殺せんせーの教え子たち   作:宇津木 沙坂

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 暗殺教室の定期テストを問スターにする描写、マジで天才だと思う。


愚者達と大戦争(中間テスト)

 

 テスト当日、いつも通りの時間に登校すると、すでに須藤が教室にいた。

 どうやら今日は朝練も切り上げて勉強しにきたらしい。こうまで変わるとはな。

 

「おはよう。早いな須藤」

「あぁ綾小路か。まぁ、朝練で早いのは慣れてるからな」

「なるほどな」

「あぁ、そうだ。なぁ、英語のこの問題なんだが」

 

 思わず目頭を抑えて上を向いた。こんなに真面目になって………

 

「おいどうしたんだよ?」

「……すまない。嬉しくてな」

「?やっぱ変なやつだな」

「変なやつは余計だ。それで、どの問題だ」

 

 ……思ってたよりも、賭けの勝率は高いかもな。

 

「あれ、二人とももういたのか?」

「うわっ、俺たちが一番乗りだと思ってたのに」

「池、山内……」

「何だよ考えることは同じかよ」

「綾小路いて助かったわ、英語でわかんない問題あったんだけどさ──」

「あっ、ずるいぞ寛治!俺も聞きたいことあったんだけど」

 

 世の中の人間が、何故『はじめてのおつかい』で号泣するのか、今、身にしみて分かった。

 

「成長したな、お前ら………」

「何で泣いてんだよ」

「飴、舐めるか……?」

「おばあちゃんか………貰うわ」

 

 この後登校してきた鈴音と桔梗も、三人が朝早くから学校に来て、積極的に質問してきたと知って、落涙した。

 

「成長したね………三人とも………」

「えぇ……私は今、すごく嬉しい………」

 

 そんな桔梗を見て、ワンチャンあるのでは⁉︎とでも思ったのか、山内のいつものが出た。

 

「な、なら櫛田ちゃん、テストで良い点が取れたら俺とデートに───」

「あっ、それは無理」

「ちくしょぉぉぉぉぉ!」

 

 俺たち三人の涙はすごい勢いで引っ込んだ。

 何というか、相変わらずだなぁ、山内は。

 

「ぷっくくくくく、ははははははは!」

 

 思わず声を出して笑ってしまった。あぁ、この感じ、ひさしぶりだなぁ(E組以来)

 

「ぐぅぅ、そんな笑うことねぇだろ綾小路ぃ!」

「ぶっくくくく、そうだぞ、あ、綾小路、い、いくら何でも、春樹が、かわいそ───くくっ」

「笑い堪えられてねぇんだよ寛治ぃ!」

「おいおいっ……お前ら…っ……辞めてやれよ……っっく」

「おいこらけぇん!忍び笑いもれてんだよぉ!」

 

 そんな俺たち───特に笑い声を上げる俺を見ながら、鈴音と桔梗はまた泣いた。

 元E組は、俺が大笑いすると泣きがちだ。些かむず痒い。

 

 登校してから生徒も増えてきた。茶柱が入ってきたところで、須藤達の勉強を切り上げさせる。

 

「諸君。これから1学期中間テストを始める。改めていうが、赤点を取ったら退学だ。──覚悟はいいな?」

「えぇ。何の問題もありません」

 

 最後尾から、教卓へ、距離を感じさせないほど、よく通る澄んだ声。鈴音は、宣戦布告のように、茶柱に告げた。

 

「私たちは、誰も(退学)なない」

「ふっ、ならば、見せてみろ。()()()()()()

 

 

 テストが配られ、全員が集中する。

 やがて、チャイム(ゴング)がなる。

 さぁ、中間テスト(大戦争)の幕開けだ。

 

 

 

 一限目、国語。

 現れる()()()()は、鎧を身に纏った大鬼(現代文)。その圧倒的な体躯(文量)に、全員が怯む。

 

「何なのこれ!デカすぎ(文字数多すぎ)でしょ!どうやって殺す(解く)のよ⁉︎」

 

 軽井沢の悲鳴が示すように、一瞬、クラス中の手が止まる。だが、すぐにまた、一人の手が動き出す。

 思わず怯むクラスメイト達の傍から、鈴音は薙刀(シャーペン)を手に躍り出る。

 大鬼(テスト)背丈ほどもある金棒(文量の多い問題)を振り下ろしてくる。が、鈴音は見切り(読み飛ばし)躱し(読み飛ばし)、反撃の一撃で、傷をつける(重要な部分に線を引く)、そして、もはや、見切った(読み解いた)と言わんばかりに、一気に殺しにかかる(解きにいく)

