悪役令嬢の腰巾着に転生した俺、「流石はお嬢様!」と煽てながら全力で生き残る   作:延暦寺

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主人公の行動のちぐはぐさに関しては力量不足です。
申し訳ありません。
精進いたします。


第21話 勇希といっしょ

 ある日の事、俺達はダンジョン演習場に集まっていた。

 入試でも使われていたが、学園には演習用のダンジョンがいくつか用意されている。

 森林型、遺跡型、海洋型などなどいろんなタイプに対応しているため、訓練のシチュエーションには事欠かないのだ。

 

 「はーい、本日はお待ちかねのダンジョン演習を始めまーす」

 

 ダンジョンの入口前で、俺達の注目を集めるようにパンパンと手を叩く人物がいる。

 

「主に実技を担当する早乙女 青薔薇(さおとめ あおばら)って言いまーす、よろしくね」

 

 身長は180ほど。

 長い黒髪に、薔薇を模したヘッドドレス、真っ黒なゴスロリのドレスに身を包んだ人物が自己紹介する。

 背には身の丈ほどもある大きな鎌型のアーティファクトを背負い、一見すると非常に美しい女性だが――男である。

 本名、鬼瓦 源五郎(おにがわら げんごろう)

 己のごつすぎる名前を嫌い、早乙女青薔薇という名前を基本的に名乗っている。

 ゆるい雰囲気を纏っているが、本名を呼ぶとバチギレする。

 

「早乙女先生は俺の寮の寮監なんだよ。ああ見えて男の人なんだ」

 

 と、シレッと俺の隣を陣取っていた勇希が耳打ちしてくる。

 そうそう、勇希とカリンだが鏡の寮(ミラー)を選んだらしい。

 

「あれが男の人……綺麗ですね……っ」

 

 近くで聞いていた栞奈が驚きの声を上げる。

 まぁ、見た目は完全に女性だからなぁ。

 俺も原作知識が無ければ騙されていたと思う。

 ちなみに、彼は一部の()()ユーザーから「付いててお得」と人気だ。

 

「まずはぁ、みんなの実力を見たいから、この初級用ダンジョンに挑んでもらいまーす。協調性とかも見たいから二人一組になってもらうんだけど……不公平がないようにくじ引きで決めるよぉ」

「あら、好きなペアを選ぶことはできませんの?」

 

 お嬢様の独り言に近い疑問に対し、鬼が……早乙女先生は一瞬こちらに恐ろしい殺意を向けた後、ニッコリ笑う。

 怖いよ! 心の中もダメなのかよ!

 あれぇ? 読心能力なかったよね⁉

 

 「いーい質問だね。もちろん、仲のいい人で組んでも良いけど、実際にダンジョンに挑むと見知らぬ人とパーティを組むことも多いんだよね。例えば、特定の素材が欲しいけど、敵が強いから一緒に行きましょうって募集したりね」

 

 要はネトゲとかでよくあるパーティ募集と一緒だな。

 

「そういう知らない人と組む時でも、最低限の連携を取れるかどうかのテストって感じだねぇ」

「……よくわかりましたわ。郷に入っては郷に従え、ですわね」

 

 早乙女先生の言葉に、お嬢様はしぶしぶと言ったように納得する。

 

「では……デレデレデェェェェン! く~じ~び~き~」

 

 と、某猫型ロボットのようなイントネーションでくじ引きが入った箱を取り出し、皆に引かせていく。

 

「うげ、あんたとかぁ……」

「オーッホッホ、私と組めてラッキーですわねぇ! せいぜい足を引っ張らないよう頑張ってくださいな」

 

 くじ引きの結果、お嬢様はカリンと組むことになった。

 最近つるむようにはなったけど、あの二人基本的に水と油だからなぁ。

 火属性なのにね。

 

「で、俺は……勇希とか」

「よろしくね、忍くん!」

 

 横を見れば、ぶんぶんと犬の尻尾が降られてる様子が幻視できるほどに嬉しそうな勇希がこちらを見ていた。

 できればお嬢様と一緒が良かったが、くじ引きなので仕方あるまい。

 改めて勇希の実力を見れるチャンスだと思えばいいだろう。

 

 ちなみに、栞奈は別の男子生徒と組んでいた。

 ……名も知らぬモブ男子よ、栞奈に何かしたら()()からな。

 俺の思いが通じたのか、モブ男子はブルりと体を震わせ辺りを見渡していた。

 

「組めたね? じゃあ、十分ごとに呼ばれた順からスタートしよう。他の組とかち合った場合は譲り合ってねぇ? これは勝負じゃないからね、探索者(シーカー)には礼儀も必要だよ。……悲しいことに、中には同業者から戦利品を強奪する()()()()()も居るけどね」

 

 実際、原作でもそんな感じのは居た。

 長時間同じマップに居ると確率で発生するランダムイベントで、割と強めである。

 賞金首システムもあり、ブラックリストに載った犯罪者探索者(シーカー)を倒すといい金になるのだ。

 

