白亜紀からこんにちわ   作:VISP

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その34 月人の本気

 対ゴジラ超重質量ナノメタル製決戦兵器を入手した米国(生き残ってる国の中で一番余裕があるから)は即座にその乗り手足り得る人材を見繕おうとした。

 しかし、予定と違って大いに難航する事となった。

 

 機体に適合するパイロットが見つからなかったのだ。

 

 その機体の設計思想から対怪獣兵器としては現状破格の性能を持っているこの機体だが、その特殊な来歴と仕様故にモゲラのパイロットでは上手く扱えないというシミュレート結果が出てきたのだ。

 モゲラは純地球技術による信頼性を最優先した対中・大型怪獣用兵器であり、その役割はアタッカーよりも守りに寄ったヘイトタンクなのだ。

 操縦系統は基本AIによる補助有りの人間による遠隔操作で、特殊なシステムは採用していない。

 対する対ゴジラ兵器は基本ナノメタルの各種機能を前提とした性能最優先の対ゴジラ特化兵器であり、その役割は基本射撃戦で止めに近接戦闘を行うアタッカーだ。

 操縦系統は基本ナノメタルで機械化した生体CPUとAIによる無人機仕様で遠隔操作も可能だが、随所に特殊なシステムを採用している。

 

 うん、機体特性も性能も操縦性も違いすぎてそのままじゃ使えんわ。

 

 適性を持ったパイロット数名に機種転換訓練をみっちり行うとしても適性持ちがいないのでは話にならない。

 で、技術指導に来た月人と共に地球人類向けの改修が行われる事となったのだが・・・どうするべきかで揉めた。

 有人仕様に改装する事は問題なく可能だが、その最高性能を引き出すには人体に手を加える事が必要だった。

 人類の、地球圏の未来のためにどちらを取るべきか、上でも現場でも喧々諤々の論争となり、結論が決まらなかった。

 

 「それなら、オレが乗ります。オレならもう身体が機械化しても問題ありません。」

 

 現在、モナーク付きAT部隊に所属する一人のモゲラパイロットが立候補した。

 彼の名は榊晴夫元三尉。

 嘗ては自衛隊に所属していたが、へドラ事件で重傷を負い、重度の汚染の後遺症から肉体のほぼ全てを義体化した後にモナークへの派遣に立候補したというかなりの変わり種だった。

 現在は自衛隊を休職中になっている彼は表向きフリーであり、モナーク所属対怪獣部隊として活動後、現在はモナーク付きAT部隊に所属、量産型モゲラのパイロットとして活躍している。

 その全身義体から同チーム内ではメタルマンと徒名されているが、本人の実力と気さくさ、勇敢さから周囲との関係は良好だ。

 

 「良いのか?君の身体の8割近くが既に機械だ。ナノメタルと同化すれば全身が機械になる。」

 「構いません。全身義体となって活躍している人達だって社会にはもう大勢います。この状況になって今更オレだけが生身に拘る意味もありません。それに・・・」

 「それに?」

 「酒寄博士が言ってたじゃないですか。『機械だろうが生身だろうが、幸せに生きられる方が大事だよ』って。」

 機体担当の月人の言葉に、晴夫は胸を張って答えた。

 へドラ事件以降、全身義体技術は急速に普及を開始した。

 日米両国における量産体制の確立移行はそれは更に加速し、重度の傷病や後遺症等によって苦しむ人々にとって福音となった。

 同時に偶像崇拝を禁止する重度の宗教系テロリストからはDr.サカヨリは異端所か悪魔扱いであり、そうした人々は悪魔に魂を売った罪人だと非難されたが、日々怪獣災害で苦しんでいた人々がそれを聞き入れる事は無かった。

 そうした状況から、後の中東系テロリストグループには普段に増して厳しい視線が向けられ、後の惨劇に繋がる事となった。

 

 「それに乗ってない時の日常生活も問題無いんですよね?」

 「人体由来の機能は全て再現可能だ。飲食に睡眠、運動に性交渉含めて問題ない。」

 「改めて聞くと凄いですね・・・。」

 

 そういう事で、人類初のナノメタル化処置を受けた人物として榊晴夫の名が歴史に乗る事となった。

 

 「所で、こいつの名前ってあるんですか?」

 「対ゴジラ兵器では問題があるのか?」

 「運用目的が対ゴジラじゃなくなったじゃないですか。なのにこの名称は現状にそぐわないですし、愛称があった方が愛着が湧きますよ。」

 「理解した。しかし、我々にはその様な名称を思いつく事が出来ない。だから、これから乗る事となる君が決めてほしい。」

 「そうですか・・・・・・じゃぁ、こいつの名前はメカゴジラにしましょう。」

 

