水着万魔殿全員実装おめでとう!
新規コンテンツ!ゲヘナメンスト!ガチャ仕様変更!
⋯⋯⋯⋯⋯ガチャ仕様変更?大丈夫かこれ?
まぁ変わろうが引きますけどね水着イブキは。
別の話になりますがヤバいです。このままだと二週間投稿になってしまいます。
誰か助けてー!
クアトル城塞都市 ウルスタ家
ゴブリン狩りから数日が経った。討伐した証であるゴブリンの左耳をイヤイヤながらも全て切り取った後、帰路に着いた。帰り道の時のアンナさん達の様子を見て、なんというか申し訳無い気持ちが込み上げてしまうくらいには様子が変だった。
ゴブリン狩りの討伐報酬で奢った夕食で許してくれたらと良いんだけど⋯⋯⋯。
そう思いながら手元のショットガンを手入れする。タオルで拭き拭きしたり分解してちりなどを落としたり。
いくら神器で壊れないと言われても、元日本人たるもの。使う道具は丁寧に手入れしないとね。
アレン「クルミお姉ちゃん!お姉ちゃんはいつ帰ってくるのー?」
クルミ「さぁ?すぐに帰ってくるんじゃない?」
アレン「でも数日経ってるよー?こんなに遅いなんて最近なかなかないもーん!」
最初は弱かったから日帰りなんて滅多に無く帰りもかなり遅かったけど、実力が身に付くにつれて、家に帰る時間も早くなっていったんだろう。
ぷくっと頬を膨らませてクルミちゃんに拗ねている姿にクルミちゃんは苦笑いを浮かべ、アレンちゃんの頭を優しく撫でる。
クルミ「アレンのお姉ちゃんは強いからきっとすぐに帰ってくるわよ。⋯⋯⋯にしてもケイのやつ、遅いわね。報酬貰いに行くのにどんだけ時間掛かってんのよ。」
ケイちゃんとキサキちゃんは最初に倒したデスワームくんの素材の換金に行っていた。あの巨体の素材なんて誰が欲しがるんだと思っていたけど、アンナさん曰くあれは錬金術や魔法の研究で使われるとのこと。
今回討伐されたグラスランド・デスワームの噂は王都でも広まり、その噂を聞きつけた天才技術者・白鳥ウタナがわざわざクアトル城塞都市の冒険者協会まで駆け付け『全て買い取る!』と王金貨の山をモグリットさんに叩き付けたらしい。
と、昨日受付嬢が言っていた。書類作成等があったため、後日来て欲しいとの事だったからあの二人に行かせたけど大丈夫かな?特にケイちゃんは変態だからなぁ。ケイちゃんが問題起こさなければ良いんだけど⋯⋯⋯。
ちなみにヒフミちゃんは庭でクルセイダーちゃんを掃除している。一人で大丈夫?と声掛けたけど『大丈夫ですから!』と、一人で頑張ると、てこでも動かなかった。
※ちなみに庭にクルセイダーちゃんを出した時にそれを目撃したウルスタ家の皆さんが驚きのあまり大声を出していた。
そんな緩やかな平穏は突如として終わりを告げた。
バタバタバタバタバタン!!
