理事長室で、二人の大人が向かい合っていた。
一人は学校を敵に回した理事長代理。
もう一人は、その代理の処刑を担当する、大魔王。
「さて、まずは生徒会の方で集めてきた、この署名ですね」
十六枚の紙が入った封筒を、そっと、月城代理に手渡す。
「署名は既に、政府の方に郵送しています」
「『理事長代理の退任を求める署名』。文字通り、全生徒、ですか」
四百五十七名分。既にして、相当数の署名だが。
「それからこちらは、校長教頭も含めた、全教師陣の署名です」
担任を持たない教師も合わせた、合計三十八名分。
「合わせて、四百九十五名。中々、集めましたね。
ですが、高々五百にも満たない数の署名で、どうするというのですか?」
「まさか。これだけのはずないでしょう?」
取り出したのは、一枚の紙が入っている封筒。
「全用務員事務員、合わせて十五名分の署名です」
そして。
「森くん。両沢くん。お願いします」
「はい」
「は、はい!」
自身のクラス、二年Dクラスの生徒に、運ぶのを手伝ってもらった、署名の山。
まずは、段ボール箱、二つ分。
生徒たちの手で、箱は増えていく。四つ。八つ。十六。三十二。六十四。
「…………これだけの署名、どこから?」
「文字通り、学校中からですよ。月城代理」
そう。
「…………は。まさか、敷地内の
「えぇ。その通りです」
数日前のホームルームで。
『さて、君たちに書いてもらった署名だが、まず間違いなくあの程度では、代理を追い出すには足りない。
ならば、どうする?』
『はーい!浅野せんせーい!』
『花咲くん。どうぞ』
楽しげに立ち上がって、笑いながら、堂々と。
『弱みを握って強請ります!』
『正解です』
『わーい、やったー!』
クラス中が引いていた。
『ただし、部分的に、ですね』
『えぇー?なんでぇー?』
優しく丁寧に、浅野學峯は、教え諭す。
『では花咲くん。どうやって弱みを見つけますか?』
『尾行!盗聴!盗撮!空き巣!です』
『えぇ。それも正解です』
いや絶対正解なんかじゃないって。
森悠政は心からそう思った。
『しかしそのやり方ですと、こちら側にも傷が残ります。つまり、相手側に交渉材料を与えてしまう訳です。それらの犯罪行為を見逃す代わりに、退陣は、拒否する、とね』
『あー、なるほどー。弱みを暴露して潰そうとしても、弱みの握り方が握り方だから、私らの誰かも退学になっちゃうかもってことですか?』
『その通りです。理解が早いですね』
『やった!』
『では、他にどのようなやり方があるでしょう。森くん』
まさか自分に来るとは、と、一瞬驚いたが、すぐさま、予め考えていたことを、話す。
『そう、ですね。署名を学校ではなく政府に郵送する、というのはどうでしょう?就任僅か数週間で、学校全体を文字通り敵に回すような理事長代理なんて、政府としても、雇いたくはないのでは?』
『えぇ。それもまた、実に効果的な手段です。花丸をあげましょう』
『あ、ありがとうございます』
『ですが、それでは、まだ問題点が残っています』
そこで、南雲が手を挙げた。
『南雲くん』
『署名の数と、種類が足りないってことですね。生徒と教師だけだと、数は足りないし、側から見たら、問題があるのは代理ではなく生徒側なのでは、と判断される可能性が生まれる』
『その通り。仮にこの署名を政府に提出したとしても、人数が足りない、視点も偏っている。これらの理由で、退陣できなくなる可能性が、生まれます』
『…………だとしたら、
『えぇ。大正解ですよ南雲くん。森くんの言っている学校全体、それは、実は生徒と教師だけではない。………特に、この学校に、関しては、ね』
何せここは、人工島。
もはや一つの都市なのだから。
『この学校の商業施設で住み込みで働く人は、一万五千八百七人。通勤で働く人は、一万四千二百二十七人。アルバイト・パートは、五千十八人。
総合計で、三万五千五十二人。
この全員の署名を集めたのなら、話は変わります』
流石に、政策への抗議などで考えた時、三万程度では動きはしないだろう。
普通の都市なら、そうなるが。
───ここは、違う。
何せ、三万五千五十二人は、実質的な、この
『い、いやいやいやいや。一年生の試験は、あと一週間ですよ?それまでに全員分の署名を集めるなんて、幾ら何でも……』
