地下世界でのゴジラ、G1とのコミュニケーションによる協力関係の構築が期待したものより不調に終わったものの、ゴジラから送られた情報は極めて実りあるものだった。
1、ゴジラの知る限りの月人の存在と生態について
ヤチヨとかぐやとの交流と8000年分の情報を持つ彩葉からすれば既知だが、それを知らない又は彼女達の事情しか知らない者達にとって、客観的に纏められた月人の来歴やその生態は貴重な情報源であり、特に保有するナノマシン技術に関してはあの酒寄ロボ研ですらまだ実用段階には無いものだった(研究自体はしていたが)。
なお、これを閲覧した月人は恐怖で気が遠くなったし、ゴジラの知覚能力を改めて思い知らされた関係者は胃が痛くなった。
2、現在地球圏に接近中のギドラ由来と思われる彗星群の観測結果について
丁度半年後に到来する彗星とそれに付随する小隕石群内部に潜む怪獣やそれに相当する存在に関する概算データが記載されていた。
大まかな熱分布に放射線量、生体電磁気からの推測だが全長200mかそれ以上の大型怪獣が3体、100m級が200体という凄まじい軍勢がその中に潜んでいる可能性があった。
特に最も大きい反応に関しては全長400mを超える可能性があり、この反応こそが今回の侵攻勢力の頂点であると推測されている。
やはり関係者の胃は死んだ。
3、ゴジラによる同彗星群の迎撃方法について
月の影から出た時点でG0を除いた各個体が二体一組に分かれ、順にチャージした熱線を照射する事で間断なく攻撃する事が可能となっており、標的には優先順位が設けられている。
第一優先が先ず数を減らす事、第二に大型反応三つを優先する事、第三に減速無しの落着を防ぐ事。
宇宙から地上への宙対地爆撃や物量任せの攻撃は例え格下の怪獣と言えども脅威となる事からこの優先度となった。
また、大型反応三つに関しては現状ではG0以外での討伐は厳しいとされており、他の個体は格下の怪獣の撃滅、大型に対しては時間稼ぎを目標として動く予定との事だった。
月の影から出たならば、その時点で月以遠、具体的には火星圏だろうと有効射程距離なのだが、相手側が軌道変更で巧みに月の影から出てこないために撃てずにいる。
逆に言えば、月間近に来るまではその軌道は完全に予測可能であり、核弾頭の飽和攻撃を行うならば月の影にいる間に行うべしとの計算結果が記されていた。
なお、隕石群がどれか一つでも減速無しで落着した場合、氷河期を呼び込んだ隕石と同等の被害が予測されるため、可能ならば防ぐべしと追記されていた。
やはり(ry
4、月の裏の洗脳された月人達について
精神への外部干渉に関してはモスラ達の方が専門家であるため、そちらに対処を聞くべし。
ただし、具体的な洗脳に関しては精神薄弱状態の月人に麻薬の様な快楽信号を叩き付けて従えているらしいので、別の快楽信号や苦痛の信号を叩き付ければある程度は正気に戻せる可能性あり。
他にも多数の有用な情報が羅列されており、それらを纏め、解析し、裏取りするまで相応の時間が必要なものの、ざっと見ただけでもどれも現在必要か後にとても便利そうなものが多そうだとDr.サカヨリがお墨付きを出した。
「いやもう普通に会話して伝えてこいやぁッ!!!」
ヤッチョ、今年最大の渾身の叫びであった。
そんなヤッチョをかぐやと彩葉がまぁまぁと宥めながら、次にすべき事として今度はDr.サカヨリ一行は中東へと急行した。
ゴジラからの情報の最後の項目に、とある座標が記されていたのだ。
そここそ対ゴジラ兵器群の秘密工場、洗脳された月人と復讐者達の拠点の位置だった。
地下でゴジラ相手のコミュニケーション作戦で一緒だったAT部隊を護衛としたDr.サカヨリ一行が到着した時、中東全域は焼け野原だったものの、放射能やナノメタルによる汚染は消えており、洗脳された人間も一人も残っていなかった。
洗脳アプリを発動可能な機械も既になく、ネット上での拡散もヤチヨ達によって阻止され、現在の地上にはこの一行を害する脅威は存在しなかった。
「どう?何か分かる?」
