皆さん、たいっへん申し訳ありません!遅れてしまいました!この状況がしばらく続くと思います。というのも仕事が色々立て込んでおりまして、しかも今月も忙しくなるとの事ですので。
本当に申し訳ありませんが、また一週間投稿が嘘になるかもしれません。
ご迷惑お掛けしますがこの作品をよろしくお願いします。
(こういうのって活動報告でするべきなんでしょうかね?分かりません!誰か教えてください!)
金工街を抜けたアンナに案内されているホシノ一行は次の場所へ案内されていた。
アンナ「次は道具屋だよ。数ある道具屋の中でも気に入っている店があるんだ⋯⋯⋯!それがね⋯⋯⋯⋯⋯!」
武具店で思ったより多く時間を食ったのでアンナはそこからはテンポ良く紹介していく。
オススメの道具屋では討伐された魔物から取れる材料で強力な道具が作成されたり回復薬になったりと、この世界で生きていくのを補助してくれる道具を教わった。
飲食店が並ぶ『豊穣街』では美味しい唐揚げを食べたり、近くにいた冒険者達にお酒を勧められて、何度拒否してもダメだったので勇者達から伝わり今では冒険者達において終わらない喧嘩に決着を付ける伝統的勝負腕相撲対決になりケイが圧倒的膂力でねじ伏せていく光景にアンナは放心した(尚この後とんでもない事が起きたがそれはまた別のお話)。まぁ色々あったが活力を漲らせるこの都市の美味しい食事を教えてくれた。
冒険者協会に立ち寄って報酬金を貰った。正確の数は王金貨五百八十枚。日本円にして約五億八千万円。凄まじい大金を貰って笑みが零れてしまうくらいの輝きは俗世的な欲を満たし、これでお金に関して困ることはないだろう。支部長からこれ程の大金ならこっちに預けるのが常識だと話した。まぁ、こんな大金を持ち続けていたら取られるんじゃないかと疑心暗鬼になってしまうだろうと満場一致で預けることが決まった。他の冒険者協会でも預けた大金をおろせる手帳を貰い、それぞれ王金貨三枚を握りしめて探索に戻った。
この都市の数少ない観光スポットを紹介してくれた。アンナ曰くこういう観光スポットが激動の冒険をした後に欠かせないという。案内終わりについでにとロア信教の教会に立ち寄りアレンを迎える⋯⋯⋯より先にすぐ近くにある女神ロアの女神像を見て即座に駆け寄りアンバサするケイと、なんか所々見た目違うと思いつつも見たことがある人からすれば頑張ったほうだと思うくらいの出来の像に対して何も感情が沸かないホシノ達を見て、苦笑いを浮かべながら遠くからバタバタと駆け寄るアレンをお迎えした(ケイはロアちゃんに会えなかったと滂沱の涙を流した)。
様々な所に行った。色んな常識を知った。生きていく知識を学んだ。冒険者のアレコレを教わった。異世界の事をより詳しくなった。
だからこそ、感じる。
時間が経過するほど俺の警戒心が強くなっていくのを。
あちこち歩き回ったからか世界が黄昏色に染まっていく。沈んでいく太陽が気合を入れて踏ん張っているからかオレンジカラーの日差しが眩しい。人の姿はまばらで意外と人の数は少なかった。一日中歩いたせいか披露が溜まって足が痛い⋯⋯⋯⋯⋯⋯ことは無く足が痛いどころか朝の時と変わらない体調だし、肉体的な疲れだって感じない。⋯⋯⋯精神的には溜まっているが。
帰り道を歩きながら互いにくだらない雑談を重ねていく。やや熱が籠もった口調で話すアンナ。やはり朝から気なってはいたけどアンナは何だかやや興奮しているように思うのはやはり気の所為では無いだろう。あのドレイス武具店を紹介したときだって熱弁していたし、今も喋っているその姿はあの店員に似ている気がする。
