白亜紀からこんにちわ   作:VISP

40 / 40
その40 USA!USA! 後編

 待ちに待った時が来たのだと、自らの愛機のコクピット内でパイロット達は歓声を上げた。

 敵宇宙怪獣の行った天候操作、それにより発生した巨大ハリケーンによって反重力推進を採用していない既存の航空機では危険過ぎて離陸させられない。

 更に空中には多数の敵怪獣が飛び交っており、制空戦闘仕様のUWAVでも既に何十機も撃墜される程の過酷な空だった。

 

 だが、それがどうかしたのか?

 

 彼らはパイロットだ。

 合衆国の、人類の、自分のために空に飛び、戦い、果てる覚悟を決めて今日まで訓練してきた者達だ。

 機体数や予算の関係から最新の反重力推進採用機への搭乗こそ逃がしてしまったが、彼らに負けないだけの力量は持っていると自負している。

 今既存機のパイロットをしている連中はどうしても合わずに機種転換に落ちた連中か、パイロットとしてはもう退役間近の者達だけだ。

 そんな彼らでは地獄の様相を呈する北米の空へと飛び立つ事は自殺行為に等しい。

 ギドラの作り出したハリケーンとそれを物ともせずに飛行するガイガン達。

 はっきり言って、一瞬の隙を作り出すために死んでこいと言っているに等しい。

 

 だが、それがどうかしたのか?

 

 彼らは最初から覚悟を決めて今日まで飛ぶ事を止めずに生きてきた。

 だから、今日もまた飛ぶだけだ。

 国のため、人類のため、仲間のため、自分のため。

 それ以外の理由もきっとあって、明日も生きていればそちらを優先する事もあるかも知れない。

 だが、今だけは、彼らは飛ぶ事を最上に置いていた。

 それでいて、彼らは若い奴らは置いてきた。

 先駆けは老兵の特権だと、ベテラン中のベテラン、退役間近の者達が自ら進んで出撃を立候補した。

 

 『漸く出撃だ。米空軍の意地を見せるぞ。』

 『目標は敵の司令塔個体、赤い奴だ。間違えるなよ。』

 『ゴジラさんが抑えてる今がチャンスだ。何機落とされても目標を撃破する!』

 

 こうして暴風吹き荒ぶ大空へと、巨大なアルゴと共に50を超える航空機が戦場へと飛び立った。

 その内訳はF-22のみならず、ステルスが意味が無いのならばと最新仕様のF-15も多数含まれている。

 飛び立って数分後、彼らは戦場の空へと到着、暴風と敵の攻撃で自らが落とされるのも顧みないで彼らはG7へと必死に対応しているガイガン・レクスへとミサイルを放った。

 第一波ミサイルが放たれる直前、レーダー誘導のための電磁波を感知した瞬間、G7はガイガン・レクスから初めて距離を取った。

 自分には当たった所でダメージにはならないが、自分を盾にする事でガイガン・レクスへとダメージにならない事を危惧したのだ。

 その動きの変化に何かに気付いたのか、ガイガン・レクスは内蔵されたセンサー系にて即時周辺を索敵、自らに迫る50を超えるミサイル群を察知する。

 即座に配下のミレース達に迎撃を命じつつ、回避行動のために自らも飛翔しようとして・・・G7が熱線の発射前の挙動を取っていた。

 それを見た瞬間、飛翔をキャンセルして地に伏せる。

 同時、三枚の背鰭が熱線の余波によって焼き切られる。

 熱線の回避成功による即死は免れたが、しかし、そんな死に体でミサイルを回避できる訳もない。

 彼方此方をゴジラとの戦いで損傷していたガイガン・レクスの側面、即ち横っ面へと次々とミサイルが着弾、その威力を存分に発揮した。

 

 KIYYYYY!?

 

 放たれたミサイルの弾頭は既に各国で一般的となった対大型怪獣用の特殊弾だ。

 通常よりも誘導製・運動性が低いものの、直進での加速性と大型化された本体に満載された新型炸薬の威力は航空機に搭載可能なサイズでありながら大型対艦ミサイルのそれに匹敵する。

 幾らガイガンが大型怪獣に比肩する性能を持っていようとも、損傷が累積した状態では本来の防御力を発揮しきる事はできない。

 おまけに衝撃を逃すための対ショック姿勢なども取る事が出来ない不意打ちでの直撃とあれば、幾らガイガン・レクスと言えども大きく体勢を崩し、横倒しになる。

 空かさず指令を受けたガイガン・ミレース達の反撃のレーザーにより、多数のミサイルと航空機が撃墜されていく。

 中には反転して再攻撃を試みようとする者もいたが、その動きよりもミレース達の方が早く、小回りが利く。

 レーザー砲か、或いはすれ違い様の鎌によって立て続けに撃破されるも、彼らはそれを含めて自らの仕事を果たした。

 

