七人とか言いながら八人になってたので修正しました。
作戦会議の翌日から、ほむらは生徒会室に乗り込んでおれの仕事を半分奪って行った。
堀北は、選挙で手伝ってもらったし、秘密を漏らすような生徒ではないし、実力も確かな生徒なので、まぁ、一応見過ごしていた。
その決断を堀北は心から後悔していた。
ほむらは大体三十分程度で奪ったおれの仕事を終わらせて、他の生徒会員に死ぬほど絡んでいた。
『ねぇねぇ綾小路くん。ぶっちゃけ三○どんな感じだった?』
空気が凍った。
綾小路はキレたし、堀北も櫛田もキレた。
『ねぇねぇ藤乃ちゃん。堀北先輩と橘先輩、この前二人っきりでデートしてたよ?ほら、これその写真!』
卜部はキレた。
『ねぇねぇ浅野くん!ちょっと助けて。前君のこと彼氏だよって嘘ついたじゃん?それで今真澄ちゃんと九十九ちゃんに死ぬほど詰められてるの。助けて』
浅野は無視した。
『じゃーん!伊吹王子のおっ宝写真〜‼︎ペットショップで猫を文字通り猫可愛がりする伊吹王子〜!
どうどう?よくない?』
『めっちゃ良いっすね花咲先輩!』
『花咲先輩めっちゃ分かってる。この写真クラスLINEにばら撒こうぜ』
悪ガキコンビとは意気投合してた。
『ねぇねぇ雪村ちゃん。これ見て見て?あっ!ついでに赤羽くんも!』
『何です───はぐぁぁぁぁぁ‼︎』
『えっはっえっはっえっ』
何かの写真を見せたところ、二人は死ぬほど大ダメージを受けたらしい。赤羽は一瞬で裏切られたな。
何の写真なのかは、二人が死ぬ気で隠していたので分からなかった。
綾小路たちも、なぜだか二人に協力してたな。何でだ?
『えっ、えっ、?えっ、あの日あそこいたの先輩?』
『いやー、ぷらぷら歩き回るもんだねぇ』
※『兎の園』に渚茅野カルマ奥田椎名の五人で入店した瞬間の写真です。
『見て見て一之瀬ちゃん!ほらこれ!』
『うっわぁぁぁぁ!私の黒歴史‼︎』
プリキュア、なのかな?その衣装に身を包んだ一之瀬の写真。
『葛城くんはスキャンダルないからつまんないね』
葛城は無視した。
『おーい森くーん?仕事終わったー?』
『あと少しだよ。ちょっと待ってろ』
『もう一時間経つよ?ほら、藤乃ちゃん仕事終わったし』
『おれは二時間掛かるって言ってんだろうが』
『半分わたしやったんだから一時間で終わらせなよ』
『お前がめちゃくちゃに話しかけるからだろ』
『わたしが話しかけて邪魔した藤乃ちゃん一時間でちゃんと終わらせたよ?』
『邪魔してる認識あんならやめろよ』
『お邪魔虫こそわたしの生き甲斐!煽れる隙は見逃さない!みんなの嫌がる顔は、三度の飯より大好物!
花咲ほむらです!どうぞよろしく!』
『浅野。今日はチェスはなしよ』
いっだぁぁぁぁぁぁい!
卜部藤乃のアイアンクロー!花咲ほむらに効果は抜群だっ!
『もう本当になんなんですか先輩』
『ねぇ鈴音。この人出禁にしようよ出禁』
『……………そうね。出禁にしましょうかしら』
……………ぶっちゃけ、出禁になってくれても全然良いんだが。
『─────わたしたちの実力は、こんなものじゃないって、言ってやりたくならないの?』
……………あぁ。おれも、そう言いたいよ。
『ほむら。仕事は終わった。お前の言う特訓とやら、早くやるぞ』
『だだだだだだだだ!は、離してぇ!』
『…………そう。あなたたち、
ゆっくりと、力を抜いて。
卜部藤乃は、花咲ほむらと、森悠政を、見据えた。
『────受けて、立つわ』
『吠っえ面かいても♪知らないよ♪』
歌いながら、花咲ほむらは、宣戦布告した。
『…………ほむらが本当にすまん。それでも、今回の特別試験、勝ちたいんだ。
だから、見逃してくれ』
森悠政は、どこまでも誠実に、堀北鈴音に頭を下げた。
『…………分かりました。出禁には、しませんよ』
『…………ありがとう』
で、なぜかおれは、ほむらの部屋にいた。
……………初めての異性の部屋が、こいつの部屋か。
『さぁて、今回の特別試験のおさらいといこう!』
今回の特別試験。『選抜種目競技』。
二クラスで行う試験で、十種の競技のうち、本命五種、ブラフ五種をそれぞれ選択し、その十種をお互いに公開。
どの五種目が本命で、どの五種目がブラフかは、最後まで分からない。
お互いのクラスの本命五種をシャッフルして、七種目で勝ち負けを競う。それが、この試験。
『付け加えるなら、勝ち越しクラスに100ポイント。勝利一回ごとに30クラスポイントの移動、だね』
『十種目は、もう選んであるんだよな?』
『うん!人数少ないし質も負けてる。それでも勝ちたいなら、相手がどんな種目を選んでくるかなんて、考えてる時間も全部、本命五種目の練習に費やした方がベスト!』
おれたちの本命は、バスケ、チェス、空手、水泳、ダンス。
この五種目に、文字通り全てを賭ける。
『…………なぁ、どうして、おれがチェスなんだ?』
ほむらが司令塔なのは、まだ分かる。
確かに、二割とはいえ、おれはほむらに勝てはする。
だが。
『九重にも卜部にも、勝てる気はしないぞ?』
そもそも、何故、相手の得意分野の種目を選んだ?