ケイ「ホシノ!クルミ!今すぐに冒険者協会へ来てください!!」
外からバタバタとした音が鳴ったかと思うとあのケイちゃんが品性のカケラもない乱暴な方法でドアを開けた。
そのあまりの急変ぶりに何事かと気持ちを切り替える。
クルミ「ケイ、何があったの?」
ケイ「今この場で話している余裕なんてありません!今すぐに!支度してください!!」
クルミ「⋯⋯⋯分かったわ。アレン、悪いけどお留守番できる?」
アレン「う、うん。出来るよ?」
ホシノ「訪問する人が来てもすぐに対応しないでね?」
アレン「わ、分かった⋯⋯⋯。」
あまりのケイの切羽詰まった表情に怖じ気付くがクルミとホシノのお願いに応えていく。
ホシノはアレンにお願いしている間に軽く荷物を纏め、愛銃を背負うと急げと催促するケイを通して冒険者協会に目を向けた。
冒険者協会 クアトル支部
モグリット「皆、揃ったな?これより緊急会議を始める。皆は一字一句聞き逃さないように。」
モグリットの厳格な声が冒険者協会の広場に響いた。
この広場は受付カウンターや依頼ボードだけでなく、相談するための机や椅子が数多く設置されており、大人数が詰め寄ったとしても余裕を感じるほど広いこの空間は今、依頼を受けて出発した冒険者を除く全ての冒険者が集まっていた。当然『シャーレ』の姿もあるが、まだ帰ってきていないのか『ブライト·エッジ』の姿は無かった。
何事かとひそひそと会話をしていた冒険者達はモグリットの声を聞いてすぐに口を閉じ、続く言葉に耳を傾けた。
モグリット「ここに集まってもらったのは他でもない。最悪の場合、このクアトル城塞都市が落ちる可能性が高い。それほどの報告が伝わったからだ。」
ニクス「その報告とは?」
この場の冒険者達を代表してAランク冒険者のニクス・メステウスが質問した。
モグリット「それは、ここクアトル城塞都市の東側にあるエーテルリアの森の更に奥、アギール帝国の森林地帯でその地域の頂点捕食者同士の縄張り争いがあった。」
アギール帝国の森林地帯。その地名を聞いてピンと来た冒険者が数多くおり、「あぁ、あそこか。」と理解した者が多かったが、ホシノはそこがどんな場所なのかさっぱり分からなかった。
ホシノ「ねぇ一つ聞いても良い?」
その言葉にこの場にいる冒険者達の視線がモグリットからホシノへ移るが当の本人はどこ吹く風といった具合で質問をした。
モグリット「良いぞ、なんだ?」
ホシノ「そのアギール帝国の森林地帯ってどんな場所?」
その言葉を聞いて鼻で笑う者もいたがモグリットの隣りにいたトゥーナが即座にその者を睨みつけ、その者は沈黙した。
モグリット「そこは東のエーテルリアの森と隣接している森林地帯であり、こことは比べて魔物の数が少ない。何故かと言うと頂点捕食者同士が常に縄張り争いをしているからだ。」
新米冒険者のホシノの質問に遠慮なく答えていくモグリットは、分かりやすく説明していく。
モグリット「縄張り争いをしているのは二体⋯⋯⋯いや厳密には三体。元々その森林地帯の頂点捕食者は火竜ルインカイトで長年その地の頂点に君臨していたんだが、そこに別の地域から来た頂点捕食者ブラッドサウルス・レックス、個体名スカーグラッジが現れ、以後火竜ルインカイトと激闘を繰り広げたんだ。」
ホシノ「そのもう一体は?」
モグリット「ヘルホーンハウンド、個体名凶星の名を与えられた魔物だ。その魔物は元々頂点捕食者に相応しい強者だったんだがある日その凶星が火竜ルインカイトと共にスカーグラッジと縄張り争いをしているのを目撃されている。おそらく火竜ルインカイトに戦いを挑み、敗れ、猟犬となったんだろう。」
ホシノ「⋯⋯⋯成る程ね、教えてくださってありがとうございます。」
