早く地獄を書きたいです。キャラが絶望するところとか。早めに終わらせたいんですけど、この話がなければ次の章で???になるかもなので書いております。
女神ルーナとの話を終えた一行は再びウタナの部屋へ向かい、ようやく辿り着いた。
ウタナ「やぁ君達!遅かったじゃないか!どこで道草食っていたんだい?」
クルミ「ルーナとお話していただけよ。」
ウタナ「⋯⋯しれっと神様を呼び捨てにするんだね君は。」
クルミ「別にいいじゃない。それが『友達』ってものでしょ?」
別れ際に友達になりましょうというお願いを、渋々受けたクルミは今ちょっと怖い顔だった。けど口元はほんの僅かに緩んでいた。
入ってくれという部屋の主の言葉を聞き、一行は中へ入る(メイドさんはここで待機)。そこは研究室を彷彿とさせる物々が数多くあった。
淡い光を放つクリスタルや、古びた本がこれでもかと敷き詰められた本棚、謎の金属で出来た武具などがあった。
予想に反して部屋は整頓されており、汚れ等は一つも無いほど清潔だ。
ウタナ「ベリアル。彼女達にお茶。」
ベリアル「分かりました。教授。」
ベリアルと呼ばれた、人を模した機械のような、人としての美を集結させたような人形じみた彼女は、空いていた机に六つのティーカップを置きお茶を注ぐ。
遠慮なく空いていた席に座り、寛いでいると⋯⋯⋯⋯⋯。
ウタナ「さてさて、早速本題に入ろうか。いやー私は長ったらしい挨拶嫌いなんだよね〜。⋯⋯⋯⋯おほん。君達に礼を言うよ、お陰で貴重な竜の素材が手に入った。これで研究が進められるってものさ。」
ウタナは研究者としての熱と、ここからさらに上へと上り詰めていこうという志が、チラリと覗かせる。
ケイ「一応聞きますが、あれを何に使うのですか?」
ウタナ「まぁその疑問は当然だね。私の研究は主に魔物の素材や金属を使って武器を作る研究者なんだ。」
キサキ「つまり鍛冶屋であると?」
その言葉でウタナは、キサキを含めた四人の考えを否定する。
ウタナ「確かに鉄を打つ時もあるけど、それは作りたい武具を作るための素材を作る時だけさ。私は勇者達の国である日本。そこで作られる『ジュウ』や『ミサイル』、果てには『戦車』というオーバーテクノロジーを研究、開発しているのさ。」
ケイ「やはり、貴女は研究者ではありますが、それ以上に『科学者』なんですね。」
ウタナ「ハハハ!勇者達と同じ事を言うね。」
頭の回転が速いケイは気付いた。ここにあるものはゲームでよく見るオーバーテクノロジーじみた見た目の武器も置かれていることに。
ちらっと横を見れば、某ロボット戦士作品のファンネルのような物まである。
理解してくれる者は少なかったのか、ここぞとばかりに作品の数々を紹介していく。
ウタナ「これはシュリュウダンと言ってな、今までは安全性も乏しく威力も大したことはなかった。しかし、構造を何度も再設計して安全ピンを追加して安全性を向上、爆風と破片の威力も調整した事で殺傷力も高まったのだ。」
ウタナにベリアルが手渡しして見せつける。そのデザインは、よくホシノが投げていた手榴弾とよく似ていた。
ウタナ「次に手持ち大砲だ。これは⋯⋯⋯⋯⋯⋯。」
ケイ「成る程。貴女が研究熱心なのはよく分かりました。」
話が長くなると察したケイは即座に会話を終わらせ、次の話題へ変えた。
ケイ「となると彼女も研究者を?」
ウタナ「なんだが少し強引だがそうだね。彼女は私の助手さ。ベリアルは優秀でね。スポンジのように知識を吸収するんだ。」
ベリアル「教授の指導が良かっただけです。」
あまり感情の読めない声のため端から見れば、本当かと疑問に思ってしまうかもしれない声だ。
しかし長年の付き合いなのだろう。その言葉でウタナは気を良くする。
ウタナ「いやはや、優秀な助手を貰えて嬉しいよ。お陰で研究時間をあまり割くことは無いし、人件費として王様からぶん取れるし、素材も多めに要求できる。ベリアル無しではいられない体になってしまったよ。」
いい助手なんだな⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ん?なんかおかしくね?