疲れでスヤスヤと寝ているアレンはアンナにおぶられくー、くー、と可愛いいびきをかいている。ホシノはうへーなんて言いながら面白可笑しく話しているし、キサキは聞き手上手でいいタイミングで話を合わせてくれる。ケイは教会での事を引きずっているのか少し⋯⋯いや結構意気消沈していた。そんなケイを慰めたいけどどう慰めればいいのか分からずアワアワしているヒフミ。
皆が楽しいと思っている顔をしている。満喫していると身に沁みている。こういうのが続けば良いなと誰もが思っている。
この空気感を壊したくない。けれど誰かが言わなくちゃいけない。
アンナがオススメの道具屋の魅力を改めて話している。そのタイミングでやや俯いた俺は問う。まるで胸の突っかかりを取り除こうとしているような声色で。
積み重なったアンナの親切心は俺の心に少しずつヒビを入れていた。
クルミ「⋯⋯⋯⋯ねぇ一つ聞いていい?」
アンナ「⋯⋯⋯⋯で、その店は調合する材料も手に入れられるんだよ!まぁ個別に頼まなきゃいけないんだけど⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯?どうかしたの?」
俺の声を聞いて顔を後ろに向けたアンナは俺を心配するような声で言ってくる。どこまでも優しい心遣いに『やっぱりなんでもないと』俺の決意を無かったことにしたかったが、元男として一度決めたからには最後まで貫かなきゃいけない。
だからまた改めて決意して、言う。
クルミ「⋯⋯⋯なんでここまで良くするの?冒険者は基本的には自己責任なんでしょ?それに私達は見ず知らずの突然降って湧いてきたような存在なのよ?普通は近寄りがたいでしょ?」
疑いの眼差しがアンナを貫く。淡々と、けれど確かな疑いが籠もった言葉。軽く明るい空気は今、聞いているホシノ達でさえ空気が重くなったと察せられるこのなんとも言えない独特で言葉が見つからないあの特有の圧がこの歩いているレンガで出来た帰り道を支配する。
アンナを見て、思い返せば最初から親切だなと思う。助けてもらったのは、まぁ、冒険者としての義務と責任があるのは分かる。だがその後のアンナの家族が住む家に居候の形でお泊りしてもらったのもそうだが朝食のことでより疑問が増えていった。この帰りに至るまでの事だってそう。アンナの行動は親切心だけでは無い気がする。右も左も分からない身元不明の少女達の現状を憐れんで、冒険者なりたての新米を思っての行動だと言われたらそれまでになってしまうだろうが、なにか裏があるんじゃないかと邪推してしまうくらいに良くしてもらっている。サブウェポンなんて必要無いと思っている俺にサブウェポンを持つことの大切さを教えたのもそうだ。わざわざ教えなくたって別にそのパーティーの問題なんだから関わらなくても良かったはずだ。あの冒険者登録した時に教わった『何があっても基本的には自己責任』という考えは冒険者の間では当たり前なのだという。協力し合うのはこの都市が危機的状況に陥ったときとか別のパーティーとの協力に対しての見返りとかそういう状況でなければ基本的には他所は他所、うちはうちのスタンスと取り続けるだろう。
だからこそ思ってしまう。何故こうまでして自分達を助けてくれるのか。
何度も言うが何か裏があるとは思う。その『裏』は多分自分達に害するものではないのだろうなとは薄々思っているし、ここまで親切にしてくれたアンナさんに失礼だと本気で思う。
でも思ってばかりじゃ何も分からない。相手は何を考え、何も思い、何を持って行動するのか。
前世の時だって取引先の事を理解しなきゃマトモな取引なんて無理だし、あの嫌な女上司に理不尽に怒られるだけだ。
それに、普通に気分が悪い。何も分からない状況で、見返りを求めない善意に甘えて、何も返せない俺自身に。
そんな醜い本心に気が付いたのだろうか?
