原因は月の民、その一部の離反による復讐者を始めとした地球人類の一部の戦力化にある。

 

 現在、地上に生きる多くの生物はミトコンドリアこと共生ゴジラ細胞の働きにより、放射線への耐性や緊急時のリミッター解除などの機能を持つが、本来の目的はそれではない。

 氷河期における地上の生物の絶滅回避のためであり、氷河期が終わった後は機能を停止して消滅しても良かったのだが、以降はその使用用途を変更して活動を継続している。

 

 ゴジラ細胞、つまり極僅かながらゴジラの一部を体内に取り入れる事で、ギドラによる王の咆吼や洗脳への耐性を獲得させたのだ。

 

 地上から怪獣達を退去させてゴジラ達だけが防衛戦力を担うのは、多くの大型怪獣ではギドラの放つ王の咆吼に抗えず、敵戦力として離反した過去があるからだ。

 ゴジラを除けば耐性がある怪獣はモスラやバトラ、グレイトエイプにアンギラス等と極限定され、それらはどれもゴジラよりも火力も耐久力も弱く、戦力として数える事は出来るが決定打にはなれないため、敢えて地下の守りに徹してもらっている。

 離反防止、そのために現在の共生ゴジラ細胞は多くの地上の生物の中で未だ活動を停止する事なく存在している。

 だが、これにも抜け道がある。

 氷河期以前に肉体を捨て、精神体となった月人はこのゴジラの庇護を受けられなかった。

 また、肉体という檻を捨てた分、直に精神へと干渉される事となり、余計にギドラによる洗脳への耐性が低くなっていた。

 加えて言えば、刺激の無い月の生活に適応するためとは言え、自我や欲求が極端に薄い文明となってしまったのも精神力で抗う事すら出来ない原因となっていた。

 それでも、現在の地球圏で種族単位では最も突出した技術力を持っているのは伊達ではない。

 即座に原因を解明し、対処療法とは言えどギドラからの洗脳による侵略に対し、電子的・物理的双方での隔離と的確な対応をしてみせた。

 だが、逆を言えばそこまでが限界とも言えた。

 月の裏面へと移動した隔離区画(と内部の月人とギドラ由来オブジェクト)を攻撃しようにも、下手に認識してしまえばその時点で洗脳を受けてしまう。

 AIを組んで自動的に攻撃しようにも、そんなあり合わせで組んだAIでは洗脳された月人達の手により対応されてしまうし、精神汚染の原因を取り除く事も出来ない。

 しかも、洗脳された月人の技術提供によって地上では中東を舞台に対人用洗脳アプリによる尖兵の確保や対ゴジラ用決戦兵器が建造され、益々事態は悪化していく。

 対人用洗脳アプリは精神ではなく発光パターンを応用した脳への干渉(所謂サブリミナル効果やポケモンショックの応用)であり、精神を守るゴジラの庇護の別の抜け穴を突いたものだった。

 対ゴジラ兵器は以前から最大の仮想敵であったゴジラへと対抗するために千年以上の年月をかけて設計されたもので、月人の持つナノマシン技術を最大限応用する事であらゆる環境・戦況に対応可能な汎用決戦兵器とも言える極めて完成度の高い傑作だ。

 基本平静で理性的な月人としては、洗脳が原因と言えどもこんな利敵行為をしてしまっては普通に族滅されかねないと判断するしかなかった。

 そんな限りなく詰んだ盤面を覆すために、月人は地球で暮らす同胞とその相方である黒の王の巫女夫婦に助けを乞うたのだ。

 月人の最大の保険であるかぐやが月にいる事もまた彼らには有利に働いた。

 これで何とかなってくれ~~と思っていたが、そうは問屋が卸さない。

 

 【 しかし、此度の私は侵略者との戦いに注力する 地表の生物を守る余裕は無い 月の民も枠組みから抜けた以上は庇護下にあらず 】

 

 そんな時に、王による宣告を受けてしまった。

 これには月人達も頭を抱えた。

 成程、王がこちらを時折観察している気配はあったが、アレは自分の庇護下にない勢力への監視だったのかと納得もした。

 しかし、これでは助けてもらえない所か、隔離区画諸共消し飛ばされかねない。

 王に余裕が無い以上、もう手を借りる宛ては無い。

 このまま時間を稼ぎながら、ゆっくりと滅びを待つだけなのか・・・そう思っていた時に声をかけられた。

 

 『まぁまぁお待ちなすって。このヤッチョにお任せあれってね♪』

 