『得意分野だからこそだよ。ここで勝つことで、弾みをつけるの』
『…………勝てるのか?』
『勝つ為に、特訓するんだよ』
三つのチェス盤が、目の前にあった。
『さぁて森くん!命懸けで行こうか!』
そして、ほむらの、ビニール手袋をつけた両手には。
世界で一番辛い唐辛子、ブートジョロキアと、世界で一番辛い調味料、デスソースがあった。
…………………帰りたい。
ぐぁぁぁぁぁぁぁ!
どうも。勇者に蹂躙された魔王です。
なんておふざけは置いといて、おれとほむらがやってることと言ったら、一局指しているだけ。
まぁ、三つのチェス盤で、同時進行でやっているわけだけど。
二面打ちどころか、三面打ち。
そして、持ち時間は、全部共通。
そして、おれは一回負ける度に、デスソース&ブートジョロキアの罰ゲーム。普通に死ねる。
『おーい?これで六連敗だぞー?そろそろ勝ちなよ?』
『ぶざげぶな!』
唇が腫れ上がっててまともに話せないが、ふざけるなって叫んだ。
『ほーら!
『ぶぞばぁぁぁぁぁ‼︎』
クソがって叫んだつもりだった。
その日は一勝もできずに、ほむらの部屋で寝落ちした。
そして、朝。
『おーきーろー‼︎』
『うぐぁぁぁぁ‼︎』
耳元でメガホン叫んで起こされた。
朝五時だ。早すぎ。
『よし!じゃあ、学校が始まる八時半ギリギリまで!やろっか!』
『…………………マジ?』
あっ、腫れ引いてる。嘘でしょ。
『ふっふーん!ポイント積んで奥田ちゃんに作ってもらったんだ!凄いでしょこの塗り薬!』
『なぁ、奥田はドラえもんなのか?』
普通にヤバすぎるだろ。
朝飯食いながら、再びの三面打ち。
朝から辛いものは身体に悪いよね、ということで、罰ゲームは青汁だった。苦さ十倍の。
マジでふざけんな。
『おらっ!
『おっ!やっるぅ!いっただきまーす!』
テンション高めにほむらは青汁を一気に飲み干した。
『……………うぇぇぇぇ。にっっっがぁぁぁぁ』
なら何でこれ罰ゲームにしたんだよ。
授業の合間の休憩時間も、休み時間も、ひたすらにおれたちはチェスをしていた。
正気を保っていられたの、奇跡だと思う。
そして、放課後。
『今日もお邪魔しまぁぁぁぁす‼︎』
『邪魔するなら帰って』
『残念無念また来年!さぁ!早く仕事を終わらせよう‼︎』
櫛田の心からの懇願を無視して、ほむらはまた、おれの仕事を半分奪い去った。
昨日と同じく、三十分で終わらせて。
また、他の生徒を煽り出した。
『ねぇねぇ綾小路くん。ぶっちゃけどっちの〇〇がより興奮した?』
『もう本当にマジで○んでください』
綾小路がそんなこと言うなんて相当だぞ?
『あっさっのっくーんっ!
