白亜紀からこんにちわ   作:VISP

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その8 世界の現状と出会い

 203x年現在、世界各国は頭を抱えていた。

 

 原因は無論、怪獣災害についてである。

 雨後の筍とは言い過ぎだが、尽きる事なく現れる大小無数の怪獣達への対応は世界各国の持つあらゆるリソースを削り続けていた。

 小型の個体でも十二分に人を殺傷できるし、未知の毒物やウイルスに病原菌、バクテリアなどを有している場合も多く、例え撃破に成功した所でその処理には細心の注意を払わねばならない。

 中型ですら確実な撃破を期すには軍の一方面軍を投入する事態である。

 遠距離からの飽和攻撃で片付くならばマシな方で、うっかり都市部に出現したり、高度な飛行能力や潜水能力を持っている場合は投射できる火力が大幅に減ってしまうため、その撃破にはとても苦労する。

 大型ならば下手しなくても国家の危機である。

 なにせ大型怪獣と来たら戦車砲は勿論の事、対艦ミサイルや航空爆撃もまるでダメージにならないのだ。

 一応バンカーバスターの類いが直撃すればかなりの有効打になる事も多い(絶対ではない)のだが、元々地下施設を想定しているために動体目標に当てられるようなものではないし、そもそも持ってるのが米軍だけで在庫にも限りがあるし値段もとてもお高い。

 最近は改良型のMOPⅡが発表され、ある程度動体目標にも命中するように高性能な精密誘導装置を搭載した上で炸薬量も増やしたのだが、当然ながらコストと生産性は悪化してしまった。

 しかも運用可能な航空機がステルス戦略爆撃機B-2若しくは戦略爆撃機B-52Hのみであり、勿論米空軍しか採用していない超と付く高級品(B-2に至っては超弩級と言っても良い)である。

 しかもBー2はその機密性の高さから米国本土にしか離着陸せず、Bー52Hも本土以外だと基本的にオーストラリアと日本の在外米軍基地でしか運用してない。

 情勢を鑑みてソ連崩壊後に結ばれた第一次戦略兵器削減条約(START I)に基づき廃棄され、野晒しとなっていた365機のB-52を復活させられないかとする動きもあるが、流石に半世紀近く野晒しとなっていた機体を復活させるのはほぼ新造するのと変わらないという答えが返ってくるだけだった。

 なので、大型怪獣を撃退も誘導も出来ない様な国は高いと分かっていても米国に頭を下げて大金を支払い、どうかこれが有効でありますようにと祈りながら戦略爆撃をしてもらうしかないのだ。

 勿論、復興費用や解体費用等はまた別である。

 そんな訳で大型怪獣撃退できるのは兵器や予算の関係で先進国の中でも一握りだし、大型怪獣の中でも更に上澄み(例:ゴジラやそれにある程度対抗可能な個体)を相手にしてはもう何処も無理なので攻撃する事でヘイトを稼いで誘導するしかない。

 しかし、繁殖や摂食行動といった明確な行動目的のある個体はそれを優先するため、必ずしも誘導できる訳では無い。

 下手な小国ならば大型の怪獣が国土を歩き、そのまま立ち去った所で復興出来ずに財政破綻、最悪首脳陣全滅からの亡国も有り得る。

 

 そして中型以降の怪獣は早期決着が望めない場合、ほぼ確実にゴジラが出現する。

 

 地上世界のほぼ全てを自身の縄張りとして定義している全8体、G0~G7とナンバリングされたゴジラ達は縄張りに出現した怪獣に対し、決して容赦しない。

 時折ゴジラの存在に気付いて戦意を失い、αコールに応じて地下世界に戻る怪獣も存在するが、大抵の場合はそのまま戦いが始まる。

 そうなるともう周辺への被害なんて微塵も気にしない大怪獣バトルの開始である。

 そうなった場合の被害は推して知るべし。

 事実、フランスに出現したワーバットの番いと北欧のフィヨルドから出現したゴジラによる戦いはパリ市街を派手に焼き尽くし「パリは燃えているか」を現代で発生させる事態となった。

 そんな事態を回避するため、各国は全力で怪獣災害への対策を入れている。

 勿論、世界初の専門機関であるモナークも研究と対策を行っているのだが・・・何処も決め手に欠けている。

 結論としては現状、如何に素早く怪獣の初動をキャッチし、被害を減らすための行動を迅速に行えるかが焦点となっている。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 酒寄彩葉は限界だった。

 三連休を前にして何とか学業(全科目トップ)とバイト(生活費と学費のため)と推し活(心の癒やし)のために限界ギリギリで卒倒数歩手前でタップダンスする日々、何とか塒のアパートへと帰ろうとしていた時、遂に出会ってしまったのだ。

 

 もと七色に光るゲーミング電柱に

 

 「は、なんだ幻覚か・・・。」

 

 過労の末の幻覚かと思った彩葉は無視して立ち去ろうとするのだが、そうすると態とらしくこちらの気を引くように竹製っぽい取っ手が生え、ガスを噴出し、音を立ててたった今電柱に出来た扉が開き始めたのだ。

 

 ガコン!