ふっ、と息を吐きバレてしまったかと言いたげな犯人のような表情を浮かべた。でもそれは儚い印象を与えるような表情でもあった。
アンナ「⋯⋯⋯あ〜、まぁ〜。そうだよ、ね。そりゃそうだよ。目の見えないものほど怖いものは無いよね。」
そのクルミの質問に応えたアンナの言葉は何故?の疑問に答えていなかった。
自分に対しての答えだった。
クルミ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。」
怪訝な眼差しを向ける。周りも俺と同じ疑問を抱いていたから俺の発言に共感して空気が重くなったしてもアンナから出る答えを待っている。
ホシノとキサキはは僅かに目を細め、ヒフミは急激な変化に内心戸惑っているが黙っていようと空気になることを徹していた。そしてケイは、アンナの内にある理由を察しているのか沈黙を貫いていた。
修羅場。これに相応しい言葉はそうそうないだろう。
アンナ「うん、そうだね。答えるよ。何故皆にここまでするのか。」
クルミ「⋯⋯⋯⋯。」
アンナ「分かってるよ。クルミの気持ちは。」
俺の中にある酷い言い訳を遮るようにやや強い口調で話すアンナは質問した時から変わっていない表情で言う。
あぁ、なんてひでぇ奴なんだ。俺よりも年下の女の子にこんな顔をさせるなんて。
アンナ「理由はね、三つあるの。」
アンナは後ろに背負っているアレンがまだ熟睡しているのを確認してから理由を話していく。
クルミ「三つ?」
三つ?てっきり二つかと思っていた。
ケイ(二つ、だと思っていたんですが予想は外れましたね。もしかして勘が鈍くなってる?)
右手の人差し指をたてて一つ目を話した。
アンナ「まずは一つ目。君達をシンプルに助けたいと思ったからだよ!」
儚げな表情から一変、やりきった!と言いたげな顔に変わった。
クルミ「大マジ?」
アンナ「大マジだよ!だって君達見るからに助けが必要な顔をしていたし。常識を知らない、この世界の恐ろしさを知らない、文化も知らない。こんな状況の君達を放っておけないよ。」
ホシノ「確かに。」
俺は手を差し伸べるかは分からないけどホシノならするだろう。ほんの僅かな時間しか過ごしていないとはいえ、デスワームを一緒に倒したからホシノがどういう奴なのかくらい分かる。
ホシノは責任感が強くて、困った人がいたら率先して手を差し伸べる。そんな奴だ。だからアンナの理由に納得したんだろう。
まぁ、俺も俺達みたいな状況に晒されているのを見せられたら心配しちまうから分かるけどな。
他の皆も確かにと思ったのか納得しているし、ドヤ顔みたいな顔をしながら後方彼氏面しているケイの姿が見える。
⋯⋯⋯なんで後方彼氏面しているか全く分からんが。
アンナは良い笑みを浮かべたまま続いて中指をたててピースサインを作る。
アンナ「次に二つ目、君達と仲良くなって私が死んだ後でも私の家族を守って欲しいからだよ。」
クルミ「なるほd⋯⋯⋯⋯え?」
一瞬で空気は凍り付く。物騒な話し過ぎる事を言ったアンナはさっきと変わらない表情のまま。
思考が一瞬停止してしまう。死ぬ?アンナが?はぁ〜待て待て、落ち着け。何もすぐに死ぬと言ったわけじゃない。そうこういう時は冷静にならなくちゃいけない。落ち着いて対応して聞き出さなきゃ。
ヒフミ「もしかしてアンナさん、死んじゃうんですか⋯⋯⋯!」
悲壮な顔を浮かべ涙目になっているヒフミは見ていて痛々しい。黄昏が終わろうとし暗い夜が迫りつつある景色に変わっていくが、それでもと踏ん張っている太陽は、まるで勇気付けるようにヒフミの目元に溜めている涙を優しく焼いていく。
