白亜紀からこんにちわ   作:VISP

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その4 現代到達と彼の行いの余波

 ヒト種の繁栄は続いている。

 それが薄氷の上であると知らないながらも、彼らは知的生命体として成長を続けている。

 その様子を地底や海底、氷塊の中から穏やかに見つめている。

 我が身に課した使命も最近は地表の放射線が少ないがために減少し、ここ数百年はほぼ仕事が無い程だ。

 時折、地底より這い出してくる者達はそこから即座に叩き返すか、その場で処分できる程度には弱い。

 何時だったかのあのやかましいヒトメスの所にまで上がってきた棘の奴とは比べるべくもない程に歯応えの無い奴らばかりだ。

 だが、それもまた良い事なのだろう。

 知的生命体がその知性を開花させ、我々怪獣に対抗できるようになるには技術の研鑽が不可欠だ。

 地底か宇宙かはさておき、ヒト種が広まっていくには有用となるだろう。

 一時古代に流行った私を信仰する集団みたいに私の庇護下に入ろうとする者もまた出るかもしれないが、そうなったらそうなったで別に構うまい。

 

 『ヨッシャーオラーー!!スゲぇよ日本人!都市部ほぼ全部焼け野原からよくぞここまで復興できた!花丸100個あげちゃう!』

 

 それよりも目下最大の、というか割と8000年前からの悩みはこの通信爆撃してくる腐れ縁の事である。

 あれか、何か知ってたら教えてーとか言われて、ホイホイ日本列島全域の鉱物資源類の地表精査情報を与えた事が原因か、それか地底世界の概略図を教えた事か、それとも可能な限り被害を出さないように棘野郎を始めとした怪獣共をぶっ殺した事か、はたまたコイツの本体であるタケノコを海底から浜辺に持って行った事が原因なのか、コイツは本当に私にしょっちゅう通信爆撃をしてきやがる。

 通信切断をしようにも、こちらの分体と本体間の相互ネットワークにまでクラッキングしてくるものだから出来ないし、対抗電子戦をすると「遊んでくれるの!?わーい!!」とかほざきよる。

 お陰で何故か分体の数を増やしたり成長させるよりも脳と神経系の一部をサーバー化して電磁操作能力を大幅に向上させる必要があったんだぞあの馬鹿者!アホか!?

 

 『えー?どうせ暇してたんだし私の相手してくれても良くなーい?どうせ本体は北極なんだし、今の所動く予定も無いんでしょー?私が作った戦闘シミュレーションだけじゃつまらないんだしさー。』

 

 こちらが不服と苛立ちを伝えた際のあのメスの言い分がこれである。

 確かに資源情報の対価として渡された戦闘シミュレーションは有用だった。

 事実、棘野郎以降の地下より上がってきた連中を撃破するのに対象の大まかなデータ(サイズ・形状・特殊能力等)を入力すればそれを元に有効なモーションを作成、自動操作するプログラムは脳内でシャドーボクシングならぬイメージトレーニング(と言うには極めて精巧だが)はとても参考になった。

 そして直近の100年ほどは特に襲撃も無かった事からそのシミュレーションと各個体の成長位しかする事が無かったのも事実だ。

 特に本体は北極海の氷の下で滞留している太陽風エネルギーを吸収、これを自己の成長及び分体とのリンクを介しての供給に回しているため、迂闊に動かす事は出来ない。

 なお、この世界で地球温暖化による北極の氷が溶ける事象は起きていない。

 太陽風エネルギーを留め、地球環境を安定化させるには北極の巨大な氷床が必要なため、私が他の怪獣共から得た遺伝子情報を用いて入手した自然操作能力を用いて安定化させているのだ。

 

 『だからさー少しは私と遊んでもよくなーい?それといい加減話してくれてもよくなーい?』

 

 うっざ(8000年連続n億回目)。

 これだからこの馬鹿と会話等したくないのだ。

 というかお前、今忙しいんじゃなかったのか?

 ヒト種の技術発展を後押しするために色々していた筈だし、友人との再会の場を作る仕事もあるだろう。

 

 『う!?そ、それはまぁちょっと息抜きをですね・・・。』

 

 はよ仕事しろ。

 そんな感情がしっかり伝わったらしく、アホはがっくしと肩を落とした(という電子情報の映像を送ってきた)。

 

 『うぅぅ・・・分かりましたよー。仕事してきまーす。』

 

 こうして通信は切断され、私は再びの平穏を満喫したのだった。

 この数ヶ月後、馬鹿なヒト種の行った多数の核実験で地上で休眠状態になっていた怪獣共が目覚めるまでの束の間の平穏だったが。

 

 そう言えば怪獣、そう、怪獣だ。

 私の様な巨大生物の事をヒト種は怪獣或いはタイタンと呼び、私とその分体の事を「ゴジラ」と呼称するようになった。

 

 大戸島に残った伝承により名付けられたその名に、私の中の残滓の記憶が驚きと同時に納得を伝えてくる。

 二足歩行の恐竜に似た体型、鋭く薄青の背びれ、黒くケロイドに近い肌、口から発する熱線。

 何よりも怪獣達の中でも「王」と言われる驚異的な強さ。

 成程、言われてみれば確かに私こそがこの地球における生態系の王、怪獣王ゴジラなのだ。

 嘗ての残滓の記憶から恥じらいに近い、面映ゆい感情が湧き上がる。

 嘗て憧れた二次元の存在に自分が成り果てる等と、想定の埒外の出来事だ。

 同時にそれを何処か小気味よく感じている自分もまたあるが、賞賛とも畏怖とも言える呼称をあの無駄にプライドの高いヒト種が使うとは驚きだ。

 いや、私を信仰していた一団みたいな例外はいたが。

 ・・・まぁ、私がするべき事に変わりは無い。

 この星の生態系を保って生きていくために、脅威となるものを排除する。

 それは地下に追い遣られた怪獣や休眠状態になっている怪獣共、宇宙より飛来する侵略者共、そして今この星を蚕食しつつあるヒト種も例外ではない。

 脅威となるならば全て排除し、生態系を保つ。

 今も昔もこれからも、ただそれだけである。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 G細胞、というものがある。