 必要最低限の力(必要な文量)と、最高効率の身のこなし(最短時間)で、(大問一)を落とし、(大問二)を落とし、(大問三)を落とす。

 疑う余地のない完全勝利(満点解答)である。

 

「何も恐れることはないわ」

 

 全員に背を向けながら、鈴音は切先を更に奥にいる巫女服を着た妖狐(古文)と、空を飛ぶ竜(漢文)に突きつける。

 

 

「貴方達が学んだこと、身に付けた知識を必要な形であいつら(問スター)にぶつけるの。今の貴方達なら、それだけで解ける(殺せる)

 大丈夫よ。普段通り(勉強会)にやりなさい。それだけで良いの」

 

 

 言うだけ言って鈴音は妖狐(古文)襲撃(解答)を始めた。

 

 他の生徒達も、それに触発されたのか、雄叫びを上げながら()()()()殺し(解き)にかかる。

 

 さて、俺もそろそろ殺す(解く)としよう。

 自然体で、大鬼(現代文)に近付く。凄絶な笑みを浮かべて、大鬼は金棒(長文読解)を振り下ろしてきた。躱し(読み解き)ながら懐に潜り込み、コンパクトに畳んだ腕を振り上げて、一息に八つ裂き(大問一、二、三)にする。

 そのまま妖狐(古文)を袈裟斬りにし、(漢文)を地面に墜とす。

 これで国語は満点解答(完全勝利)だ。

 

 さぁ、須藤達はどうなっている?

 

 

「はっ、くそ。強すぎんだろ(難しすぎる)こいつら……!」

 

 取り敢えず一通り戦って(解いて)みて、大鬼(現代文)には軽い傷(漢字の読み)を、妖狐(古文)かすり傷(現代仮名遣い)を、(漢文)数枚の鱗(返り点)を剥がしてみせた。

 だが、これだけでは到底勝利(合格)にはならないことなど、分かっている。

 

(俺に、殺せる(解ける)としたら)

 

 それは、ある意味で最も単純(簡単)な。

 

お前(大鬼)だろ!)

 

 真正面から大鬼(現代文)に向かった須藤は、振り下ろされる金棒(長文読解)を、薙刀の柄で愚直に受け止める(必死に読み解く)

 今は、妖狐(古文)(漢文)も無視する!

 

「ぐううううう!」

 

『現代文の読解問題は、難しいようで、良い得点源になる。何せ、完全に解けなく(殺さなく)ても、部分点はもぎ取れるからな』

 

「うりゃぁぁああ!」

 

 強引に、金棒(長文読解)を押し返す。須藤では、完全には殺さない(読み解けない)

 

『不格好でも、時間をかけても、最後まで読み解け。完全でなくとも空欄は作るな。僅かに拾えた正解を、しっかり刻みつけろ』

 

死に晒せぇぇ!(解けろ)

 

 だとしても、少しでも刻み込む(解いていく)。気合いと根性と直感で、強引に殺す(解答する)

 牙を突き立てられながらも薙刀を力任せ(直感)に振るい、皮一枚(減点一)繋がったままだが(大問一)を落とし、足首から下(減点三)しか落とせなかったが(大問二)を落とし、頸半ば(減点三)までしか落とせなかったが、(大問三)を落とした。

 体力(集中力)は既につきかけ。だが、まだ時間はある、ならば──!

 

 妖狐(古文)は嘲笑いながら、須藤に狐火(助動詞の活用形)を飛ばす。それを、正面から受け止めながら、須藤は突き進み、妖狐(古文)の首を掴む。 

 

「舐めんなごらぁぁぁ!」

 

 炎に包まれながらも強引(直感)に振り切った薙刀は、妖狐(古文)片腕(大問一)を、半ばまで断ち切った。

 

 そこで時間切れ。

 須藤健、国語、53点。

 

 第一ラウンド、判定勝ちだ。

 

 

 三限目、日本史。

 

 現れる問スターは、巨躯の僧兵(室町時代)騎馬兵隊(安土桃山時代)四本腕の侍(江戸時代)である。

 