アンナ「待って待って落ち着いて!何もすぐ死ぬわけじゃないから!」
思わずどうどうと宥めるアンナはヒフミの悲しみを鎮める。
ハッと後ろを振り返りアレンを見るがまだ熟睡しているのを見て安心した後、咳払いをして気持ちを切り替え、至って真面目に理由を言う。
アンナ「んん!別に私はすぐ死ぬわけじゃないし死ぬつもりは毛頭ないよ?それに私は確かに強い。客観的に見てもBランクなんて上澄みに入る強さ。もちろんパーティーの皆のお陰っていうのもある。それを抜きにしても『強い』と私は思ってる。⋯⋯⋯でもね、私は『英雄』みたいな信じられないくらい強い力を持った冒険者じゃないの。」
語ったのは確かな事実だった。けれどそれはより俺を、ホシノを、キサキを、ケイを、ヒフミを、なによりアンナ自身をまるで鋭いナイフのように心を突き刺していく。俺は、俺達は、このクアトル城塞都市に来るまで何回かアンナの戦う所を見たからこそ突き刺さる。だってそうだろう?こんな過酷な世界で『俺達よりも弱い』アンナに死ぬことは無い、なんて言えるわけがないのだから。何よりそれを自覚しているアンナはより。
そして語る。自分の事、事実を。
アンナ「私が冒険者になったのは両親に楽をさせたかった⋯⋯⋯っていうのもあるけど、なにより自分を変えたいと思ったからなんだよ。」
クルミ「⋯⋯⋯一応聞いておくけど、長話になりそう?」
アンナ「うん、なるよ。ちなみに自分の過去を話す冒険者って意外と少ないから、ちゃんと聞いてね?」
いたずらっぽく笑うアンナは、俺の最推しの『クルミ』の笑顔と同じくらい、美しかった。
長話になるからと止めていた足を動かしてアンナは帰る方向に向けて再び歩き出す。それに続いて俺達も歩き出し耳を澄ませる。
アンナ「私は、内気だった。何をするにしても『良いのかな?』『迷惑になるんじゃ?』なんて思って、全然前へ進もうとしなかった。新しい事に手を出せず、周りを気にして勝手に言い訳して勝手に諦めてた。そうやって時間が過ぎてアレンが生まれて少しはお姉ちゃんらしくしようとして、でも少し⋯⋯⋯⋯⋯いや結構失敗してドジをしちゃったんだ。例えば魔法が使えるって言って幼いアレンの前でやった時があってね。その時に使った魔法は水の魔法なんだけど勢い余って私どころかアレンもびちゃびちゃにしちゃってね。」
ケイ「可愛いですね。」
ヒフミ「可愛いですね〜。」
キサキ(可愛い、ですね。)
クルミ「可愛い?どこに可愛い要素が???」
ホシノ「クルミ、これは私達(元男)には分からない領域だよ。」
クルミ「そういうもんか。」
そういうもん、ということにしとこう。
例え異なる世界だろうと、例え最推しの姿になって性別が反転していようと。
俺は女心なんて分からないらしい。
かつての女上司を思い浮かべながらアンナの言葉に耳を傾ける。
アンナ「あはは、口に出すと恥ずかしいね。で、その時にね『やっちゃった』って思って、正直ね。怖かったの。『失敗した』と思い込んで両親よりもアレンに嫌われたくないって思って、けど言葉が出なくて。そんな事を知ってか知らずか、その時のアレンが『すごい』って褒めてくれたんだよ。」
意外、てっきり泣き喚くのかとばかりに。
アンナ「その時が初めてかな?両親以外に褒められたの。⋯⋯⋯あぁもちろん両親に褒めてくれたんだけどその時の私は言葉が風みたいに通り抜けてね。あ、話を戻すんだけどその時に思ったの。何がなんでもこの子を守りたいって。でもまだ無知だった私には当然力が無い。そこで幼い私はこう思ったんだ。『力が無いなら力を付ければいい。力を付けるには冒険者になってお姉ちゃんをやり遂げるしか無いって』。」
??????