マジで助けて。このままだと真澄ちゃんに殺されるかも』
『良いことじゃないですか』
浅野…………。お前もストレス溜まってるんだな………。
分かるよ。
『ねぇねぇ一之瀬ちゃん一之瀬ちゃん。潮田くんと雪村さんはね、実は────』
『黙ってください本当に!』
『えっ、何?二人が何なんですか?』
おれは、全力で仕事を終わらせていた。
もうこれ以上迷惑をかけるわけには行かないので。
『ふっじっのっちゃーん‼︎色々ちっちゃいふっじっのっちゃーん‼︎』
『ころすわ』
『殺しましょう卜部先輩!低身長の癖に割と胸あるとか生意気です!』
『ごっめんねぇー。君たちはぁ、永遠のぉ、0だもんねぇ?』
卜部が仕事を終わらせて、ほむらの頭を握り潰そうとするのと殆ど同時に、おれは仕事を何とか終わらせて、ほむらを抱えて逃げ出した。
『ほんっとうにごめん!後で色々埋め合わせするから‼︎』
『お、今日はちゃんと一時間で終わったね。関心関心』
あー、もー。
あー‼︎もー‼︎
胃に穴が空きそうというか、ストレスで禿げそうと言うか。
兎にも角にも、その日もほむらの部屋で、寝落ちするまで三面チェス。
罰ゲームは、超濃縮レモン汁をコップいっぱい。レモン三十個分らしい。
おれが二十三杯。ほむらは七杯。
そして朝は、今度は感電死しないギリギリの電気ショックで起こされた。
朝五時からチェス。
休憩時間もチェス。
とにかくチェスチェスチェス。
放課後、またほむらが生徒会室に襲撃する。
三十分で仕事を終わらせて、また煽り出す。
『ねぇねぇ綾小路くん。ゴムの出費って、思ったよりも高いらしいね』
『…………そっすね』
『ねぇねぇ。オススメのやつある?えへへ。今度、森くんと───』
『やめろマジで‼︎』
文句言いながらも過去最高速で手を動かす。
お前とそういう関係には死んでもなりたくない‼︎
『おーい!あっかばねくーんっ!おっくだちゃんが、すっねてったぞー!』
『ねぇ。誰かガムテープ持ってない?』
赤羽ですら、三日目ともなればイラつきの方が上になったらしい。
今日は何とか、卜部よりも早く終わった。
再び抱えて、ほむらの部屋へ。
四日目。五日目。六日目。
もう、ほんっとうに、コイツにずっと振り回されていた。
そして、七日目。
『はいっ!仕事終わりっ!さぁて、今日のターゲットはぁ!』
『────おれも終わった!とっとと行くぞ!』
『────なぁんだ、つまんないのー♪』
その日初めて、嵐は、訪れなかった。
生徒会室に、久方ぶりの平穏が訪れた。
全員、心から安堵のため息を吐いていた。
そして、八日目。
『はいっ!仕事終わりっ!』
『………は?』
ほむらは、二十分で仕事を終わらせた。
『さぁてっ!今日のターゲットはぁ!』
僅か10分の嵐が、再び生徒会室を襲った。
『すっずっねっちゃーん‼︎首筋の絆創膏は、なぁにかっなぁー?』
『…………というか先輩、わざと三十分で終わらせていたんですか』
『そぉんなことよりもぉー、その首筋の絆創膏が、わたし気になるなぁ?』
おれは、少しでも早く嵐を止ませるために、全力で仕事を終わらせて。
そして、ギアが上がった。
『今日から試験前日までっ!』
『僕とっ!』
『この私がっ!』
『『『相手を務めよう‼︎』』』
ほむらと香月先輩と高円寺。
おれは、もう、色々諦めていた。
三面打ちの相手は、文字通り三通り。
めちゃくちゃ過ぎて、頭がおかしくなりそうで。
九日目。
一瞬たりとも嵐を起こさせまいと、文字通り死ぬ気で、何とか二十分で終わらせた。
人間命の危機を感じれば何とかできるんだな。
そして、試験前日。
『
高円寺に。
『
香月先輩に。
『
ほむらに。
なんとか、三連勝。
『ふっ、もう教えることは、ありませんね』
『さぁ、門出の時間だ。フォレストボーイ』
ふざけたことを言って、二人はとっとと部屋を出て。
おれはほむらと、一体一で、チェスをしていた。
『ふっふっふっ!いやぁ!何とか間に合ったねっ!』
『お前と五分のところ、かぁ。遠いと思ってたんだけどな』
なんとか、おれは、そこにたどり着いた。
この十日間、ずっと死ぬかと思ってた。
『いっやぁ!ほんっとに楽しくなってきたねぇ!』
『…………なぁ、聞いていいか?』
『ん?なぁに?』
『何でお前は、そんなに楽しさに拘るんだ?』
『…………ちっちゃいころ、心臓の病気でね。
いつ死ぬかも分からない幼少期だったんだ。
で、病室で死ぬのが、ほんっとに、つまらないって、そう思ったからさ。
死んでもいいから、病室を抜け出して、思いのまま、楽しそうって感情に振り回されるまま、遊び回って死にたくってさ。
病室を抜け出して、裏庭駆け回って、ぶっ倒れて、笑い声上げながら、意識無くして』
そうして気づいたら、移植手術終わって生きてたの。
