悪役令嬢の腰巾着に転生した俺、「流石はお嬢様!」と煽てながら全力で生き残る 作:延暦寺
「ど~~~~~~して、私が貴方と同じクラスなんですの!」
「そんなこと言ったって、別に俺がクラス分け決めたわけじゃないのに……」
クラス分けの掲示を確認した俺達は、揃ってA組へと向かっていた。
その道中、お嬢様はぷんすかぷんとお怒りモードで勇希に文句を垂れ続けている。
お嬢様の気持ちも分からなくはない。
正直、このクラス分けを作った奴には俺からも小一時間問い詰めたい気分だ。
なんでよりにもよって入試1位と2位を同じクラスにするのか。戦力過多にもほどがあるし、マジで作為的な何かを感じざるを得ない。
「あ、葵様……これから同じクラスになるのですし、仲良くしましょうよ……」
流石に見かねたのか、栞奈がお嬢様を優しく宥める。
「それは……そうですが……」
入学式の日に一応認めはしたが、それでも思うところはあるらしいお嬢様は言葉を濁す。
「俺としてはできれば仲良くしたいんだけどね……。魔力量22000っていう学生としては破格の魔力量に、アーティファクトを操れる高い技量、すごく憧れるよ。それに、入学式の日に言われた言葉がすごく響いているんだ。君は、すごい人だ」
眩しいさわやかフェイスでそう告げる勇希。
流石は主人公。ゲームで選択肢によっては最高8股できるだけの天然タラシっぷりは伊達じゃない(※プレイヤーのせい)。
「……しょ~~~~ーがないですわねぇ! そこまで言うのならほんの少しだけ仲良くしてあげてもよろしくてよ! 好きなだけ憧れるといいですわぁ!」
勇希の言葉にすっかり気をよくしたお嬢様は、先ほどの敵対心をどこへやら、嬉しそうに高笑いを始めた。
どうやら自己肯定感バイブスがアゲアゲ↑になったらしい。流石はチョロさ界の覇者やでぇ。
とりあえず当面の危機は去ったようで、俺はホッと胸をなでおろす。
「そう言えば、天導さんはどうして俺にそんなに友好的なんですか?」
雰囲気が落ち着いたところで、気になっていた疑問を勇希に投げかけてみる。
父さんが修行をつけて俺の話を聞いていたとはいえ、初対面に近い俺に対してあまりにも好意的すぎるのだ。
「勇希でいいよ、あとタメ口だと嬉しいな。……そうだね、恩人である君のお父さんに指南してもらったことがあるのもそうだけど、修行中に君の話ばかり聞いていたせいもあるかな」
勇希は当時のことを懐かしむように話を続ける。
「『葵様に出会うまでの忍は普通の子供だったのに、出会った瞬間から人が変わったみたいになった。サボりがちだった勉強も修行も死に物狂いでやるようになって、彼女を護るために何でもやるっていう凄い気迫を感じた』ってさ。俺と同じ歳なのに、一人のためにそこまで努力できる君に、ずっと会ってみたかったんだ。それで、友達になりたいなって」
「そ、そう……それで、実際に会ってみた感想は?」
素面で真っ直ぐ褒めちぎる勇希にタジタジになりながらも、俺は先を促す。
「まだ少ししか話してないけど、イメージ通り――いや、それ以上かな」
屈屈のない太陽のような笑みで、勇希はそう答えるのだった。
「あ、あの……忍? 私に出会ってから変わったっていうのは、本当ですの……?」
俺と勇希の会話をじっと聞いていたお嬢様が、なぜかほんのり頬を染めて話しかけてきた。
「え、あ、はい。お嬢様に出会った瞬間に(前世の記憶を思い出して)変わりましたね。そこからはお嬢様(と自分の命)を守るために死に物狂いで頑張りましたよ。もっとも、それでもお嬢様には全然届きませんが」
「そ、そうですの……」
俺の答えを聞いた瞬間、いつものハイテンションはどこへやら。お嬢様は借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった。
「アンタ……地味顔の癖に結構やるわね……アタシも見習うべきかしら」
一部始終を眺めていたカリンが、何か深い感銘を受けたようにポツリと呟く。
……いったい何なんだ。
周りに漂う何とも言えないもどかしい空気に首を傾げつつも、静かになったお嬢様を連れて俺達は教室へと向かった。
◇
教室にやってくると、先生はまだ来ておらず、生徒たちが思い思いに騒いでいた。
教壇を中心に席が同心円状に広がる、段差のついた劇場型の教室だ。
席順が決まっていない
結果、右にお嬢様、左に栞奈という両手に華状態が完成した。
おまけに入試の成績上位勢がそろい踏みしているのだ。当然、クラス中の注目を一身に浴びている。
俺はなるべく気配を消し、背景のモブに徹しようとするが――。
「おい、あれ……2位の九条葵だよな……」
「神代重工のお嬢様も居るぞ」
「あの間に挟まれてる男は誰だよ」
「処す? 処す?」
「よく見たら1位も居るじゃねぇか、どうなってんだあそこのエリア……」
ダメだった。俺のモブ力では、お嬢様たちのカリスマ力に太刀打ちできねぇ!