おかしい。何だか話が飛躍している気がする。
何故?冒険者になろうとした?いやそもそもそんな危険な思考になったのかめちゃくちゃ気になるんですけど。
クルミ「ちょっと待ったー!」
アンナ「どうかしたの?」
キョトンとした顔でクルミに顔を向けたアンナはどうかしたのだろうか?と思いながら声を掛けた。
トンデモ理論を押し付ける社長を相手した時と同じ頭痛を抱えながらぶっ飛びすぎる考えに待ったをかけた。
クルミ「なんで冒険者なのよ!もっと他にあったでしょ!?騎士とか色々⋯⋯⋯!」
アンナ「あ〜、分かる。あの時どうかしてたよ。」
苦笑いをしながら肯定する彼女は俺の反論に分かるわ〜、とも言いたげな顔もしていた。
他の皆も微妙な顔をしていた。
あははと笑っている当人はこっちの気持ちに目を背けて話を続けた。
アンナ「でもね、その時が私が初めて『やろう』と自分の意志で決めたことなんだよ。まぁ、お母さんの故郷がその年に魔王軍によって半壊したっていうのもあったけど。」
クルミ「さらっと重いこと言わないで欲しいんですけど⋯⋯⋯!」
アンナ「ご、ごめん。反省するよ。」
流石にマズイ発言だと気が付いたらしい。
申し訳ない顔をしながら改めて話す。
アンナ「そこからは必死に頑張ったなぁ。魔法書をせがんだり教会でシスターの人達と一緒に練習したり。あぁそこでミスティールと出会ったのはそこだよ。ミスティールと魔法について議論したりはもちろんだけど読書をしたりもしてね。ミスティールとはいい仲になれたと思うよ。」
アンナの心の中では昔の幼い頃の記憶が渦巻いているのだろう。少し遠くを見ながら歩みを続ける。
アンナ「まぁ色々あってね。十五の時だったかな?一緒に冒険者登録しに行こうってなったの。一番最初に言われたのが『パーティーを組め』ってモグリットさんに。でも言われてもどこと組めば良いのかな分からなくて。試しに組んでみろ⋯⋯⋯って強制的に組まれたのがアドやウェルキーだった。いやぁ、当時はよく喧嘩したなぁ。⋯⋯⋯ウェルキーと。」
キサキ「アドとは喧嘩しなかったのかえ?」
ずっと聞き手だったキサキはそろそろ会話に参加するべきだと判断して(うずうすして)質問を投げた。
アンナ「アドはね、話し上手で聞き手上手。どことでも仲良くなれるっていうのかな?そういう人でね、あんまり喧嘩らしい喧嘩はした事無かったな。逆にウェルキーとはよく喧嘩してあーだこーだと喧嘩してたよ。⋯⋯⋯ミスティールと。」
クルミ「ちょっと!倒置法しないでよ!あとくどい!」
アンナ「⋯⋯⋯⋯やっぱり私、場を和ませるの苦手だ。」
ホシノ「一度目は面白かったよ。二度目は空気が凍ったけど。くどいから一回だけにしといてね。」
アンナ「はい。」
しょんぼりしたアンナは重いこの空気感をどうにかしようとしたらしい。
盛大に空振りをかましたが。
アンナ「んん!それで喧嘩しながらも実力を伸ばしていって、順調にランクをあげて次はAランク⋯⋯⋯なんだけど。」
アンナの言葉は次第に自信を無くしたように声が小さくなっていく。それにどこか覇気が薄くなっているような?
