皆さん!ガチャの結果どうでしたか?私は万魔殿禪院お迎えできてハッピーエンド⋯⋯⋯⋯⋯⋯と思っていました。
ヒエロニムスのTormentでカケラが消し飛んで追加で回すことになりました。お陰で石も結構減りました。
ちくしょう。でもTormentクリアできたので良かった、か?
前方にいるのはまさに『竜』であった。
強大な存在によって打ちのめされ、生き恥を晒そうとも、かの者は紛れもなくこの世界の生物上最強の生命であった。
全長十五メートルはあろうかというその竜は、残された左目でホシノ達を見据えながら。
ホシノ「あ、マズ⋯⋯⋯⋯⋯。」
ホシノがマズイと口にするよりも早く。
ボオオオォォォォォ!!!
火竜ルインカイトはホシノ達を飲み込まんとする強力な火炎ブレスを放った。
その炎は遠くにいたホシノ達を一瞬で飲み込んだ。周囲の木々は超高温によって、バラバラにされ、ゴミのように吹き飛び、その残骸は溶け合い、消滅した。
火炎ブレスによって陽炎が発生し、熱風によってエーテルリアの森はさらなる延焼を引き起こす。
たった一瞬で、大自然を破壊するその力はまさに、頂点捕食者と呼ばれるに相応しかった。
火竜ルインカイトは勝負が付いたと判断し、口を閉じる。
本来なら矮小な人間を弄び、自身の欲求のままに力を振るいたかったが、今はその余裕は無い。
あの忌々しい獣は、己を自らの手で息の根を止めるまで止まらない。それを長年の縄張り争いで分かっている。
ならどうするか?
答えは簡単。他の存在を利用すればいいだけの事。
この森を抜けた先にある小さな人間の街を通り過ぎれば、人間共は後から追ってくるあの獣を『巣を守るため』という名分の元、討伐がされるであろう。仮に仕留められ無くとも足止めくらいにはなる。
全く忌々しいと火竜は鼻を鳴らす。
あの獣から受けた傷を癒す為に己の犬を狩りへと向かわせたはいいが、まさか自ら手を下すことになろうとは。
己は最強と謳われる竜。無闇矢鱈に力を振るうなどあってはならないというのに。
まぁいいと頭を振り、目の前の破壊された森から視線を外し、踵を返して寝ようとした。
にしてもつまらんな、こうも圧倒的だと。己の息吹を食らって即死とは。⋯⋯⋯⋯⋯⋯いや普通はそうなのだ。あの獣がおかしいだけか。
やはり所詮はにんげ⋯⋯⋯⋯。
ホシノ「あっつい、熱くて干からびそう。動いてないのに熱いよ〜。」
は?
グルっと振り返れば余裕な表情でいつの間にか手に持っていた盾を構えながら、防御魔法の『シールド』のようなバリアを展開している少女の姿があった。
な、に?無傷だと?あり得ん!火傷の一つもないとは!
それに⋯⋯⋯⋯!
クルミ「ごほっごほっ!凄い火力ね。漏瑚の術式くらいの火力じゃない?」
ヒフミ「その漏瑚って人知らないんですけど!」
ケイ「色彩ビナー以下ですね。通常ビナーのアツィルトの光にすら届かない。」
ホシノ「比較対象が間違ってるよ〜。あれと比べちゃダメだって〜。」
後ろにいた奴らも無傷だと!?あ奴らは本当に人間なのか!?
⋯⋯⋯⋯⋯どうやらまだ足りないようだな。しかし何度息吹を放とうと無駄になるだろう。ならば!
四肢に力を込める。それにより筋肉が膨張し、地面に罅が入る。
叩き付けるのみ!