 池寛治は日本刀片手に激戦を繰り広げていた。

 

 既に僧兵(室町時代)には幾つかの深い切り傷(正答)を与え、勝利(七割正解)騎馬兵隊(安土桃山時代)は、その半数(五割)を撃破した。しかし、現在、四本腕の侍(江戸時代)には、傷ひとつ付けられていない。

 

「いくら何でもマニアック過ぎんだろ!陽明学とか知らねぇよ!」

 

 そんな池の叫びなど気にも止めず、一切の容赦なく池を殺しにくる。

 

「……っ、流石にこれ完敗(未解答)はまずいぞ。………せめて、少しぐらいは(数問)………!」

 

 池は、綾小路のアドバイスを思い出していた。

 

『日本史の選択問題は消去法でいけ。四択から選ぶのと、三択、二択から選ぶのは大きく変わる』

『それって何が変わるんだ?結局正解は一問だけだろ?』

『例を見せよう』

 

 いつの間にか綾小路の手に四枚のトランプがあった。

 

『いやいつ出したんだよ』

『気にするな』

『気になるわ』

 

 四枚を表にして池に見せる。スペード、ハート、クローバーのキングと、ジョーカーが一枚。

 

『今からこれをシャッフルする。お前はジョーカーを当てろ』

 

 目にも止まらぬ速さ(比喩ではない)で、裏側の四枚のトランプを高速で並び替える。いや、こんなの分からないって。なんか残像見えてたし。

 

『さぁ、どれがジョーカーだ?』

『分かるか!』

『まぁ、そうなるな』

 

 そして綾小路は、そこから左端の一枚を表にした。クローバーのキング。これで三択。

 

『これなら、どうだ?』

『……いや、まだ分かんねえって』

 

 そこからさらに、一枚、右から二番目のトランプを表にする。ハートのキング。これで二択。

 

『これなら、どうだ?』

 

 確率は、二分の一である。

 思わず唾を飲み込んだ池は、実感する。

 

『これが、消去法………?』

『あぁ。分かるか分からないかは重要じゃない。選択肢を減らしていって、できる限り当たる確率を上げろ。……ここまできたら、後は運だけだ。……運には、自信があるか?』

『………はっ、上等!』

 

 左側に残った一枚。表にすると、そこにあったのは、ジョーカー。

 

『的中率50%なら、十分な勝率だ。無解答(0%)よりは、圧倒的にマシだからな』

 

 問、『生類憐みの令』を施行した将軍は、次のうち誰か。

 1、徳川家康

 2、徳川家光

 3、徳川家綱

 4、徳川綱吉

 

(1、2は絶対違う!正解は3か4!勝つ(正解)負ける(不正解)かのギャンブル!…………ここまできたら……!)

 

 四本腕(四択)のうちの二本(二択)は落とした。

 後は、確率50%のギャンブル……!

 

「……今日のラッキーナンバーは、4ってことで!」

 

 これ以上考える時間は惜しいし、考えても分からないなら、運に任せて突っ込んでいけ。死ぬ(不正解)可能性は、考えるな。

 捨て身で突っ込んだ池は、殺せたかどうか(見直し)なんて気にせず、次の問スターに襲い掛かった(解いていく)

 

(できる限り択を減らせ!四択を三択に、三択を二択に!そんで後は、ワンチャン(確率50%)にかける!)

 

 何度も殺され(不正解)ながら、それ以上に殺して(正解)いく。

 

 時間ギリギリまで殺して(正解)殺されて(不正解)を繰り返し、最後に、侍の一太刀(記述問題)に倒れ伏す。

 だが………

 

「こん、だけやりゃぁ、何問かは、殺ってんだろ(正解してる)………」

 

 池寛治。日本史、56点。

 

 第三ラウンド、判定勝ち。

 

 

 

 5限目、数学。

 

 山内春樹は、大型軍事ドローン(場合の数)の弾丸の雨に追い詰められていた。

 何とか岩場の影に隠れて凌いでいく。

 

(あぁ、くそっ!こういう時(組み合わせを選ぶ)使える数式やった筈なのに思い出せねぇ!)