『…………そっ、か』
それが、忘れられなくて………。
『なぁんて!うっっっそー‼︎』
『っはぁぁぁぁぁぁ‼︎』
『せっいかいはー!わたしが性悪なだけでしたー‼︎』
『ふっっっざけ、お前マジ、おれちょっと泣きそうになったんだけど⁉︎』
『あっはっはっはっはっはっ‼︎ちょっっっっろ‼︎』
マッジでこのやろー‼︎
そして、試験当日。
『みぃんなぁー‼︎準備は良い⁉︎』
『あぁ。言われるまでもねぇよ』
『そっちこそ、準備は出来てるんでしょうね?』
『あぁ。勝ちに行くぞ』
運は、間違いなく、おれたちの味方だった。
最初の二種目こそ、数学テストに英語テストで、完敗したけど。
三種目目で、おれたちは、ダンスを引いた。
社は、プロのダンサー志望だった。
実際、社のダンスは、上手いし、カッコいいし、派手で。
あいつがダンスで負けるわけないって、そう、思ってた。
圧倒的に、上手くて。
異次元の、カッコ良さで。
輝くように、派手だった。
『オレ、が、ダンスで、負ける………?』
『すまないな。まぁ、私が強かった。それだけの話だ』
司令塔同士は、同じ部屋で。
司令塔同士は、会話が可能だった。
卜部藤乃は、花咲ほむらに、話しかける。
『────社佑。彼を生かしてくるだろうことは、予想がついていたわ』
『ふぅん。それで?』
『まぁ、私は壊滅的に運が無いもの。その辺りの自覚はあるわ。
だから、あなたたちの本命五種目を全部引く可能性も、検討していた』
『それで?』
『あなたたちが、
『でも、わたしらの本命五種目が何かなんて、分からなくない?』
本来は、その通り。
だが、今回に限り、話は別だ。
『本命五種目は、あなたたちが、絶対の勝利の自信を持てるもの。つまり、それは一芸に特化した生徒を使うということ。
そして、生徒会役員は、名簿を見れる。
私はね、ほむら。
無論、あなたたち二年Dクラスのものも、ね』
『それで?』
『後は簡単よ。あなたなら、誰を使うかをトレースして、本命五種目を割出すだけ。
この五種目が、本命だと予想した』
『ふぅん』
『社佑、後藤圭、両沢眞子、水澤蘭、そして、森悠政。
この五人を生かしてくるだろうと、思っていたわ』
『それはまたどうして?』
『─────だって、そうした方が、面白いもの』
『─────よく分かってるじゃん』
バスケ。
後藤圭は、バスケ部のレギュラーメンバーだ。
高いジャンプ力と、鋭いドリブルを武器に、都大会優勝に、大きく貢献したのは、間違い無くて。
そんな、後藤が。
完全に、封じ込められていた。
『────まぁ、お前一人がどれほど強くとも、それでどうにかなるようなら、バスケットボールはチームスポーツとは呼ばれていない』
後藤へのパスは、完全にカットされて。
ドリブルは常に、ダブルチームで防がれて。
そもそもジャンプを、跳ばせ無かった。
桐山生叶の指揮は、あまりにも、完璧にすぎた。
『───なん、で』
『悪いが、
そう。南雲の攻撃から、一年近く、致命傷を防ぎ続けてきた桐山生叶にとって。
余りにも単調で、余りにも稚拙な戦術だった。
全ての攻撃を、完全に防ぎ。
反撃で、点数を重ね続けて。
ダブルスコアで、完全勝利。
水泳。
水泳部現部長の両沢眞子は、流石に三年Dクラスの剣城海にこそ及ばないが、それでも、表彰台には上がる程度の実力は、持っていて。
確かに、接戦を演じた、が。
指先一つの差で、敗北した。
四人でのリレーで、アンカーまでに、多少の差を付けていたにも関わらず。
『……………くそ』
『ふぅ。ギリギリでした。眞子さん』
雲雀めぐる。
現水泳部副部長。
自由人気質であり、決して、協力的とは言えなかった生徒。
少なくとも眞子の知るめぐるは、試験に全力を出すような生徒では。
『ふふふ。私もまた、変わり続けているということですよ。眞子さん』
────そう。至極、単純な話。
Bクラスは、最初から。
Dクラスの、正真正銘の全力を、打ち破るつもりだった。
真正面から、全力で。
空手。
水澤蘭にとって、空手は、幼い頃より積み重ねてきた、特技で。
まぁ、堀北学にこそ及ばないが、校内随一の実力だとは、認識していて。
だからこそ、現実を受け止めきれなかった。
勝敗を賭けた大将戦で。
水澤蘭は、敗北した。
『…………そん、な。私が、負けた………?』
神里
確かに、幼少期に、空手を習ってこそいたが、経験値の差は、圧倒的の筈で。
『ま、これに関しては、師匠の教えのおかげだな』
『師、匠………?』
『おう。卜部が頼み込んで、
ほむらが、この十日で、香月遊真や、高円寺六助の手も借りて、森を徹底的に鍛え上げたように。
藤乃は、この十日で、堀北学の手を借りて、神里を徹底的に鍛え上げた。
『でもこれってさ、博打みたいなものじゃないの?