ドォン!と砲撃のような音ともに火竜は飛び出す。
火竜ルインカイトは傲慢な考えのみで力を振るうことを止めた。スカーグラッジからの敗走で学んだのだ。
かつては傲慢な考えを持っていた。
己こそが最強であり、頂点たるに相応しいと。その考えはこれまでの竜生で積み重なった事実と、その性格から傲慢な竜となった。
己が力を振るえば、あらゆる生命は圧死し。
息吹を吐けば自然は燃え、生物は絶叫しながら息絶えた。
我こそは!と己に挑んだ者達を全て返り討ちにした。
あの人間の間で危険な存在として個体名が付けられた凶星を己の猟犬とした。
全てが順調だった。あらゆる者が己に平伏していた。
あれが現れるまでは。
突如として現れた獣。火竜ルインカイトを見るな否や雄叫びを上げながら襲い掛かり、その力を持って殺そうとしてきた。
最初は哀れな獣だと思った。また自分の力を見誤った滑稽な強者気取りの弱者であると。
しかし、段々とおかしいと気付いた。
倒れない。死なない。地に伏せない。
新しく幾つもの傷を負いながらも、まるで笑うかのような咆哮をしながら突っ込んで来る獣はまさに狂戦士であった。
嫌々ながら猟犬を使っても倒れず、寧ろ望むところだと更に力を上げる獣。
戦闘を積み重ねる事に傲慢さを出す暇もない。出したら殺されると気付かされた。
強者特有の慢心も無くなった火竜ルインカイト。それに付き従う猟犬、凶星。
そして、それにボロボロになりながらも勝利したスカーグラッジ。
敗走した時の傷は激しく、回復するまでかなりの時間が掛かる。またあの獣と戦った時、確実に死ぬ。
その精神状態はまさに追い詰められた獣のそれだった。
火竜ルインカイトは、余裕が無かった。
火竜は目の前にいたホシノに必殺に等しい右前足の叩き付けを放つ。
音速に匹敵するその攻撃は矮小な人間を蠅を叩く感覚で振り下ろす。これにより、ホシノは赤い果実のように潰れ、周りにいたクルミ達は衝撃波によりチリのように吹き飛び地面は陥没する。
ホシノ「ふん!」
そんな運命にはならない。
左手に持った盾で火竜の爪を、まるで盾の上で転がすように受け流しギギギと嫌な音を立てながら直撃を逸らす。ホシノの手が痺れるほどのパワーは地面に接触し地面に大きな亀裂と振動、そして衝撃波をもたらす。ヒフミは悲鳴を上げながら吹き飛ぶ中、クルミは直前にバックステップする事でぐらつきを最小限に抑えつつ吹っ飛んだヒフミをキャッチし、ホシノはその超人的な身体能力と気合で乗り切る。
そしてケイは⋯⋯⋯⋯。
ケイ「光よ!!!」
一段階チャージによって赤く光るルミナス·ノヴァをぶっ放す。
それを見た火竜は放たれた瞬間、マズイと本能で察し顔目掛けて向かってくる攻撃を⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯避けられない。
避けられるはずが無い。
その音速を超えた攻撃は、放たれる前で無ければ回避は不可能。
幾ら人外の五感を持っていようと、ケイの放たれた光を避けられる訳がない。
それが、火竜ルインカイトの運命。
キュオオオオオォォォォォォンンン⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ドゥン!!!
ルミナス·ノヴァから放たれた光は回避行動を行い始めた火竜の右側面を抉った。
グオオオォォォォォ!!!