 今、ガイガン・レクスという目標が単体で孤立しているのだから。

 

 それを確認したG7が再び熱線の発射態勢を取る。

 目標は今死に体となっているガイガン・レクスだ。

 それを悟ったガイガン・レクスは横倒しの不安定な体勢のまま無理矢理飛翔を開始する事で回避しようとする。

 宛らUFO染みた様相だが、垂直に跳び上がるのではなく、水平に地上を滑走する様な動きによってG7の熱線の照射範囲から離脱しようとしたのだ。

 まぁそれだけやっても一射目は兎も角、二射目で終わりなのだがそれはさておき。

 

 『逃がさん。お前はここで終わりだ。』

 

 実際、成功していれば十分回避の目はあった。

 ガイガン・レクスの行動、ゴジラへと攻撃するのではなく耐えて避けて時折攻撃してヘイトを稼ぎ、時間稼ぎを選ぶ事を今までの行動から榊晴夫元三尉とメカゴジラ搭載AIは予測していた。

 故に、高性能だが火力が決め手に欠ける自分の乗機に出来る最高のタイミングで横槍を入れる事を決めた。

 地上に量産型モゲラ達に紛れる形で航空隊の一斉攻撃とほぼ同じタイミングで着陸し、頭部と脊髄、尾の全てを長大な電磁加速用レールへと変形させた砲撃形態となったメカゴジラさえいなけれれば、今暫くガイガン・レクスは生き延びられただろう。

 これはガイガン・レクスの判断ミスというよりも、宇宙怪獣側の対応力を大きく上回る戦力を事前に用意できた地球側の勝利だった。

 戦いは数だよ兄貴!と偉い人が言っているように、物量はとても大事なのだ。

 後僅かで照射可能範囲の外という所で、ゴジラ達の外皮と電磁バリアすら貫徹するメカゴジラのレールガンが放たれた。

 量子CPUによって高度に予測された弾道計算、そしてこれまでのガイガン・レクスの機動や推定出力から、背面の放熱ブレードを転用したその弾体は半ば吸い込まれる様にガイガン・レクスの頭部へと突き刺さった。

 メインカメラを破壊され、頭部に重篤な損傷を受けたレクスは即座にサブセンサーへの切り替えと再度周辺情報の取得を行った。

 だが、そのコンマ数秒の遅れで事態は既に手遅れとなっていた。

 ガイガン・レクスが最後に見た光景、それは自らを焼き尽くす熱線が放たれ、命中する瞬間だった。

 木っ端微塵にガイガン・レクスが吹き飛ばされた光景は各所で目撃され、同時にガイガン・ミレースの動きに乱れが生じ、連携の精度が大きく下がった。

 残敵掃討の好機到来である。

 

 『目標撃破!繰り返す、目標撃破!』

 『奴らの連携が崩れた!今なら巻き返せる!』

 『ペイバックタイムだ!畳み掛けろ!』

 

 こうして、北米の戦いもまた遂に地球側へと傾き始めた。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 戦闘機やUWAVを道連れにしながらも次々とガイガン達が打ち倒される中、ギドラは目の前の難敵から注意を外す事が出来なかった。

 強い。

 どう言い換えてもこれだけは絶対不変の事実だ。

 目の前の辺境の怪獣の一体は、明らかに自分よりも戦闘経験豊富で強い。

 こうして幾度となく戦いながら、未だにその手札の全てを出させる事が出来ていない。

 それも当然だ。

 ゴジラは進化する。

 その人類よりも遙かに膨大な遺伝子情報は元より、今現在進行形で進化を続け、引力光線への耐性をゆっくりとだが着実に高めている。

 事実、この戦闘の始まりよりも今現在の方が僅か一時間足らずでありながら確かに向上している。

 短時間で目の前の敵を殺すだけの実力を持っていなかった。

 ギドラの失策はその一点のみだった。

 それに気付いたギドラは自らの命を捨ててでもこの難敵を打ち倒す事を決意した。

 右の翼は切断され、満足な飛翔は行えず、多くの面で相手の方が上回り、エネルギーの消費もかなりのものだ。

 

 だが、それがどうかしたのか?

