痛みに耐えながら再生魔法で無理やり突っ込んでいく正義のヒーローに出会ったら? 作:だだだめ
都市北東の旧補給路沿いに存在する古い倉庫。
かつては魔力灯の部品や、保存食や、軍用布を保管していた場所らしい。今は外壁の再編に伴って放棄され、地図の上では空白に近い扱いになっている。
そんな場所に、悪魔と取引された子供たちが運び込まれていると通報があった。
情報を持ち込んだのは、商会の下働きだった。
痩せた男だった。
爪は割れ、頬はこけ、何度も背後を振り返っていた。
男は、ルークの前で震えながら言った。
「俺は、中身を知らなかったんです」
何度もそう言った。
「ただ荷を運べって言われて。箱には医療器具って書いてあって。でも中から、子供の声がして」
「子供たちは、まだ生きているのか」
ルークが聞くと、男は泣きそうな顔で頷いた。
「おそらく……」
「分かった」
ルークは立ち上がった。
「向かおう」
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作戦は、救出任務として組まれた。
表向きの目的は商会の不正倉庫の摘発で、実態は子供たちの救出だ。
参加人数は少ない。
多く動かせば、情報が漏れる。
軍のどこまでが腐っているのか、まだ分からない。
いや、分からないというより、もうこれ以上知りたくないという感情が強い。
同行したのはルークが直接選んだ数名の兵士と、テンゼン准将の部下。そして、テンゼン自身も来ていた。
「准将自ら来る必要はないでしょう」
ルークが言うと、テンゼンは煙草をくわえたまま答えた。
「必要があるから来た」
「俺を監視するためですか」
「半分はな。あとの半分はお前を止めるためだ」
ルークは何も言わなかった。
倉庫へ近づくにつれ、空気が変わっていく。
魔力と薬品と古い血の臭い。
そして悪魔の気配。
ルークは剣に手を置いた。
「中にいるぞ」
テンゼンが短く言う。
「数はどうですか」
「悪魔が三。人間は……」
ルークは一歩前へ出た。
「突入します」
「ルーク」
「はい」
「子供がいる。分かっているな」
「分かっています」
テンゼンはしばらくルークを見た。
その目は、いつもよりずっと静かだった。
「そうか」
声と同時に、扉が破られる。
倉庫の中は暗かった。
天井から吊られた魔力灯が、薄く青白い光を落としている。
床には薬瓶が転がり、壁には黒い術式が描かれていた。
そしてそこに、子供たちがいた。
いや。
それを見た瞬間、ルークはそれを子供たち、と呼ぶべきなのか分からなくなった。
小さな体。
細い腕。
まだ幼い顔。
そこに、肉肉しい羽のような部位が生えている。
体にはいくつもの魔力結晶が埋め込まれていて、皮膚の下を黒い術式が這っているのが見える。
「……遅かったか」
誰かが呟いた。
次の瞬間、奥にいた悪魔が笑った。
「これはこれは」
その声には、奇妙な楽しげな響きがあった。
「遅いなんてとんでもない。ちょうど完成したところですよ」
悪魔の爪が、床の術式を撫でた。
子供の一人が動いた。
首がぎこちなく持ち上がる。
小さな足が床に触れ、羽から黒い刃のようなものが伸びた。
兵士の一人が息を呑む。
「撃つな!」
ルークは叫んだ。
だが、それより早く、子供だったものが跳んだ。
速かった。
小さな体からは考えられない速度で、兵士の喉元へ迫る。
ルークは間に割って入り、その攻撃を受けた。
黒い刃が、彼の腹を貫く。
腹部を再生させつつ、ルークはその刃を掴んだ。
「やめろ」
声が出た。
誰に向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。
子供だったものは、空っぽの目でルークを見上げている。
その口が、かすかに動いた。
何かを言おうとしているように見えた。
あるいは、ただ壊れた呼吸が漏れただけかもしれない。
「やめろ」
ルークはもう一度言った。
悪魔が笑った。
「それはもう、言葉を使いません」
次の瞬間、別の子供が動いた。
三人。
五人。
十人。
全部で何人いるのか、数える余裕などなかった。
鉄の台の上にいた子供たちが、次々と体を起こす。
それは兵器と呼ぶしかないものだった。
テンゼンが短く命じる。
「後退しろ!」
兵士たちが下がる。
だが、ルークは動かなかった。
動けなかった。
目の前にいるのは、悪魔ではない。
敵ではない。
救うべき子供たちだ。
なのに、彼らは兵士を殺そうとしている。
いや、違う。
彼らが殺そうとしているのではない。彼らには何の罪もない。
そうだ。作り替えられた体が、命令に従って動いているだけだ。