 この世界にも居るのかなぁ……鋼須(めたるす)ライム。

 ブラックリストには載っていないランダムポップする探索者(シーカー)だが、非常に経験値が美味しいのだ。

 経験値を稼ぐときは、奴が出やすいダンジョンでひたすら同じマップをグルグルして狩りまくるのだ。

 

「次ぃ、えーと……佐藤君、天導君ペア」

 

 俺が原作の思い出に浸っていると自分たちの番がやってくる。

 

「じゃあ、行こうか忍くん」

「あぁ」

 

 短くそう返事をしてダンジョンへと入る。

 原作でもこの授業はあったが、授業に関してはスケジュールを選んで一枚絵が表示され、ステータスの増減などの効果が表示されるだけだったので、ちょっとだけワクワクしている。

 中に入ると、薄暗く冷たい空気が頬を撫でる。

 初級なので、俺と勇希であれば鼻くそほじりながらでも楽勝だろう。

 

 

「キイイイイイ!」

「ハアアア!」

 

 くそデカい蝙蝠が襲ってくると、勇希はアストレアであっさりと一刀両断する。

 ……うん、初級だけあって敵も弱いのでぶっちゃけ勇希だけで事足りる。

 というか、入試の時のダンジョンの方が難易度は高かったくらいだ。

 まぁ、最初の授業だしこんなもんだろう。

 

「お見事。相変わらずいい剣筋だね」

 

 戦闘が終わり、道中を進みながら雑談を振る。

 

「ありがとう、君のお父さん……護さんの鍛錬のおかげだよ。君もあの人の鍛錬を受けたんでしょ? ……よく乗り切れたよね」

「あぁ、あの人、めちゃくちゃきっついでしょ? 普段はどこにでもいる中年のおっさんなのに鍛錬や戦闘になったら人が変わるんだよ。俺も何度血反吐を吐いたことか」

 

 中身が大人だからまだ耐えれたが、実の息子(しかも幼い子供)によくもあそこまでハードな事を課せられるなと何度も思った。

 

「勇希も良く乗り切れたよね。何か目的があったの?」

「――前にも話したと思うけど、俺の地元ではダンジョン災害があったんだ。護さん達のおかげで誰も死なずに解決したけど……みんな大怪我してて、中には手足を失った人も居るんだ」

 

 過去の事を思い出し、勇希は眉をひそめながら話す。

 

「カリンなんかも大泣きでね。俺が強ければ、あんな悲しい顔をさせなかったのにって何度も思ったよ」

「でも、当時七歳だろう? 流石にそれは仕方ないんじゃ……」

 

 俺の言葉に勇希はフルフルと首を横に振る。

 

「それでも、だよ。だから、目的って言うのなら――カリンや皆を二度と悲しませないくらいに強くなること、かな」

 

 勇希はそう言って自身の手に握られているアストレアを見つめる。

 俺は、その言葉を聞いて、彼が改めて主人公なんだなと実感する。

 正義感が強く、優しく、まさに主人公になるために生まれたような人物だ。

 だからこそ、非常に危うい。

 彼の持つアストレアはラスボスが用意した悪意に満ちた武器。

 選択肢を間違えなければ魔人化しないとはいえ、リスクが皆無なわけではない。

 特に現実となったこの世界では、一歩間違えれば世界滅亡エンドである。

 

「立派な志だな」

「君だって、目標があるから訓練に耐えて強くなったんでしょう?」

「……そうだね。俺もお嬢様を守りたくて強くなったから、ある意味、勇希と同じかもな」

 

 俺がそう言うと、勇希はきょとんとした後、弾けるように笑う。

 

「そっか、じゃあこの学園で一緒に強くなろうね、忍くん」

 

 最初は主人公である勇希やカリンとは関わらずに生きていこうと思っていた。

 だが、こうなったら諦めて受け入れるしかない。

 

「おお」

 

 と、俺は苦笑しながらそう返事をする。

 

「――そういえば、それ遺物(レリック)だよな。人工遺物(アーティファクト)の方は使おうと思わなかったのか?」

 

 俺は、照れ隠しをするように話題を変える。

 

「あぁ、これはさっき言ったダンジョン災害の時に手に入れたんだけどね、すごく自分にしっくりきて愛用してるんだ。不思議なことに、それ以来、他の人工遺物(アーティファクト)を握っても魔力がうまく伝わらなくて拒絶されちゃうんだよね」

 

 原作でも基本的に勇希の武器は固定でアストレアのみしか装備できなかった。

 武器も一緒に成長するため他の入手武器よりも劣ると言うことはなかったが、現実でも微妙にリンクした結果かもしれないな。

 

「アストレアがあったからこそ、ここまでやれたっていうのもあるし、俺はこのままこれで戦ってみようと思うよ。俺の方は良いとして、問題は忍くんだよ。君のアーティファクトは――」

「あぁ、俺のこれは――」

 

 その後も他愛のない会話をしながら俺達はダンジョン攻略をしていくのだった。

 全ペアの中でも評価は上だったということだけ伝えておこう。

 

 ちなみにお嬢様カリンペアが最下位だった。仕方ないね。

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