「うーんと・・・電源入れれば復旧可能だね。防衛用の武装は全部壊れてるけど、スーパーモゲラの核融合炉から引っ張れば行けると思うよ。」
「こっちの大型宇宙船はどうするー?」
「中の人はどうなってる?施設復旧前に話付けられないかだけ確認しよう。駄目なら申し訳ないけど排除で。」
「りょかー。」
軍人達の護衛を連れ、一緒にいる月人達(増えた)と共に施設を探索した結果、大凡復旧には電源さえあれば問題なく可能である事が判明した。
寧ろ位置座標の情報元が敢えて壊さずに人類側へと渡るように仕向けたんだろうな、というのが関係者の一致した意見だった。
「で、洗脳された月人は?」
「何か洗脳解けてる。」
「デジマ!?」
「ごめんそのネタ分からない。」
「なん・・・だと・・・?」
インターネット老人扱いされたヤチヨが横になり、かぐやがそれをつつくという実質一人芝居しているのを傍らに、彩葉と月人達は何だこりゃ?と調査を続けていく。
結果、洗脳されていた月人達は大型宇宙船内で外に逃げ出す事も出来ずに追い詰められていたのだが、ゴジラからハッキングを受けたのだという。
抵抗するも敗北、身動きできない状態にされた後、自分達の状態を保存した上で大量のコピーを作り出されたのだという。
その後、彼らは目の前で死よりも悍ましいものを見せられ続けた。
目の前で自分と全く同一のコピーが生きながら実験体として消費され続ける光景をずっと見せられたのだ。
ある時は抵抗も出来ずに痛覚はそのままに細部まで解剖・解析された。
ある時はどの程度までの損傷に耐えられるのかと少しずつ破壊された。
ある時は部位毎にコピーして、後から繋げたらどうなるのか試された。
ある時は一部の情報を書き換えた場合、どの様な反応をするのか試された。
この時は一部の情報から徐徐に変えていった場合と全てを一気に変えた場合の比較も行われた。
ある時は複数のコピーの情報を掛け合わせた場合はどうなるのか、多数の組み合わせで試された。
ある時は、ある時は、ある時は、ある時は、あるときは、あるときは、arutokiha,arutokiha・・・
ナチスドイツによるユダヤ人への人体実験も斯くやの所業が目の前で自分のコピー相手に行われ続けたのだ。
しかも、量子演算機の内部という時間が超高速で過ぎ去る中での出来事なので、必然的にリアルのそれよりも遙かに長く、無限の様に続いた。
体感時間にして数年が経過し、全ての実験が終了した頃、ギドラによる洗脳は自然と解けていた。
ギドラによって植え込まれた服従への快楽信号よりも、ゴジラによって刻まれた恐怖が勝った故に。
過剰な快楽から極限の恐怖により解放されて呆然とする月人達に対し、ゴジラは告げた。
戦え でなくば滅ぼす
解放された月人達は一も二も無く各々の方法で従う事を表現した。
とは言え、外部との通信手段を遮断されていた彼らに出来る事は無かった。
そして現在、漸く外部と接触できた彼らは一も二も無く人類への協力を申し出た。
「だからそこまでするなら普通に喋れやぁコラぁッ!!」
ヤッチョ、今年最大の渾身の叫び(二回目)である。
とは言え、月人としてはこれに乗らない手は無い。
戦わなければ滅ぼすのなら、その逆もまた然り。
明らかに王が依怙贔屓している地上の人類に協力するのなら命は助けてもらえると分かり、切羽詰まっている彼らとしては協力するしか選択肢は無い。
こうして色々な事は置いといて、取り敢えず人類は月人との協力関係の構築に成功した。
結果、中東のナノメタル製造設備と未完成で残された対ゴジラ超重質量ナノメタル製決戦兵器を含む月人の最新テクノロジーを備えた要塞基地が手に入ったのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・
あのゴジラ達を相手に善戦したナノメタルと対ゴジラ兵器の製造設備とその技術者(なんと月在住!)を入手したという情報に、国連会議は疑問も多数あるも大いに湧いた。
それ位しか吉報が無かったとも言うが。