もし空手が来なかったら、わざわざ堀北先輩の手まで借りたのに、無駄になっちゃうところだったよ?』
『───それは、準備を怠る理由にはならないわ。
この十日間、私は、私たちは、出来る準備は全てしてきた。
えぇ。文字通り、全てよ。あなたたちの本命五種目の対策を取るのは勿論のこと、私たちの本命五種目もまた、
学力テストの対策は、勿論のこと。
本命五種目の、サッカー、弓道、そしてチェスも、また。
自クラスの五種目に絞った、Dクラスとは違って。
Bクラスは、十種目を、鍛え上げた。
人数の差は勿論のこと、それ以上に。
卜部藤乃が折れてしまったあの日から、
『─────私には、こんなにも頼りになる仲間がいた。
そのことに、もっと早く気付くべきだったわ』
卜部藤乃という、高育歴代最高峰の生徒だけでなく。
個人個人のレベルもまた、一年前とは比べ物にならない。
例え、南雲雅が、Aクラスに復帰したとしても。
星穹恒が、本気で、Aクラスの為に戦うとしても。
それでも、現二年生最強のクラスは、疑う余地もなく。
二年Bクラスだった。
『─────だからこそ、私は、勝ちたいのよ』
弱いもの虐めと言われても、否定は出来ない。
僅か五十八ポイントのクラスから、徹底的にポイントを搾り取って、0ポイントにしようとしているのだから。
だとしても。
三学期に、あの人が、Dクラスの担任になると気付いた日から。
何としてでも、このクラスのポイントを、0にすると決めていた。
だって、絶対に、あの人にも、稔にも、南雲くんにも、負けたくないから。
勝ちたいから。
そうして、チェス。お互いに選択していた、被りの種目。
『さ、やろうか。森』
運は間違いなく、二年Dクラスの味方だった。
ただ、運が良い程度では、どうしようもないくらい。
この十日間、死ぬ気で鍛えた程度では、どうしようもないくらい。
二年Bクラスが。
強すぎただけ。
『それ、でも───!』
諦める理由になんて、なりはしない。
『…………へぇ。藤乃には聞いてたけど、ここまで仕込んで来たんだ』
やっ、ぱり、強い………!
九重九十九……!前日に初めて勝負した、本気のほむらと、同レベル……!
でも、何とか、喰らいつけてる……!
せめて、一勝、何としてでも………!
『ま、しょーがないよね。藤乃、奥の手使うよ』
そう。この十日間で、九重九十九もまた、身に付けている。
『………⁉︎打ち方が、変わった⁉︎』
『えぇ。今打ってるのは、私ですので』
この打ち方は、狐判稔。
そして。
『次は、僕の番だ』
次の打ち方は、浅野学秀。
『そうして次は、私です』
そして次の打ち方は、坂柳有栖。
『ま、こんな感じで、打つ人格をくるくる変えることで、実質的な多対一の状況を作る。
この十日間で身に付けた、私の新技だよ』
なんだこれ。なんだこれ⁉︎
めちゃくちゃだ!意味が分からない!先が読めない‼︎
防げはする。そうだ、防げはする。
あの、三人同時に相手した経験のおかげで、何とか………!
でも、ダメだ。
香月先輩も、高円寺も本気なんかじゃ無かった……!
でも、今は違う!
本気の狐判稔と、本気の浅野学秀と、本気の坂柳有栖と、本気の九重九十九と、同時にやり合っている………‼︎
ダメだ、押し込まれる………‼︎
『しょーがない。まさか、
画面に、指示が出る。
…………ここまでか………!
すまん。後は、頼む………!
『えぇ。ここからは私の番です。森先輩』
花咲ほむらは、弄り倒す為だけに、生徒会室に向かったのではない。
分析して、理解して、共感して。
己の中に、取り込むために。
『…………!この打ち方、ほむら、あなたは……!』
『いいえ、卜部先輩。今の私は、
ま、わたしじゃ藤乃ちゃんに勝てないのは、分かりきってたからね。
頭脳戦で一対一で、今の藤乃ちゃんに勝てるような生徒は、堀北先輩を除いて、今はいない。
多分綾小路くんなら、そのうち藤乃ちゃんに勝てるようになると思うけどね。
彼のトレースだけは、
だから、こうして、擬似的な多対一を作るつもりだったんだけど。
九十九ちゃんってば、わたしと似たこと考えるんだから〜。
でも見た感じ、九十九ちゃんは、自分も含めて四人が限界みたいだね。
なら、わたしの方が、上。
見せてあげるよ!ほむら流『七変化の術』‼︎
『隙あり、だよ。浅野くん』
『やってくれたな。赤羽』
『ここね。勝負よ。坂柳さん』
『あなたと戦えるのは楽しいですね。堀北さん』
『ほう。なら次は、私の番と行こうか。現テーブルゲーム部部長の実力、見せてもらおう』
『高円寺くんですか。えぇ。お相手しましょう』
『お〜やおや、僕のお相手は、君なんですね。九重九十九さん』
『うっわマジで?香月先輩まで?』
『それだけじゃないわよ。九十九』
『…………………は?メメ先輩?』
『ふん。僕まで引っ張り出すとはな』
『この打ち方、風間先輩⁉︎いや、それよりも、ほむら、あんた一体幾つ………⁉︎』
『さて、ここから、面白くなりそうだね。賭けるとしよう。僕らの勝利に』
『この、打ち方………!金石先輩………!』
『今度は私です』
『また、堀北……⁉︎』
九重九十九は、そこで、決定的におかしいことに気付いた。
『待って。待って待って待って待って待って。あんたはどこ行ったのよほむら‼︎』
ばっかだなぁ、九十九ちゃんは。
わたしの打ち方なんて、九十九ちゃんにも藤乃ちゃんにも筒抜けなんだし、わざわざ表に出すわけないじゃん。
こうやって、深いところに引っ込めて、
次の一手は
そこから二手で、今度は
そしたら四手で
そうして一手で
そのまま三手で
最後は
『後五手で
九重九十九は、追い詰められて。
『馬鹿!もうやめろほむら!