ケイ「あの、一つ聞きたいんですけど良いですか?」
ウタナ「ん?どうしたんだい?」
ケイ「この作品達を作るための費用って足りてますか?」
ウタナ「足りてないよ?」
「「「「「え?」」」」」
シャーレ五人の声が重なり、素っ頓狂な単語を出してしまう。
ヒフミ「た、足りてないとは一体?」
ウタナ「文字通りの意味さ。いやー研究開発実験。それをするための費用が無いから毎回王様にたかっているんだよね〜。素材は私の給料から引かれてしまうし。酷いよね王様は。これにはお金が必要なのにそれを減らすなんて本当にあり得ないよ。」
なんだろう。ブルアカの『ウタハ』を思い浮かぶんだが?いやヴェリタスの生徒たちか?それともゲ開か?どちらにしても、大人としては情けなさすぎる。
ベリアル「⋯⋯⋯⋯それは教授があれもいいこれもいいと手を出しているからでは?最近ではグラスランド・デスワームの素材を丸ごと買い取ったではありませんか。」
それに反応したウタナは嫌な顔をしつつ、口を茶で潤す。
ここでシャーレは最初に戦った魔物の素材の行き先が彼女だと気が付き、「ははは。」と苦笑いをしていると⋯⋯⋯⋯。
「シャーレの皆さん。よろしいでしょうか?」
部屋の外で待機していたメイドさんは、神妙な顔つきで口を開く。
「執事長のセバス様がお呼びです。至急こちらに来てほしいとのことです。」
ホシノ「姫様をここに連れ戻してほしい?」
セバス「えぇその通りです。」
告げられたのは緊急の依頼、この国のお姫様が抜け出したので王城まで連れ戻してほしいというとんでも依頼だった。
セバスと呼ばれる執事長の話を纏めるのなら。
クルミ「ふぅ〜ん?よく脱走しているのに対策できなかった私らに変わって現在話題沸騰中のシャーレに連れ戻してきてちょ⋯⋯⋯⋯ってこと?」
キサキ「言葉がすぎるぞクルミ。」
クルミ「でも事実でしょ?担当のお姫様をきちんとお世話するのが執事ってものじゃないの?」
セバス「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯その言葉痛み入ります。」
それは責任の在り方に対してか、はたまた自身に向けたものなのか、ムカつく奴への苛立ちか。どちらでも良いだろう。クルミにはどうでもいいことだ。
辛辣かつドストレートな言葉にセバスは怯みつつも、お姫様に関する情報を出した。
セバス「皆様御存知の通り、ミカエル・フォン・モードレストはこの国の第三王女でございます。あの方は生まれつき魔力が極限なまでに高く、それ故幼き頃からそれはもう強い人でした。」
クルミ「どのくらい強いの?」
セバス「世界最強かと。」
世界最強。その言葉を聞いた面々は半信半疑だった。一国のお姫様が最強など、前世のイメージとはかけ離れていた。彼女達の頭の中の姫様は、淑やかで可憐、うふふなんて言いながら紅茶を楽しむような存在。
まぁあながち間違ってはいないが、事実ではない。
セバス「何故このような事をお話するかと言いますと、おそらく連れ戻す際に戦闘になるかと思いますので、準備だけはしておいて頂きたい。」
連れ戻すだけなのに何故戦闘に発展するんだ?意味が分からない。姫様はバトルジャンキーなのだろうか?