火竜の痛々しい悲鳴が森中に響き渡る。あまりの痛みに涙を流しかけるがそれを気合で我慢し、必殺の火炎ブレスを前方に吐いた。
痛みにより思考する事が出来なかった火竜は、自慢のブレスを吐いて己を傷付けた外敵を滅せんとする。
ブオオオォォォォ!!!と音が轟くも、当然ホシノは仲間を守りながら盾で防ぎ切る。
EXスキルの『防御姿勢強化』により、鉄壁と化した盾はホシノはおろか背後にいる仲間を傷付けはしない。
ホシノ「ねぇ、これってさぁ、もう撤退なんて出来ないよね。」
灼熱に晒されながら涼しげに話すホシノは、周囲の光景も相まって美しかった。
ヒフミ「そ、そうですね?」
吹っ飛んだヒフミはクルミによってギリギリではぐれることなくホシノの防御圏内に入ることが出来た。
そんなハリウッド並みの体験をしたヒフミはホシノに掛けられた言葉の意図にあまり理解出来ず、困惑の表情で答える。
ケイ「えぇそうでしょうね。完全にあれは私達を狙ってますし。」
ケイはルミナス·ノヴァをチャージしながら円滑に答えていく。
あのケイの攻撃で火竜は殺る気になった。あのグラスランド·デスワームの時と同様に逃げる事は出来ないであろう。
クルミ「あぁやっぱり?」
クルミはポチポチと片手でスマホを弄り、ホシノの意図を察してニヤニヤしながら言葉を投げ掛ける。
ヒフミ「もしかして⋯⋯⋯⋯!」
ホシノ「火竜だっけ?こんなの竜じゃなくてただの火を吐くトカゲだよ。だから倒しちゃお?こいつをさ。」
昏い笑みを浮かべるホシノはどこか恐ろしかった。
そして、その言葉がヒフミを驚きと正気を疑う感情が混じった表情を浮かべさせた。
それと同時に火炎ブレスによる攻撃が止む。
ケイ「!⋯⋯⋯⋯あれ?いない!?」
クルミ「いや右手!三時の方向!!」
ケイは火炎ブレスが止むと同時に最大までチャージされたルミナス·ノヴァを放とうとするも、まさかの火竜がいないという事態に陥り一瞬動揺するも、五感が鋭いクルミによって速攻で特定された方向を見ると⋯⋯⋯⋯⋯。
ホシノ「うへぇ〜。まじか〜。」
クルミ「びっくらポンだぜ。」
ケイ「やばいですよこれは。」
憤怒の形相でホシノ達を睨み付ける火竜ルインカイトと、凶星と思わしき猟犬の姿があった。
その猟犬は全体的に漆黒の体毛で覆われており、額には翡翠色の角が生えていた。静かに見つめている藍色の瞳はまさに猟犬の目であった。全長は約十メートル程の巨体でありながら細身で引き締まったスリムな体形で、スピードに特化したような見た目だ。隣りにいる火竜ルインカイトと比べるとその体格差は主人と犬の関係を想起させた。
その光景を見たヒフミはデスワームくんの時以上の恐怖に駆られていた。
ヒフミ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ぅ。」
親しくしていたアンナとその仲間の死。続く自分とはかけ離れた生物としての格の差による恐怖。猟犬が来たことによるもう逃げられないこの状況。
デスワームくんの時はまだ良かった。この世界に来ていきなり空に放り投げられるという人生でも滅多に無い体験をされた後だったのもあるし、ブルアカ宣言をしなければ確実に死ぬというヤバすぎる状況だったから。それにこの後に続くデスワームくんとの戦いはまだ生き残れる可能性が高かった。最初に戦ったのが超巨大ミミズのような外見なのも一因しているだろう。確かに怖すぎるがでもミミズなんですよねと内心でどこか思うものだ。
だが今は違う。
ザ·ドラゴンの見た目で存在感が別格の火竜と、見るからにヤバい雰囲気を醸し出す大きな狼という普通であればその場で失神してもおかしくないその外見は。
この時のヒフミの精神状態的に最も遭遇してはならなかった。
例え女神ロアによる精神安定が施された肉体であったとしても、彼女は齢18。年若い彼女にとってこの状況は恐怖するに足りうる。