クルミは与えられた超人的な聴力で他の皆にはあまり聞き取れなかった言葉を正確に聞き取り催促する。
クルミ「なんだけど?」
彼女はその言葉を聞いて、意を決したように再び喋り出す。
アンナ「Aランクに挑んで約二年、気付かされたよ。私にはAランクはいけてもSランク、つまり『英雄』にはなれないって。⋯⋯あぁそんな顔しないで。分かってる。自分を否定したくて言った訳じゃなくて⋯⋯⋯!⋯⋯⋯⋯高みを目指す上でどうしても立ち塞がる壁が存在するでしょ?その『壁』がね。どうやったって越えられないって悟ったんだよ。決定的なのはあの『竜殺し』かな?その時にとあるここの都市とは違う都市の依頼を受けていて、その時の依頼が風竜フートロスの討伐の手伝いなんだけど。その依頼開始時にね、見たんだよ。『竜殺し』が、あの英雄でなければ倒せないと思わせる圧力を放った風竜がいとも簡単に両断された所を。しかも空中にいたんだよ?しかもそれを地上にいた状態で、たったの一振りの剣閃だけでだよ?あれは、凄かった。そして理解したんだ。あれは規格外だって。自分は決してあの領域には辿り着けないって。」
その声は震えていた。声だけじゃない。熟練者の証であり、ベテラン中のベテランと称されるBランク冒険者の証明であるミスリルのプレートが震えていたのだ。それだけでどれだけ恐ろしい存在なのか察せるというもの。
何度でも言おう。アンナ·ウルスタは弱くない、むしろ冒険者としては強い部類だ。
ただその『竜殺し』が『英雄』と称される程の規格外な、常識外れな強さを持っていただけで。
その『竜殺し』は一体何者なんだろう?この世界には英雄と称される人物はどれほどの数がいるのだろう?
そしてそんな英雄を持ってしても倒せなかった魔王とは一体?
そんな疑問が俺の思考を埋め尽くすが一旦それを振り払ってアンナの言葉に耳を傾ける。
アンナ「話を戻すね。そんな状態で過ごしたある日にね、君達が現れたんだ。あの頂点捕食者を吹き飛ばす姿でね。⋯⋯⋯それで思ったの。君達みたいなあの英雄と同じくらい強いなら私の家族を守れるんじゃないかって。」
クルミ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。」
言葉が出ない。息が詰まる。胸が突っかかる。色んな表現があるけれど俺の状態はそんな生ぬるい言葉では言い表せなかった。
自己嫌悪することに頭が一杯だった。
アンナ「これで分かったかな?二つ目の理由。」
ホシノ「私達が強いから、でしょ?」
肯定の意を示す行為、首を縦に振った。
アンナ「あ!もちろん人柄もあるよ!たとえ強くてもアレンに害を加えるような輩はお姉ちゃんが許さないからね!?」
ホシノ「あ、うん、分かってるよ。」
アンナが全力で、お姉ちゃんを遂行しているのを見て思わず素で返してしまったホシノ。
アンナ「⋯⋯⋯だからね、もしも私に何かあったら、お願い。私のアレンを、家族を守って欲しい。お願い。」
スゥと息を呑み精一杯お願いするアンナは一人の立派な冒険者でもあり、家族を護らんとするお姉ちゃんでもあった。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯ハァ。本当に嫌になる。自分の出来損ない具合には。こんな顔をさせるなんてさぁ。
クルミ「分かった。」
俺は誓おう。天津クルミとして生きていく時と同じくらいの決意を持って。
クルミ「アンナ、お前の思いは、確かに俺に引き受けた。安心しろ。例えお前が死んでも一生この事は覚えているよ。だから、そんな顔すんな。」
『クルミ』エミュを忘れて、やや乱暴な言葉遣いになってしまったが、それでも構わない。
大事なのは言葉遣いじゃなくて、心意気だと思うから。
ケイ「アンナさん、クルミだけではありません。私もその願い、果たしてみせましょう。」
アンナ「ケイ?」
ホシノ「うへ〜、リーダーを無視して決めるなんておじさん、びっくりしたよ〜。⋯⋯⋯でも私もクルミとケイと同じ気持ちだよ。」
キサキ「ですが簡単に死ぬ、なんて言わないでください。アンナさんは最後まで生き抜く気持ちを持ってください。それは案外、人を大きく成長させる一つの要因にもなり得ますので。」
ヒフミ「私にどれだけ出来るか分かりませんが、アンナさんの願いは全力で果たしてみせます!」
聞き手に徹していたケイだけではない。ケイやホシノ、キサキにヒフミとアンナの親切を返そうとしていた。
スタートラインに立ててもどう進めればいいのか分からなかったシャーレ一行を導いてくれたのは間違いなくアンナだった。
なら恩を返さなければなるまい?