 

 皇帝によって救われ、忠を尽くす事を生涯の目的と定めたギドラに躊躇いは存在しない。

 ただ忠義と戦意のまま、眼前の強敵を打ち倒す事にのみ命を掛ける。

 

 さぁ、これにはどう対処する!?

 

 ギドラは引力光線のチャージを行い、発射・・・しない。

 そのまま体内で炸裂した引力光線のエネルギーは全身を駆け巡り、全方位へと放出された。

 ギドラによる引力光線版体内放射である。

 目に付くガイガン達を片付け、援護にやってきた戦闘機群は全方位に放たれた引力光線によって呆気なく木っ端微塵にされて壊滅した。

 その攻撃が命中したのはゴジラ、G2も一緒だったが、そちらには何の痛痒も無いと言わんばかりに熱線のチャージを開始した。

 それを見たギドラは今日の戦いでは一度も見せた事が無い程の俊敏性を陸上でありながら発揮し、一瞬でG2へと至近での格闘戦へと踏み込んだ。

 種は単純で、先程の引力光線の体内放射によって自身にかかる重力を無ではなく軽減し、これによって片翼が使用不能な状態ながらも機敏な動作を可能にしたのだ。

 熱線の照射圏内、その内側とも言うべき場所に入ったとはいえ、G2よりも遙かに大柄なギドラがそれで熱線を完全に回避できる訳がない。

 だが、左の首1本で致命傷を回避できるのなら安いものだ。

 重力障壁のみでは他からのエネルギー供給を受け始めたG2の熱線を防ぐ事は最早叶わない。

 否、それ以前にもう自分ではこの眼前の強敵を倒す事は最早無理なのだろう。

 既に周囲には敵ばかりで孤立状態、しかもその内一体はこれの同種とくれば敗北は必至だ。

 

 だから、こいつ一体だけでも道連れにしなければならない。

 

 彼方で戦う皇帝の負担を減らすためにも、こいつだけは倒さねばならない。

 感じ取ったエネルギーの流れから、こいつを倒せば皇帝や他の場所で戦う友軍への負担が多少なりとも減る事をギドラは悟っていた。

 故に殺す、何をしてでも、何を捨てても。

 再びG2へと組み付いたギドラは残った2本の首で相手に絡みつき、噛みつき、最早自分よりも遙かに膨大となったエネルギーを喰らわんと吸収を開始する。

 だが、その程度でG2が止まる訳もない。

 体重こそギドラが上だが、パワーに関してはG2が上だ。

 その上、今のギドラは引力光線の体内放射によって体重を軽減している状態な事もあり、容易にその身体を振り回されてしまう。

 残った左の首の根元と右の首の根元を掴まれ、ジャイアントスイングよろしく振り回される。

 残った二つの首と両の翼腕によって離れまいと踏ん張るが、ギドラがエネルギーを吸収するよりも外部から供給される量の方が遙かに大きく、G2を止める事も弱らせる事も叶わない。

