白亜紀からこんにちわ   作:VISP

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その9 いろP覚醒&昭和最凶怪獣

 たった数ヶ月、たったそれだけの瞬きの間で月の姫はツクヨミにその人在りと相方のいろPと共にトップライバーの一角としてその名を轟かせ、そして流れ星の様に早く、その名の通り月の姫の様に月へと帰って行った。

 

 「こんなままで、終われない・・・ッ!」

 

 その喪失は、遂にとある少女の覚醒を招いた。

 酒寄彩葉

 音楽家の父と弁護士の母を持つ、今はまだ芽吹く前の将来の天才。

 世紀の大天才、人類史上の特異点と将来呼ばれる彼女は漠然とした言語化できぬ勘のまま、ツクヨミの管理人たる月見ヤチヨを探した。

 もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら

 そんな普通ならば有り得ない可能性に突き動かされ、感覚のままに彼女は遂に突き止めた。

 自分が推して止まない人の、その正体に。

 FUSHIに案内されるまま、彼女が辿り着いたのはとあるマンションの一室だった。

 水槽の中に安置され、配線に繋げられた金属製のタケノコに酷似した何かによって管理されている仮想空間ツクヨミ。

 そして、その一室でツクヨミに入った時、彩葉は自分の直感が正しかった事を教えられた。

 

 「キラキラのかぐや姫は今、もうお婆ちゃんです。」

 

 自身を以前とは見る影もなく変わり果てたと自嘲し、泣いている愛する/推している人の姿に、彩葉は改めて覚悟を決めた。

 腹を括ったとも言う。

 

 「聞かせて。かぐやの8000年分、全部。どれだけかかっても良いから。」

 

 そうして、三日三晩かぐや/ヤチヨは語り明かした。

 離れていた時間を少しでも埋めるように、二人が別たれてからあった出来事をずっと。

 しかし、やがて規定していた活動限界時間を迎えたため、かぐや/ヤチヨは眠りに就いた。

 それにお休みの挨拶を返してから、彩葉はずっと控えていたFUSHIに声をかけた。

 

 「私、かぐやの全部を見なくちゃ。あの子を一人にしないためにも、私が8000年分追い付かなくちゃ。」

 

 FUSHIの警告を聞いて尚、彩葉は凄まじい覚悟と共に8000年分の情報量を、とてもではないが人類の脳が到底記憶できない情報の洪水をその脳へと受け入れた。

 

 同時、ずっと事態を静観していたとある腐れ縁が介入した。

 

 通常、地上世界の現生生物の持つミトコンドリアは史実世界のそれとそう変わらない。

 しかし、重度の放射線被曝時や生命の危機に際してはその本来の性能を遺憾なく発揮する。

 一時的に肉体のリミッターを解除し、自壊しかねない程の出力を発揮させ、重度の放射線をそのまま肉体を稼働させるエネルギーへと変換する。

 これにより、この世界線の人類は史実のそれに比して強靱かつしぶとい。

 また、放射線の研究も盛んに行われてきた。

 その結果が怪獣の地上世界への再来を招いてしまった事は皮肉であるがそれはさて置き、注目すべきはこのリミッター解除である。

 通常、単に筋力や五感などの性能を一時的に上昇させるこの世界のミトコンドリア、他種の体内に共生するゴジラ細胞だが、今回に限りゴジラは彩葉の体内のミトコンドリアに対してピンポイントに干渉した。

 脳細胞に含まれた共生ゴジラ細胞の力によりリミッターを解除、脳細胞の強烈な活性化により本来ならば再生しない脳細胞に強引に再生能力を付与、これにより情報処理能力を強化する事で8000年分の情報の濁流へと対抗できるようにしたのだ。

 足りない分のカロリーは本体と分体の間で行っているエネルギーの送受信機能を用いて補った。

 本来のそれに比べれば誤差レベルでありながら非常に繊細な出力調整を必要としたが、その程度は過去に脳と神経系の一部をサーバー化するに当たって強化された演算能力ならば容易く踏み倒せる程度に過ぎない。

 こうして、酒寄彩葉は8000年分の情報の濁流に耐え切り、同時に人類では有り得ない程に高性能かつ死ぬまで再生する脳髄を獲得するに至った。

 8000年分の情報を消化し切って目覚めた時、既に彼女はただの人間ではなかった。

 

