悪役令嬢の腰巾着に転生した俺、「流石はお嬢様!」と煽てながら全力で生き残る   作:延暦寺

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第25話 戦いを終えて

 目を覚ますと、目の前には真っ白な天井が広がっていた。

 

「知らないて――」

「ここは医務室ですわ」

 

 古来からある使い古されたネタを呟こうと思ったら、お嬢様の言葉にさえぎられる。

 横を見ればお嬢様が腕を組んでこちらを睨んでいた。

 

「随分とまぁ、頑張ったようで」

「えっと……」

 

 機嫌の悪いお嬢様に詰められ、俺は言葉が出ない。

 これはどういう状況だ?

 鎌瀬を倒し、そこからゼノルシアを倒して――そこで記憶が途切れている。

 改めて自分の状態を確認すると、全身が包帯でグルグル巻きにされベッドに横になっていた。

 

「――どこまで聞いています?」

「あらかた聞いていますが……詳しい事情はアナタから聞こうと思っていましたの」

 

 お嬢様はそう言うと深くため息を吐く。

 

「忍、貴方……今まで手を抜いていましたのね?」

 

 その言葉に、俺の心臓は跳ね上がる。

 

「俺は影なので、お嬢様を引き立てようと……」

「それは手を抜いていい理由にはなりませんわ。もしや、貴方が本気を出してしまうと私が機嫌を損ねたり、傷つくとか思いあがっていたのではありませんの?」

 

 無言を貫く俺に、お嬢様は立ち上がりこちらに近づき――。

 

「フンッ!」

「グアバチャ⁉」

 

 何を思ったか、お嬢様は突如俺の腹に拳を叩き込む。

 その衝撃で思わずのけぞるが、ゼノルシアとの戦いの影響でボロボロの体はさらに悲鳴を上げる。

 

「――貴方は、誰に仕えておりますの?」

「……お嬢様です」

「誰に仕えておりますの!」

「お嬢様です!」

「あなたは! 誰に! 仕えておりますの!」

「九条葵様です!」

 

 俺がそう答えると、お嬢様は満足そうにうなずく。

 

「そう! 私は九条葵! 九条財閥の娘ですわ! たかが従者が強かったからと言って機嫌を損ねるほど狭量ではありませんわ! それに、それくらいで陰るような存在でもありませんの!」

 

 その言葉を聞いて、俺はハッとする。

 俺は、もしかしたら心のどこかで原作の悪役令嬢として育った小物お嬢様と重ね合わせていたのかもしれない。

 目の前のお嬢様は、既に原作とは大きく異なって育っている。

 演技だった三下ムーブが、いつの間にか無意識に刷り込まれ、本当のイキリ三下になっていたようだ。

 

「申し訳ありません……」

「謝罪は結構です。今後は行動で示しなさい。今度から手を抜くことは許しませんからね」

「承知しました。お嬢様」

「――で、結局何がありましたの?」

 

 お嬢様の問いに、俺は経緯を話す。

 鎌瀬の事、天啓の使徒(ディヴァイン・オーダー)の事。

 そして……大罪の遺物(レリック)の事。

 流石にゲームではお嬢様は魔人化してました、などとは伝えず実際に会った事だけを伝える。

 

「なんで助けを呼びませんでしたの」

「突然の事だったので、そこまで頭が回りませんでした。兄貴……黒古田院が来なかったら、多分勝ててなかったです」

 

 そもそも、こんな序盤で戦う敵じゃないしな。

 まじで黒古田院様様(さまさま)だ。

 

「そのようですわね。話を聞く限り……遺物(レリック)は勇希のを除いてあと6つですのね?」

「はい。ただ……現在は誰が所持しているか分かりません」

 

 お嬢様が手に入れるはずだった傲慢の遺物(レリック)が鎌瀬に渡った時点で、もはや俺の知識はあまりアテにならない。

 まぁ、勇希たちと仲良くなってる時点でアテにならなくなっていると言われれば、それはそうとしか言えない。

 

「であれば、学園長も大罪の遺物(レリック)があることくらいは掴んでいるでしょうし、相談してもあまり意味はないでしょうね」

 

 ふむ、とお嬢様は顎に手を当てて考え込む。

 

「――いいでしょう、その大罪の遺物(レリック)とやら……それに、天啓の使徒(ディヴァイン・オーダー)なる組織も私と愉快な仲間たちが倒しますわよ」

「へぇ⁉ あいたたたっ」

 

 お嬢様の突然の宣言に、俺は思わず体を起こすがビキビキと悲鳴を上げ、ベッドに倒れこむ。

 

「あの、お嬢様……さっきも言った通り、傲慢はたまたま倒せただけです。次も勝てるなんて」

 

 そんな俺の心配を吹き飛ばすかのように、お嬢様は鼻で笑う。

 

「フン、誰に物を言っているんですの。私ですわよ? 忍が勝てるんですから、私にかかればラクラクチンに決まっていますわ」

  

 あぶねぇ、もう一個チンが付いてたらアウトだった。

 

「――それに、忍も一緒なのだからもはや無敵ですわ」

 

 お嬢様は照れたように頬を赤らめながらそう言った。

 

「あ、え、えと……頑張ります。はい……」

 

 なんだか甘酸っぱい空気が流れ、無言のまま時が過ぎていく。

 

「と、とにかく! 今後も従者として励むことですわ!」

 

 気まずい空気を払しょくするようにお嬢様が叫ぶ。

 俺は、そんな彼女の様子に思わず笑いながらも返事をする。

 

「――はい、お嬢様」

 

 

 




現代ファンタジー、とくに架空原作が思ったより難しく続けるのが厳しくなってしまったため、これにて完結とさせていただきます。

まさかの黒古田院の人気に続けようかとも迷いましたが、無理に続けても仕方ないと思い、こうなりました。
もし、また架空原作物を書く際はもう少し主人公の行動理念をはっきりさせようと思います。

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