 そのまま限界を迎えたギドラは放り投げ出され、その勢いのままに複数の高層ビルを突き崩し、盛大に地面を削りながら瓦礫の山へと全身で突っ込んだ。

 そこに空かさずG2が追撃をすべく熱線のチャージを開始する。

 と言っても、元は人口密集地の市街地で放射能火炎を発射するのは残留放射線を除去できるとは言え憚れるため、発射するのは荷電粒子ビームの方だ。

 瓦礫の山から舞い上がった粉塵、その中のエネルギー反応目掛けて荷電粒子ビームが放たれる。

 既に三桁近いガイガン達を葬ったその攻撃だったが、何と予想外の事が起きた。

 ギドラの展開する重力障壁、出力の差で最早G2の熱線を防ぎきれないと思われたそれが正常に機能、荷電粒子ビームを防御したのだ。

 とは言え、それは一度限りだ。

 G2から奪い取ったエネルギーを用いて重力障壁を本来の出力よりも高くして展開し、何とか防いだに過ぎない。

 次は無い。

 それを分かっているからこそ、ギドラは再びG2へと果敢に突撃を敢行した。

 翼を畳み、翼腕を構え、姿勢を低くしての突撃は先程よりも遅いがその分だけ威力は向上している。

 同時に引力光線のチャージも行っており、一度限りかつ極短時間ならG2の熱線を相殺できるように。

 そうして組み付き、再びエネルギーを奪い、少しでも長く戦い、そして最後には奪い貯め込んだエネルギーで引力操作を暴走させて自爆するように。

 そうして起きるのは超局所的な重力崩壊からのマイクロブラックホールの生成だ。

 自分の質量すら生け贄に捧げた一撃ならば、星諸共この強敵を打ち倒す事が出来る。

 そして、そんな状況下でも自らよりも高い重力操作能力を持つ皇帝ならば生き延びるだろう。

 だが、その狙いの大枠はG2も気付いていた。

 こいつは最早自分に勝つつもりは無い、否、勝てる見込みを失い、道連れにするために戦っている。

 そんな奴に何時までも付き合ってやるつもりは無い。

 だからとっととぶっ殺す事にした。

 元より相手は宇宙からの無法な侵略者であり、容赦は微塵とて必要ない。

 G2もまた姿勢を低く、ギドラよりも更に低い四足に近い態勢となって正面から駆け出した。

 同時、その背鰭が熱線のチャージを表して青白く光り輝く。

 だが、口内からも体表からも発射される事は無い。

 

 両者の突撃、その衝突の寸前、G2は地に両腕を突いて前転した。

 

 正確には、前転する様に身体を丸め、そのまま全身を回転鋸が如く回転させながら前方へ向けて突撃した。

 奇手も奇手、シミュレーター上では幾度となく行ったが実戦では初使用となる回転体当たりである。

 ゴジラ達をして強敵と言える怪獣界のラーテル枠こと暴竜アンギラスの得意技、身体をボールの様に丸めて突撃するアンギラスボールのゴジラ版である。

 この時、回転速度に突撃速度、進行方向の安定のために局所放射を用いる事でより強力なものに仕上がっている。

 しかもこれ、ただの回転アタックではなかった。

 突然のG2の奇行にギドラは咄嗟に残った右と中央の首を左右に傾けて回避した。

 それは今日においても幾度か光線を回避するために行った挙動であり、実際にその度に回避に成功していた。

 この成功体験から来る咄嗟の行動がよくなかった。

 惜しむらくはこれが光線ではなかった事、何よりG2がギドラの行動と思考を見越してその回避行動時には敢えて熱線を当てなかった事だった。

 ゴジラ達の技の一つにプラズマカッターというものがある。

 電磁操作能力の応用であり、尻尾の先端を帯電させプラズマ化した尻尾を高速で振り抜き、強力な衝撃波と長さ500m以上のプラズマの刃を発生させることで広範囲を攻撃する技だ。

 G2のアンギラスボールに対し、ギドラが咄嗟に回避行動を取った時、長い首を左右に、身体を真下へと逃がした、逃がしてしまった。

 この瞬間、G2の尾の先端は既にプラズマ化していた。

 ギドラの回避軌道を確認した瞬間、G2はプラズマカッターを発動した。

 通常とは異なり、高速の回転運動によって発生した長大なプラズマ刃はそれ以上の回避行動を取る事も出来ないギドラに対し、通常の熱線以上の貫徹、否、切断力を持った一撃となって襲いかかった。

 その威力、範囲たるや、後の調査で判明した事だが僅か数秒しか発生しなかったと言うのに地下1km付近まで切り裂かれていた。

 それをギドラは発動の瞬間を捉える事が出来なかった。

 気付いたのは、その巨体を正面から左右に両断された時だった。

 

 K・・・KYIIIIIIIIIIIII!?

 KYIIIIIIIIIII・・・!?

 

 左右に別たれた二つの首がそれぞれお互いの顔を見合わせ、激痛と混乱によって悲鳴を上げた。

 何とか必死に身体を元通り繋げようとするのだが、その再生は遅々として進まない。

 何せ超高熱のプラズマ刃による斬撃である。

 傷口は通常と異なり完全に炭化した状態であり、繋げるにはその部分を刮ぎ落として接合し、肉体の再生を待たなければならない。

 完全な復活にはそれこそギドラの優れた再生能力を加味してもどれだけ掛かるか分かったものではない。

 そして、そんな時間は永遠に訪れない。

 ギドラ達の背後、そこにはアンギラスボールとプラズマカッターの複合技から復帰したG2が熱線のチャージを終えた所だった。

 

 GYAWOOOOOOOOOOOON!!

 

 咆吼に気付いて振り返った時、2頭となったギドラ達へと極大の熱線が叩き込まれた。

 これにより、北米での戦いもまた地球側の勝利で終わるのだった。

 これで何とかなった、と米軍や関係者がほっと胸を撫で下ろした時、彼らの元へと凶報が届いた。

 

 『こちら極東戦線!敵の攻撃凄まじく損耗率30%に到達!誰か頼む、支援を要請する!』

 

 最後の人類側の戦場たる極東戦線にて、壊滅しつつある自衛隊及び在日米軍からの救援要請が届いたのだ。

 

 




アンギラス(後方師匠面)
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