 世紀の大天才にして人類史上の特異点、超かぐや姫の超担当、変態国ジャパンの擬人化、人類史に名を刻んだ変態、酒寄家を途絶えさせた女、愛のためにあらゆる障害を踏破した女ことドクター酒寄彩葉の完全覚醒の時であった。

 

 ここから彼女の動きは早かった。

 全身全霊、生涯をかけてやりたい事を、至上命題を見つけた天才の動きは正しく電光石火、第二次大戦のナチスドイツの電撃戦も斯くやの早さだった。

 今まで何処か危うかったと語る周囲の人々は彼女が変わったと語る。

 かぐやと別れて抜け殻の様になっていたのが、夢のために鬼気迫る勢いで駆け抜けるようになったと。

 実際、彼女が苦手を超えて存在自体をトラウマと感じている実の母親の酒寄紅葉相手にすら、三者面談の際に担任と同時に将来のプランをホワイトボードに要点を纏めて理路整然と発表できるようになる等、凄まじい飛躍ぶりであった。

 実兄の朝日からは大丈夫なのお前???と色々と詰問されたものの、タケノコ号やそれに纏わる秘密をお出しされて黙らせた。

 うん、お兄ちゃんお前の事が心配だけどこれは諦めるか振り切れるわ、と納得したとも言う。

 以降、理系へと転向した彼女は善は急げと東大法学部から工学部へと進路を変更、現役で一発合格して全身義体に関連すると思われるあらゆる分野や研究室へと出入りし、破竹の勢いで研究を重ねた。

 なお、そんな彼女の学費及び研究費は当初ヤチヨ基かぐやがモナークから協力者として貰ってる給料=表に出せない資金(洗浄済み)から支払われていたものの、現在は在学中に取得した幾つかの特許で賄っていたりする。

 その在学中の特許の中で最も輝かしい一つが仮想世界ツクヨミ内での味覚と嗅覚の実現である。

 運営というか管理者とタッグを組んでの事とは言え、とてもではないが在学中で成せる偉業ではない。

 勿論、ハード面は今まで通りスマコンと専用コントローラーのみである。

 とは言え、まだ安全性の面から長期試験の必要があるから、全面的に実装する事は出来なかった。

 しかし、試験と称して身内で楽しむ分には卒業前に既に十分な完成度だった。

 そして後は院に進むか卒業して自分の研究所を設立するかという時、唐突に彩葉にとある場所からお声がかかった。

 

 対怪獣研究機関モナークからのオファーである。

 

 「いや、私がやりたいのはかぐやとヤチヨの身体作りであって怪獣研究じゃないですから。」

 「そこを何とか!そこを何とか!勿論全身義体の研究も継続して頂いてもらって結構ですから!ですから何卒!何卒モナークにですね!」

 

 今、モナークからのスカウトマンによる必死の交渉が始まった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 ゴジラはモナークの長年の必死の調査により、地表世界に8体いる事が確認されている。

 その内、G1~7とナンバリングされた個体は通常は海溝などに身を潜めているものの、中型以上の怪獣の出現を察知するとそれらを撃破或いは地下世界へと撤退させるために活動を開始する事で知られており、一般人にも認知されている。

 だが、G0のナンバリングを施された個体は違う。

 混乱を避けるため、発見したモナークを除けば各国の上層部や軍部にしか知らされていない。

 北極の到達不可能点、その真下の分厚い氷床の下でソレはずっと眠っている。

 放射線測定器や音響調査、ボウリング調査等、様々な測定により判明したのは全長300m超、推定体重11万t以上という超弩級の巨体を持った、確認されている中で最古のゴジラ。

 ソレがもし動き出す事態となれば、一体どれだけの被害が出るのか想像もつかない。

 分かるのは、ソレが動き出す時は人類社会の終焉すら有り得る事態だと言う事だ。

 故にモナークはこの個体の監視と調査のためだけに、態々地球上で最も過酷なこの場所に前線拠点を設置し、常に優秀かつ仕事熱心な人員を配置していた。

 

 何もない事を証明し続ける日々の中、そんな彼らが遂に異変を察知する日が来てしまった。

 