「ルーク!」
テンゼンの声が飛ぶ。
「落ち着け!」
子供だったものの刃が、ルークの肩を裂く。
別の刃が腿を貫く。
魔力弾が胸で爆ぜる。
体は再生する。
だが全身に走った痛みに、ルークは反射的に剣を握った。
握って、しまった。
「……すまない」
誰に謝ったのか分からない。
最初の一人を斬った。
小さな体が倒れる。
床に落ちた音は、あまりにも軽かった。
一度覚悟を決めてしまえば、そこから先はただの作業だ。
近づくものを斬る。
跳んでくるものを落とす。
兵士に向かうものを止める。
苦しむ余地を残さないように、できるだけ早く終わらせる。
悪魔も殺した。
研究員は兵士たちが取り押さえた。
逃げようとした商会の男の脚を砕いた。
だが、そんなものはどうでもよかった。
ルークの目は、床に倒れた小さな体ばかりを見ていた。
そして最後の一人が、壁際に立っている。
それはまだ、七歳か八歳くらいに見えた。
空っぽの目で、ルークの方を呆然と見ている。
指揮系統を失ったからか、戦闘をする様子は見せず。ただそこに立ち尽くしている。
意志はもう死んでいるのだろう。その目にはなにも映ってはいない。
いや。
違う。
その時確かに、一瞬だけ目が揺れたのだ。
「……」
声がした。
本当に声だったのか、ルークには分からない。
でも、聞こえた気がした。
「おかぁ……、さん」
ルークの剣が止まった。
その瞬間、黒い腕がルークの喉を貫いた。
血が噴き出す。
呼吸が止まる。
視界が揺れる。
それでも、体は再生を始める。
「ごめん」
剣を振る。
小さな体が、静かに倒れ、倉庫の中から音が消えた。
悪魔は英雄の手によって全滅したのだ。
テンゼンが近づいてくる。
何も言わずに。
何も見ていないような目で。
「ルーク」
その声は、いつもよりずっと静かだった。
「落ち着け」
ルークは動かなかった。
「お前のせいじゃない」
テンゼンは、もう一度言った。
「お前のせいじゃないんだ」
ルークは、床に倒れた最後の子供を見ていた。
小さな指。
割れた爪。
手首についた金属の札。
そこには、番号が刻まれていた。
二十七。
ルークは、ようやく口を開いた。
「……名前は」
声がかすれていた。
「この子の名前は」
その場にそれを知っている者はいなかった。
そしてその瞬間、ルークの顔から表情が完全に消えた。
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事件のあと、ルークはしばらく表に出なかった。
新聞は書いた。
正義の中尉、極秘任務中に負傷。
不死身の英雄、療養へ。
軍上層部、詳細を明かさず。
どれも嘘ではない。
だが、真実でもなかった。
ルークは負傷などしていないし、療養などしていない。
少なくとも、体の方は。
彼は兵舎の一室にこもり、机に向かっていた。
机の上には、子供たちの新しい記録が積まれている。
倉庫で見つかった子供たちの、たぶん、本当の名前を追っていた。
番号の札の下に、ちゃんと名前を戻すための作業。
誰の親が、いつ、どこから、その子を奪われたか。
誰が、その子を悪魔に流したか。
誰が、その子を研究素材として扱っていたか。
どの商会が輸送したか。
どの役人が書類を消したか。
どの軍人が見張りを外したか。
ルークは、その一人一人の名前を書き起こした。
紙の上に存在した番号は、すべて名前に置き換わった。
十三番は、トマス・カーター、八歳。
十四番は、リン・オストレ、九歳。
十五番は、ジル・モランド、七歳。
十六番は、マリナ・フェルト、六歳。
十七番は、オルト・ベイカー、十歳。
そんなふうに、続いていった。
眠らなかった。
食事もほとんど取らなかった。
なぜなら、彼の体は壊れないから。
だから机に向かい続けることができる。
それが、今はひどく便利だった。
二十七番。
ミカ・ロウ。
七歳。
母親の名は、セリア・ロウ。
父親は不明。
都市西区の配給所前で失踪。
目撃証言あり。
誘拐後、商会倉庫を経由。
悪魔側術式研究施設へ搬送。
改造処置の末、戦闘利用。
死亡を確認。
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数日後、ルークはテンゼンの執務室を訪ねた。
テンゼンは、待っていたようだった。
机の上には煙草がある。
火はついていない。
「顔色が悪いな」
「体は至って健康です」
「そういう意味じゃない」
ルークは答えなかった。
テンゼンは椅子にもたれ、目を閉じた。
「倉庫の件は、こっちで処理している。商会の下部組織を潰す。研究員は軍法会議へ。悪魔との接触記録は押収。表向きには、非合法人体実験の摘発だ」