モグリット「別に良い。知らないのは恥では無い。知らない事を黙っているのが恥だと思っているからな。」
その言葉はホシノだけでなくこの場にいる冒険者達の心に波紋を呼んだ。
確かにその通りだと思う者は深く頷いていた。
ニクス「⋯⋯⋯なぁモグリットさん、まさかとは思うけど。」
モグリット「そのまさかだ。⋯⋯⋯⋯火竜ルインカイトと凶星がスカーグラッジに敗北し逃走した。」
ニクス「な!?」
モグリットの言葉によりニクスだけでなくこの場にいる冒険者達に動揺の波が広がった。ホシノ達『シャーレ』にはそのヤバさは伝わって来なかったが、今分かる情報だけでもそのスカーグラッジはヤバいという事は分かる。
長年の縄張り争いでも決着が付かず、さらに凶星の参戦で二対一になったにも関わらず、相討ちどころか相手を敗走させる程の圧倒的強者。
それだけで尋常ならざる強さは十分に伝わる。
ニクス「スカーグラッジが火竜と凶星を同時に相手にして勝つなんて⋯⋯⋯!なんてバケモンだ!⋯⋯⋯⋯っ。待てよ。モグリットさん、今『逃走した』って言ったか!?」
モグリット「その通りだ。三日前、火竜ルインカイトと凶星はこのクアトル城塞都市付近まで逃走し、今はエーテルリアの森に潜んでいる。」
その言葉は動揺した冒険者達をまるで奈落へ突き落とすような情報だった。
それは『シャーレ』もまた同様だった。
ヒフミ「あ、あの!ケイさん!もし間違えたら申し訳無いんですけど、あの、その!」
ケイ「無理せず落ち着いて言ってください。」
ヒフミの言葉に耳を傾けるケイの顔は必死に感情を抑えようとするも溢れ出してしまった顔であった。
ヒフミ「スゥ⋯⋯⋯⋯ふぅ。⋯⋯⋯アンナさん達は今日から数えて三日前に『エーテルリアの森がおかしいからそこの依頼を受けてくる』って言って出発しましたよね?」
ケイ「⋯⋯⋯えぇ、そうですね。」
言葉に感情を乗せるのを我慢しながら答えていく。
ヒフミ「あの、えっと、アンナさん達が帰ってこないのは、その火竜がげんい⋯⋯⋯⋯。」
ホシノ「そんなわけない。」
静かに、けれど強い口調でヒフミの言葉を遮るホシノ。
ホシノ「ヒフミちゃん、まだアンナさん達が帰ってこない、なんて確証なんてどこにもない。帰れる確率はまだある。だから、そんな事言わないで欲しい。」
有無を言わせないホシノの言葉はアンナ達は生きているという希望的観測と、ほんの僅かな確率しか無いが可能性はあるという奇跡に縋るような言葉であった。
しかし、その言葉はその通りだと、動揺したヒフミを納得させた。
モグリット「火竜ルインカイトと凶星はエーテルリアの森に潜んでいる。それは確定だ。しかし、潜んでいる具体的な場所までは分からない。それに日帰りで終わらず、一日二日と時間が掛かるエーテルリアの森関係の依頼を受けた冒険者の数は少なくない。よって!調査兼保護するチームを組む!Aランク冒険者パーティーを中心としたチームを構成し、火竜ルインカイトと凶星の居場所を特定。それと並行してエーテルリアの森に行った冒険者の保護!これを同時に行う!Aランク冒険者パーティーの皆には悪いが、君達の場合は強制参加だ。意見は受け付けん。」
ニクス「スゲー無理難題を押し付けるじゃん。まぁでもいいさ。クアトル城塞都市に住む冒険者はこういう事態に備えておけって昔から言われているし。分かったかお前ら!」
ニクスは口では嫌々と言っているが、その顔はむしろ首突っ込ませろと言わんばかりの顔だった。ニクスは後ろにいる仲間達に声を掛け、同意を促した。
モグリット「Bランク冒険者の場合は俺が指名したパーティー以外は原則参加を許さん。当然Cランク以外も同様だが、Aランクとは違ってこっちは辞退しても構わない。それだけ危険だからな。」
