アトランティスの黄昏   作:アビス・アッカーマン

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チュートリアルは終わりです。ここからが本番というやつです。

早く地獄を叩き付けたいですが、世の中には順序というものがありますのでゆっくり行こうと思います。

これからもよろしくお願い致します。

(な、なんとか一話書けた、ブルアカ総力戦にステラソラ、ダクソ3の5周目、息抜きに書いた小説。時間が足りなさすぎる!)


1章 竜哭を響かせて 
10話 クアトル城塞都市を案内してあげる!


 

そうさね。

 

この世界はアトランティス。

 

絶望を染める夜の前触れである黄昏にあやゆる人間が、獣人族が、森妖精が、土妖精が、恐怖する世界さ。

 

聞いている皆は分かっているだろう?何故皆恐怖するのか。

 

魔王だよ。果てしない、あやゆる光を吸い込む『深淵』を広げる歴史上の魔王の中で最も恐ろしい魔王さ。

 

その魔王に追い詰められた国々はとある手段に出る。

 

異世界から呼び出される勇気ある者、勇者。この者達に頼る為に呼び出すのさね。

 

けれど、けれどね。それでも失敗するのさ、魔王討伐にね。

 

何度勇者と共に歩む英雄達をもってしても魔王は討ち滅ぼせなんだ。

 

神々は手伝いはすれど直接魔王を討伐することは無い。

 

この世界の住人は今も尚迫りくる滅亡に恐怖し、僅かな抵抗で精一杯。

 

だがら、そう、だから。

 

この世界は求めているさ。

 

明日という未来が訪れた事を告げる暁の光を、誰かが魔王を討ち滅ぼす事を、願っているのさね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが例え『イレギュラー』によってもたらされたものだとしてもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クアトル城塞都市

 

その日、クアトル城塞都市に衝撃が走った。なんと隣接しているヴァイス大草原の頂点捕食者、グラスランド・デスワームを十七、十六という若さで、しかもたった五人で討伐したという。その情報はクアトル支部の代表者、モグリット·グラグウィス からもたらされた。当然『そんな訳無い!』と言う者もいたが『それは真実を司る女神ギールティルスから賜れし真実の鈴を疑っているのですか?』と秘書のトゥーナ·クラミットに反論された。だがそれでも納得できないと荒くれ者の冒険者が発言すると『ナンダぁワレェ!オメー我が神の力を疑うっつー訳か!もしそうならヨォー!テメェーの指ィ詰めて、火炙りにして魔物のエサにスッゾ!!そうなりたくなければこれ以上醜い言動は控えろやボゲェ!テメーの口でこれ以上臭い空気にすんなや!』とさらにおど⋯⋯⋯⋯⋯反論した事で納得した(※意訳です)。翌日、それは当然この地を治める辺境伯にして領主の『梔子トオル』にも伝えられた。モグリットは自ら早馬を走らせ直接報告した。この報告を聞いた領主様からは『ひどく感激した』と呟いたとのこと。この報告を得て梔子トオルは死の森への調査依頼共に資源採取依頼を提出。これに対してクアトル支部代表者モグリット·グラグウィスはこれを承諾。領主の命令の元、『月光騎士ルミナス』を含めた騎士団と共に早急に調査隊を編成するのだった。

 

そんなクアトル城塞都市にとって激闘の一日にした中心人物である暁ホシノ、天津クルミ、龍院キサキ、梶間ケイ、中谷ヒフミはアンナ・ウルスタの家族が住む家で寝泊まりをしていた。

 

 

 

クアトル城塞都市 朝

 

父親アングロー、母親クエシー、長女アンナ、次女アレンの四人構成のウルスタ家は一般の人達に比べて裕福と言えるだろう。それはまだ幼い次女を高い金を払ってでも良い学校へ行かせたいと親が両働きしているというのもあるが、高い収入を持つ長女が家族の為に一緒に住んでいるというのが大きな理由だろう。冒険者の殆どは家族から独り立ちして家を出て、自分だけの家を持っているものだ。そして大抵は家族に仕送りをしない。だから長女のアンナのように一緒に住んでいるのは珍しいケースと言える。

 

そんな家族の家は広々とした庭付きの二階建ての赤レンガで作られたクラシックな家だ。庭の手入れはきちんとされておりこの季節に咲く花々が美しく咲き誇っている。朝はやや薄暗いがそれでも十分視界を確保するには明るい。そんな朝、庭にはまるで芸を披露するように、または武術の基礎練習のようにリズム良く体を動かしている少女がいた。

 