 

 思わず無表情でそれを閉じた彩葉はさっさと立ち去ろうとするも、再び扉が開き始めた。

 またも閉めようとするが、無理矢理開いていくドアに諦めた彩葉がそのドアの中身を見ると・・・

 

 「・・・赤ちゃん?」

 

 可愛らしい赤ちゃんがこちらを見て笑いかけていた。

 ドッと彩葉の全身から脂汗が流れ始める。

 自分一人の事でいっぱいいっぱいのキャパオーバー、水面張力ギリギリの状態の彩葉にとって、赤ん坊を拾うなんて特大のリスクはとてもではないが冒せない。

 だがしかし、ここで行き場の無い見るからに怪しい赤ん坊ですら何だかんだで拾ってしまう善性の持ち主が彩葉という少女であった。

 

 そこからはもう怒濤の日々である。

 

 泣き喚く赤子の世話で隣人からの初めての壁ドンを体験しつつも、彩葉は未経験ながらも何とか子育てを続けた。

 同時に何とか乾いた雑巾を絞るが如き思いで絞り出した貯金が瞬く間に減っていく事に涙しつつも、辛うじて子育てを続けていた。

 そして幸か不幸か、彼女の拾った赤子はやはり普通ではなかった。

 ものの数日で赤子から幼女、そして少女にまで育ったその子供はかぐやと名付けられ、彩葉に多大な迷惑を掛けつつも周囲との交流もあって、順調に健やかに成長していった。

 

 かぐやが月から地球へと来訪した瞬間からずっと観測され続けている事に気付かぬまま。

 

 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』

 

 普段の騒がしさなんて微塵も感じさせない不気味な程に静かなまま、月見ヤチヨはじっと各種観測装置で彩葉とかぐやの住む安アパートの周囲一帯を観測し続けていた。

 まぁ8000年ぶりの推しと過去の自分の交流という彼女の人生において最も尊い光景を生で見て記録し続けているのだからそりゃまぁそうなるのも分かる。

 なお、普段のツクヨミの管理人としての仕事はAIとFUSHIにぶん投げである。

 

 (真剣過ぎて怖。)

 

 一方、偶々その様子を眺めていたゴジラはただただ引いていた。

 気持ちは分からんでもないがドン引きである。

 基本暇な時の事の方が多い彼にとって、一つの物事や人物に全身全霊の愛情と執着を注ぎ込む姿は情報として理解できても本当の意味で共感する事は出来ない。

 出来ないが、それを邪魔しない程度には空気は読めている。

 まぁ誰だろうと瞳孔ガン開きで普段の騒がしさをかなぐり捨ててジッッッッッッ!!と彩葉達を見てるアレを邪魔する程命知らずじゃないとも言える。

 物凄い湿度と重力が発生してるように感じるし、何だったら仕事を任されてるFUSHIは積極的に請け負って逃げた様にも思うがそれはさておき。

 

 『彩葉ぁ・・・・・・♥』

 

 湿度通り越して湿地帯になり始めたヤチヨから視線を離したゴジラはとっとと通信を切った。

 あの人型呪物になりつつある電子生命体は放っておいて、考えておくべき事があったからだ。

 月人という月に住まう電子生命体の存在だ。

 以前からかぐや基ヤチヨからの情報で知ってはいたが、ここまで高度な技術を持っているとは思っていなかった。

 月から出発する際はタケノコ号の様な宇宙船を用いるものの、ほぼ電気エネルギーのみを用いて地球に降り立って移動し、現地の環境に最適な肉体を構成し、人類社会に溶け込む事が出来る。

 本人らの知能や性能も現地人に比べて高く、その気になれば何時でも何処でも出現できる。

 驚異的と言って良いだろう。

 幸いにも侵略などを行うような精神性を持っていない事から、ゴジラにとっての敵となる可能性も低い。

 しかし、その技術力は本物だ。

 何なら物理的な攻撃には現状無敵と言っても良い電磁バリアへの対策も彼らならば簡単に講じてしまうだろう。

 そうなれば本体は兎も角、分体の多くは討ち取られる可能性が高い。

 

 (警戒は必要だが、こちらからの手出しは厳禁だな。)

 

 何時の世も、追い詰められた者程危険なものは無い。

 月人もまた同じで、下手な手出しは互いの破滅を誘う可能性が高い。

 故にこそあちらから手出しされるまではこちらからの手出しはしない。

 月人もまた、古来より地球を観測し続けていた関係で積極的にゴジラに手出しするつもりはない。

 下手すると月そのものを崩壊させかねない超抜級の生命体にちょっかいをかける程月人は愚かではない。

 寧ろ知的生命体としては賢明な部類の月人はかぐやがゴジラを刺激してしまわないかを恐れてもいた。

 多少の事ならば受け流せるゴジラだが、明確に縄張りを侵害し、自らを攻撃する者を許す事は無い。

 そういう点で言えば、ヤチヨの存在はかぐやのやらかしを阻止するうってつけの存在だった。

 故にこそ、月人もまた彼女らの因果に囚われつつも利用していると言える。

 

 

 

 怪獣災害こそ続いているものの、決定的な破滅は未だ起こらず、辛うじて情勢は安定していた。

 誰もがそれは薄氷の上のものだと気付きながらも、決定打を持っていないが故に誰も何もアクションを起こさない。

 そんな奇妙な安定は暫くの間続く事となる。

 

 




世界経済「た、たすけ・・・!」
米「ぜぇぜぇ・・・!」
仏「」
中国「やべぇよやべぇよ」
露「死ぬ!死んでしまう!」
欧州(誰も音頭取れなくて踊り中)
日本「おぉ、もう・・・」
月(気配消しとこ)
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