その言葉を聞いてケイは思う。火竜ルインカイトと凶星はたとえ敗走しようとも、奴等は化物に等しい頂点捕食者。脅威である事に違いないし、デスワームくんも頂点捕食者と呼ばれていた。おそらく火竜ルインカイトは同等またはそれ以上⋯⋯⋯⋯と考えれば必然的に⋯⋯⋯⋯。
モグリット「例外ではあるがCランク冒険者パーティー『シャーレ』!お前達の場合は強制参加だ!異論は認めん!」
でしょうねと、ケイは次々と指名するパーティー名の読み上げを話半分に聞き流しながら思考していく。
もし遭遇したら今の私達にどこまでいけるか分からない。だから遭遇したら逃げるのが最適だろう。クルミとキサキは逃げるという選択を取れるかもしれない。だが問題はホシノとヒフミだ。ヒフミはウルスタ家と誰よりも親しくしていた。もし仮に火竜がアンナ達を殺していた場合、恐怖と自責の念で動けないのかもしれない。またホシノの場合はこのシャーレのメンバーの誰よりも優しいし責任感もある。さらには力まで備わっている。最悪の場合、交戦という形を取りかねない。
私がしっかりしなければいけない。
そう自分に、言い聞かせた。
モグリット「では、これよりエーテルリアの森探索を始める!関係者は速やかに行動を開始せよ!」
探索依頼 エーテルリアの森の調査及び冒険者パーティーの保護
依頼難易度 A
ブルアカ的難易度 Insane
エーテルリアの森への道
私達はかつて無いほどに準備を整えてエーテルリアの森へ向かった。保護した冒険者が負傷した時の道具や食料、水など。普段から準備を整えていたお陰もあって一足早く『シャーレ』は出発することができた。
早く出発しようとする私達を見て『早すぎだ。』とニクスさんに言われていたけど、そんな意見を無視した。私は、私達は一刻も早くアンナさん達を救出しなきゃいけないから。
キサキ「ホシノよ、皆と一緒に探索した方が良かったと思うんじゃが⋯⋯⋯。」
ホシノ「なに?その遅れた時間の間にアンナさん達が死んでもいいと?」
キサキ「そうではない。皆と探索すれば情報の共有ができるから探索範囲も広がり、見落としも無くなるじゃないのか?と考えたのよ。」
ホシノ「あぁ、その意見もあるね。でも、探索に関してはクルミに任せればいいんだよ。クルミは他の誰よりも五感が優れている。私よりもね。だから頼りにしてるよ?クルミ。」
クルミ「⋯⋯⋯オッケー。任せて。」
責任重大じゃんと小さな呟きを漏らすが、アンナ達を助けるのに頭が一杯なホシノには聞き取ることが出来なかった。
ずっとホシノはこの調子だった。ブルアカの『ホシノ』と同じように自分が護らんと全力投球で気を張っていた。僅かな変化も見逃さず、仲間の発言に対して悪い方向に思考していた。『ホシノ』と違うのは、自分に足りない所を他人に任せている事と、意外にも頭は氷のように冷静であった事だった。
しかし、心は溶岩の様なドロドロとした熱を帯びていた。
そんなちょっと嫌な空気の中一時間後、襲ってくる魔物達をたった一人で戦神の如く倒したホシノに少し⋯⋯⋯いや結構引いていたクルミは『ある音』を聞き取った。
クルミ「!ホシノ!叫び声が聞こえたわ!!」
ホシノ「本当!?」
今も襲ってくる討伐難易度Bランクの魔物の群れを片手間に倒していくホシノが即座に反応。クルミはケモミミをピコピコしながら聞こえた叫び声を精査していく。
クルミ「少し年老いた男の声ね。『うおぉぉぉぉ!!』とか、『なあぁぁぁぁ!!』とか。発狂しているような声を出しているわね。」
ヒフミ「いやそれは発狂しているんじゃ!?」
ホシノ「皆!私が魔物を倒しておくから、声の元に向かって!」