 その余りにも重過ぎる名前に、流石の月人も目を丸くした。

 

 「メカゴジラ。何故その様な名前にしたのだ?」

 「オレ達はあの王様にずっとおんぶ抱っこでした。産まれる前、ずっとずっと大昔から。」

 

 事実だ。

 有史以前、否、人類が地上へと進出する遙か以前より、ゴジラはモスラ・バトラと共に地球の生態系を守ってきた。

 地上人類が繁栄できたのは彼の王が地上を守り、地上人類を手厚く庇護し続けてきたからに過ぎない。

 現代に至り、漸くゴジラの戦いに助力が出来る程の技術力・軍事力を有したとしても、その事実は揺るがない。

 

 「だから、少しでもその恩を返して、追いかけるだけじゃなく、その隣に並び立てる事を目指す。その意思を示すために、こいつの名前はメカゴジラです。」

 

 成り代わるのではなく、並び立つために。

 一方的に守られる存在から、共に戦う仲間へと成るために。

 嘗てゴジラとの対話で聞いた通り、戦う意思ある者として、力を尽くして抗うために。

 

 「了解した。その意思に敬意を表し、これより本機体と系列機はメカゴジラの名称とするよう伝達する」

 「え?」

 

 この鹵獲した機体だけでなく、系列機も?

 それはつまり、この機体以外にも同型機が存在するという事だ。

 

 「現在、月内部の住民の避難及び改良したメカゴジラの量産を進めている。丁度半年後には避難完了後に50機のロールアウトを予定している。これが今現在の我々の全力だ。」

 

 驚異的な朗報が、地球勢力全体に伝えられる事となった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 元々、月人は理性的で穏健な種族だ。

 地球人類が肉体故に感情や生理的欲求に囚われる中、月内部という閉鎖的かつ過酷極まる環境の中で長年暮らして特段大きな問題も無く、緩やかに発展のみを続けてきた。

 それは肉体が無いからこその安定と繁栄であり、しかし肉体が無い故に今滅びの危機に有った。

 肉体という守りが無く、意思という抵抗力の無い月人の精神はギドラにとって容易く操れる駒でしかなかった。

 操られた月人は地球人類への敵対行動と共に初めてその存在を露わにし、現在は協力関係にあるが未だ水面下では警戒されていた。

 その事を月人も察していた。

 故に後の事も考え、こちらを明確に狙ってきたギドラから生き延びるためにも地球人類との共同作戦に臨む事としたのだ。

 勿論、幾つかのプランを用意し、同時並行で実行した上でだが。

 

 1つ、地下世界への退避

 一切の活動を停止し、圧縮データ化した月人達を地下世界へと退避させる。

 モスラの加護を受け、洗脳対策を施した所で月人が精神干渉に弱い事は変わりない。

 故によりモスラの庇護を直接的に受けられる場所へとデータを保存した媒体(外見は巨大なフォトニック結晶性の立方体)を設置してバックアップとする。

 

 2つ、地上世界での戦闘

 月人は電子生命体であるが故に、分身やコピーも思いのままだ。

 計算リソースを必要とするものの、ある種の不死性を持っている。

 モスラの加護を得た彼らはバックアップを地下世界に設置した後、月と地上に配置した全リソースを用いて対ギドラ戦を遂行する。

 この際、地球人類と違って消耗しきっても構わないので、積極的に前衛を担当し、ギドラ側の消耗とその戦力情報の解析を進める。

 こうした命がけの貢献を短命の地上人類は重視する。

 同じ釜の飯を食い、同じ向きで轡を並べる者を、人類は決して軽んじない。

 地球人類の習性・感情を頼りにしたものだが、有ると無しでは大きく違う。

 

 3つ、戦後の宇宙開発への協力

 宇宙からの脅威が明確になった以上、それに備える必要がある。

 人類は地球という揺り籠で暮らし続けるには増え過ぎてしまった。

 これ以上は口減らしの必要が出てくるため、新天地として宇宙に出なくばならない。

 月面への居住施設の設置許可を含め、全面的に協力する事を地球各国とモスラに表明し、戦後は技術者としての立場を確率する予定だ。

 