不甲斐ない俺ですまない……。
俺は周囲から注がれる羨望と、俺個人に突き刺さる殺気混じりの憎悪の眼差しに耐えながら、心の中で(先生ー! 早く来てくれー!)と叫び続けた。
その願いが通じたのか、ガラリと教室の扉が開き、一人の女性が入ってくる。
身長は140センチそこそこと小柄。大きな丸眼鏡の下には濃いクマがあり、髪はボサボサ。ヨレヨレの白衣を羽織った、見るからにダウナー系だ。
(あー……担任はやっぱりこの人か)
原作でもA組の担任を務める女性――
見ての通り自身の容姿にはとことん無頓着で、翌日が仕事だろうとゲームでの夜更かしは当たり前という、生活力皆無の重度ゲーマーだ。
だが、ちんちくりんな身長に対して
そして攻略対象の1人である。
もう一度言おう、攻略対象の1人である。
そんな彼女はだらしない顔を晒しているが、これでも実はトップクラスの
ダンジョン内のモンスターの生態に詳しく、精密な魔力操作に長けていることから学園に
こんな性格だが、授業はちゃんとこなすプロでもある。
属性は土。特にゴーレム使役を得意としており、面倒くさがりな彼女は私生活でもゴーレムに乗って移動し、あらゆる雑用をさせている。
「あー、お前らの担任となる神馬瀬那だ。ワタシは面倒が嫌いだから面倒ごとは起こすなよ……ワタシの手を煩わせる奴は
そう言って、手で物をプレスするような恐ろしいジェスチャーをしてみせる。
「担当教科はダンジョン生態学と魔力操作だ。それじゃ、教科書やら時間割やら配るぞぉ」
先生は白衣のポケットからレトロなゲームパッド型の機械を取り出した。
別に、いきなりサボり始めたわけではない。
これこそが彼女のアーティファクト――『
先生がボタンをカチカチと操作すると、虚空から数体の小さな土ゴーレムが生成される。魔力糸を介して複数のゴーレムを操作し、テキパキと教科書を配り始めた。
「全員渡ったな? 配られていない奴は居ないな? 居ないって言え。いや、やっぱ面倒だから何も言うな」
教師としての資質を疑いたくなるセリフだが、これでも仕事自体はちゃんとやるのだから不思議なものだ。
「改めて、これから三年間、お前らの担任となるからよろしくな。……はぁ、なんでワタシが担任なんか……。もっとさぼれると思ったのに」
十束学園は三年間クラス替えがない。つまり、卒業までこの濃い面々と顔を突き合わせることになる。
それにしても、生で見る彼女のダウナーっぷりは予想以上だ。画面の向こうのダウナー系おっぱ――もとい美人キャラなら大歓迎だったが、現実の担任となると不安しかねぇ……。
――まあ、それでも好きなんですけどね!
大きいのは正義。
本日夜にもう1話投稿します。
ちなみに何がとは言いませんが
お嬢様は大
栞奈は小です。