その少女は勇者の髪色で有名な黒髪を途中から三つ編みにして長く艶のある美しい髪を纏めていた。どこか幼さを感じさせる顔立ちでありながら大人のような妖艶さを醸し出す、この世界でも『美しい』と称されるくらいの美少女はスリットが深い黄金の龍が入った所謂『ちーぱお』と呼ばれる服を着用していた。そんな少女は今も尚体を動かしていた。その動きは勇者達か勇者達の文化をよく知る人が見ればこう言うだろう。

 

キサキ「ににー、さんしー、ごーろく、しち⋯⋯⋯⋯⋯⋯はち。⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ふぅ、やはりラジオ体操をやると気分が良くなるのう。」

 

そう、ラジオ体操と。

 

体操し終わった少女、龍院キサキは誰もいない庭でラジオ体操をしていた。

 

え?勝手に家出ていいのかって?問題無い、キサキは朝早く出発して道具を先に取られないようにとダッシュで道具屋へ向かった際に置き手紙で『外出てもいいよ』と書かれていたからだ(家族は了承済み)。よって庭でラジオ体操が出来たのだ。

 

元々龍院 希望はラジオ体操をする習慣は無かった。しかし『とあるきっかけ』でラジオ体操をするようになり、今ではやらなければやる気が出ないくらいに習慣になっていた。

 

そして異世界に来た今でも続けようと考えている。例え龍院キサキとなったとしてもやらない理由にはならないのだから。

 

ケイ「精が出てますね。キサキ。」

 

後ろから不意に声を掛けられる。キサキが振り返るとキヴォトスのミレニアムの制服が良く似合う『天童ケイ』、となった梶間ケイがいた。長く美しい白い髪と特徴的な赤い瞳はどこか浮世離れしたキサキと同じくこの世界でも『美しい』と称される美少女であった。

 

キサキ「ん?ケイか。こんな時間に起きておるとはな。どうかしたかえ?」

 

キサキが庭に出た時はまだ皆寝ていた。起こしてはまずいとこっそり一人で抜け出していたからどうかしたのだろうか?とクエスチョンマークを浮かべながら口にした。

 

ケイ「クルミが起きないんですよ。ですので手伝って欲しいのと、クエシーさんがそろそろ朝食の時間だと言っていましたので。」

 

キサキ「はぁ〜、全く。あやつは何をしておるのだ。」

 

『クルミ』となったのだから少しは『クルミ』を見習って欲しいものだとキサキはため息を吐きながら仕方無いと足を向けた。歩き始めるとケイもまた一緒に歩き出した。

 

ケイ「『キサキ』のバンザイ体操を見たかったです。」

 

キサキ「悪いのう。バンザイ体操のやり方は知らぬ。」

 

ケイ「教えましょうか?私なら完璧に覚えさせられますよ」

 

キサキ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯遠慮しときます。何だか嫌な予感がするので。」

 

ケイ「そうですか残念です(くっ!バンザイ体操を教える時にキサキの二の腕をモチモチしたりアバラをサスサスしたり太ももをナデナデしたかったのに!)。」

 

そんな高次元的宇宙を背負っているケイの思考を知らないのはキサキにとって幸運であろう。

 

背筋が寒くなるような発言だったから思わず素の口調で断ってしまった程に恐怖を感じたキサキはウルスタ家の家に入るのだった。

 

 

場面は移り変わってホシノ達が寝泊まりしている部屋へ

 

 

ケイの申し出をキサキが断っていた頃、太陽のような瞳と海のような瞳というキヴォトスでは珍しいオッドアイが特徴的な桃色の長髪をポニーテールにしているこの少女もまたこの世界でも以下略である『小鳥遊ホシノ』となった暁ホシノはアンナを二回り小さくしたような少女、次女アレンと共に今も尚掛け布団を被って雪大福になっている天津クルミを起こそうとしていた。

 

アレン「クルミお姉ちゃん!もう!起きてよー!」

 

幼い子供特有の高い声でクルミを起こそうとゆさゆさと起床を促すがそれでも起きる気配は無かった。

 

クルミ「うーん、あと5分。」

 

スマホを見ながら寝ぼけた声で、掛け布団シールドを展開しているのはこの世界では珍しい狐の獣人族の特徴である狐耳を生やした少女だった。黄色の長髪に左右にちょっん!と跳ねているアホ毛が出ているこの世界以下略である『高倉クルミ』となった天津クルミ。今は狐耳だけをはみ出してアレンの攻撃()に耐えていた。

 

ホシノ「クルミちゃーん?いい加減起きなよ。迷惑になるよ〜。」

 

やや本気で説得()するが当の本人は⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。

 

クルミ「全て〜、問題、無〜し。」

 

