悪役令嬢の腰巾着に転生した俺、「流石はお嬢様!」と煽てながら全力で生き残る   作:延暦寺

11 / 25
第11話 結果はっぴょ~~~~~!

 十束学園(とつかがくえん)の試験は魔力量、ダンジョン実技、筆記の三つの試験がある。

 筆記に関して言えば、お嬢様は元々天才。

 俺や栞奈もしっかりと対策をしたため、ここは余裕である。

 

 数日後。

 結果は学園のホームページ上で公開された。

 学園内の掲示板でも公開されるが、世界中から受験生が集まるため、自宅からでも確認できるという学園側の配慮だ。

 だが、その内容は決して優しくはない。

 通常の学校のように合格者の番号を並べるだけでなく、なんと1位から180位までの順位が全世界に晒されるのだ。

 入学前から実力格差を突きつける、まさに鬼である。

 

 ちなみに学園は1学年6クラス、各クラス30名の定員180名。

 今年の受験者数は約8000名。倍率は約44倍という超高倍率だ。

 これだけの人数を数日で捌き、即座に順位を出すあたり、国家最高峰の運営能力は流石と言うほかない。

 

「き、緊張しますね……」

 

 栞奈が何度も時計を確認しながら呟く。

 合格発表は全員で見ようということで、俺と栞奈はお嬢様の部屋に集まっていた。

 

「私の親友なのですから、もっと自信を持ちなさいな。手応えはあったのでしょう?」

「し、親友……っ。は、はい! 私なりに精一杯頑張りました!」

 

 お嬢様の親友という言葉に、じーんと瞳を潤ませて頷く栞奈。

 彼女は二次試験でボスこそ倒せなかったが、雑魚敵を一蹴しつつ、困っている受験生を助けまくったという。

 筆記も優秀だし、合格はまず間違いないだろう。

 

 ……まあ、お嬢様には言えないが、一番不安なのは俺だったりする。

 目立ちすぎず、かつ確実に受かる平均値を目指して調整したつもりだが、周りのレベルが予想以上に高ければ、うっかり落ちている可能性もゼロではない。

 もし落ちたら、お嬢様が学園で闇堕ちするのを止めるどころか、俺の首が物理的に飛ぶ。想像するだけで胃に穴が開きそうだ。

 あとは主人公の天導勇希(てんどう ゆうき)だ。あいつが落ちたらラスボスを倒す奴がいなくなって、この世界が詰む。

 

「――時間ですわね」

 

 時計の針が正午を指した。

 俺はバッとノートPCの画面を操作し、震える手で結果発表のページを開く。

 画面には180位から順に、合格者の名前がスクロール表示されていく。

 

 固唾を呑んで見守っていると……150位の欄に、俺の名前がひょっこりと現れた。

 

 お゛……っ♡ あっぶな゛……っ♡ ざーこ♡

 俺の点数管理ガバガバ♡

 

 内心でメスガキのような煽り文句が漏れる。

 原作知識を駆使してほどほどの順位を狙ったはずが、どうやら今年の受験生はレベルが高かったらしい。

 思っていたより接戦だったが、合格したので結果オーライだ。

 

「あ、忍さんの名前ありましたよ! 合格おめでとうございます!」

「ふん、150位……ですって? 私の従者として、いささか情けない結果ですわね。貴方ならもっと上位だと思っておりましたのに」

 

 無邪気に喜ぶ栞奈の傍らで、お嬢様はパサリと扇子を広げ、蔑むような視線をこちらに向けてくる。

 ありがとうございます! 

 

「お嬢様の従者として、恥ずかしい限りです……。お嬢様の隣に立つ者として、入学後はさらに精進いたします」

「そ、そうですわね。もっと頑張りなさいな」

 

 満足そうに頷くお嬢様を確認し、俺はさらに画面をスクロールさせる。

 原作で見た覚えのあるキャラたちの名前が続き――そして30位。

 

「わ、私の名前、ありました! 30位です、葵様! 忍さん!」

 

 自分の名前が出ずにヤキモキしていた栞奈は、嬉しそうにキャーキャーとはしゃぎながらお嬢様に抱きついた。

 

┌(┌ ^o^)┐ユリィ……

 

 目の前に広がる至高の理想郷(アヴァロン)を網膜に焼き付けつつ、マウスを動かす。

 ちなみにメインヒロインの月城(つきじょう)カリンは75位。

 俺より上位なのが少しだけ癪だが、あいつは実技特化だし妥当なところだろう。

 

 そして、ついに一桁台のランキングへと突入し――。

 

「わ、わたくしが……2位……ですのぉぉぉぉ⁉」

 

 お嬢様が耳をつんざくような悲鳴を上げた。

 8000人中2位。客観的に見れば、化け物じみた素晴らしい成績だ。

 だが、問題は誰が彼女の上にいるかだった。

 

 燦然と輝く栄えある第1位。そこには――天導勇希。

 我らが主人公の名前が鎮座していた。

 

「あ……んの、平民……! わたくしの手柄を横取りしただけでなく、1位まで奪うなんて……!」

 

 お嬢様は顔をゆでだこのように真っ赤にし、プルプルと拳を震わせ始める。

 まずい、このままではお嬢様の頭がパーンしてしまう。

 フォローしなくては――と俺が口を開こうとした瞬間、栞奈がスッと割って入った。

 