 すっかり地上の文化に毒されて芸風が変わった同胞が声を掛けてきた。

 すげー怪しいとは言え、他に頼れる者もなく、月人は渋々その話を聞く事にしたのだった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 「では頼んだ。」

 『了解した。』

 

 対ゴジラ用超重質量ナノメタル製決戦兵器のコクピット、否、最終CPU設置スペース内にて、最後の復讐者が洗脳済み月人へと声を掛けた。

 直後、彼の足下から液状のナノメタルが満たされていき、スペース内を満たし、彼の身体を包み込む・・・否、同化していく。

 これこそがゴジラという最古にして最大の電磁操作能力を持つ怪獣への対策だった。

 遠隔操作ではパイロット保護へリソースを振り分けずに済むが、操作元への攻撃やジャミング、受信装置の破壊等の可能性があった。

 逆に搭乗しての直接操縦ではパイロットの限界以上の機動や戦闘は出来ず、またパイロット保護へとリソースを振り分ける必要があった。

 

 ならば、通常の肉体を捨て、兵器と一体化すれば良い。

 

 脆弱な肉体を捨てた月人と復讐以外全て些事とする復讐者の解答が合致した瞬間だった。

 怪獣王を殺すため、彼らは人造の怪獣へと成り果てる事を選んだのだ。

 既にナノメタル生産施設内の全ての人員、否、洗脳された中東のほぼ全ての人員はこの施設によってナノメタルへと変換され、対ゴジラ兵器建造のための資材となった。

 これこそがゴジラ達の予測よりも遙かに事態が進行した理由だった。

 洗脳対策を回避された上で、そうして得たリソースをより優秀な兵器建造のために使用する。

 自らの懐は一切痛まず、ただ現地にある材料だけで相手を削り、痛めつける。

 やっている事は極めて複雑ながら、それでいて以前からのギドラの行動と全く相違ないものだった。

 とは言え、ゴジラの活動が早まった事で中東全ての人口をリソース化できた訳ではない。

 そうした人員は今は国境付近で他国の派遣した軍と睨み合っており、戦闘時には不味いなら砲火力で支援する予定だが・・・牽制にもならない所か、余波だけで全滅しそうですらある。

 そのため、予定していた対ゴジラ兵器8機全てが完成する事はなく、完品は5機のみだ。

 1機は骨組みしか無く、2機は構造が複雑な熱光学・粒子射撃兵装等を構築する時間が無かったため、熱線対策と近接戦闘のみに専念させる予定だ。

 

 ギシィ・・・キィィィ・・・

 

 最後のパーツを組み込まれた事で、板状を重ね合わせ棘状のアンテナロッドを幾本も生やした頭部にあるツインアイに赤い光が灯り、7機の対ゴジラ兵器が起動する。

 ゴジラのそれに酷似した骨格フレームを持ちながら、無数の板や突起状のパーツで構成された対ゴジラ兵器達。

 脚部は膝関節が一つ多い逆関節型、体高こそ50mだが長い尾部を含めた全長は100mを超える。

 総重量は約3万tと軽量だが、これは構造材質が総ナノメタル製であるが故だ。

 月人の技術によって生み出された自立思考金属体ナノメタル、それに加えて高度な量子CPUとAI、更により直感的な判断を可能とする有機CPUを追加で搭載している。

 動力は月人によって改良された核分裂炉が胴体上下に二基、大腿部に一基ずつ内蔵されている。

 この構造はナノメタルの自在変形機能を活用する事で随時変更可能(ただし複雑な構造であれば相応に時間を要する)であり、また戦場においては撃破された友軍のナノメタルを吸収する事で緊急修復も可能としている。

 格納されていたドームの天井が開き、7機がその姿を露わにする。

 今夜は雲一つない静かな月夜だった。

 そんな情緒を捨て、機械の化け物となった復讐者達は新しい身体を各部に内蔵されたスラスター群と脚部での跳躍によって宙へと飛び上がる。

 

 その最中、機械の巨体が複雑に可動・折り畳み・収納を僅か数秒で行い、巨大な槍を思わせる飛行形態へと変形した。

 

 これぞナノメタルの自在変形機能の最大活用、変形である。

 股の間から尾部を前に突き出し、上半身と両腕を尾部に貼り付ける様に折り畳み、脚部等の主推進機関を後方へ向け、長大な尾部の各間接部を縮ませて固定、同時に推進機関に最大出力を命じる。