全く聞く耳持たぬようだ。耳が四つもあるのに。

 

ちなみに『阿慈谷ヒフミ』となった中谷ヒフミはウルスタ家の朝食の手伝いをしている為、今は三人のみだ。

 

アレン「クルミお姉ちゃん、朝食無くなっちゃうよ?」

 

クルミ「だいじょ〜ぶ。多分出来てないよ。朝ごはん。一階からまだスープを煮込んでいる音がするし、皿だってまだだと思う。」

 

ホシノ「えぇ〜(ドン引き)。どんだけ耳が良いのさ。」

 

デスワームくんの時もそうだったがキヴォトス最高の神秘を持つ『ホシノ』は全体的にスペックが高い。その『ホシノ』よりも五感が優れているとは⋯⋯⋯⋯。というか『クルミ』よりも上では?

 

アレン「そんなの見てみなきゃ分かんないじゃん!というか!なんで起きないのぉ!お母さんのお願いできないよぉ。」

 

最初は苛立ちがあったが次第には涙目になっていく。クルミを揺らす力も弱くなっていく。

 

クルミ「ぐぅ!でも、少しでも寝なきゃ会社で働けないよ。」

 

ホシノ「クルミいい加減に⋯⋯⋯⋯⋯!え?今なんて?」

 

アレンの様子にとうとう我慢の限界に達したホシノはクルミを強制的に起こそうと愛銃を構えようとしたが、クルミの予想外の発言に豆鉄砲を食らったかのような顔をした。

 

クルミ「だから会社の仕事に支障をきたすから少しでも寝るの!寝なきゃ六日間の徹夜20時間労働に耐えられないじゃん!」

 

ホシノ「?」

 

意味不明。ちょっと何言ってるのか分かんない。

 

ホシノ「ちょっと何言ってるのか分かんない。そもそも会社になんて無いじゃん。」

 

クルミ「は?何言ってんの?今日月曜日だよな?」

 

アレン「え?えと、お姉ちゃん達何言ってるのか全然わかんないけど、今日は⋯⋯⋯⋯。」

 

ホシノ「アレンちゃん、私が説明するよ。」

 

言葉が見つからなかったアレンはとりあえずクルミを落ち着かせようとするのをホシノは止め、何やら寝ぼけた事を言っているのでホシノは説明する。

 

ホシノ「うん、そうだよ。でもさクルミちゃんの会社がここ(アトランティス)にあるわけ無いじゃん。だから会社に行く必要なんて無いよ。」

 

クルミ「何訳のわからないことを⋯⋯⋯⋯!⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯あ。」

 

どうやら気が付いたみたいだ。クルミの間抜けな顔を浮かべながらわなわなと体を震わせた。

 

クルミ「あーーーーーーー!!!会社に行かなくたっていいじゃん!!!」

 

ホシノ「気付いたみたいだね。」

 

叫んだ後、まるで濁流のように内に秘めた思いを吐き出した。

 

クルミ「朝の辛い時間に満員電車に揺れることも毎日ネチネチ嫌味を言ってくる女上司に耐えることも終わらない書類作業も土曜日も残業する事も!全部しなくたって良いってこと!?」

 

ホシノ「う、うん。そうだよ。」

 

闇を感じる魂の叫びにアレンも可哀想だと感じたようだ。

 

アレン「クルミお姉ちゃん、大変だったんだね。よしよし。」

 

クルミ「うぅ〜、地獄の日々を抜け出せて良かった〜。⋯⋯⋯⋯ゴメンなさい、アレン。悲しい思いをさせてしまって。」

 

アレン「うん!良いよ!許してあげる!」

 

アレンは幼いとはいえアンナの妹だ。大好きな姉の仕事の大変さは自分には内緒で親に不満を零していた事を知っている。クルミもまた、仕事に囚われるほどに不満を、その会社の理不尽さを、人間関係に辟易していたのだ。

 

ホシノ「はぁ〜〜〜〜〜。仕事か〜。嫌だったな〜。」

 

よしよししているアンナとされているクルミを見て前世の事を思い出しながら大きなため息を吐くのだった。

 

その後クルミを起こしに来たキサキとケイに何があったのかを説明し、二人は遠い目をするのだった。

 

 

 

十五分後

 

 

 

アングロー「神々よ、恵みに感謝します。いただきます。」

 

「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」

 