『…………は?』
九重九十九は、自分も含めて四人まで。
それが、彼女の限界。
これ以上増やせば、彼女という自我は完全に消失し、精神的に死亡する。
花咲ほむらは、自分も含めず七人も。
彼女は、限界を超えている。
もう既に、彼女という自我は、崩壊寸前だ。
『おい!おい!ほむら‼︎どういうことだ‼︎おい‼︎』
森の言葉は、もう、ほむらには、届かない。
『…………そう。そこまで、あなたは………』
『クラスのためでは無いわ。私は、このクラスが好きなわけじゃ無い』
『ならどうして、あなたは…………いえ、それが、あなたなのね』
『えぇ。面白くないのよ。卜部先輩』
あなたの戦い方、合理的で、確かに、三学期以降の私達に勝つためにも、最善手でしょうけど。
それだと、私は、つまらないのよ。
『…………初めから、この瞬間を狙っていたのね。
あなたは、初めから分かっていた。Dクラスでは、Bクラスに勝てないことを』
まぁ、こればっかりはしょうがないわね。
積み重ねの差よ。今の私たち二年Dクラスじゃあ、あなた達には、どうしても勝てない。
『最悪の終わり方は、0ポイントで終わること。
敗北はほぼ確定。でも、首の皮一枚繋げることは、出来る。
最後の種目がチェスなら、こうして、私との直接対決に持ち込める』
学年、いえ、学校でも最強クラスのあなたを正面から打ち破り、勝利の報酬として、30クラスポイントを奪い取る。
元々、五十八ポイントしかないもの。殆ど誤差でしょう?
そしてその上で、確かに、学年最強に打ち勝ったという事実が、彼らの原動力になるでしょう。
『賭けには勝った、ということね』
今、卜部の隣にいる少女は、ほむらであってほむらではない。
過度に脳味噌を活性化させているせいか、鼻血を垂れ流しながらも、その少女はほむらの顔で、堀北鈴音の笑い方をしていた。
『…………………九十九。交代よ』
やっと来たわね。卜部先輩。
殆ど
それでも、巻き返せるだけの実力はある。
だがそれは、一対一の話。
この学校有数の強者七人を同時に相手して、勝てる筈がない。
そう。嘗ての、卜部藤乃ならば。
『…………………ねぇ。ほむら。私、あなたのこと、好きよ』
友達として、だけどね。
ここに至るまでの全ての感情。それら全てを、精神に溶け込ませるように。
花咲ほむらが到達したもの、それは、メンタルトレースのある種の極地。
個にして全。全にして個。
一人の身体を、複数人で動かすことで、圧倒的な戦術の広さを見せつける。
─────だが、それは、戦術など意味を為さない圧倒的な強者を前に、潰されるのが、道理。
『酷く残念な話だけど、今の私では、
だから、この一時、余計なものを全て捨てる。
メンタルトレースの応用で、卜部藤乃は、自身の五感のうち、味覚、聴覚、嗅覚、触覚を、一時的に、
メンタルトレースの、もう一つの極地。
或いは、裏技。
自身の精神を塗り替える。それはつまり、自身の精神の形を変えるということ。
だからこそ、卜部藤乃は、精神の形を変えた。
視覚のみを残し、それ以外の全てを、切断して。
全く。呆れてしまう。
ここまでやって漸く、
モニターに、指示が映る。
九重九十九は戸惑いながらも、その指示に従って、駒を動かした。
『無駄ですよ。卜部先輩』
そう。今盤上に残っている自陣の駒は、キング、クイーン、ナイト2、ルーク1、ビショップ1、ポーン3の、九つ。
そして、差し手は、七人。
自身の次の手を読む事は、不可能だ。
同じ駒を二度選ぶ事も許されるし、同じ差し手を二度使う事も許される。
即ち、9の9乗×7の7乗。
数字で表すなら、387420489×823543。
九手先までの駒を選ぶだけで、これだ。
動かし方まで含めた時、その盤面は、天文学的という言葉すら生ぬるい数に及ぶだろう。
今の花咲ほむらであった誰かに勝つという事は、これら全てを読み切る必要があるという事。
当たり前だが、そんなことが出来る存在は、最早人間と呼ぶ事は出来ない。
そんなことが出来る存在は、神か、怪物である。
三十秒。十五秒。十秒。五秒。三秒。一秒。0秒。
一手を打つ時間が、加速度的に減っていく。
0秒。一秒。三秒。五秒。十秒。十五秒。三十秒。
一手を打つ時間が、加速度的に増えていく。
『ありえない………!