 

 簡単なアンドロイド兵(連立方程式)を筆頭とした、雑魚ロボット兵(基礎問題)あらかた(8割)潰した。

 後は、大型の戦闘機械(大問2、3、4)のうち、せめて一機(一問)でも落としたい(正解したい)から、一番出来そうな大型軍事ドローン(大問2)を選んだが、この有様だ。

 

「……、たしか、こんな時は……」

 

『最悪の場合、力尽くでいけ』

 

 数学の対策をしているときに、綾小路はそう言った。

 

『力尽くって、どういうことだよ?』

『場合の数に関してはこれが使える。ありえる組み合わせを書き出して、最後にその組み合わせを数えるんだ』

 

 だが、その考え方だと。

 

『流石に全部それじゃあ時間足んなくね?場合の数以外にも問題ってあるだろ?』

『あぁ。だが、最悪式がなくても解けるのも、場合の数だけだ』

『……?式なくても行けんなら、何で式があるんだ?』

『掛け算と考え方は一緒だ。1+1を9回繰り返すよりも、1×9を1回で終わらせたほうが楽だろう?』

『……、あぁ、なるほど』

『他の問題に割く時間を切り捨てれば、残りの時間は全部場合の数に注ぎ込める。掛け算がどうしても出来ないなら、足し算を繰り返せ。そうすれば、必ず解ける』

 

 残弾(残り時間)は十分。後先(他の問題)なんて考えずに、ここで───!

 

残弾全部(残り時間全て)ぶち込んでやる!」

 

 身を晒し、引き金を引く(組み合わせを書き出す)雑魚ロボット兵(基礎問題)は十分に殺した(解いた)。既に2割後半から3割はいってる。後は、この軍事ドローン(大問2)さえ落とし(正解)切れば、勝てる(合格)

 

「うらぁああぉ!」

 

 撃つ(書く)撃つ(書く)撃つ(書く)撃ち続ける(書き続ける)

 かっこよさなんて放っておけ。

 ただ、今は───

 

こいつ(軍事ドローン)さえ落とせりゃ、それで良い!」

 

 残弾(時間)は0。他の大型戦闘機械(大問3、4)はピンピンしている。だが──穴だらけになった大型軍事ドローン(大問2)は、盛大に爆発(完全解答)した。

 

「……っ、はぁ。ざっと、こんな、もんだろ」

 

 血だらけ砂だらけ泥だらけ。髪の毛は余波でちりちりのぼろぼろで、制服なんて目も当てられない。

 だが、それでも、山内春樹は強がった。

 

 山内春樹、数学、54点。

 

 第5ラウンド、判定勝ち。

 

 

 七限目、英語。

 

 体力(集中力)も尽き掛けているときに襲ってくる、最強(最難関)の問スター達。

 ケルベロス(大問1)グリフォン(大問2)ヒュドラ(大問3)ヴァンパイア(大問4)は、戦斧を構えた死に掛けの須藤達を、容赦なく殺しに行く。

 

 だが、しかし。

 須藤は、ケルベロス(大問1)牙を受け止め(イディオムを読み解き)

 池は、グリフォン(大問2)翼に穴をあけ(長文を和訳)

 山内は、ヒュドラ(大問3)首を焼き落とす(英作文を作り上げる)

 

 思わず後ずさるヴァンパイア(大問4)。こうもあっさりやられるなんて、あり得ない。

 そんな問スターに、須藤は戦斧を肩に担ぎながら、不敵に笑う。

 

テメェら(英語)が一番強い(難しい)ことなんざ、分かりきってたからな。一番時間かけて、ギリギリまで対策してたんだよ」

 

 ズタボロの問スター達に、念入りにトドメ(見直し)を刺してきた池は、戦斧を突きつけながら、鋭い眼光で睨みつける。

 

「最後で助かったぜ。お陰で休み時間にたっぷり訓練(復習)できたんだからな」

 

 戦斧を振り上げながら、尻餅をついて後ずさるヴァンパイア(大問4)を見下ろして、山内はトドメ(解答)を刺す。

 

「先生達の教えが良かったんでね。悪いな」

 

 須藤健。英語72点。

 池寛治。英語75点。

 山内春樹。英語74点。

 

 第7ラウンド。勝利。

 

 判定勝ち4。

 引き分け2。

 勝利1。

 

 五勝ニ分で、愚者達(須藤、池、山内)勝利(赤点なし)である。





 まぁ、Dクラスどころか全学年でもトップクラスの三人の指導に加えて、本人達のやる気も十分だったんでね。
 
 問題なく勝てた、ということにしてください。
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