父親のアングローの祈りの後、皆の食べ物への感謝の言葉が重なりこの部屋を少し震わせた。部屋は茶黒い木材で構成され少し高価な家具で埋められている。機能性のみならず視覚的にも求めれいるこの家具は全体の雰囲気に重厚感を足しているのに一役買っている。四人で食べるのにはやや広いがホシノ達が来たことで逆に狭く感じるくらいの広さ。所々に壺が置いてあったりアンナのお古の杖が掛けられていたりと装飾をする余裕もあるくらい恵まれている。ダイビングの隣の部屋には暖炉が設置されており、冬にはそこで薪を焚べて暖を取るのだという。そんな部屋を見渡し終わったホシノは目の前の一部に彫刻が刻まれた机に並ばれたのはトマトと豆類を煮込んだスープとやや硬めのパン、そして彩り豊かな果物類に手を伸ばすのだった。前世の知識を持つホシノ達は昨日は夕飯を取ることなくベッドに付いた途端泥のように眠っていた為、これが異世界メシかと感動しているが一般的の人に見れば裕福であると一発で見抜く朝食だ。なぜならあまり日持ちしない果物類を朝に持ち込みそのまま食べるなどしないからだ。日持ちする技術があまり確立しないこの世界で料理に使うことはあれどもそれ単体で食べるのは貴族か収入が多い者達のみだ。

 

そんな事を知らずただ美味しい美味しいとパクパク食べるホシノ達の食いっぷりに母親クエシーはニコニコしながら見ていた。

 

クエシー「あらあら美味しそうに食べるわね〜。」

 

長女アンナの面影を感じる優しい顔立ちはアンナを横に並べると親子だなぁと思わせる。

 

ケイ「はい、美味しいです。居候の私達に作って下さってありがとうございます。」

 

ひたすらスープをかき込むホシノ達に変わってケイが手を止めてお礼を言う。

 

アングロー「お礼を言わなくてもいいさ。あのアンナがまさか仲間以外の人を連れて来るとは。だったらなおさらお迎えしなくてはな。」

 

ケイ「成る程。アンナさんは意外と人見知りなんですね。」

 

アングロー「はは、そうなんだ。小さい時はいつもクエシーの後ろに隠れてな⋯⋯⋯⋯⋯⋯。」

 

ケイ「ふふ、可愛いですね。」

 

アンナ「ちょっとお父さん!」

 

口を滑らせた父親に向けてアンナは高速のスプーン投げを披露した。ぐおぁぁ!と頭に直撃した。床に伏せた偉大なる父親は薄い頭を抱えながら呻く。

 

あらあらと母親は心配そうに見つめ、次女は無視してクルミお姉ちゃんと楽しく談笑していた。

 

ケイ「アングローさん、気を確かに持ってくださいね。」

 

先程の寸劇に一瞬で家族の順位を見抜いたケイはアングローに小さなエールを送るのだった。

 

優しい色をしたブロンドをツインテールにした髪をなびかせ、太陽のような印象を抱かせる『阿慈谷ヒフミ』となった中谷ヒフミはアングローを目線を合わせながら介護をし、クルミはアレンの口の周りに付いた汚れを拭き取り、キサキはホシノと父親の苦労さを知り以後協力しようと会話をした。

 

そんな時、アンナはふとケイを見た。綺麗な佇まい、スプーンの持ち方やパンの食べ方に見事な所作を魅せた。スープを零すどころかパンくず一つも零さない。上品さを感じさせるその光景に一つの答えを導き出した。

 

アンナ「ねぇケイ。質問していいかな?」

 

冒険者の過去を探るのはいけない。これは暗黙のルールとなっている。中には当然重い過去を背負っていたり、過去について言及されるのを嫌う者だっている。しかしアンナはそれを分かっていても尚、質問しようと選択した。

 

ケイ「はい、何でしょうか?」

 

木のスプーンで掬っていたスープを戻してアンナの方に目を向けた。

 

戻し方も美しいなと思いながらアンナはケイに質問した。

 

アンナ「ケイってさ、結構綺麗に食べるよね。」

 

ケイ「ええ、日頃から気を付けていますので。」

 

頬笑を零しつつ円滑に答えるがアンナは少し濁しつつ質問する。

 

アンナ「えっとさ、ケイの所作とか色々、美しいというか、その⋯⋯⋯⋯。」

 

ケイ「まるで高貴で、優雅で、鮮やかで、美しさが最大級で、高潔で、美しくて、魅力に溢れていて、勇敢で、カッコよくて、どの角度からも目が眩むくらい可愛すぎて尊死してしまうような完璧で究極な『ケイ』みたいだと?」

 

アンナ「えぇ!?いや、その⋯⋯⋯⋯⋯そういう意味じゃなくて!?」

 

『ケイ』への愛が少し溢れて詠唱をしてしまったケイの言葉にタジタジになりながらええい!と質問を投げた。

 