それが最推しの生徒になったのなら尚更。
そうでなければ顔向け出来ないというもの。
感極まったように、目元に涙を浮かべたアンナはすっきりしたような笑みを向けながら振り絞るような声で。
アンナ「クルミ、ケイ、ホシノ、キサキ、ヒフミちゃん。⋯⋯⋯⋯⋯皆、ありがとう。」
深い感謝を送るのだった。
⋯⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
クルミ「あのさ、凄く言い辛いんだが、いいか?」
アンナ「ん?何?」
疑問に思ったクルミは問うた。
クルミ「最後の理由って何?」
例えこのしんみりとした空気を壊しても。誰かが言わなければなるまい?だってスゲー気になるんだから。
アンナ「⋯⋯⋯⋯⋯あ。」
この人、さては忘れてたな?
ジト目で向けたのは俺だけじゃなかったようだ。
アンナ「ちょ!ごめんごめん!ホシノもそんな顔しないで!んん!」
本日でn回目の咳払いをした後、三つ目の理由を話し出す。
アンナ「三つ目の理由、それはね。君達に憧れたからだよ。」
クルミ「というと?」
何となく分かるが、ここは敢えてアンナの口から言葉を出すように促す。
やや意地悪に。
するとこいつぅ〜とでも言いたげな顔でクルミを見た後、ええいままよ!と奮起して言葉を吐き出した。
アンナ「私はね、英雄じゃない。英雄にはなれない。だからこそ憧れるんだよ。君達みたいな英雄にさ。誰も倒せなかった強敵を倒して、この都市に熱気を込めさせて、世界にたとえ僅かでも光を灯す存在なんて、『英雄』って言葉しか似合わないよ。⋯⋯⋯あ、君達の場合だと『イレギュラー』の方が正しいかな?」
ホシノ「英雄でお願いします。」
お返しとばかりに意地悪な言葉遣いを送るアンナにまいったを掛けるホシノはクルミにお〜い〜?と目を向け、クルミはそれに目を逸らした。
何故そんな目で見る?そんな目で見んな。
アンナ「まぁとにかく、そんな訳で英雄の君達を助けたいっていうのが三つ目の理由だよ。これで分かったかな?」
クルミ「あぁ、分かったよ。十分理由になった。」
疑うのは何も悪いわけじゃない。だがやっぱり何事も疑い過ぎるのも良くない。
何事も程々が一番なんだろう。
『世界は英雄を欲している。』
誰が言ったのか忘れてしまったが、この世界もきっとそうなんだろう。
俺は『英雄』になれるのだろうか。
そうやって天津クルミは遠く見えるウルスタ家の家に目を向け、前から聞こえる陽気な声に耳を弾ませながら英雄とは何かについて深く考えるのだった。
???