情報だけを見るのなら、その声の主は『ブライト·エッジ』の者では無いのだろう。しかしそれでも、ホシノは黙って見て見ぬ振りをするほど非情では無かった。困っている人がいたのならたとえ親しい人が死の危機に瀕していても、切り捨てるような真似は彼女は出来はしなかった。
リーダーの指示を受けたクルミ達は最高速度で叫び声が聞こえる所まで必死に走るのだった。
その男は全体的にみすぼらしい格好だった。ボサボサとした長髪、質素で手入れがされていない寄せ集めのような衣服、ボロボロの草履と一見すれば路地裏に居そうな姿。しかし、その背に背負う竜を射抜けるんじゃないかと思い込む程に大きく立派な大弓が、彼は只者では無いと圧力を掛けていた。
そんな男は地面に突っ伏しながら、己の内にある感情を吐き出していた。
「おおおぉぉぉおお!!うごおおぉぉぉぉおおお!!」
その叫びはやかましいほどに大きく、うるさいと苛立ちが募るくらいに耳に残り、引くほどに狂っていた。
怒り、恐怖、怯え、畏怖、畏敬、戦慄、痛み、苦しみ、熱さ、寒さ。
そして、狂気。
その耳を塞ぎたくなる叫びは、無数の蠢く感情の吐露であり、己を壊した相手に対する恐怖の形でもあった。
「うわあぁぁぁぁ!!うぅ!ぅうう!!うぁぁぁぁ!!」
ただただ叫び続ける。そうでもしなければ自分は内から湧き上がる恐怖に乗り込まれそうだったから。
だが、永遠に感じた恐怖が唐突に終わりが来た。
「うがあああぁぁぁ⋯⋯⋯⋯⋯⋯!!」
クルミ「うるせぇぇぇぇぇえええ!!!」
クアトル城塞都市でも上位に位置するタンクから放たれた怒りの鉄拳は、彼に負けないくらいのツッコミとともに彼の頭部に直撃した。
ホシノ「えーと⋯⋯⋯⋯これどういう状況?」
魔物の群れを倒した後速攻で向かったホシノの目に映ったのは、立派な大弓を背負うボロボロの男とそれに対して治療をするキサキとケイに、うるさいだのなんだのと文句を垂れ流すクルミ、そしてそれを宥めるヒフミというまさに混沌とした状況だった。
クルミ「あんたねぇ!!うっさいのよ!そんなに叫んで、あんた死にたいの??それともまさか魔物を誘き寄せて、自分を殺して欲しかったの??あっち側(天国)に立ちたかったの?ねぇ聞いてるの?聞いてんのかって言ってんだけど!?」
ヒフミ「クルミさん!説教はそこまでにして⋯⋯⋯⋯!」
ホシノ「あー、成る程。文句じゃなくて説教してたのか。」
キサキ「うむ、あやつは叫び続けておってな。遠くからでもよく聞こえる程にな。クルミがうるさいとこの男側に行って殴りつけたのよ。」
ケイ「これでよし。応急手当はしましたが、病院⋯⋯⋯⋯じゃなくて教会で見てもらった方が良さそうですね。」
???「痛ぇ。痛ぇよお!四肢が!四肢が壊されちまった!!俺の四肢も!心も!!」
ケイ「⋯⋯⋯⋯ずっとこんな感じです。」
ホシノ「発狂の苔薬をぶち込みたいなぁ。そう言えば名前は?」
クルミ「知らないわよ。名前とか、なんでここにいるのとか。質問したけど、うわ言ばっかり。」
ホシノ「成る程。じゃあキサキ、この人を街まで運んであげて。」
キサキ「妾が?」
ホシノ「そう、君が。私達がアンナさん達の捜索を続ける。流石に動けない人をこのままにしておくのは、人としてダメだからね。それにこの人叫ぶし。」
キサキ「まぁ確かにそうじゃが。」
ちらっと見ればまた叫ぼうとする男をまた殴っているクルミがいた。
キサキ「あい分かった。リーダーの指示に従うとするかえ。」
キサキを選んだのは消去法だった。
クルミはこのメンバーで一番五感が優れており、この捜索の鍵となる人物のため当然除外。
ヒフミは不安要素があるしまだ子供のため除外。子供とは大人が守るべき宝である。ホシノはヒフミに一番甘く、一番厳しいのだ。