アンナ「ケイってさ!⋯⋯⋯⋯何処かの貴族だったの?」

 

勢いが最後になるに連れて弱くなるがケイはその言葉を受け取る事ができた。

 

ケイ「違いますよ。」

 

アンナ「へ?違うの?」

 

予想が外れて少し虚を突かれるような顔をするが続けて質問をして自分の中にある可能性をぶつけていく。

 

アンナ「いやでも綺麗に食べるし、所作も作法もそうだし。あ!もしかして貴族じゃなくて貴族のお抱え⋯⋯⋯⋯⋯。」

 

ケイ「アンナさんはそんなに私の事を知りたいんですね?」

 

ケイの一言にこの部屋は静寂に包まれた。

 

ケイが何だかちょっと怖い。別になにか変わってはいない。優しい目をしているし笑みだって安心させるような笑みだ。しかし人とは言葉の強弱でここまで雰囲気を変えられるというのか。

 

アンナ「うん、そうだよね。やっぱり過去を追求するべきじゃなかったな。」

 

いくら気になったとはいえどアンナは冒険者だ。暗黙のルールくらい知っている。自身ですら何故ここまで知りたいのか分からず衝動のままに質問してしまった。

 

ケイ「?いえそんなに怒ってないですよ。」

 

アンナ「そうなの?」

 

ケイ「ええ。⋯⋯⋯⋯質問の通り私は貴族ではありません。故郷にいる私の家は、そうですね。未来を育てる仕事をしているのですよ。」

 

アンナ「未来を育てる仕事?」

 

ケイ「はい、今後成長するかもしれない企業⋯⋯⋯いえ、ここで言う商会にお金を渡し、それによってより成長する際に貰った恩を貰う。そういう仕事です。この仕事の名前を『投資』と言います。」

 

アンナ「初めて知った。」

 

ホシノ「へぇ〜投資してたんだ。結構儲かったの?」

 

親指と人差し指で円を作り手を下にした状態で上下に揺らしながらいたずらっ子のような顔をしながら疑問を口にした。

 

ケイ「はい、あの人達のお陰で結構儲かりました。それにこういうのは会場で話したりするのでその際に親から教わりました。」

 

クエシー「そうなのね。ケイちゃんってかなりすごいのね。」

 

おっとりとした口調で褒め、クルミがあんなに変態なのにと複雑な気持ちを抱いた。皆がケイの事を知りあれこれ話して盛り上がる中、一人だけ深く思考するものがいた。

 

それは前世で海外を主とする不動産のエリート社員をしていたキサキだった。

 

キサキ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯(投資家ですか。あれだけの作法や所作が出来るのはそれ相応の、上位の者達のみ。家族揃って投資家、かなりの腕前。そんな人物確かいたはず⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。!!まさか!!)。」

 

はっと隣りにいるケイを見る。キサキの視線にケイはどうしたの?と顔を傾げるが数秒何も起きなかった為、なんだろう?と思いつつ食べる動作へ戻った。その所作もどこか美しい。

 

キサキ(何故?何故気付かなかった!?『梶間 楓奈』といえば『鬼才』の名で不動産業界や投資業界のみならず様々な業界で激震を走らせた人物!!助っ人としてスポーツに出たならエース級の活躍を見せ、文道に出れば最優秀の賞を取る。まさに鬼才に相応しい人物!!女傑とも呼ばれる彼女がまさかケイ推しの先生だったとは!!)

 

とんでもない仮説だ。鼻で笑ってしまうくらいには吹けば飛ぶような前提条件がありすぎる仮説。だが、梶間 楓奈と自身が名乗りさらに女神ロアが確かに最初に言った『梶間 楓奈』という名前がそれが正しいと答えを出した。

 

とてもない鬼才がこのシャーレの仲間だという事実に驚愕しながらやや硬いパンをスープに付けながら食事に戻るのだった。

 

アンナ「あ!皆このクアトル城塞都市の事知らないよね!?」

 

クルミ「ええまあ、そうね。」

 

ほぼ空になったアレンの分を含めた皿を纏めていたクルミはアンナの言葉に反応した。

 

アンナはこれから一緒に頑張る未来の冒険者に向けて一つ提案をした。

 

アンナ「クアトル城塞都市を案内してあげる!」

 

まるで友達を誘うかのように案内を申し出るのだった。




ウルスタ家 父親アングロー母親クエシー長女アンナ次女アレン

トゥーナ·クラミット 平民出身だがその才能を女神ギールティルスに認められモードレスト王国内で有数のクアトル支部の秘書となる。戦闘力はあまりなく、強いて言うなら口論による口撃だ。
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