ちょっとイベントや仕事が立て続けだったので執筆の余力がありませんでした
体内に貯蓄された核物質を圧縮して解放、核エネルギーを直接口から放つ放射能熱線。
電磁操作能力を用いて電気を帯びた周辺の粒子を劇的に加速して体外から放つ荷電粒子ビーム。
通常、この二つのゴジラの必殺技は適宜使い分ける事はあっても、同時に使用する事はこれまで無かった。
何故なら、片方だけでも十二分に強力だからだ。
今日に至るまで、ゴジラのこの二つの技の他、体内放射やプラズマカッター、超振動波攻撃に超熱波攻撃、そして絶対的な物理防御力を誇る非対称透過シールド(通称電磁バリア)によって、そんな事をせずとも勝ってきた。
だが、ここにきて遂にその封が破られる時が来た。
幾度も地球へと飛来し、その度に大量絶滅を引き起こしてきたギドラ族、その皇帝の襲来である。
幸いにも嘗て無い程に文明を発達させた人類と迎撃すべく永い時を掛けて進化と増殖を繰り返したゴジラ達の奮闘によってカイザーギドラ率いる軍団は当の皇帝を除いて討ち取られた。
だが、ここで気を抜いてはいけない。
最古のゴジラたるG0とカイザーギドラ、この二体は単体でそれ以外の地球上の戦力全てを蹂躙するに足る力を持っている。
ここでG0が負ければ、手負いで消耗しているとは言えカイザーギドラによって地球が滅ぼされかねない。
故に、ここで確実に滅ぼさねばならない。
自分の生において初めてであろう限界を超えた死力を振り絞るべく、G0は自身の生存を度外視した攻撃を行う事を決めた。
口内から放たれた放射能熱線が、その射線上に存在していた解放直前の荷電粒子に命中する。
同時、放射能熱線に荷電粒子が絡みつく様にして、限界を超えた一撃がカイザーギドラ目掛けて発射された。
言わば複合熱線と言えるそれは、大気圏に着火してもおかしくない程の出力を以て放たれた。
その光は青でも赤でもなく、紫でもない。
ただただ極光という他ない、混じりけの無い純白の光が伸びていく。
その一撃の発射を阻止できなかったカイザーギドラは再攻撃をせず、防御に徹するべく残った全てのエネルギーを重力障壁の維持へと注ぎ込んだ。
当たれば死ぬな
恒星に比肩するのではないかと疑う程の膨大なエネルギー量を前に、しかし皇帝は勝ちを確信していた。
重力という万物に干渉し得る力を用いて構築された障壁は、ゴジラの必殺の一撃を確かに受け止めていた。
とは言え、万全ではない。
余りのエネルギーの濁流により、普段ならば全身を覆っている重力障壁を首と胴体といった損失が致命打に成りうる部位に限定せねば貫かれてしまう。
結果、何とか受け止めてはいるものの、両翼は瞬時に蒸発した。
このままでは重力障壁を展開するだけのエネルギーも尽き、何れ全身が消し飛ぶ事だろう。
だが、何時まで体が保つ?
恒星と見紛う程のエネルギー等、幾らこの強敵が強くとも放ち続けるには限界がある。
エネルギーそのものは外部からの供給もあろうだろう。
しかし、それを収束して放ち続ける肉体は限界に近い。
極光の向こう側で分かりづらいが、皇帝はG0の肉体の限界が近い事を永きに渡る闘争の経験から察していた。
そして、それは事実だった。
他のゴジラ達から供給されるエネルギーに加え、地球の核から汲み上げるエネルギーを一度に受け入れ、増幅し、収束し、放つ。
地球上のあらゆる物質が瞬時に蒸発するだろう圧倒的エネルギーを限界を超えた出力で放ち続けるという、敵には滅びを、自身にも絶大なダメージを与える諸刃の剣。
この技は正しくゴジラ自身の限界を超えた技だった。
それが分かるが故に、ギドラはこの一撃が途絶えた瞬間に即座に反撃に移る腹積もりだった。
構わない。
だが、G0は躊躇わなかった。
この星の王として、守護者として迷わなかった。
これで自分が死んでも、他の個体が役割を引き継ぐと分かっているから、その行動には微塵の逡巡も無かった。
10秒、全身が内側から白く発光し、排熱限界に到達した。
20秒、排熱機関である背鰭が徐々に融解していく。
30秒、背鰭が完全に融解、爪も溶け始め、全身の各所からエネルギーが漏出し始める。
40秒、全身の各所で皮膚が溶け出す。
50秒、左顔面からエネルギーの過剰漏出により爆発、左眼球が破裂し、左顔面の骨が露出する。
当たれば地殻を両断し得る超高出力の熱線が、途切れる事なく照射され続けている。
当たれば、皇帝と雖も死は免れない。
だからこそ重力障壁に全力を注ぎ続けている。
エネルギーでいえば、外部供給を受けているG0が勝り、何れエネルギー切れで重力障壁は消えるだろう。
しかし、ダメージレースでは凄まじい勢いで自傷し続けているG0が遥かに不利だ。
このままで間も無く自爆という形でG0は息絶える。
それが分かるからこそ、皇帝は焦らない。
何れこの強敵は力尽き、自らの勝利が確定すると理解していたから。
だが、それは間違いだった。
G0が、ゴジラが目指す勝利は地球とそこに住まう生態系の防衛という戦略上の勝利であり、対してカイザーギドラの勝利は極個人的な闘争でのそれを指す。
前提が違うのだ、最初から。
構わない。
脳髄すら煮え滾る寸前の有様で、それでも未だG0は熱線の照射を緩めない。
60秒、遂に全身が巨大な松明の様に燃え上がり始めた。
それでも、それでも、熱線の照射は止まらない。
馬鹿な
それを見て、皇帝の心中は驚愕で満たされていた。
道連れを図り、自爆してきた輩は幾度となく見てきた。
しかし、その全てが自分に届く事は無かった。
圧倒的な自力の、種族としての、個体としての格差と知能、経験の差。
それ故に永劫に永くカイザーギドラは銀河系を旅し続けてきた。
だが、自分に近い、否、ほぼ互角の相手からの道連れのための自爆技はこの皇帝をして経験は無かった。
それ以上に、勝負ではなく試合としての勝利を優先するという行動が理解できなかった。
馬鹿な
この星処か、この恒星系全てを蹂躙してもなお足りない自分に匹敵する程の力の持ち主が、たかが一つの星の生命を守るためだけに全てを投げ出す。
その献身が、皇帝には理解できなかった。
それはそうだろう。
宇宙を渡り、星の生命を蹂躙し、食らい尽くす捕食者のギドラ族とあくまで地球に住まう一個の生命体に過ぎないゴジラ達とでは価値基準も生態も何もかもが違う。
極端な例だが、蝗害のイナゴと農家が如く、二体は何処までも分かり合うことは無い。
馬鹿な!