両沢は、現実的だった。
現実で考えたのなら、それは到底不可能だが。
『だからこそ、彼の出番です。入ってください』
『失礼します』
その生徒は、誰もが知っている。
現高育最強。堀北学。
『堀北先輩……!』
南雲、とても嬉しそうに立ち上がる。
生徒たちは南雲に犬の耳と尻尾を幻視した。
『皆さんもご存知の通り、今の高育に商業施設を増やし、より雇用を増やしたのは、学くんです。
何より、採算が取れず廃止される予定だった遊園地を残して、
堀北学は、学校の制度だけに手を伸ばしていた訳ではない。
学校の商業施設にも手を加え、より多くの種類の施設、店舗を誘致しただけでなく、採算が取れずに解体される予定だった遊園地を存続させたことにより、この人工島の雇用を増やした立役者でもある。
『………知らんかった。そんなこと……』
『おめーがその辺り興味なさすぎんだよ後藤。
『………いや、そういうもんかと………』
実績を示したから。
信用を示したから。
だから、生徒会は、管理経営を任されるようになったのだ。
生徒の意向をダイレクトに反映できるようにするために、堀北学は、雇用を増やしたのだ。
『やっぱやってること意味分かんないわ。なんで生徒会長が敏腕経営者みたいなことしてる訳?』
水澤の感想は、クラスメイトたちの内心と、殆ど一致していた。
例外の南雲は、シンプルにリスペクトして、対抗心を燃やしていた。
『………なるほど。今、特に一年前から施設で働き始めた新卒の人たちは、雇用を作ってくれた立役者の堀北先輩の頼みは、断れないですしね』
『その通りです。森くん。
彼らにとっては雇い主でこそありませんが、仕事を用意してくれたのは、実質的に学くんなので。
君たちは学くんの名代として、施設中の従業員から、署名を集めてきてください』
『はいはーい!先生は何をするんですかー?』
『大人向けの施設から署名を集めるのと、水族館、美術館からも署名を集めてきます。それから、もし手強い人がいたら、すぐに呼んでください。手伝います。後、もう一つ、やることがあるので。
────学くん。この三年で、君が積み重ねてきたものを、私にも見せてください』
正直な話、浅野學峯なら、一人でどうにでも出来る。
だが、浅野學峯は、手助けするだけ。
生徒が解決出来るように、必要なところで手を出すだけ。
───それが、本来の彼の教育方針である。
今回の件は、浅野學峯にとって、丁度いい
『えぇ。見せてあげますよ。浅野先生』
『───その話、私にも手伝わせてください』
卜部藤乃は、教室に乗り込み。自身も手伝わせろと、要求した。
『よし、ならば名簿と照らし合わせてくれ。数の確認も頼む』
『分かりました。堀北先輩』
『さて、では皆さん。
早速今日の放課後から、始めましょう』
そうして、二年Dクラスは、文字通り島中を走り回った。
遊園地には、南雲と後藤が向かった。
『あー、堀北くんの頼みなの?ていうか堀北くんがそんな署名集めるぐらいなんだ。今回の理事長代理ヤバいんだね。いいよいいよ。全然書くよ』
遊園地の園長にとって、堀北学は恩人でもある。
なので、至極あっさりと署名して。
従業員たちも、積極的に署名していった。
『堀北先輩のネームバリューってヤベェんだな』
『当たり前だろ?堀北先輩だぞ』
『………雅、本気で勝つつもりなのか?』
『………あぁ。勿論だ』
これほどの実力を目の当たりにしても尚、南雲雅は、諦めない。
現実が見えていないのではない。
現実では、どうしようもない差があることなど自覚しているが、それでも。
だからこそ。
『───高い壁こそ、越えたくなるもんだろ?』
今は本気で、そう言える。
後藤圭は、とても、屈託のない笑みを浮かべて。
『ま、頑張れよ!応援してるし、手が必要な時は手伝うぜ!』
笑いながら、次に向かっていった。
社佐と水澤と両沢は、飲食店から署名を集めて回っていった。
焼き肉屋では。
『いやー、何度か生徒会で団体様来てくれたしねぇ。うちとしてもまた来て欲しいし。署名ぐらい全然いいよ。あ、生徒会の知り合いいたら、また店に来てって言っといて。団体ご予約待ってるから』
焼き肉パーティまでしていたらしい。
『………生徒会ってさ、死ぬほど忙しいって話だよね』