取り敢えず各々頑張って宇宙からの侵略者に備えようぜ!となった国連会議だったが、その後の各国の動きは統一されたかの様に俊敏だった。
即ち、「いろはえも~ん!何か凄い兵器出して~!」である。
米国が纏めていなかったら北米モナーク支部と酒寄ロボ研の電話線は各国からの問い合わせでパンクしていただろう。
何処も切羽詰まっているから仕方ないが、それはそれとして超忙しい超担当の邪魔を許してはならないと、関係各位が何とか押し留めた。
これらの問い合わせに対してDr.サカヨリはこう返答した。
「取り敢えず、一からナノメタル製の兵器だと効率悪すぎるし時間かかるから、既存のモゲラを大幅強化するプランで良いですか?概算だけど総合的に30%強化できますけど。」
なお、比較対象は米軍AT部隊に配備された最新仕様のスーパーモゲラⅡwithツインレールガン搭載型最新バックユニットである。
この機体は今までのモゲラ系列機が全て試作機とその完成形故に信頼性を最優先した仕様だったのに対し、積極的にDr.サカヨリの手によらない国内軍需産業開発の武装や機構を採用している特徴がある。
特に前腕部は五指のマニュピレーターから円錐型ドリルへと変形する可変式ドリルアームを採用、腹部に展開式のプラズマ砲、バックユニットは両肩にミサイルランチャーではなく大型レールガンを搭載する等、遠近共により攻撃的な仕様になっている。
内部にしても核融合炉の出力向上やOSの改良、間接部の強度上昇を実現しつつ機体本体の整備性の悪化は各部のユニット化により抑えられている等、正に超大国を支える軍需産業の意地を魅せた傑作機だった。
惜しむらくはそこまで頑張って改良したのに戦う相手に恵まれなかったせいで試作一体しか建造が許されていなかった事だが・・・現在は生産ラインが最大限稼働中である。
異星人?製の独特な無人?仕様の機体よりも既存兵器で運用ノウハウのある機体を強化した方が生産・運用する側にも都合が良い。
そう判断した各国は諸手を挙げて歓迎した。
なお、強化に必要なナノメタルの生産量の配布の割合に関してはいつも通り各国間で丁々発止のやり取りをする模様。
気持ちは分かるが、お前らホントそういう所だぞ(溜息)
「で、月人製の対ゴジラ兵器はどうするのですか?」
「んー、適性ある人がいたらそっちに任せて、いなかったらナノメタルに戻してモゲラの強化に使おうか。」
「是非我が国に任せてくれたまえ。必ず適性のある人間を見つけ出そう。」
あわや未完成で最後の一機の対ゴジラ兵器が解体の憂き目に遭いそうになっていた。
まぁ今は人類のためにナノメタルが1gでも多く必要なのだし、仕方ないね。
でも米国さんはそんな異星人?由来の最新技術の塊とか欲しくて堪らないから手を挙げた。
頑張って生き延びれば、それを解析するだけで一生食べていけるからね、当然だね。
なお、そんな凄い技術を持ってる月人達からしても、速攻でナノメタルを始めとした月人の技術を解析・吸収したいろPの出鱈目ぶりは驚愕ものらしく、ツクヨミに五感実装の他、ナノメタル無しで全身義体や核融合炉を始めとした対怪獣ロボット兵器の根幹を(モナークや米軍、軍需産業と共同とはいえ)築いた事にはドン引きしていた。
その人、実は怪獣関連の研究で他にも色々してるんで氷山の一角だと知った時の彼らの反応が楽しみである。
「所で、大深度シェルターはどうするの?地上に人いたら戦闘に集中できなくない?」
「申し訳ないけどそっちまでは手が回らないかな・・・。先進国なら兎も角、他までは半年じゃ何しても無理。」
なお、本業の資金稼ぎのために設計して生産・販売を外部の企業に委託した民間向け作業用パワードスーツやパワーローダーが重機の入れにくい閉鎖空間で大活躍した結果、少なくとも先進国ならギリギリ半年で完成させられる程度には作業が効率化した模様。
そんなこんなを経て、人類は来るべき日に向けて必死に努力を続けるのであった。
ゴジラ&人類連合軍 VS ギドラ率いる宇宙怪獣連合軍 ファイ!
副題 負けたら滅び、勝っても問題山積み