 そして、飛び立った7の機影は基地を中心に 地中海方向へと4機、アラビア海方向へと3機が噴射炎を靡かせながら飛び立った。

 その直後、基地から大量の大型の極超音速ミサイルが次々と発射され、それぞれの機体の進行方向へと先んじて鏑矢として飛翔していく。

 遂にゴジラ達と宇宙からの侵略者の尖兵達による前哨戦が始まったのだ。 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 現在、ゴジラ達は二手に分かれて中東を目指していた。

 片や北半球から集まり、地中海から上陸した一群、片や南半球から集まり、アラビア海から上陸した一群。

 海から上陸した事で移動スピードは落ちたものの、それは仕方ない事と割り切って、ゴジラ達は進軍を続ける。

 

 そうしなければ一方的に狩られかねないと理解しているからだ。

 

 共生ゴジラ細胞は何も洗脳対策だけで残していた訳ではない。

 彩葉にやった様にピンポイントで介入する事も出来れば、大雑把ながら人類の分布状態や現在位置の把握にも使用できる。

 流石に脳細胞に介入する等は予め目星を付けた上で処理能力をそれなりに割かねば不可能だが、大雑把に記憶を読み解く事も出来る。

 結果、月人による対ゴジラ兵器の性能はその生産速度含めてゴジラの予測を大きく上回る可能性が浮上した。

 故に彼らはその不確定要素を少しでも潰すためにこうして即席の3体一個小隊を編成、警戒しながら進軍している。

 即席と言えども彼らは群にして個、常時大量のエネルギーと情報を送受信して完璧な連携を可能としている。

 一体だけならば熱線のインターバルによる隙を突かれる可能性も大きいが、三段撃ちで隙無しになる3体一個小隊ならば十分対応可能だと判断したのだ。

 なお、G0は未だ戦場となる中東に到達できていないので、今は戦力には数えられない。

 そうして警戒しながらの行軍中、遂に彼らの索敵範囲内に敵を捕らえた。

 50を超える極超音速の大型ミサイル群、そしてその後に続く大型飛翔体。

 どちらも音速を彼方に置き去りにする速度で真っ直ぐ向かってくる。

 地中海方面に4機、アラビア海方面に3機。

 それを確認したと同時、即座にチャージを開始する。

 3秒程の間を置いて、敵飛翔体群目掛けて高加速された荷電粒子が放たれる。

 既存の如何なる装甲も貫く、バリアやより高出力のエネルギー放出でも無ければ防御不可能なその一撃は、しかし、敵飛翔体に命中する事は無かった。

 先頭を飛んでいた大型ミサイル群が自爆し、内部に蓄えていた大量の粒子状の金属を撒き散らしたのだ。

 この粒子状の金属、即ちナノメタルはその場に熱エネルギー緩衝層を周囲へ形成、荷電粒子ビームを拡散して無効化したのだ。

 だが、それは目標に命中しなかっただけであり、拡散されて散弾の様になった荷電粒子ビームはあらぬ方向へと飛び散り、中東各地に流れ弾として命中した。

 その光景を正確に観測していたゴジラ達は次の手を打つ。

 確かに荷電粒子は防がれたが、あの様子では防御のために用いる粒子状金属は使い捨てで、再び防ぐにはその度に散布する必要がある。

 故に今度は荷電粒子ビームではなく、口部から放たれる放射能熱線へと切り替えたのだ。

 3秒程の間を置いて、2体目のゴジラの口部から一撃が熱核兵器に相当する威力の熱線が放たれた。

 だが、相手もそれは理解していた。

 射撃武装を搭載していない未完成の一機を先頭としたアロー隊形が対ゴジラ兵器達の布陣だ。

 その隊形の後方、射撃武装を完全に備えた機体群が正面方向へと多数の極超音速ミサイル群が放たれ、先頭の一機の装甲表面が剥離、無数のチャフ状となって撒き散らされた。

 放たれたミサイルは一機目の前方で再び自爆、粒子状のナノメタルを散布した。

 その直後に放たれた放射能熱線に、一瞬だが対ゴジラ兵器側のセンサーが焼け、1秒後には回復する。

 そこには装甲表面に僅かに融解が見られるものの、未だ元気に飛翔を続ける先頭の一機の姿があった。

 そう、未完成機は最初からこの予定だった。

 完成した機体を完全な状態でゴジラの元へと届けるための囮であり、もし味方機が破損した際にリソースとして己の機体の構造材を提供し、残った機体はそうして残した余力でゴジラを倒す。

 それを瞬時に理解したゴジラ側もまた次の手を打った。

 接近戦の範囲にまで敵が到達するには後1分のみ。

 それまでに先制して打撃を与えねばならない。

 3体目のゴジラが限界まで息を吸い込み、迫り来る先頭の対ゴジラ兵器に向け、全力で吠えた。

 

 GYAWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!