「表向きには」
「全部を出せば、都市が揺れる」
「揺れてしまえばいい」
「ルーク」
テンゼンの声が、わずかに低くなった。
ルークは黙っていた。
テンゼンは、ゆっくりと息を吐いた。
「何をするつもりだ」
「准将」
「行くな」
「……」
「ルーク。お前は今、踏むべきじゃない橋を踏もうとしている。お前の気持ちは、俺もわかる。俺もかつて同じことを思ったからだ。だが、行くな。その先にはなにもない」
ルークの手が、静かに握られた。
「彼らには名前がありました。親がいました」
「知っている」
「帰る場所があった。そして、それを奪った人間がいます」
「わかっている」
「売った人間がいます。命の尊厳を踏みにじった人間がいます。それを都市のためだと言う人間がいます」
「知っている。知っているさルーク」
「では、なぜ止めるんですか」
テンゼンは目を開けた。
その目には、怒りも、諦めも、疲れもあった。
「お前が帰ってこれなくなるからだ」
テンゼンは言った。
「体の話じゃない。今行けば、お前は戻れなくなる。悪人を斬るだけでは済まない。関係者を潰し、証人を脅し、記録を奪い、邪魔する者を排除する。そのうち、お前は自分が何を守っていたのか分からなくなる。お前の背から正義は崩れ落ちる」
テンゼンの言葉は静かだった。
返すルークの声もまた、静かだった。
「誰かがやらなければ、また番号が増えるだけだ。止めても無駄ですよ。これは考えた末の決断です」
「では無理やりにでも」
「俺を拘束しますか」
ルークは、少しだけ笑った。
それは、笑みと呼ぶにはあまりにも弱かった。
「准将に、それはできません」
テンゼンは立ち上がった。
「なぜそう思う」
「だって准将も、許せないのでしょう?」
沈黙が落ちた。
テンゼンの手が、机の端を掴む。
ルークは、静かに頭を下げた。
「止めてくれて、ありがとうございます。そして、今までありがとうございました」
「感謝するくらいなら止まれ」
ルークは背を向けた。
「ルーク」
呼び止める声。
ルークは扉の前で足を止める。
「最後に聞く」
テンゼンの声は、低かった。
「お前は、何になるつもりなんだ」
ルークは少しだけ考えた末、振り返らずに答えた。
「英雄、です」
それだけ言って、彼は部屋を出た。
それが、テンゼンが聞いたルークの最後の言葉になった。
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ルークが五人目を殺した現場で、ようやく僕は彼に鉢合わせることができた。
今日の商会本部の中庭は、血の臭いで満ちている。
割れた窓。
倒れた護衛。
引きずられた書類箱。
床に転がった、蛇が翼のある秤に巻きついている紋章。
あたりには、まだ息のある者もいた。
喉を押さえて呻く男。
足を潰され、床を這う女。
逃げようとして背中を斬られた商会の幹部。
そして、ルークの剣から落ちる血。
彼は剣を握ったまま、僕の方を見た。
「邪魔をするな」
彼は低い声で、そう言った。
その声には怒りがあった。
殺意があった。
けれど、それ以上に、ひどく疲れた響きがあった。
「そう物騒なのはやめようよ」
僕は両手を軽く上げた。
「ただ、ちょっと話をしに来たんだ」
「お前と話すことはない」
「あるさ。とても大事な話だ」
僕は、倒れている男の一人を見た。
商会の幹部だったはずだ。
名前は知らない。
調べれば出てくるのだろうけれど、正直なところ、僕にとってはどちらでもいい。
「ずいぶん派手にやったね」
ルークは剣を振った。
速いなぁ、実に速い。
加護を受けた体は無理が利くから、痛みを前提に動ける者は、普通の人間より一歩深く踏み込める。
けれど、僕には届かない。
剣先が僕の首に触れる寸前で、見えない膜に弾かれた。
ルークは止まらない。
二撃目。
三撃目。
四撃目。
すべて弾かれる。
「邪魔をするなと言った」
「残念ながら、今日はそういうわけにはいかなくてね」
彼の正義を理解できないわけじゃないけれど、今それをやられると、都市という人類の最終拠点がその機能を停止してしまう。
それは僕にとって、すごく困るのだ。住む場所がなくなってしまう。
「君を苦しませたいわけじゃないんだけど」
僕は、少し困ったように笑った。
「正面から戦っても、僕は君に勝てないだろうから」
指先を伸ばす。
「ごめんね」
その瞬間、ルークの体内で加護が反転した。
最初に崩れたのは、右腕だった。
剣を握っていた腕の筋肉が、不自然に膨らむ。
傷を治そうとした魔力が、治すべき傷を見失ったのだ。
肉が裂ける。
骨が軋む。
