アトランティスの黄昏   作:アビス・アッカーマン

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『キサキ(水着)』が実装されましたが龍院キサキには『キサキ(水着)』のスキル等は使えません。イレギュラーですからね。

皆さん、大変お待たせしました。ご都合展開はもう効きません。後はその人達の実力で頑張ってもらいます!


13話 ゴブリン狩りへ行こう!

 

冒険者協会 クアトル支部

 

アンナさんの衝撃の告白をした翌日の朝、私達はアンナさんからの頼みで冒険者協会へ足を運んでいた。

 

何だろう?と思いながら足を運んだ瞬間、出会い頭に『ブライトエッジ』のウェルキーさんが挨拶もそうそういきなり⋯⋯⋯。

 

ウェルキー「今からゴブリン狩りへ行くぜ!」

 

シャーレ「「「「「ゴブリン狩り?」」」」」

 

物騒な話をしてきた。

 

 

エーテルリアの森

 

エーテルリアの森はクアトル城塞都市の東にある森林で構成された地帯で、死の森とは別の森らしい。今から狩りに行くゴブリンもだが、グレイウルフっていう名前通りの狼とかグリーンバッグという緑の体毛で覆われた猿とか。そういう森に住む魔物達が生息している森とのこと。死の森による影響で他の森の魔物よりも数ランク上って言っていた。もしかしてゴブリンもまた強い魔物なのかな?

 

そう考えながらアドさんの説明に耳を傾ける。

 

アド「今から狩りに行くゴブリンはこのエーテルリアの森を抜け、近隣の街道を進む商人を襲っているという報告を受けた冒険者協会と大至急討伐してほしいという商人からの要望で依頼が出回ったんだ。ゴブリン狩りは『この都市では』簡単な部類なんだ。報酬も上手いし、討伐も油断しなければ楽に攻略できる。だから我こそは⋯⋯⋯と冒険者同士で奪い合いになるんだけど。そこを俺達が誰よりも早く手に取ったから、冒険者としては新米の君達の為に一緒に依頼をしようと思う。⋯⋯⋯⋯⋯って聞いてるのか?」

 

ホシノ「⋯⋯⋯⋯⋯う、うん。聞いてるよ〜。私達のためにありがとね〜。」

 

ぎこちなく返す私に怪訝な顔をするアドさんやウェルキーさんだが、ミスティールさんが「昨日と今日とで激動の一日を送っているのですからなんですから。」と宥めていた。顔は見えないが他の皆も私と同じ微妙な顔をしているんだろうな。

 

そんな雰囲気の中アンナさんもまた微妙な顔をしていた。そりゃ(あんな告白を赤裸々にしたんだから)そう(微妙な顔に)なる。

 

んん!と咳払いで場の空気を変えてアドさんは説明の続きをする。

 

アド「エーテルリアの森はゴブリンにとって最適な環境だ。奴らは臆病だから隠れる場所がある森は最高と考えているからな。奴らでも狩れる獲物もいるし、水もある。家や武器を作る資源もある。おまけに僅かだが死の森から流れる魔素で強くなる。ま、ここに住む俺たちにとっては大して変わらないんだがな。」

 

キサキ「一つ質問したいのじゃが、良いか?」

 

アド「ん?あぁ良いぞ。遠慮なく言ってくれ。」

 

キサキ「⋯⋯⋯魔素とはなんじゃ?」

 

私も気になっていた。魔素は魔力と何が違うんだろう?