 

 攻撃の意図を持ってゴジラが放つ超大音量の咆哮は指向性の超振動波攻撃となって対象を共振現象で粉砕する代物だ。

 これには通常の装甲材では意味を成さず、また原理が振動である故に大気中や水中でしか使えず、更に通常の荷電粒子ビームや放射能熱線と違って宇宙では使用できない。

 だが、音以外は痕跡らしい痕跡が一切見えない致死の一撃は、見事に先頭を飛翔する対ゴジラ兵器の右半身を消し飛ばした。

 その損害を把握した対ゴジラ兵器搭載AI群は即座に作戦を立案し、生体CPUはそれを了承した。

 即ち、破損した一機を特攻兵器として再利用、その質量攻撃を最大限生かすべく最大加速を実行したのだ。

 脱出は不可能、否、元々する予定のない復讐に燃える生体CPU群は小隊の中央に立つゴジラへとその機首を叩き込んだ。

 ランス状となった尾部先端がゴジラの胸へと食い込み、地面を削り大きく後退しながらも受け止める。

 だが、それは悪手だとこの先を知っていれば言えただろう。

 

 破損したが故に特攻を行った先頭の対ゴジラ兵器が突如として盛大に自爆したのだ。

 

 内部の核分裂炉を過剰稼働させ、意図的に核分裂の連鎖反応を引き起こし臨界させ、遂には核爆発を引き起こしたのだ。

 眼前で、否、食い込んだ状態で眼前の質量体が突如核爆発し、発生した衝撃と熱量はゴジラの一体へと完全に直撃し、爆心地では盛大にキノコ雲が上がった。

 そのダメージたるや、流石のゴジラと言えども大きなものだった。

 ゴジラが熱核兵器の飽和攻撃に耐えるのは、一重にその対空迎撃能力の高さと電磁バリア、素の耐久性の高さに熱や放射線を吸収するという4つの機能がある故だ。

 だが、対熱・対電性能を極限まで高めた状態の大質量のナノメタルと先程も見せたそれの散布による熱エネルギー緩衝層を用いた防御とそこから極超音速の突撃という、それら既存の防御手段を殆ど無視してくる一手に流石のゴジラも一体が行動不能に陥ってしまった。

 これはアラビア海と地中海の戦場双方で起きた出来事であり、数的有利を自ら減らす事を意味していた。

 だが、既に戦場となった中東の空から大地へと着陸した5機の対ゴジラ兵器には確実な勝算があった。

 それを絶対に実現するために、彼らは敢えてここで数的有利を減らし、それ以上の有利を勝ち取った。

 自爆した対ゴジラ兵器もまた、その総身をナノメタル兵器で構成している。

 

 つまり、今現在彼らの戦場には極めて高密度の粒子状ナノメタルが大量に漂っている事となる。

 

 これにより熱線技はその威力を大幅に落とし、必然的に肉弾戦が主流となる戦場が構築された。

 それは射撃武装の多くを実弾で統一している対ゴジラ兵器側にとって、明確に有利な状況だった。

 確かに身体が大きく、出力=火力で勝る方が基本的に強い。

 事実、地球上でゴジラの守りを突破し、その熱線を受けて尚戦える者は殆どおらず、彼が王として認められる事は簡単だった。

 

 『各機、指定されたフォーメーションD2にて戦闘を開始。』

 

 人格と記憶、自分が誰だったかを示す最後のパーツを失った有機CPUの命令の下、対ゴジラ兵器は次々と通常の二足歩行形態へと変形して着地し、その目線を核爆発を至近で受けてなお揺らがないゴジラ達へと向けた。

 ここまで、二つの戦場ではほぼ同じ事態が進行していた。

 だが、ここから先は大きく異なる。

 現在、対ゴジラ兵器群は5機、そしてゴジラ達は4体と一体分少なく、3個隊一個小隊の編制を崩されてしまった。

 地中海側に3体、アラビア海側に2体の対ゴジラ兵器が到達した中、地中海側が数の差でやや不利になる形だ。

 そんな状態でなお、ゴジラ達は一切の躊躇も怯みもなく、咆吼と共に眼前の敵へと突撃した。

 

 

 

 




戦闘描写は某氏のMMD動画 -GODZILLA 決戦機動増殖機獣- を大いに参考にしております
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