両者間で僅かに重い沈黙が漂った。五人からしてみればどうでも良いことではある。政治には真っ平ごめんだ。しかし、数ある者の中で選ばれたからにはそれ相応の『理由』はあるのだろう。
ホシノを除く四人は決めあぐねている。突発的かつ毛色も違うのだからそりゃそうだろう。四人の視線はホシノに注がれた。
ホシノ「(困っている人を見過ごせないし、連れ戻すついでに観光でもしよ)何処にいるのですか?」
不純な動機はありつつも、ホシノはリーダーとしてその依頼を受けた。
お転婆な姫様との出会いはここから始まった。
緊急・お使い依頼 最強のお姫様を連れ戻せ
難易度 S
ブルアカ的難易度 Lunatic
ミカエル・フォン・モードレスト。王族の子としては四番目であり、兄二人姉一人を持つ娘である。父はモードレスト王国の国王のため王族ではあるが、母は側妃で、男爵の一人娘であり、王位継承者としては圧倒的に低い。が、彼女は世界レベルで有名人であり、たった一人で魔王軍と相手取る事ができるという最強のお姫様である。
両親は確かに普通の人と比べて魔力量は多いものの驚くほどではない。しかし、生まれた直後からその場にいた全ての者達が感じ取ったのだ。膨大で規格外の魔力を保有していることに。
過剰な魔力量による身体能力の超向上。魔力が多すぎることによって自身に掛かる全ての魔法を大軽減するその体質。そして魔力関係無く優秀な頭脳。天童と揶揄される事は少なくない。
しかし母親の立場や体質、突如として現れた規格外、性格がお転婆でやや融通が効かないなど。それらによって蔑称としてこう呼ばれることがある。
イレギュラーと。
ミカエル「ふぅ〜ん?次は可愛い女の子をけしかけるんだね?」
王都の中心にある大通りで、その人はすぐに見つかった。聞き込みをすればあそこだと親切に教えてくれる人が多かったというのもあるが、なによりその容姿と服装が目立ちすぎることも理由の一つだろう。
ブロンドヘアを美しくなびかせており、星々が浮かぶ夜空を思わせる瞳は宝石のようだ。フワリと、けれど機動性も高いドレスは素人目でも最高級だと分かる一品。可愛く、可憐で、美を突き詰めたその顔に浮かぶ表情をコロコロと変えている。
女神にも引けを取らない容姿は、あまりにも目立ちすぎる。
セバス「ミカエル様、もうこれ以上辞めてください。これはミカエル様の為でもあるのです。」
美少女をこれまで見てきたシャーレの四人すら固まってしまい、それを一瞥したセバスは一歩前に出る。柔らかくも険しい眼光で、分かってもらえるようにと思いながら、ミカエルを説得しようとする。
外野はいつものことかという反応から、どうやらこれが初めてということではないようだ。
セバス「本来であれば、もうとっくに決まっていることなのです。何故抵抗するのですか?王族として生まれたからには、我らの意向を汲む必要が⋯⋯⋯⋯。」
ミカエル「またそれ?いい加減にしてくれないかな?そういうのは、私で決めるから。自分の夫くらい自分に決めさせてよ。」
姫様の顔は、親や他人の指図なんて聞きたくないという子供じみたものと、こんな状況は受け入れられないという運命に抗わんとするものが入り混じった。そんな顔が潜んでいるとこの場にいる四人は分かった。
分かってしまった。
これは完全な部外者が介入してはいけないと。
完全にミスってしまったと、内心後悔しているホシノを置いて、ミカエルはヒートアップしていく。
ミカエル「とにかく、私は戻らないから。これまで散々言ってきたけどもう限界!貴方達の事情なんて知らない!こんな窮屈な生活⋯⋯⋯⋯私は認めない!」
そう宣言した直後、五人の⋯⋯⋯⋯いやこの場にいた者全ての存在の視界から、ミカエルは消えた。
「消えた?」
誰の声なのか分からない。けれどそれはこの場にいる者達の心境を代弁していた。これまで様々な強敵と会ってきたシャーレの四人ですらこのような事態は初めてだった。
想像を絶する身体能力により、それは魔法じみた行いを披露する。去った後の被害を考えて、『最小限の力』でこの場を去る。転移に等しい移動。それは竜の攻撃すら見切るホシノすら捉えられないということ。