 

ミスティール「そこは説明します。」

 

スッと手を挙げて我こそはと名乗り上げたのは(ケイによって勝手に同志判定を受けた)ミスティールだった。

 

ミスティール「魔素とは目に見えない魔力が目に見えるほどに異常なまでに高密度に集まったことによって白い霧状となっている魔力の事を指します。自然の魔力は濃度が高くなればなる程に我々人間だけでなくあらゆる生物の生存的な強さ、あぁ分かりやすく言うと身体能力などを上げる効果を与えるのですが、魔素の場合だと違います。『濃度が高すぎるんです』。肉体が魔素の力に耐えられず、肉体が『適応しよう』と変異を起こすんです。変異した存在は魔素から与えられた力に溺れ、狂い、暴れ回るんです。強さはその存在の強さで変わりますが、はっきりと言えるのはあり得ないくらいに強いということです。そして変異した存在は二度と元に戻ることはありません。」

 

長く、重い説明を一旦区切り、今も沈黙している私達に向けて忠告をした。

 

ミスティール「もし、仮に、です。もしその変異した存在、それも魔人と呼ばれる変異した人間と出会ったのなら。悪い事は言いません。すぐに逃げてください。」

 

クルミ「⋯⋯⋯⋯⋯もし、逃げられない時はどうすればいいの?」

 

クルミの当然の質問にミスティールは無慈悲に告げた。

 

ミスティール「その時は、その者を楽にしてあげてください。普通は出来ませんが、貴女達ならそれが出来るはずです。」

 

ノブレス・オブリージュという言葉がある。

 

力ある者には大いなる責任が伴う。

 

その言葉の意味を彼女達は初めて理解した。

 

 

 

 

ゴブリン。地球においてそれは異世界ファンタジーでメジャーな敵であり、最初に登場し主人公に倒されるような雑魚敵としても出てくる存在(偏見)。

 

じゃあ異世界であるアトランティスにおいてゴブリンとは何か?

 

ゴブリンとは森に住む臆病な魔物であり、『油断しなければ』倒せる雑魚という立ち位置な魔物だ。

 

村を作ったり独自のルールに従って役割分担をし、道具を作って狩りをするなどまるで人間のような行動をする。また臆病な性格のため自分達よりも弱い存在には手を出さず、強敵が出たならすぐさま逃げるか、なす術なく蹂躙されるような魔物。

 

では戦闘能力はどうなのか?

 

それは上にもある通り『油断しなければ』勝てるレベルだ。

 

そう、『油断しなければ』、だ。

 

個の戦闘能力は低くても、例え頭脳がバカであっても、武器が木の棍棒や石であったとしても。

 

彼等は集団で暮らしている。そして知能は決して低くはない。

 

某小鬼殺しも『ゴブリンはバカだが間抜けじゃない』という言葉が存在するように、彼等に『油断』という慢心をする者は、死、あるのみだろう。

 

彼等はランクでいうとE。

 

ゴブリンは弱いという一般認識で油断し、自分の力に慢心して、見習いに分類されているのが拍車をかけ、Eランクの新米冒険者がよく依頼を受け、そしてその約六割が命を落とす魔物。

 

それが、ゴブリンという魔物だ。

 

 

数十分歩いた私達は湿度が高いせいかジメジメとしたこの森の開けた場所へ辿り着いた。

 

周りには道具で切り倒された木の残骸が散らかっており、草むらは踏み潰されていた。

 

だから私達は数少ない隠れられる所で身を隠し前方へ目を向けた。

 

そこには討伐対象のゴブリンが大勢いた。

 

薄汚い緑の体色、凶悪な顔立ち、両耳が異様に長く、ギラギラとした狡猾な目。

 

うん、間違いない。確実にゴブリンだ。

 

それに簡易的な櫓や家もある。急ピッチで短期間で仕上げたらしくかなり雑だけど。

 

横に目線を向けて隣りにいるアドやウェルキー、ミスティールと同意と確認の意を示す。

 

やはりおかしい。数が尋常じゃない。大体六十匹もいる。基本的に二十から三十匹で集まるから倍近い数なんて、意図的に集まらなきゃいけない。

 

異変は他にもある。奴等の様子が焦っているような、想像を絶する存在に出会ったような。そんな絶対的恐怖を植え付けられて生き急いでいるような、そんな顔をしている。

 

この事をアド達と共有して今すぐに議論したいところだけど今回は『シャーレ』にアレコレを教えるための依頼でもある。こういうのは後でやるべきだろう。

 