静かに涙を流し、小さな悲鳴を漏らすヒフミ。
過呼吸気味で恐怖を押し殺そうとするも止められない。
それを見た火竜はあれが『弱点』だと認識し、猟犬に真っ先に攻撃の指示を行う。
よりも早く。
ニクス「オラァッ!!」
ブウゥン!と音が鳴ると同時に風圧のような衝撃波のような、よく分からないが強力だと分かる謎の攻撃が火竜と凶星に襲い掛かった。
「!」
凶星はその攻撃を認識した瞬間に回避をせず、主人を守る為自身の周りにある大気中の魔力と自分の魔力を制御する部位、額にある角を用いて一気に魔力を圧縮し口からビーム状の白い光線を放つ。
白い光線と彼から放たれた魔法は衝突し、瞬時に魔力同士がぶつかることで発生する魔力暴発によりバン!!と破裂したような音と砂煙が巻き起こる。
ニクス「やっぱヤベーなあれ。この全能感、癖になっちまいそうだ。」
キサキ「お主、分かっていると思うが⋯⋯⋯。」
ニクス「あぁ分かってるって。『効果時間は短い』、だろ?それでもこれ、ヤバいな。なぁうちの所に⋯⋯⋯⋯⋯。」
キサキ「断る。」
ニクス「ですよねー。」
コントのような会話を繰り広げる彼等は砂煙の中から出てきた。
ホシノ「えぇ?なんでここにいるの?」
キサキ「お主こそ何を言っておるのじゃ。これは冒険者救助兼火竜と凶星の居場所特定の依頼であろう?当然、ニクス達冒険者パーティーがここに来るのも当然と言える。クルミからの『ちょっと火竜と戦ってくる』と、連絡があったしな。」
そう言ってスマホを見せると確かにクルミからの着信メッセージがあった。
ニクス「なにそれ?魔道具?」
キサキ「⋯⋯⋯そうとも言える。」
スマホに興味津々なニクスだが、グレソを構え続けながら火竜の方向に視線を固定し一度も外さない。
ホシノはよく見なくとも後ろには屈強な冒険者達が大勢いた。あの者達は確かモグリットから指名されたパーティーだった筈。その者達は殺る気の火竜と凶星を見て「やるしか無いか」と諦めの目をした直後には強い決意を宿した顔になる。
どうやら覚悟完了したようだ。
よく見たら後ろには道中であったあの男がいた。弓を片手に叫びまくっていて、周囲からうるせぇなこいつと顔を顰めているのが見えた。
すると。
グオオオォォォォォ!!
己の犬によって攻撃から凌いだ火竜ルインカイトは雄叫びを上げ、茶番は終わりだと告げる。
その咆哮はかかってこいよと言っているようで、その目には強者としての意地があった。
隣りにいるヘルホーンハウンド、個体名凶星は冷静にホシノ達を見ていた。
場の空気は周りの炎に負けない程に、この場にいる者は猛々しく気炎を燃やしていた。
ホシノ「よし、いこう。皆。」
ニクス「お前さぁ、仕切ってんじゃねぇよ(呆れ)。」
クルミ「まるで自分が挑まれてるような雰囲気出してるけど、逆だから。『お前が挑戦者』、だ。」
キサキ「さて、やろうかえ。」
先頭にいるクアトル城塞都市の中でも強者の枠に入る者達の会話を合図に後ろにいた冒険者達が猛る。
依頼はもう探索と保護を中心とした内容では無くなった。
今この時、総力戦へと変更となる。
探索依頼 エーテルリアの森の調査及び冒険者パーティーの保護
依頼難易度 A
ブルアカ的難易度 Insane
総力戦 火竜ルインカイトとヘルホーンハウンド、個体名凶星
総力戦難易度 S
ブルアカ的難易度 Torment
時刻はおよそ17:00。この世界で言う黄昏時。
この黄昏時がこの世界の住人を最も恐怖へ陥れる。
何故なら、この黄昏時から始まる時間が魔物を一段階上の強さへ引き上げるからだ。
火竜ルインカイトと凶星も例外では無く、今この時の二体は強化されている。しかしまだ黄昏は始まったばかり。時間が長引けば更に強くなるだろう。
タイムリミットは約一時間。
黄昏が世界を染めていく。
ここから容赦が段々と無くなっていきます。
皆さんは実力でなんとかして下さい。
私の援護はあまり期待しないでくださいね?