『うん。森くんは、仕事も簡単な方だし、慣れてきたし、八十分もあれば終わるって言ってたよ』
『………それって、よくよく考えなくても絶対森ヤベェよな?』
※一般生徒だと十二時間掛かります。
『あんな化物でもDクラスに落ちちゃうなんてね』
『───でも、森くんは、微塵も諦めてない』
両沢は、真っ直ぐに。
『だから、私たちも、頑張らないと』
両沢眞子は、真面目なのだ。
森とほむらは、ケヤキモールで署名を集めていた。
『映画館の方は、雨宮と杉浦が向かってるらしい』
『映画館デートの下調べのつもりかな?杉浦くん』
『あー、どうだろ。ま、頑張ってくれって感じではある』
雨宮志乃。クラス一の美女。学年でも指折りである。
杉浦友也。野球部所属の元ピッチャー。
杉浦は、雨宮のことが好きで、割と積極的にアピールこそしているが、実る気配は無い。頑張れ。
『さーて、おっ次はハッピーパレット〜!わたしらテーブルゲーム部の行き着けだよー!』
『なんだかんだで初めてだな。お、このプリン美味そう』
『じゃ、じゃあさじゃあさ!今度一緒に食べに来るのはどう?』
『あー、それいいな。なんだったら、今にするか?今日集めなくちゃいけないお店は、ここでラストだし』
『………うぇ⁉︎あっ、いや、まぁ、うん、それでも、良いけどぉ〜』
せ、制服デートもありか?
い、いやでも、出来ればこの前買ったばかりの可愛い私服でドキッとさせたかったんだけどなぁ。
ドキッと、ドキッ、と。
しなさそうだなぁ。
『よーし、じゃあまずは署名貰うか』
『う、うん!そうだね!そうしよっか!』
ギャルの店長はあっさりと。子犬系もあっさりと。お兄さん系もあっさりと。長身長は『ダルイダルイ』言いながら。
四人分の署名を集めて、今日のノルマは完了である。
このコンビ、ノルマの量も最大なら、消化ペースも最大である。
『ふーん。こいつがお前の彼氏なのか?』
『ちょっ、へ、変なこと言わないでよっ‼︎』
長身長イケメン店員は、ほむらを揶揄い始めた。
ふざけるな。揶揄うのはほむらの専門職なのに。
『爽やかで清潔感もあって誠実そうだな。ガッチリ捕まえとけよ?かなりの優良物件だし』
『はいはい五月蝿い!余計なお世話!あっちいってて!しっしっ』
『はいはい。あ、これプリンパフェと、シュークリームな』
裏に戻った長身長は、ギャルに少し怒られていた。
あぁいうのはコッソリ見守ってあげるべきなんだとか。
聞こえているよ。腹立つ!
『はーむっ!』
ちょっと勢いよくかぶりついたが、そのせいでクリームが少しだけ溢れた。
慌てて拭って舐めとる。
チラッと見えた赤い舌に、何やら変な感情を刺激された気がした森は、何となく、目を逸らした。
『ほむらは、店員たちと仲が良いんだな』
『あー、うん。元々ここ、店員と客の距離が近いからね』
『ふーん』
しかしまぁ、ここの店員はイケメン揃いだな。
後藤が言っていたように、デートスポットには壊滅的だ。
『でも、菓子は本当に美味い』
何だこのプリンは。滑らかすぎる。そしてプルップル。プルップル過ぎるくらいにプルップル。
クリームも凄く甘くて美味しい。
『…………もしかしてぇ〜、イケメンと仲が良いからぁ〜焦ってるとかぁ〜?』
煽れそうだと判断したほむらは、本能的に煽ろうとして。
『あー、もしかしたらそうかも?ほむらがここの店員と話す方が楽しいってなって、おれと遊びに行かなくなったら、ちょっと寂しいから』
森は、とても素直に、自身の感情を吐露した。
『……………そ、うなんだ』
『うん。ほむらと遊べるの、楽しいからさ。まぁ、試験前みたいなのは、ちょっとアレだけど』
アレは本当に大変だった。
『……………なんなのハルくん本当にっ』
『?どうかしたか?』
『なんでもないっ‼︎』
顔を隠すように、包み紙に覆われたシュークリームにかぶりつく。
食べ終わってしまったので、口元を拭いながら、紙をいつものようにくしゃくしゃにしようとして。
『………………』
丁寧に折りたたんで、そっと、皿の上に置いた。
いつもだったら指で拭うが、今回はナプキンで丁寧に。
まぁ、その、アレだ。
こう、少しは大人っぽく振る舞っていけば、意識するかも?という、単なる思いつきである。
『あっ、ほむら、クリームついてる』
『えっ、ちょっ、ど、どこっ!』
せ、せっかく少し大人っぽかったのに!