とある国で、人知れず、人が誰も寄り付かない魔境で、頂点捕食者と呼ばれる存在同士の戦いが繰り広げていた。
片や高慢にして傲慢。己が最強だと疑わない絶対的強者。
片や自然の暴の化身にして雄大。死闘を好む暴君。
『英雄』でなければ太刀打ち出来ない怪物達は己の全てを掛けてこの長い長い因縁に終止符を打つべく全力で力を振るっていた。
時に傲慢の強者と暴君は己の強大な力に任せて相手を殺すべく力強く爪と爪をぶつけ合った。
時に傲慢の強者は相手にはないアドバンテージを用いて確殺しようとした。
時に暴君は自慢の肉体に身を任せて強引に傲慢の強者に手痛い一撃を叩き込んだ。
ガジィン!!ドゴォン!!ザァン!!
その音はとても生物同士がぶつかった音とはとても思えないほどに重厚な金属音のように響き渡り、雌雄を決した戦いを繰り広げた。
辺り一帯は破壊痕で埋め尽くされ、自然豊かなこの地域は、今や荒れ地と化していた。
そんな激闘の中、遠くで見ていた存在がいた。それは主人の命令を完璧に答え、そして暴君に敗れた猟犬だった。
猟犬の体からはあちこちが流血し、傷がない箇所など存在しなかった。猟犬は傲慢な主人の足を引っ張ると判断し、遠くで安静にしていたのだ。
猟犬は遠くから主人を見ながら思考しこれまでを振り返っていく。
これまで幾度もなく主人は暴君に挑まれ、そしていつも引き分けに終わっていた。
猟犬である自分が加わっても忌々しい事に、暴君を打ち倒すことは出来なかった。
これは長きに渡る縄張りを掛けた争いでもあったのだ。
この世界では力の強弱に関係なく起こるものだ。
そして決着が付かない縄張り争いなんて存在しない。
⋯⋯⋯⋯⋯あぁ、どうやら決着が決まったようだと猟犬は思考を止めた。。
ガァァァアアアアアアア!!!
勝者にのみ許される雄叫びが響き渡る。己がこの新たな地域の王であると宣言する。
いくつもの傷を負って尚、猛々しい姿。
雄叫びをし終わった勝者の暴君は敗者の傲慢の強者は足を引きずりながらも全力で逃走を開始した姿を鼻で笑った。足の負傷というハンデを背負っていたとしても傲慢の強者は人外特有のスペックを持って規格外な速度で走り出した。背中にある翼は所々破れているのもあってこれは地を這うに等しいと感じた傲慢の強者は屈辱に身を焦がし、生きる為に自慢の牙にヒビが入るほど噛み締めた。
それを見た瞬間、猟犬もまた走り出した。
己は猟犬。例え主人が敗者になろうとも付き従うのが『猟犬』の役目なのだ。
そう思考しながら後を付いていった。
敗者の後ろ姿を見ながら暴君はまだ満足しなかった。打ち勝って尚まだだと感じた。確実に息の根を止めてこそ勝利だと思い込んでいるから。
出来れば道中でまた己の全てを賭けるに相応しい強者と出会えたら良いなと考えながら。
※ちなみに前の話ですと分かりづらいと思いましたので前話含めて今話でシャーレが探索している日はモグリットが朝時々向かってくる魔物を片手で斬り伏せながら最高速度で領主様の所へ行き、領主様がホシノ達一行パーティー名『シャーレ』にお礼にと王金貨を沢山プレゼントし、そして明日の正午、つまり探索日の正午でちょうど戻ってこれてかつ部下がやり終わった書類作業が纏った時間帯でクアトル城塞都市の代表者が『とある予算』を使って急いで報酬金を用意している日です。まさに激動の一日。
風竜フートロス 『竜殺し』と呼ばれるようになった人物が最初に倒した竜。風竜は防御力が低い代わりにスピードに割り振った竜。空中から超高火力の風のブレス(肺活量を活かした衝撃波)をぶっ放すヤベー竜⋯⋯⋯⋯なのだが。悲しいかな。その人にとっては関係無かった。風竜フロートスはその力を振るう事を許す事無く、軽く振っただけで両断された哀れな竜であった。