「流石、葵様! 8000人もいる中で2位なんて、やっぱり葵様はすごいです!」

「で、ですが、わたくしは1位を……」

 

 栞奈の、一切の忖度も裏もない純真無垢な賞賛。

 その強力な浄化作用に、お嬢様の毒気がみるみる抜けていく。

 俺もチャンスとばかりに追従した。

 

「お嬢様、たとえ2位だとしてもお嬢様は世界……1位です。それに、むしろこれはチャンスです。これはあくまで入試の結果。つまり、学園に入ってから1位を奪い返すという楽しみが残ったということですよ!」

 

 俺の言葉を聞いて、お嬢様はしばし「あぁ、なるほど……」といった表情で考え込む。

 

「――確かに、それもそうですわね」

 

 お嬢様はすんなりと納得し、留飲を下げてくれた。

 

「忍の言う通り、本番は入学してから。この屈辱は学園でトップを奪い取ることで晴らして差し上げますわ!」

 

 すっかり機嫌が戻ったお嬢様は、いつものように高笑いを浮かべる。

 

 その後、全員合格という慶事を受け、九条家では盛大な合格祝いが開かれた。

 栞奈は親友として。そして俺は「お嬢様をよくサポートした」という、ついでのような理由で招待された。

 

 会場は九条財閥傘下の一流ホテルを貸し切り。

 芸能界に疎い俺ですら知っている著名人が多数顔を並べ、豪華な食事がホールを埋め尽くしている。

 各界の重鎮たちが代わる代わるお嬢様に祝辞を述べに来るが、今の彼女には本職の護衛部隊が付いている。俺は今日はお役御免だ。

 

「忍さん、美味しいですね、これ!」

 

 モッモッと最高級の肉を頬張りながら、栞奈が嬉しそうに声をかけてくる。

 見た目は可憐な文学少女なのに、ハムスターのように頬を膨らませる姿はギャップ萌えがすごい。

 彼女は恐らく萌えアサシンで、俺を萌え殺そうとしているに違いない。

 

「ええ、流石は九条家。食材から調理法まで一級品ですね」

 

 庶民には一生縁のない味を堪能していると、ふいに一人の男性が近づいてきた。

 三十代後半。黒髪できっちりと短く刈り込まれ、前髪を上げて綺麗に整えられたヘアスタイルで口髭と顎下に整えられたひげを生やしている。

 九条家現当主であり、お嬢様の父上だ。

 

「こ、これは九条様……っ!」

 

 俺は即座に料理を置き、深々と頭を下げる。

 

「九条様。いつも神代重工(かみしろじゅうこう)がお世話になっております」

 

 慌てる俺とは対照的に、いつの間にか肉を食べ終えた栞奈は優雅に、完璧な淑女の礼法でお辞儀をしてみせた。

 九条様はそんな俺たちを見て、満足そうに軽く手を振る。

 

「今日は葵を含め、君たち3人が主役だ。そうかしこまらずともいい、無礼講で行こうじゃないか」

 

 俺知ってるよ。この言葉を真に受けて本当に無礼を働くと、後で「あいつは失礼な奴だ」と消されるパターンなことを。

 

 とはいえ、いつまでもしゃちこばっているのも失礼だ。俺は怒られない程度に姿勢を正した。

 

「栞奈くん。いつも娘と仲良くしてくれてありがとう。少々気の強い娘だが、根は良い子なのだ。これからもよろしく頼むよ」

「はい! 葵様にはいつも良くしていただいております。こちらこそ、末永くお側にいさせてください」

 

 栞奈の返答に九条様は満足そうに頷き、続いて視線を俺の方へと転じた。

 

()()()くん。君には……いや、君の一族にはいつも助けられている。娘も、君の話をするときはいつも楽しそうだよ」

「は、もったいなきお言葉です。父もきっと喜びます」

 

 俺がうやうやしく頭を下げると、九条様は真剣な面持ちで俺の両肩に手を置いた。

 心なしか、俺の肩を掴む九条様の力が強くなっていっている気がする。

 

「君が従者としてよくやっているのは聞いている。娘に関しても、私は基本的には自主性に任せるつもりだ。だが――くれぐれも……くれぐれも、だ。娘を泣かせるような真似だけは、しないでくれたまえ。いいね?」

「へい……っ! あ、はい! お嬢様は私の敬愛する主。陰から支え、お嬢様が笑顔で過ごせるよう尽力いたします!」

 

 九条様の恐ろしいほどの気迫に圧倒され、思わず変な返事をしてしまったが、言葉だけは真剣に返した。

 それを聞いて、九条様は纏っていた厳格な雰囲気をふっと霧散させ、ニッコリと笑った。

 

「その言葉が聞きたかったよ。もし娘を泣かせたら……私は君を東京湾の底へ沈めなければならなくなるからね」

 

「なんてね、冗談だよ」と、全く冗談に聞こえないセリフを残して九条様は去っていく。

 

 彼にはやると言ったら本当にやる『スゴ味』があるッ!

 俺は冷や汗を拭いながら、お嬢様の笑顔(と俺の平穏な余生)を守るため、改めてお嬢様を守ると誓うのだった。




九条パッパは、やるかやらないかで言ったら必ずやります。
なので原作の忍はどっちにしろ詰みでした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。