ケイもいいが、今回は火竜と凶星という化物が潜んでいる。もしも遭遇した時、ホシノだけじゃ火力が足りないため、火力要因としての役割を考慮して除外した。
ホシノ自身は当然除外。リーダーでもあり、この中で一番強い人物が抜けるのは流石にまずいと考えたからだ。
よって残すはキサキとなった。確かにキサキのバフが受けられないのは問題があるが、もしもの時に後衛を気にしつつ強敵と戦うのは骨が折れる。
ホシノはそう判断し、キサキにその男の護衛を頼むのだった。
ホシノ「よし、みんな出発⋯⋯⋯。」
しよう。そうホシノが声を掛けようとしたその瞬間。
???「もう、もう戦いたくねぇよぉ。俺が、俺が悪かった。もうお前には挑まねぇ。竜を狩ることだってやめる。だから⋯⋯⋯⋯。」
ホシノ「おい。」
その後悔の言葉を聞いたホシノの中の何かが弾けた。
冷淡な声がその男に伝わる。どこまでも静かな声なのに、内には燃えるような。そんな不思議な声だった。
ホシノ「いま『竜を狩る』って言った?つまりお前はさっきまで竜を狩っていたってことだよね?」
有無を言わせないその言葉は青い炎のようでもあった。
真顔で詰め寄るホシノにその男はあの竜を彷彿とさせた。
それほどの覇気、そして恐怖。
???「あの竜は恐ろしい。強力な爪牙、雄雄しい翼、恐い咆哮、熱いブレス、硬い鱗。そしてあの赤!あぁ!おぉおおぉおおお!」
ホシノ「もういい、分かった。あそこに火竜がいるんだね。」
質問の答えに無っていなかった言葉から、ホシノは火竜は近くいるかもしれないと警戒を強め、森に目を向けた。
あの男が何者なのか、そんな事などどうでも良かった。
これで確定した。
エーテルリアの森は魔境と化したのだと。
そこにアンナ達がいるのだと。
ホシノはその男をキサキに任せ、四人でエーテルリアの森へ足を踏み込んだ。
エーテルリアの森 深部
エーテルリアの森の深部はアギール帝国の森林地帯と繋がっている。そのため、両方の地域の魔物が同種と群れを成したり、縄張り争いをしていたりと浅い所とはまた違った顔を見せる。
この深部は鳥の囀りや木々のざわめきだけでなく、魔物達の声が良く木霊するのだ。
だが、今は嵐の静けさのような、そんな痛すぎる静寂が支配していた。
そんな中、嫌に静かすぎるその森をキサキを除く『シャーレ』一行が歩いていた。
ホシノ「クルミ、まだ発見できそうに無い?」
クルミ「そぉねぇ〜。今ん所見つけれたのはあの男だけね。」
ケイ「火竜がいるのが確定として、問題は⋯⋯⋯⋯。」
ヒフミ「『凶星』、ですか。」
ホシノ「ハウンドって事は犬系の魔物なのかな?嗅覚が鋭いかもだね。」
ケイ「匂いを完全に消したい所ですが、無理ですね。森に入る時に魔道具を使って正解でしたね。察知されるのが遅くなりますし。」
ホシノ「効果切れる前に早く見つけよう。」
焦りが募っていくが、それでも彼女達は探索を止めない。止める選択肢なんて無かった。
アンナからオススメしてもらったデオドライゼーションという魔法が込められたこの消臭剤は読んで字のごとく、匂いを消す魔道具だ。これは衣類だけでなく体臭すらも一時的に消すという壊れ性能を持つ。欠点は効果は約二十分しか効かないという事。そして値段が高いという事だろう。
そんな壊れ魔道具だが、彼女達は残念な事に『イレギュラー』のため、彼女達は衣類に付いた匂いを消せても、体からの匂いは消せない。
魔道具に込められた魔法はイレギュラーには一切効果が無いが故に。
そんな状態なのはクルミは百も承知。買った魔道具だって残り少ない。一刻も早く見つけなければならない。
焦りと共に一歩、また一歩と進んでいくと⋯⋯⋯⋯⋯。