血管が絡まる。
皮膚の下で、白い骨が余計な方向へ伸びる。
ルークは声を出さなかった。
ただ、剣を落とさないように指へ力を込めた。
次に、胸が歪んだ。
潰れてもいない肺が、再生しようとして膨らむ。
肋骨が内側から押し広げられる。
心臓の周りに新しい肉が巻きつき、鼓動を邪魔する。
ルークの口から、血がこぼれた。
「君は人間の勝利に反旗を翻してしまった。残念ながら、僕はもう君に協力できない」
「人間の……勝利……」
ルークは血を吐きながら笑った。
「子供を、番号にする連中を……守ることが"勝利"か?」
「都市を守ることだよ」
「違う」
ルークは、一歩踏み出した。
右足の骨が砕ける。
すぐに再生しようとして、別の方向へ曲がる。
それでも、彼は倒れなかった。
「人間は、番号じゃない」
その声は小さかった。
けれど、はっきりと聞こえた。
「人間は収支でも統計でも戦果でも損失でも名簿の空欄でも帳簿の数字でも支援金の使い道でもない」
彼は剣を持ち上げようとした。
右腕はもう、腕として機能していなかった。
骨が歪み、肉が裂け、指はまともに剣を握れていない。
それでも、彼は剣を上げた。
「俺がそれを、認めない」
加護がさらに狂っていく。
再生しようとする力が体を壊す。
塞がるべき傷は膨らみ、戻るべき骨は曲がり、流れるべき血は行き場を失う。
ルークは膝をついた。
それでも、目はまるで死んでいなかった。
本当に困ったものだ。こういう人間は、正直悪魔よりも恐ろしい。
「ルーク」
僕は言った。
「もういいんじゃないかな」
彼は答えなかった。
「君は十分やったよ。汚職を暴き、兵士を救った。子供たちの名前を戻した。英雄としては、かなり立派な成果じゃないか」
「黙れ。まだ、終われない、まだ何も、何も為してない」
その瞬間、彼は地面を蹴った。
壊れた足で、だ。
想定外の速度というわけではなかった。
加護が正常に働いていた頃のような、無茶な踏み込みでもない。
ただの、人間の踏み込みだった。
それでも、僕は一瞬だけ反応が遅れた。それは僕が戦士としては三流もいいところだからだ。
やっぱり、戦うのは好きじゃないなぁ。
僕はその攻撃を右腕で受け、遅れて障壁を展開する。
痛い痛い痛い。痛すぎる。早く治療をしなくては……。
ルークの腕が、その反動に耐えきれず崩れた。
骨が砕け、肉が裂け、剣が床に落ちる。
血が広がっていく。
加護はまだ体に作用していた。
けれど、その治癒はもう治癒ではない。
命を戻そうとして、命の形を壊していく。
ルークの目が、少しずつ焦点を失っていく。
人の形が、崩れていく。
赤黒い肉。
不自然に伸びた骨。
絡まった血管。
まだ痙攣している指らしきもの。
潰れ、膨れ、裂け、塞がろうとして、また裂けている何か。
最終的に彼がたどり着いたのは、小さく蠢く肉塊だった。
僕はそれをしばらく見下ろして、最後に少し、もったいないことをしたなぁと思った。
---
テンゼンが商会本部へ辿り着いた時、戦闘はもう終わっていた。
終わっていた、というより、壊れていた。
中庭には無数の死体が転がっている。
そして、その中心に肉の塊があった。
最初、テンゼンはそれが何なのか分からなかったが、その近くに落ちていた剣を見て理解した。
ルークの剣だ。
「……」
テンゼンは、一歩だけ近づいた。
肉塊が、わずかに震えている。
まだ加護が働いている。
死んだ肉を、治そうとしている。
治すべき形を失ったまま、ただ命令だけを繰り返している。
テンゼンは、そこで初めて、奥に立つ男を見た。
黒髪。
軽い笑み。
汚れひとつない外套。
ダイヤ・レグ。
「やぁ兵隊さん。いい夜だね」
「……こんなに最悪な夜は初めてだがな」
男はにこやかにこちらに近づいてきた。
「君のことは知っているよ、テンゼン准将。活躍を聞いて、いつか会いたいと思っていたんだ。そして、君の望みも」
その手にはいつの間にか、異形の果実が一つ収まっている。
男はそれをこちらに差し出してくる。
「さぁ、どうぞ」
テンゼンは男を睨む。
なぁルーク、俺だって許せやしないんだ。私だって、正義を捨てたわけじゃない。
ずっと昔から、この男が私の元に来るのを待っていたのだ。
テンゼンは足元の肉塊に問いかける。
「……道徳も。倫理も。何もかもを捨てて」
肉塊は、まるでそれを止めたいかのようにざわめきだした。しかしその場でいくらか震えるばかりで、そこに意味は生まれない。
「その先で俺は、英雄になれるのだろうか」
ダイヤは笑った。
「もちろん、なれるさ」
果実は反吐の味がした。
次回から最終章です。お手隙の際に、評価を入れていただけると嬉しいです。