遂にカイザーギドラの重力障壁が消えようとしていた。
その生命を、総身を燃やし続けながらもG0はその好機を見逃さない。
残った右目に未だ尽きぬ戦意を湛え、それまで以上に熱線の出力を向上させていく。
自分は死ぬ だがお前も死ね
馬鹿な!?
自らの内から総身を焼きながら、それでも放たれ続ける熱線が遂に皇帝の玉体へと届いた。
それでも生き足掻く皇帝は重力障壁の範囲を更に狭め、少しでも長く生き残るために障壁を維持し続ける。
だが、それは先の見えた悪足掻きに過ぎない。
圧倒的なエネルギーの濁流に呑まれ、その巨体が末端から徐々に蒸発し、小さくなっていく。
両翼は既になく、尾も消し飛び、威厳ある下半身も溶けていった。
そして軽くなっていく体では足の踏ん張りも利かず、遂には濁流に流される小枝の様にカイザーギドラの残った上半身は地面から離れ、宙へと押し流されていく。
地球史上例を見ない程の高出力のエネルギーの奔流に乗り、上半身だけとなったカイザーギドラは徐々に蒸発しながらも遂には中東を超え、一直線に空を駆け上がっていく。
対流圏、成層圏、中間圏、熱圏を十秒すら掛けず、遂に宇宙へと送り返されたカイザーギドラだが、最早何かをするだけの余力は無かった。
皇帝はもう中央の首を残して、全てが蒸発していたからだ。
なるほど…
全てが蒸発する前、最後に残された僅か数秒の間に、皇帝は最後の最後、乾いた雑巾を更に絞るが如くその力を絞り出しだ。
そうして絞り出した力でやったのは、テレパシーだった。
何の悪意も恐怖もなく、ただ穏やかな心持で言葉を送った。
おまえ の かち だ
それが勝者として蹂躙の限りを尽くすだけだった皇帝の、最初で最後の敗者として勝者を称える言葉だった。
同時、月軌道上で複合熱線のエネルギーが炸裂し、発生した強力無比な電磁パルス及び放射線により、何とかまだ生き残っていた衛星軌道上の人工衛星群は壊滅した。
地球の生命体は生き延びる事に成功したものの、宇宙開発やら通信産業関係者やらは絶望と喜びの二重奏で全員がぶっ倒れる事となった。
……………
『総員、状況終了。速やかに人員の救助と治療に当たれ。』
辛うじて生き残っていた海底ケーブルや地下通信網を用いた通信を聞き、欧州・極東・北米に展開していた各軍は負傷した仲間を助けるべく忙しなく動き出す。
戦いは辛うじて地球側が勝利した。
しかし、犠牲はトンでもない事になっている。
人的被害は想定内だが、被害額は算出すら不可能だと計算前から分かる。
先進国が被害の中心だったとはいえ、迎撃しきれなかった隕石の破片の落着やそれによる津波被害の他、G0の熱線の余波による大気圏の熱量上昇に生態系が完全に死に絶えた中東の今後など、考える事は山積みだった。
しかし、人類は、地球は、間違いなく勝利し、生き残ったのだ。
それを噛み締めながら、人々は新たな明日を生きようと…
『待って!まだ終わってない!』
それを遮る様に、人類の至宝たるÐr.サカヨリが声を上げる。
『酒寄博士?一体何を…』
『ほ、報告します!た、太陽が!?』
突如、太陽が黒く染まった。
本来起きる時期を大きく逸脱した皆既日食。
これだけならまだ未知の天体現象だろうと思うそれ。
だが、問題は地球全土から肉眼でこの現象を観測できるという事だった。
まだ夜だった場所を含めて、全ての人々の視界に皆既日食で黒く染まった太陽が出現したのだ。
だと言うのに、カメラ等の電子機器は普通の、いつも通り時間そのままの空を映し出している。
一部の例外を除き、誰もが頭を傾げる中、そんな人々の耳に奇妙な音が届いた。
KYIIII KYIIIIII KYIIIIIII
戦いはまだ、終わっていない。
皆さんお待ちかねの怪獣が登場です
存分に絶望してね❤️