気の赴くままにキャラを書きたいと思います。
20話 『シャーレ』担当の憂鬱
「メリー君、君クアトル城塞都市の支部に異動だ。」
メリー「へ?な、なんでですか?」
「どうも人手が足りないらしくてね。『何人いても忙しいから人材をこっちによこしてくれ』と秘書のトゥーナ君からお願いされてね。じゃ、明日荷物を纏めて出発してくれ。」
メリー「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ってください!いきなり言われても困ります!それにあそこって過労死寸前になる程に忙しいと⋯⋯⋯⋯⋯。」
「よろしくね〜。」
メリー「あぁ〜!待ってくださいぃ〜!!」
クアトル城塞都市 城門前
メリー「着いてしまった。」
元いた場所では数少ないBランク冒険者パーティーに護衛してもらいながら一週間。
城門前で憂鬱な声で呟く私。
クアトル城塞都市。そこはこのモードレスト王国の中でも一、二位を争う程に強者達が集う場所でもあり、冒険者達の数も多い場所でもある。
当然、それに比例して冒険者協会の役員の忙しさがえげつない場所でもある。
同僚曰くそこにいけば徹夜は当たり前になるという。
死の森の影響でこっちの仕事の難易度も高いこのクアトル城塞都市の支部は私達にとって魔物くらいに恐ろしい場所だ。
メリー「そんな所に来てしまった。はぁ〜〜〜〜〜。」
冒険者協会 クアトル支部
モグリット「よくぞ来てくれた、メリー。そして、申し訳無い。」
メリー「いえいえ、支部長!謝る必要はありません!全力で頑張ります。」
近くで見るとやっぱり怖いなぁ。
私よりも高い身長で見下ろすその目線がとてつもなく怖い。威圧感もあるし。
モグリット「早速で悪いが君はとある冒険者パーティーの専属の受付嬢となってもらう。」
専属。それは幅広い冒険者達の相手をする受付嬢にとって専属というのはそれだけで喜ばしい事だ。
一つは仕事が他よりも少ない事。専属だから色々なパーティーの報告書を書かなくて済むからだ。
二つ目は箔が付く。専属ということはそれだけ実力が高いということ。さらに飛躍させればその分だけ評価される。
もちろん、そのパーティーが担当の受付嬢のミスで取り返しのつかないことが起きてしまったら責任はより重くなる。
それでもやり甲斐がある仕事だ。
私は十八の頃からやって今は二十五だ。
遂に私にも専属の仕事が!
メリー「そのパーティーの名は?」
後に私は後悔する事になる。
これが地獄の始まりだということに。
モグリット「そのパーティーの名は、『シャーレ』という。」
◯月✕日
私は今日から日記を書こうと思う。
今日思った事とか、今思っている事とかを、そのまま書いて振り返った時に思い返す為に。
今日はクアトル支部の仕事を始める時に専属となった。
そのパーティー名はシャーレ。なんとこのクアトル城塞都市の近くの頂点捕食者を初戦闘で討伐したらしい。しかもたった五人で!
凄い!まるで勇者みたい。勇者はこの世界に来てから覚醒したり、女神ロア様の加護を受けたりするから。
もしかして勇者だったり?
そんな訳無いか。勇者召喚はもうやったし。その人達って何者なんだろう?明日会えるといいな!
◯月△日
可愛い!可愛いよあの子達!
リーダーのホシノちゃんは、太陽と海のような瞳のオッドアイに!綺麗な桃髪!ちっちゃくて可愛いくて格好良かった!
タンクのクルミちゃんは珍しい狐の獣人で、耳がピコピコしてて可愛いかった!アホ毛みたいな左右にはねた髪も!
アタッカーのケイちゃんは、オシャレさんだし、白い髪と赤い瞳がマッチしてて可愛いと凛々しいが両立してた!デカい謎の大砲もあると勇者達で言う「ギャップ萌え」ってやつで良かった!
バッファーのキサキちゃんは大人の雰囲気が出ていてめっちゃ良かった!小さいのに言葉の端々が理性的な口調で凄く良い!
サポーターのヒフミちゃんは可愛いし護ってあげたくなるような可愛さだった。でも背負っている謎の鳥?は気持ち悪かったな。
何だか寒くなってきた。ヒフミちゃんの背負っているペナンシュ様の悪口を書いたところから。ペナンシュ様の悪口をやめよ。
にしてもあの子達が本当にグラスランド·デスワームを討伐したなんて。あれって勇者達みたいな強さが無いと無理な相手なんだけど?
うーん。ま、大丈夫だよね!強いって事はそれだけ出世出来るかも!あの子達にも頑張ってもらおう!
◯月◇日
どっと疲れた。
ゴブリン狩りはまぁいいとして。
量が、量が凄く多くて大変だった!
それに説明が簡潔すぎる!なに!?ホシノちゃんが奇襲して後は皆でジュウを乱射したら終わりましたって!
実際に本当の事かもだけど仕事的にはもう少し詳しくして欲しかった!
まぁいいや。そういえば先輩からランクが高い程に説明が簡潔すぎるまたは難しすぎる説明になるって言ってたな。
私ってとんでもないパーティーの専属になったんじゃ?
◯月▽日
あり得ない!あり得ないしあり得たくない!
なんなの!?火竜ルインカイトとヘルホーンハウンドの個体名が付いた個体を倒したって!!
凶星はまだ分かる!他の冒険者達と共同の討伐をしたことに関しては!
でも!火竜ルインカイトはおかしすぎる!二人!?たった二人で倒したぁ!?