私の意志を汲み取ったアドは再度確認の意を仲間達に目線と僅かな表情で伝え、戦闘準備を取った。

 

それに続いて背中に背負っている杖に手を掛けていつでも魔法の準備を始められるようにする。

 

奴らは臆病だから私達が脅威と見るやいなや即座に逃走する。だから奇襲による速攻で倒す。勇者達でいう『電撃戦』という奴だ。

 

後ろにいる『シャーレ』の面々を見る。

 

英雄のような力を持つ彼女達にとってゴブリンを蹂躙するのは簡単かもしれない。けど、この依頼で教えるべきは技術とか戦術とかじゃなくて冒険者としての義務とか責任とか。そういう精神論を私は教えたい。

 

いずれこの世界を救うかもしれない、未来の英雄に。

 

アンナ「じゃあゴブリンの攻略法を⋯⋯⋯⋯⋯。」

 

クルミ「ねぇ、これって最高速度でゴブリンを蹂躙すればいいんじゃない?」

 

へ?

 

ホシノ「それもそうだね〜。よーし!クルミちゃんは前線でタンクの役割を。ヒフミちゃんはキサキちゃんが指定した場所にペロロ様人形を投げて集団を釘付けしてね。キサキちゃんは変わらず支援をお願い。ケイちゃんはチャージせずに連射して逃げようとするゴブリンを片っ端からぶち抜いて。私は攻撃に転ずるよ。範囲攻撃は任せて〜。」

 

あちょ待っ⋯⋯⋯⋯。

 

ヒフミ「分かりました!役立てるように頑張ります!」

 

キサキ「うむ、期待に応えるため、支援をしよう。」

 

ケイ「ケイちゃんフィールドは必要無いでしょうね。」

 

ホシノ「うーん、確かに。でもアドさん達にもバフは大事だと思うから後衛に展開してね。」

 

ケイ「かしこまりしました。任せてください。」

 

あれぇ〜〜???

 

私の顔はきっと愕然としているだろうな。だって色々教えようとしたらもうこの子達は既に作戦会議が終わっているもん!

 

私を置いてきぼりにしたホシノ達は今やイケイケドンドンとゴブリン攻略をしようとしていた。

 

ウェルキー「ちょっ、ちょっと待ってー!なに勝手に作戦会議をしてんだよ!こっちの話を聞け!」

 

敵拠点の前の為、抑え気味な叫び声を上げるウェルキーだが、そんな事知ったことかと言わんばかりの表情を浮かべるホシノ。

 

ホシノ「え?ゴブリン狩りってようは電撃戦でしょ?奇襲によって生まれた混乱に乗じて一気に殲滅する。逃げようとするゴブリンはケイちゃんまたは私が狩ればいいし。」

 

絶句。絶句した。私が、私達が教えようとした攻略法を彼女達の持つ規格外な力を持って完璧に近い戦術を一瞬で組み立てた。

 

何したらこんな一瞬で戦術を思い浮かべるの?魔物がいない地域で平穏に暮らしていたんじゃないの?

 

んんんん????

 

そんな私達の疑問を置き去りにホシノは今度は申し訳なさそうな顔を浮かべた。

 

ホシノ「⋯⋯⋯ゴメンね。アレコレ教えたいって気持ちを踏み躙って。色々教えたかったでしょ?」

 

アンナ「い、いや良いよ。うん、まぁそうだよね〜。『アレ』を倒せるだけの実力があるんだもん。」

 

ミスティール「流石、女神ロア様から神託を受けただけはありますね。」

 

アド「気にするな。むしろ安心した。安心して背中を任せられそうだ。」

 

ウェルキー「なぁんで私達の方が気を使わされてるんだぁ?」

 

『ブライト·エッジ』のパーティーメンバーはこの時理解した。

 

目の前にいるのは圧倒的な力で皆を安心させるような『英雄』では無い。あらゆる干渉に影響されない『イレギュラー』であると。

 