また一つ、駒が減る。
『どう考えてもおかしいだろう⁉︎何故
また一つ、駒が減る。
『……………ははははははは。ここまでイかれているとなると、最早
また一つ、駒が減る。
『うむ。どうやら、
また一つ、駒が減る。
『…………兄さんや、清隆くんすらも、上回るというの………?
また一つ、駒が減る。
『…………は、まさか、
また一つ、駒が減る。
『ふっ、ふふふふふふふふ。先輩として、嘗てあなたを導いた部長として。
また一つ、駒が減る。
そうして、また、駒が減る。
『正真正銘、完全無欠に、
十五手を、完全に読み切って。
白の盤面に残ったのは、キングのみ。
その盤面を見て、九重九十九も、森悠政も。
審判を務めていた、茶柱佐枝も、坂上数馬も。
完全に、固まっていた。
疑う余地も、ないくらい。
二年Bクラスの、完全勝利である。
『AEDを持って来い!早く!』
茶柱佐枝は、心停止している花咲ほむらに、必死に心臓マッサージを施していた。
恐らくは、呼吸すらも殆ど忘れて、過度なメンタルトレースを行ってしまった結果なのだろう。
坂上数馬は、すぐさま、AEDを取りに走り出して。
九重九十九から、花咲ほむらのしでかしたことを聞いた森悠政は、死力を尽くして、この部屋にたどり着いた。
『………っ、ほむ、ら………!』
はだけた、ほむらの、胸元には。
痛々しい、手術の跡が。
『…………っ、嘘、なんか、じゃ…………!』
それでも、ほむらは、笑っていた。
『……………なん、で、お前は………!
死にかけてるんだぞ…………………!』
『……………ほむらは、楽しいことが、全てなのよ』
鼻血を拭いながら、余りの疲労で、立ち上がることすらままならない卜部藤乃は、そうして、ほむらを見ていた。
『……………楽、しむって………生きることより、そっちの方が大事なのかよ………!』
『……………えぇ。そう、ね。
……………それでも、そういう人だって、世界には、いるのよ』
『お前は!お前は、ほむらの友達じゃなかったのかよ‼︎
なんで、なんで
そうだ。
もう、二年Bクラスの勝ちは決まっていた。
ほむらの戦いに付き合う必要なんて、無かったのに。
坂上はAEDを取ってきた。
森と卜部の目の前で、ほむらは電気ショックを受けて、蘇生していく。
あぁ。
確かに、ほむらの命は、つながった。
それでも、森は、卜部を睨んだ。
『…………っ、そんなに怖いか!浅野學峯が‼︎
あの男がおれたちの担任になることが、そんなに恐ろしいか‼︎』
『………………えぇ。恐ろしいわ。
でも、何よりも私が恐れているのは、浅野先生じゃない。
あなたたち、二年Dクラスを。
──────いいえ、私は、二年生の全てのクラスを恐れ、警戒し、敵視している。
全ての生徒を、全てのクラスを、全ての教師を、私を殺し得る敵だと、認識している。
あなた達のクラスは弱くない。
どのクラスも弱くない。
どのクラスがAクラスになってもおかしくない』
そう。
卜部藤乃は、もう誰も、見下さない。見逃さない。
全ての生徒を、対等と認め。
全ての生徒を、敵と認めている。
だからこそ、手加減はしない。
だからこそ、常に合理的に。
彼らに敬意を払うからこそ。
彼らの強さを認めるからこそ。
真正面から、全てを受け止めて、打ち倒す。
『……………ほむらは、確かに、私の友達よ』
だからこそ、私は、ほむらの全てを、受け止めたかったの。
その結末が、これか。
『ふざけんな………!ふざけんなよ………!』
何でおれは泣いている。
何でおれは悲しんでいる。
卜部に怒りをぶつけるのは筋違いだ。
分かっている。分かっているんだ。そんなこと………!
おれは、おれは……………!