竜って災害に等しい存在なのにホシノちゃん!ただのデカいだけのトカゲって!
説明もおじさんの力でなんとかしたって!?
こっちは詳細な説明が欲しいんだけど!?
もう一人はもう既に旅立っていないしホント最悪!
実力以上に人の話を聞かない!
どうやって報告書書けばいいの!?
しかもこれ領主様宛のやつ!
徹夜で考えなきゃ出来こっない!
誰か助けて!
◯月✕日
勘弁して欲しい。
問題起こさないで。
その『アリス』って子の魅力は分かったからこれ以上熱弁しないで。
周りを巻きこないで。
聞いた男性冒険者達が困ってるよ。
それで私の方に苦情が来てるよ。
対処して説教したらさらに熱弁された。
ホントに勘弁して。
アリスって子の可愛さは伝わったから!
あと女神ロア様の事をロアちゃんって言わないでー!
◯月△日
クルミちゃん。君のそれどうでもいいよ。
唐揚げに何をかけるかなんて!
それで喧嘩しないで!ホシノちゃんと殴り合わないで!
何!?ごちゃごちゃうるせー?ここまで来たら言葉じゃないだろ?私はマヨネーズが好きだ?
本当にどうでもいいよ!!
モグリットさんからの説教本当にキツイの!
キサキちゃんも過激な発言しないで!
頼れるのはもう、ヒフミちゃんしかいない!
◯月▽日
あり得ない。あり得ないあり得ないあり得ない!どうしてヒフミちゃんのペロロ様の宣伝をやめないの!?私は凄く困っているのに!ここ最近の受付嬢の中で最も不憫で、最も過労死になりかけているというのに!その特徴的な印象がぜんっぜん受け付けれない!めっちゃきも(急いで消した後がある)
とにかく!喧嘩しない!熱弁を程々!喧嘩の種を作らない!かき消したくなるような言葉を発さない!
ホントにもう
勘弁して。
メリー「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」
「凄い溜め息じゃん。どうしたの?」
カウンターで突っ伏す私。近くにいるだけでキノコが生えてきそうな程に憂鬱な私を見かねて、キシラさんが声を掛けてくれた。
紫のとんがり帽子に、魔女を彷彿とさせる服装、背負った高価な長杖という見た目通り彼女は魔法使いだ。
それもAランクの。
あぁ、『シャーレ』もAランクだったなぁ。
キシラ「何か嫌な事⋯⋯⋯⋯は、あの子達だよね。」
言葉を濁して言う辺り、私の憂鬱の原因を理解しているようだ。
メリー「そうなんですよ!聞いてくださいよ!」
バンッ!とカウンターを叩き前に乗り出す。
キシラさんとの距離は何かの拍子でぶつかってしまいそうな程だ。
そこから溢れ出てくる愚痴の濁流がキシラを襲った。
メリー「あの子達ぜんっぜん!人の話を聞かないの!!ケイちゃんはね!周りの冒険者達にさっきまで『アリス』って子の話をしたかと思えば急に女神ロア様の話をしだすし!何度周りに、特にシスターの人達にちゃん付け辞めてって注意されても『私は許可を得たので問題無いです。ちゃん付けしたいのなら会ってから文句言ってください。』ってマウント取ってくるし!その後に真実の鈴で本当だって言われちゃったからたちが悪い!!次にクルミちゃんは喧嘩の種をよく作り出す!この前なんて『オデュッセイア?んなわけ無いでしょ。引き続き次に来るブルアカのメインストーリーは引き続きロア追跡編だと思うから、とっとと認めなさい!』ってゲヘナ?の主張をしていたケイちゃんと最終的に殴り合うのよ!?あり得ないし信じられない!なんで殴り合うの!?意味が分からない!ホシノちゃんはまともかと思ったら、ホシノちゃんはホシノちゃんで詳細に説明してくるけど意味が全然分かんない!何!?『夜になっちゃったから向かってくる魔物全部倒して帰ってきた』!?はぁ!?なんで夜に強行突破して帰ってこれるの!?夜になったここの魔物達ってAランク冒険者達が余裕で全滅するくらいに強くなるって聞いたんだけど!?なんで帰ってこれるの!?いや、生還した事はとても喜ばしいけど!ど!!その後の無茶苦茶な報告書を書くことになる私の身にもなってよぉ!!書くの凄く難しいんですけどぉ!?そしてヒフミちゃん!ペロロ様への愛が重すぎる!普通に話せるし会話も成立するし心遣いも出来るのに!なんでよぉ!!唯一マトモなのってキサキちゃんしかいないんじゃない??ガチギレすると過激発言が飛ぶけどそこに目を瞑ればなんとか⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」
キシラ「えっと。お疲れ様?」
緑の瞳には憐れみの念が籠もっていた。
後で一杯奢るかと考えながら、彼女達の話を別の方向へ持っていく。
これ以上愚痴を聞いたら頭がおかしくなりそうだったから。
そして頭に、ある言葉が過る。
それは『イレギュラー』。その者は他者の思惑も、理も、運命も左右されないという。
メリーの言葉のみならず色々な人達の言葉を聞かないのはイレギュラーだからではないだろうか?
キシラ「⋯⋯⋯⋯⋯まぁでも彼女達って王都に行ったじゃん。これで悩みは無くなるよ。一時的にだけど。」
メリー「でもあそこには王様もいるし、ロア信教の聖女様もいるし、それに月の女神様がいるじゃん。ご迷惑掛けてないといいんだけど⋯⋯⋯⋯⋯。」
はぁ〜。本当に憂鬱。