 4つ目、とある月人の時間遡行計画

 現在地上で活動中のとある月人と地上人の間で結ばれた因果/輪廻。

 月人側には未だ基礎理論しか無いが、既にこれの完成形があるのは把握しているし、持ち主とは情報交換済みだ。

 予定を前倒しする形になるが、地球圏の滅亡が確定した時点でこの両名を過去の8000年前に送り出し、次の輪廻にて地球圏の存続を目指した世界の構築を目指す。

 月人側からは過去へと送り出した後はあくまで要請しか出来ないが、両名の人格と能力を考慮すれば十分実現性のあるプランだ。

 同時に、この時間遡行が成功すれば地球圏8000年分の平穏が保証される。

 逆に言えば、このプランを実行するという事は即ち滅亡が回避不可能になった事を意味するため、実行は可能な限り避けるべきだろう。

 

 こうしたプランをそれぞれ独自に遂行する中、月人はその優れた科学技術を惜しみなく軍事力の整備に注いだ。

 それが対ゴジラ兵器を改良した対ギドラ兵器、通称メカゴジラⅡである。

 月内部に貯蔵されていたほぼ全てのリソースを用いた本機は肉体の無い月人が直接操作する仕様の極めて高性能な機体だ。

 基本的な機体構造やナノメタルは共通しているものの、中東での対ゴジラ戦のデータとゴジラより齎された過去のギドラ種のデータを元に大幅に強化している。

 先ずサイズを全高200mまで大型化、近接戦闘時のパワーや装甲厚の増大、運用可能なナノメタルの増大による自己修復能力と継戦能力の強化を狙った。

 ジェネレーターもより高出力かつ安定している新設計の大型核融合炉へと換装、搭載CPUもより大型かつ高性能なものへと交換された。

 搭載された武装類も主兵装がレールガンである事に変更は無いが、大腿部三連装副砲と背部VLSの他、各部にモゲラ系にも採用されている展開式ロケット弾ポッドやミサイルランチャー、姿勢制御用スラスターを追加している。

 また、重力反転装置を用いた機体の軽量化による機動性強化及び重量増加による近接時の威力上昇、重力変動の軽減なども以前よりも効率的かつ大出力で行う事が可能になっている。

 これによりギドラ種の引力光線等の引力・重力操作へとある程度は対抗できる。

 一気に100m級の大型怪獣相当の戦力、それも飛行可能かつ豊富な射撃兵装と近接兵装両方を持つとなればその有用性は計り知れない。

 尤も、これは本当に月人の持つリソースを限界ギリギリまで絞ったものなので、戦後は負けたら滅亡、勝っても発展は暫く無理という無茶苦茶をしたが故の虚勢だった。

 それでも地球の人類と王達と同じく、月人もまた決戦への準備を着々と進めていた。

 

 その裏で、一組の月人と地上人の再会があった事は多くの人は知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「久しぶりだね、彩葉。」

 「うん、本当に久しぶりだね、かぐや。」

 

 未だ時間遡行する前、8000年の時を過ごす前のかぐやと彩葉。

 本来ならばこの方法では再会できず、別たれるだけだった二人の再会だった。

 

 「老けた?ってかやつれた?」

 「当たり前でしょ。こっちはもうアラフォーよアラフォー。四捨五入で40歳なんだからそりゃ老けるし、最近は仕事ばっかで疲れてるわよ。」

 

 二人が出会ったのは203×年、とある安アパート近くの電柱での事。

 2051年現在、無理を言って休みを貰っての自宅で。

 致し方ない事情によって離別していた愛し合う二人は、今日漸く再会した。

 

 「事情は全部聞いたよ。ヤチヨが前の私だって事も、彩葉がどんなに頑張ってくれたかも。」

 「うん・・・」

 「ごめん、ごめんね。私、ヤチヨがいれば大丈夫だって・・・彩葉が凄い傷ついたなんて思ってなかった。」

 「それは本当に怒ってるし悲しかった。」

 「ごめんなさい!」

 「迷惑なんて・・・最初は思ってたけど、最後の方は全然思ってなかった。ずっと一緒にいたかった。」

 「うん、私も彩葉と一緒にいたかった。」

 

 ぎゅうぎゅうとお互いを抱き締め、止め処なく涙を流しながら、それでも二人は再会の喜びを分かち合った。

 

 「お帰り、かぐや!」

 「ただいま、彩葉!」

 

 滂沱と涙を流しながら、それでも満面の笑みを浮かべて、二人は漸く再会の挨拶を交わす事が出来たのだった。

 

 

 

 




この後、すっごくEx-Otogibanashiした模様

なお、ヤッチョは空気読んで外出してます
腹いせに通信爆撃(n億回目秒間168連打)してますがコラテラルコラテラル
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