とか思ってたら、自然と、ハルくんはわたしの頬に手を添えて、唇の端を親指でなぞって。
そうして拭ったクリームを、ペロリと舐めた。
舐めた。
ハルくんの、綺麗な赤い舌が。
わたしの唇の端についていたクリームを、舐めた。
『ハ、ハ、ハ、ハ、ハルくくくくく』
『ん?どうかしたか?』
『なん、なんでもない‼︎』
店員たちの思考は、完全に一致した。
即ち。
あの男の子落とすの大変そー、である。
そうして二年Dクラスの教室で。
卜部は名簿と署名の確認作業を最高率で終わらせて。
今日集めた八千七百三の署名の確認が終わったので、帰ろうとして。
『あー、その、少し良いですか。卜部くん』
『?はい?何ですか』
『その、諸々が終わったら、綾小路くん、堀北さん、櫛田さん、赤羽くん、椎名さん、奥田さん、潮田くん、雪村さんを呼んでくれますか。
お話があるので』
『はぁ。まぁ、構いませんが』
『あと、大人向けのお店の署名は集め終わりました』
卜部が受け取った書類には。
『兎の園』の店員の名前も、勿論あった。
不純異性交遊。ダメ。絶対。
不純は少し違うかもしれないが。
紹介状渡しやがった星之宮知恵もしっかり絞っておこう。
そうして、四日かけて、彼らは文字通り、この学校全体の署名を集め切った。
「最初に言いましたが、これらの署名は全て、既に政府に送ってあります」
「これは政府も動くしかありませんねぇ。次の代理も慎重に選ぶことでしょう」
「えぇ。次の代理の方とお話しする機会があったら、是非とも宜しくお願いします」
ここまでやってくるともはや愉快である。
次の代理はそれはもう戦々恐々としていることだろう。
何せ、この人工島に住む全住民が敵に回るかもしれないのだから。
「いやー、これ次の就職どうしましょうかね。
僅か数週間で全住民を敵に回したとあれば、転職に響いてしまいます」
国立高校でそこまで嫌われるような人材、欲しがるところを探すのは、実に大変だ。
まぁ、最悪殺し屋にでもなろうかな。
「見たところ身体も非常に鍛えられているようなので、防衛省の知り合いを紹介しましょうか?