『…………………あー、死ぬかと思った』
『…………………おはよう。ほむら』
『あーあ、勝てると思ったのになぁ。なぁにあれ。藤乃ちゃん、ヤバすぎない?』
『あなたの方こそ。あそこまでやるのは、予想外だったわ』
『ごめんねー森くん。首の皮一枚繋げたかったんだけど』
…………なんで、平然としている。
…………なんで、笑えている。
『…………なんで、ここまでやったんだよ…………。
これが、本当に、楽しいのかよ…………』
『うーん。今回に関しては、楽しいからとは、ちょっとだけ違うかも』
『…………は?』
『いやまぁ、楽しかったのは事実だし、楽しみたくはあったんだけど。
ほら、わたしが君達を引っ張って、Aクラスチケットとか、どっかいっちゃった訳だしさ。
まぁ、その、責任っていうか、なんていうか。
そういうのが、わたしにはあるから、さ』
わたしね、ずっと、楽しく生きていたかったの。
でね、人を笑わせる事は楽しいし、人と笑える事は楽しい。
だから、心臓が治って、学校行けるようになってさ。
イタズラして、人と笑ってたんだよね。
まぁ、イタズラされていた人も、それを見ていた人も、笑ってたし、わたしも、楽しかったから。
これで良いんだって、そう思ってたんだけどね。
イタズラされてた人、泣いちゃったんだよねぇ。
ほんとはずっー、と、わたしがしてきた事、嫌だったみたい。
だったら言ってよ。
そしたらやめたよ。
何で、いやまぁ、わたしが悪いんだろうなぁ。
でもさぁ、じゃあ何で笑ったんだよ。
って、思っちゃったからさぁ。
あぁ、わたし、人の嫌がる顔が好きな、どうしようないやつなんだって、そう思ったんだ。
『だからね。ここに来た時は、ぜーんぶ隠すつもりだったんだぁ。
ぜーんぶ隠して、穏やかーに、お淑やかーに笑ってさ。
…………でもさ、わたしが何もしなくても、勝手にクラスは好き勝手に荒らされて、ぶっ壊れて。
みーんな、勝手に笑わなくなった。
なんだよそれ。つまんねーってなったから。
もう!ぜーんぶ曝け出してやることにした‼︎』
………………今でも、覚えている。
一学期の期末で、これ以上、退学者を出さないように。
立花は、敢えて点数を落として、赤点ラインを、下げようとして。
自分が退学になって、ほむらは、それを、盛大に馬鹿にした。
なぁ、ほむら。
お前、本当は、人の嫌がる顔、嫌いなんだろ?
でも、自分の知ってるやり方は、どうしようもないくらい、誰かを、傷付けるやり方でしかなくて。
それに、気付いた時に。
お前は、傷つけたことを申し訳なく思うよりも、それを言ってくれなかったことに、腹が立ってしまったから。
そんな自分に、絶望したから。
だから、自分は、人の嫌がる顔が好きなんだって、そう必死に言い聞かせて。
そうして、絶望から、目を逸らしていたんじゃないのか。
『……………まぁ、だから、さ。
鈴音ちゃんの提案を聞いた時、チャンスだって、心から思ったの。
これなら、わたしは、きっと。
きっと──────』
『おれたちを、笑わせられるってか?』
『………………そっか。わたし、笑っていて欲しかったんだ』
『………………笑えないよ。ほむら』
こんなの、笑えないよ。
『………………そっ、か』
なんか、独りよがりで、ごめん。
おれたちは、負けた。
色んなものに、負けた。
でも、負けて、終わりなんかじゃ、ない。
例え、このクラスが、『エンドのEクラス』だったとしても。
おれは。
おれは───。
『────わたしは、楽しみたい。
この学校を!わたしの人生を!楽しんで楽しんで楽しんで───笑って終わりたい』
あぁ、そうだよ。
おれも、そうだよ。ほむら。
お前のめちゃくちゃに巻き込まれた時。
それでも、おれは、楽しかったから。
きっと、笑っていたから。
おれは、この学校を、笑って終わらせたい。
心から、楽しんで、終わりたい。
だから、おれは。
生徒会室で、アイツに、悪魔に、声をかけた。
『────赤羽。取引が、ある』
『良いよ。森先輩。聞いてあげる』
聞く価値があるかどうか、だけどね。
おれたちの担任に、浅野學峯が来たところで。
それだけじゃ、卜部には勝てない。
現Aクラスには、勝てない。
うちのクラスで、一番強いやつと。
同じくらい強くなったおれの二人で。
卜部に、蹴散らされた。
Aクラスに、蹴散らされた。
だから、おれは。
おれたちのクラスに、来てくれるかもしれないやつと、話をしたい。
お前は、お前は。
責任の取り方を、探しているはずだ。
桐山から、そう聞いた。
なら、さ。
この、ドン底の、エンドのEクラスを。
お前がめちゃくちゃにした、このエンドのEクラスを。
一番上まで引っ張り上げるのに、手を貸してくれ。
『────話をしよう。南雲』
『あぁ。俺も、お前と話がしたかった。森』
今回の九重九十九と花咲ほむらがやっていた実質的な多対一は、プロット段階だと、堀北さん綾小路くんコンビでやってもらうつもりでした。
つまりですね。堀北さんのフリをして綾小路くんが打って、綾小路くんのフリをして、堀北さんが打つ。
実際に、フリじゃなくて本人が打つのも何回かやって。
浅野くんと坂柳さんなら、これは綾小路くんが堀北さんのフリをしているなってことに、途中で気付けるでしょうが、そうなってからだと、もう、この一手はどっちが打ったものなのか全く分からなくなって、先が全然読めなくなって、最終的に綾小路くんと堀北さんが勝つって展開のつもりでした。
えぇ。なので、ほむらは途中で倒れて、卜部の不戦勝のつもりだったんです。
なんか、卜部のやつ、バグりました。(n回目)
こいつまじなんなん?