ホシノ「⋯あ!お姫様は何処!?」
あまりの出来事に放心したホシノは、辺りを見渡しながら叫んだ。
やってしまったという思いを胸に抱きつつも、指示を出そうと後ろにいるメンバーに声を掛け⋯⋯⋯⋯⋯ようとした。
ホシノ「あれ?ヒフミちゃんはどこ?」
そう、今更ながらいつもキサキの隣りにいたヒフミがいないのだ。よく目を凝らしても姿は確認できず、あるのは『はぐれたー!?』と今更になって気が付き頭を抱えるクルミとその他メンバーだけだった。
ヒフミ「あうぅ〜はぐれてしまいました。」
心にあった不安を口に出してみるも、やっぱりダメで、それどころかより不安を持ってしまった。
聞き込みをするまでは良かったのだが、知らない場所、見慣れない景色、その前に起きた怒涛の驚きが、ヒフミの精神を疲労させた。そして気が付けば迷子になっていたというバカをやらかしてしまった。
ヒフミ「皆さんにあまり迷惑を掛けたくないのにぃ。」
行く宛もなく辺りを彷徨う。この世界で一人になることは初めてだった。そういえば前世も一人では無かったなと、感慨に耽った。
ヒフミ「っ!皆さんは⋯⋯⋯⋯⋯何処に、いるのでしょう?」
一人だと自覚した瞬間、孤独感と恐怖が襲い掛かってきた。恐ろしい怪物と対峙した時とはまた別の恐怖が。
この異世界はとにかく過酷だ。周りにいるホシノ達が強過ぎるから、最初の頃は気が付けなかった。けど、ここまでの一ヶ月の異世界生活は大変すぎた。そして残酷だ。
そして分かったことがある。
それは力がなければ生き残れない、ということ。
極論だがこれに尽きる。力は正義だ。力があれば外の魔物相手に立ち回れる。力があれば金を得られる。
力があれば、死ぬ事は⋯⋯⋯⋯無い。
無ければ死ぬ。究極で分かりやすいこの世界の真理。これは絶対に覆ることがないだろう。
それに力があれば⋯⋯⋯⋯。
ヒフミ「こんな私でも自信を持てる⋯⋯⋯⋯⋯⋯訳無いですよね〜。」
はぁ〜と憂鬱な溜め息を吐く。どっと疲れが押し寄せ、近くの公園のベンチに座る。った。
あまりにも周りとの落差が激しい私。
ホシノさんのように強くはない。クルミさんのような臨機応変な対応はできない。キサキさんのように強力なバフを与えられないし、ケイさんのように超火力を放つ事はできない。
私は周りを援護することで初めて認められる存在(サポーター)。
誰かの助け無しじゃ自立なんてできやしない。
それが⋯⋯⋯⋯私⋯⋯⋯⋯⋯。
ミカエル「こんな所で何しているの?君は?」
頭の上から女性の声がした。
いつの間にか俯いていた頭を、ふと見上げた。
ミカエル「何か困ってそうな顔だけど⋯⋯⋯⋯⋯何があったの?私で良ければ相談に乗るよ。」
ヒフミ「⋯⋯⋯⋯女神⋯⋯⋯⋯⋯様?」
女神、そう女神だ。これまで二柱の神様に会ってきたけれど、こんなにも眩い存在は生まれて初めて見た。
ブロンドヘアも、瞳も、顔も、服装も何もかもが美しい。
後光が差しているからだろうか?言葉にするには、私の語彙力なんかじゃ足りない。それ程に、綺麗だった。
ミカエル「ハハハ!女神だなんて、とても恐れ多いよ!私は人間だってばっ!⋯⋯⋯さて!君、何か困ってる?」
ニコニコとしながら私に気遣ってくれている人。こんなにも輝いている人は初めて見た。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ん?あれ?この人⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯あぁっ!
ヒフミ「あぁっ!」
ミカエル「どうかしたの?」
ガバっと立ち上がり、アワアワとしながらも、言葉を紡いでいく。
ヒフミ「貴女ってミカエル様ですよね!?」
ミカエル「そうだけど、何?」
この人って、聞き込みした時に出た特徴、そっくりそのまま!
ヒフミ「見つけたぁーー!!」
依頼内容のお姫様を連れ戻す事を思い出したヒフミ。肝心のお姫様を見つけたことへの喜びによる絶叫は、公園内に響いたのであった。
この緊急依頼ですが、連れ戻すのなら難易度はLunaticどころかそれ以上になります。
なんてたって最強ですから。