過去が不問の諜報機関があるそうですよ?」
「おぉ。それは渡りに船ですね。では、紹介してください」
「こちら、その番号です。近々初仕事が来るはずですので、準備しておいてください」
月城常成は、楽しそうにその電話番号を受け取った。
諜報機関、エージェント、実に楽しそうだ。ワクワクする。
「それに飽きたら、教師をお勧めしますよ。あなたは、教師に向いてるので」
予想外の高評価だが。
まぁ、それも、考えてはおこう。
「まぁ、次の代理は、きっと大人しい人が就くので。
あまり虐めないであげて下さいね?」
「えぇ。見せしめは、もう十分なので」
就任期間、僅か一ヶ月未満。
月城常成の名は、歴史に残った。
最短で、文字通り学校全体を敵に回した、最悪の理事長として。
「…………さて、
代理を呼ぶのも面倒なので、復帰してもらいますか」
停職及び謹慎期間、僅か一ヶ月未満。
坂柳成守の名は、改めて歴史に残った。
濡れ衣を着せられて理事長の職を追われたが、僅か一ヶ月で再就任した、最適な理事長として。
そして、クラス内投票試験は、無事撤回された。
後日。
生徒指導室で。
「さて、星之宮先生。それから、元E組諸君と、椎名さん。
なぜ呼ばれたのか、見当はついていますね?」
奥田愛美と椎名ひよりは、とてもではないが納得出来なかった。
「浅野先生!私と奥田さんは、お仕置きとして連れ込まれただけです!私たちの意思ではありません!」
「そ、そうです!悪いのは渚くんと茅野さんです!」
渚と茅野は叫んだ。
「ひ、酷い‼︎二人とも撮影会ノリノリだった癖に‼︎」
「そうだよ‼︎僕らを売るなんて‼︎」
「ノリノリとか言わないでくださいっ‼︎」
「そうですそうです!私たちは被害者なんです‼︎信じて下さい浅野理事長‼︎」
「……………まぁ、このお二人は、見逃しましょう。どうぞお帰りください」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
椎名ひよりと奥田愛美は、ウッキウキで部屋を出ていった。
「ちょっ、それなら俺も被害者ですよっ‼︎俺も連れ込まれた側ですからっ‼︎」
「赤羽くん。堀北さんたちに招待状を譲ったのは、君だという話ですが?」
「…………何でもないです」
さて。
「渚くん。茅野さん。赤羽くん。こういったお店には年齢制限があることは、知っていますね?」
「…………はい」
「…………はい」
「…………はい」
「教師を脅して招待状を手に入れるなんて、犯罪行為です」
「…………仰る通りです」
「…………返す言葉もございません」
「…………その、いえ、はい。受け取って譲った時点で、同罪です」
しかしまぁ、処分に困る。
何せ渚と茅野は実際に利用していた、とは言えないし。
カルマに関しても、横流しこそしたが、利用した一回目は、あくまでお仕置きであるし。
まぁ、うん。
「…………はぁ。反省文三枚と、罰金六万ポイントで」
「はい。明日には提出します」
「本当に申し訳ありませんでした」
「………その、三人とも、頑張って」
渚と茅野とカルマは、肩を落としながら、部屋を出た。
さて、本命一つ手前だ。
「綾小路くん。堀北さん。櫛田さん。よろしいですか」
三人は、ひどく怯えていた。
まぁ、その、一番アウトなのは、ここなので。
「良いですか堀北さん。そして櫛田さん。
少しばかり、過激すぎます。落ち着いてください」
「………はい。反省してます」
「………はい。ごめんなさい」
「それから、綾小路くん。
……………その、節度は、持ってくださいね」
「………はい。ご迷惑をお掛けしました」
まぁ、その、うん。
節度さえ守ってくれるなら、うん。
「反省文十枚と、罰金十五万ポイントで」
「はい。明日までに提出します」
「本当に、ご迷惑をお掛けしました」
「…………その、すいません」
さて。
本命だ。
「────星之宮先生」
「ひぃぃぃっ。お、御命だけはぁ」
「えぇ。命までは取りません。
取り敢えず、来年度まで禁酒です。それから、男遊びも禁止です」
「…………死刑では?」
「まさか。安心してください。真っ当な教師になりましょうね?」
「────助けてサエちゃん‼︎」
なお、茶柱佐枝がこの場にいた場合。
浅野學峯に、誠心誠意、頭を下げていたし、感謝していただろう。
その後、星之宮知恵は。
酒の香りもせず、変に揶揄ったりもしない。
勤務態度、生徒への対応共に、実に真面目な教師になっていた。
復職した坂柳成守は、星之宮の変化に何よりも驚いていた。
「あなたが、浅野先生のお知り合いの、防衛省の方ですか」
『えぇ。烏間と申します』
「───やはり、かの、英雄たちの師匠ですか」
『それは、私一人ではありませんよ』
「そのようですね。それで、早速仕事があるそうですが」
『えぇ。今そちらに、コンビを組んで仕事をしてもらう同僚を送りました』
「…………これは驚きですね。
『
「なるほど」
『あなた達への任務は、ある女性を護衛して、全国を跳び回ることです』
「ほう。それは中々、面白い仕事になりそうですね」
二人の男は、並んで、闇に消えていった。