クルミ「!?」
ホシノ「どうしたの?」
先頭を歩いていたクルミは、驚愕のあとに得体の知れない物を見たような顔を見せ、その端麗な顔を歪ませた。
ヒフミとケイはそのクルミの様子に何かあったのだと察し、緊張を高めた。
クルミ「嫌な匂いを嗅いだわ。何かが焼けた匂いと腐敗臭、強烈な獣の匂いもあるわ。」
何か嫌な予感がした。
嫌に思考が加速し、様々な予想をする自分の性格と頭に嫌気が差した。
だから私は。
ホシノ「ならそこへ行こう。正体を突き止めるために。」
クルミ「⋯⋯⋯⋯分かった。」
深呼吸をしたのち、クルミは了解した。
クルミ「は?」
そこは地獄絵図と言っても良かった。
ヒフミ「ひぃ!」
開けたその場所は『赤』一色だった。所々炎が迸っており、今もどこかで焼け切れた大樹が倒れた音が鳴り響く。
ケイ「なん、ですかこれは。」
ホシノ達は草むらに隠れて見ていた。
その目の前に映る、否定したくなるような現実を。
ホシノ「アンナ⋯⋯⋯⋯さん。」
開けた中央には何かと何かが戦った後があった。
右手には小さな人型の群れの焼けた残骸があった。手には燃え尽きた武器が転がっており、今も燻っていた。
左手には三人の炭化した死体と『人だった物』があった。
一人は折れた見事なロングソードを握っており、うつ伏せになって転がっていた。その折れたロングソードは今も尚輝き続けており、陽炎と相まってそこだけ見れば美しいと感じただろう。
一人はゴミのようだった。所々中の肉が見えており、ピンク色の内臓が覗き見えており、濁った片目が虚空を見つめていた。右腕は焼け切れ、その千切れた部位から白と黒が混じった色が見えた。
一人は布に包まれているかのように死んでいた。その者は最後まで神に祈りを捧げていたのかは知らないが、祈りのポーズのまま焼かれたらしい。顔が地面と接触しまるで懺悔するかのような姿だった。
ホシノ「うっ⋯⋯⋯⋯ぁ。」
絶望の眼差しで向けるのは人だった物。
その物は体のパーツが別々に弾け飛んでいた。きっとそれは炎から逃れられたのだろう。しかし死ぬ事は変わらず、何かが強大な力をそのまま振るったかのように胴体部分がグチャッと潰れていた。その衝撃によってパーツは四方に転がっていたのだろう。パーツは若い女性の物で腕や足はすぐに見つかった。そして頭部。その頭部は長い茶髪だった。その茶髪は吹き飛んだ衝撃でぐちゃぐちゃになっており、一部が顔に掛かっていた。またその顔は美しい少女の顔だったのだろう。だが今は、無数の蠅が飛び交い、特に目や断面には蛆の集合体で覆われていた。腐敗臭も凄まじく、吐き気を催す程だ。
その僅かに残っていた瞳はホシノ達を見つめていた。
そしてその近くには、とある少女がよく手に持っていた杖でもあり、ホシノ達がよく目にしていた物でもあった。。
ヒフミ「うぅ〜!ぐっううううぅぅぅ!」
涙を流しながら呻く彼女の姿は痛々しい。そんなヒフミを泣かせたこの地獄絵図に対して、段々と平常心になろうとするこの体が憎くて憎くて仕方が無かった。
なんで涙を流さない?どうして冷静であろうとする?
大切な人達がこうも無惨に死んだというのに。
女神ロアの親切心でこの状況を冷静に思案するこの体。
今はただ、嫌気が差していた。
そんな最悪の状況でクルミがあるものを見つけた。
クルミ「なぁあれ。見てくれ。」
そう指を指した場所には、赤がいた。
まるでこの森の新たな支配者とでも言いたげに。
見事な両角のうち右片方は折れ、翼は治りかけの状態。赤一色の爬虫類のような鱗は所々が欠けていた。爪はボロボロ、トカゲのような顔には一線の傷跡が残っていた。
そんな状態の竜、火竜ルインカイトがそこにはいた。