 これは細胞小器官であるミトコンドリア固有のDNAを指しており、宿主が極限の環境下に入った時に初めてその効果を発揮する事が確認されている。

 何故ミトコンドリアが固有のDNAを持っているのか?

 細胞核のDNAとは異なるこれはミトコンドリアDNA(mtDNA)と言われ、親から子へと遺伝する。

 かつて好気性細菌が真核細胞に共生し、細胞小器官化したと言われており、これを共生起源説と言う。

 とあるサンプルを調べる内に、我々はこのミトコンドリアの真の姿と言うべきものを発見するに至った。

 アンギラス、と言われる怪獣がいる。

 アンキロサウルスと類似した外観を持っている事から名付けられたこれは全長約160m、推定体重6万tを誇り、現在発見されている怪獣類の中ではG0や白骨化したティアマットに次ぐ巨体だ。

 この怪獣のミイラ化した肉片(推定1200年前のもの)を調査した結果、その細胞からはミトコンドリアが発見されなかったのだ。

 正確にはミトコンドリアに相当する細胞小器官はあったのだが、現生生物のそれとは異なっている事が分かった。

 また、同時期のサンプルの一つは逆にほぼ全ての細胞がミトコンドリアの上位互換とも言うべき機能を持っており、他にも未知の機能を多数備えている事が分かった。

 この後者のサンプルこそがG、即ちゴジラの肉片から採取された細胞である。

 しかも検査のための放射線を照射した後、微生物の餌となる有機物の水溶液を与えてみた所、この細胞は活動を再開したのだ。

 更に同種の弱った細胞を捕食し、細胞分裂の再開までも確認された。

 5300年前の「アイスマン」から血液細胞が発見されたり、DNA分析で病歴や親族関係が判明した事例がある事からも決して不思議な結果ではないが、それにしても千年以上を乾燥した状態で過ごした上でのこれは呆れる程の生命力である。

 Gの調査で散々ド肝を抜かれてきたが、まさか細胞単位ですら驚異的な生命力を発揮するとは想像の埒外だった。

 さて、話を戻してGことゴジラの細胞と我々現生生物の持つミトコンドリアの類似だが、これだけなら嘗てからのウイルス進化説と共生起源説もあってそんな事もあるのだろう、と含む所はあれど流す事は出来た。

 だが、協力者Y・Rの発言により、我々が目を背けていた事実にある程度裏付けが取れてしまった。

 

 『そう言えばアイツさー、昔氷河期始まった頃に地球の生物が絶滅しないように海流に自分の細胞と熱を乗っけて世界中に流してたんだって。それで全球凍結だけは防いでたんだって。氷河期終わった頃には止めたらしいけど凄いよね。人力ならぬ怪力湯たんぽ。』

 

 この協力者Y・Rの発言により、我々はとある仮説を思いついてしまった。

 G、ゴジラが海流に自分の産出した熱と細胞の一部を流して地球を暖め、全球凍結を防いだ結果、当時の生物は辛うじて生き残る事が出来た。

 だがしかし、それは当時の生物がゴジラの影響下に入る事と同義だった。

 海中生物はゴジラの齎す熱と細胞の持つ豊富な栄養により生き延びた。

 この際、彼らはゴジラ細胞を捕食したのみならず、細胞単位で生き残っていたゴジラ細胞が生き延びるために肉体と融合、更に厳しい環境下でも生き延びていくために宿主に力を貸していく事となった。

 陸においても海洋生物を捕食、または遡上した鮭の様な魚類を捕食する事で生体濃縮された融合ゴジラ細胞を摂取する事となる。

 融合ゴジラ細胞持ちの生物を摂取した生物を更に他の生物が捕食、或いは死亡して微生物により分解される事で地上にも広がっていく。

 そこから更に現生生物用に必要な機能を取捨選択する形で進化した融合ゴジラ細胞、それこそが現在のミトコンドリアではないのだろうか?

 エネルギー生成、健康維持と老化抑制、熱生成、アポトーシス管理、そして緊急時の安全機能解除と多数の機能を持っているミトコンドリア。

 つまり、我々人類を含む地球上の現生生物は体内のミトコンドリアを通し、全てがGを遠き祖先に持っているという事になるのだ。

 

 我々は、どうするべきなのだろうか?

 あの神が如き存在に対して、我々に一体何が出来るのか?

 今日この日まで信仰を、主の実在を疑った事は無い、無いが・・・これは余りにも残酷な真実ではなかろうか。

 あぁ神よ、どうか(ここから先は赤黒く塗り潰されている)

 

 

 

 

 対巨大生物関連特務研究機関MONARCH所属のある自殺した研究員の未提出論文の一部より抜粋

 当該資料は666機密指定のため、特別クリアランス保持者しか閲覧できません

 

 

 

 

 

 




8000歳BBA「え、教えてほしいって言うから教えたら自殺した?えぇ・・・(困惑)」
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