 G0の体内の放射線及び熱量の上昇が感知されたのだ。

 未だ動き出すような事は無いが、この異変は即座に北米に置かれたモナーク本部を通じて各支部及び各国上層部と軍部へと伝達され、即座に厳戒態勢が敷かれた。

 また、時を置かずに各地のG1~7までのゴジラ達が活動を開始した。

 すわ何事かと動揺する人類に対し、しかしゴジラ達はまたも予想外の行動を取った。

 近場の陸地へと移動し、上陸して間もなくその動きを停止したのだ。

 ゴジラ達が目すら閉じて微動だにせず不気味な沈黙を続ける事、実に一週間。

 人類がゴジラ達を見守る中、唐突にNASA及び各国の天体観測所から異変が知らされた。

 

 月の近傍を通り過ぎる筈だった隕石が突如スイングバイを行い、地球への衝突コースに乗ったのだという驚愕の知らせだった。

 

 はぁ!?と各国が驚愕しつつも何とか隕石の迎撃を試みるも、速度と角度、隕石の大きさから計算するとどう考えても迎撃は不可能という解答が導き出された。

 何処に着弾しても陸地ならば巻き上げられた粉塵により氷河期へ突入、海上ならばそこを起点に大津波で沿岸部を中心に壊滅という予測結果が出て絶望する中、ゴジラ達が動いた。

 各地に散っていたゴジラ達は件の隕石へと一週間かけてチャージしたエネルギーを用いて今までにない程高出力・長射程の熱線を放ったのだ。

 この出力ならば隕石を蒸発させられる!と科学者らが驚喜するも、隕石は熱線の着弾の寸前に自壊して無数の破片に分裂したのだ。

 無論、複数の射撃地点からの熱線にその殆どは蒸発したものの、一部には細かな破片が降り注いでしまった。

 ゴジラ達による一応の迎撃成功に人類はホッと一息をついたものの、偉い人達はまだ終わっていない事に気付いていた。

 態々ゴジラ達が迎撃し、更にそれを隕石が分裂して消滅を免れたという事実から警戒した各国及びモナークは破片の落着地点周辺を徹底的に調査する事を決定、未知の汚染や地球外生命体の存在を警戒して化学防護服装備の部隊を派遣した。

 勿論、もしもの時は全て焼き払えるように空爆用の部隊も手配済みである。

 そして、海上では碌に何も発見できなかったものの、地上に出来たクレーターからは幾つかの発見が成された。

 先ずは隕石そのもので、こちらは隕鉄ならぬ隕チタン合金に近いもので、既存の合金よりも高い耐熱性が確認され、後にその組成は各国で官民問わず利用されていく事となる。

 もう一つは生物である。

 オタマジャクシによく似た数mm程の小型の生物なのだが、何とその肉体の組成は鉱物に近い。

 即ち、鉱物生命体だったのだ。

 クレーター周辺で多数発見されたこれに驚いた各国は直ぐさま持ち帰り、研究を開始した。

 幸いにしてこの鉱物生命体は極低温や乾燥で直ぐに活動を停止するし、乾燥して干からびた状態でも水をかければ直ぐに活動を再開する。

 クマムシの乾眠に近い能力を持っており、それでいて普通に高温で焼けば殺せる事から、各国で研究が開始された。

 そして発見された食性だが、コイツは自然環境下にない化学物質、具体的には工場や家庭などから排出される化学物質全般、つまりは環境汚染の原因とされる物質ならほぼ何でも食べるという事だ。

 それこそ石油や排気ガス、洗剤の混ざった汚水や泥の中の重金属類に砂に混ざったマイクロプラスチック、果ては放射性廃棄物だろうが何だろうがである。

 人類にとって余りの都合の良さに歓喜の声が上がる中、モナークからは「あのゴジラ達が排除に動いた事実を忘れてはならない」と警告が出されるも世論の熱狂の声もあっても聞き流された。

 だが、この一ヶ月後には誰もが絶望の声を上げる事となる。

 

 シャガーラコロコロコロコロ! シャガーラコロコロコロコロ!

 

 独特で湿り気のある、あるいは金属的で甲高い絶叫のような鳴き声と共に世界各地で泥状の肉体と赤い大きな目玉が特徴の怪獣が立て続けに出現したのだ。

 

 

 

 

 

 




昭和最凶怪獣君、初代以降は今ひとつ良いところの無い君に出番をあげよう!
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