ホシノ「よーし!私が先陣を切るよ。あ!アドさん達はどうします?」

 

立場が逆になったアドは突然聞かれた質問に虚を突かれるもすぐに立て直して切り返す。

 

アド「あ、あぁそうだな。ゴブリンの退路を塞いで挟み撃ちの状態にしようと思う。そうすれば安心してゴブリン狩りに集中出来るはずだ。」

 

クルミ「いやそれはダメでしょ。」

 

ウェルキー「?それはなんで?」

 

当然疑問にクルミは至極真っ当な答えを出した。

 

クルミ「だって流れ弾がアンナ達に当たるかもじゃない。この世界の銃がどんな感じか分からないけど、私達のやつは高性能よ?当たったら最悪死ぬわよ。」

 

アド「それもそうだ。」

 

 

数分後

 

 

作戦会議の結果、一緒に攻略するという事になった。

 

 

作戦はホシノが数個の手榴弾で混乱を作る(ヒフミのバックから取り出した)。その後にアンナが正面の櫓を破壊し他のメンバーは一気にゴブリンに攻め込む。アドとクルミは最前線でゴブリンの攻撃に対処してウェルキーとアンナ、ホシノ、ヒフミはその援護。ミスティールとケイ、キサキはバフとサポートとなった。

 

アンナはヒフミの顔を見て安心する。

 

戦闘前にフレンドリーファイアが怖いと不安がっていたヒフミだが試しにやってみろよとウェルキーの励ましもあって覚悟を決めたようだ。

 

ホシノは手に持った手榴弾の安全ピンを外し中央、それも密集している場所へ投げ込んだ。続いて二個三個と投げ込んでいく。

 

綺麗な投法フォームで投げ込まれた手榴弾はホシノが狙い付けた場所へ理想通りに届き爆発を引き起こす。

 

遅れて爆発が森を響き渡らせゴブリン達の汚い悲鳴が上がった。

 

 

戦闘開始

 

討伐依頼 エーテルリアの森のゴブリン狩り

 

討伐難易度 D  

 

ブルアカ的難易度 ハード

 

 

 

 

そこからは一瞬だった。たった数十秒でゴブリン狩りは完了した。私が魔法を放って対象のゴブリンを倒そうとしたその次の瞬間には骸と化していた。アドは剣を振るう前にクルミのジュウでその殆どを撃ち殺していた。ウェルキーは援護をする暇もなくただ呆然と眺めているしかなかった。ミスティールはバフを掛ける必要が一切無かったからウェルキーと同じく眺めていた。

 

本当に一瞬だった。クルミが邪魔になるゴブリンを撃ち殺して、ホシノの圧倒的な制圧力で正確無比に音が鳴るたびにゴブリン達をただの骸にした。ケイが大砲で横に逃げようとするゴブリン達の退路を塞ぎ、キサキのバフを貰ったヒフミが謎の気持ち悪い鳥?の人形を投げてゴブリン達のヘイトを集めた。その類稀な連携とその理不尽なまでの力で相手に何もさせず完封した。

 

一方的な殲滅。完璧な電撃戦。完全な勝利。

 

普段なら喜ばしい事なのに私の心は複雑だった。

 

蹂躙した『シャーレ』の強さに対する凄さ、英雄的な蹂躙劇に対する畏怖と熱、何も出来なかった事に対しての情けなさ、隔絶された壁に直面した時と同じ諦観。

 

あぁやっぱり。私は『英雄』にはなれない。

 

お疲れー、と言葉を交わす『シャーレ』の姿を見ながら私はこの胸の奥にある気持ちを押し殺しながら、一歩前へ歩みを進めた。





女神ロア(この程度、出来て当然です。むしろこれくらいやってもらわなければ世界滅んでしまうので、この依頼で慢心せず次の運命に備えて欲しいですね。)



近代兵器を持った精鋭部隊を剣と魔法のファンタジー世界にぶち込んだらそうなるよな。ゲートっていうアニメ見れば分かる。
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