その日の夜。
誰にも、見つからない時間に。
一人の教師が、丁寧に丁寧に、机を片付けていた。
必要なものを選んで、残して、引き継いで。
そうして、ここにいた数年を、仕舞い込んでいく。
たくさん間違えた数年だった。ずっと苦しいだけの数年だった。
それ、でも。
……………いつか撮った、集合写真を、そっと、仕舞い込んで。
その教師は、学校を、去る。
「……………南雲くんのこと、あなたに託します」
「─────えぇ、確かに、託されました」
浅野學峯ならば、彼を、ちゃんと導けるだろう。
「……………クラスのこと、お願いします」
「─────あぁ。僕に、任せてくれ」
この三年間、確かに博を導いてくれた、長杖巡なら、二年Bクラスも、問題なく任せられる。
さぁ、始めよう。
復讐を。
この瞬間を、ずっと、待っていたのだから。
「……………全く、あなたには、何も教えなかったのに」
「僕は運が良いからね。たまたま三人で出歩いていたら、先生に会える気がしていたんだ」
「本当に、狡いわね」
別れを言ったら寂しくなりそうだから、何も言わなかったというのに。
「……………ねぇ、先生。今までずっと、ありがとう」
嘗ての教え子の残した子供の、その言葉に、その教師は、目を見開いた。
「……………先生。これを」
「……………翡翠の、ネックレス……」
陰謀のために、あの施設に送られた子供から、それを受け取った。
ケヤキモールの、宝石店で買った、大切な宝物。
彼らの、『輝ける原石の家』の、象徴。
黄玉のネックレスと、真珠のネックレスと、砂金石が二つ付いたネックレスを、生徒たちは、子どもたちは、見せて。
彼らの親で、先生は。
いつかのように、柔らかい微笑みを浮かべて、そこから立ち去った。
翡翠のネックレスを、首から下げて。
「────愛しているわ。幸せにね」
それだけを、残して。
木の影にいる二人の生徒は、お別れを邪魔したくはなくて。
でも。
「………ねぇ、雅。言いたいことがあるなら、言ってきなよ。もう会えないかもしれないんだよ?───後悔は、して欲しくないよ」
「………ありがとう、なずな。───行ってくる」
校門を出て数歩で、その、元教師は足を止めて、振り向いた。
「………あなたは、私を恨んでいい。憎んでいい」
「………恨みませんし、憎みません」
「あなたが、苦しむだけよ」
「それも、ちゃんと、背負います」
「………そう。強いのね。………頑張りなさい」
「………はい」
今度こそ、学校に背を向けようとして。
「───翡翠先生!
あの日、傘をさしてくれて、ありがとう!」
元教師は、ぴくりと、固まった。
「あの日!温かいものをくれて、ありがとう!」
静かに、肩を震わせる。
「───俺なら勝てると、そう言ってくれて、ありがとう!」
そこにあったのは、歪んだ、悪意だけ。
「証明します!翡翠先生!」
それでも、確かに、あの日、折れそうだった南雲を、励ましてくれたのも、真実だった。
「先生の教えの通りには、戦えませんが!」
二人の道は、決別した。
それでも、南雲雅が、翡翠恵の教え子であったことは、決して消えない。
「───それでも俺は、『ホワイトルームの最高傑作』を、超えてみせます!」
自身の存在証明。
涙は、絶対に見せない。
だって、彼女は、大人だから。
代わりに、柔らかい、優しい微笑みを、浮かべて。
「───期待してるわ。南雲くん」
振り向き様に、そう言った。
一人の教師が高育を去り。
一人の復讐者が、野に放たれた。
(────博たちはもう、自分の力で生きていける。
施設はもう、存在しない。そして、今、間違いなく、あなたの権力は、弱まっている)
ホワイトルームは、一度敗北した。
しつこく蘇りはしたが、その影響力も、何より、本人の権力も、嘗てとは、比べ物にならない。
そう、比べ物にならないくらい、弱っている。
(入院中の麗は、綾小路くんの手引きで、防衛省に保護してもらっている)
あの日、見つかってから、暫くして。
綾小路清隆は、話をしてきた。
『…………オレの父が、本当に、ご迷惑をお掛けしました。
烏間先生に、連絡しました。金石麗さんには、護衛を常につけるそうです』
────そう。嘗て、翡翠恵を縛っていた鎖は、もう、ない。
「────さぁ、お互いの、命を賭けた鬼ごっこを、始めましょう」
五年前に集めた証拠を、あらゆる場所にばら撒きながら、全国を、跳び回る。
────綾小路篤臣は、翡翠恵を、絶対に捕まえなければならない。持てるリソースの全てを持って。
────そう。新入生と、新教師にねじ込んだ、ホワイトルーム生達は、外部からのバックアップが、完全に存在しない。
「まさか、
「利害の一致だ。俺の目的もまた、ホワイトルームへの復讐だからな。
それに、俺はもう、殺し屋ではない」
闇から滲み出るように。
その男はいつの間にか、彼女の傍にいた。
嘗て、ある少女の依頼を完遂した後。
その男は、烏間唯臣に、スカウトされた。
そうして今は、烏間・イリーナ・イェラヴィッチの同僚である。
「何より、嘗てホワイトルームの人間だったあなたが、こちら側につくなんてね」
「綾小路先生には愛想がつきましたので。まぁ、仕返しです。
それに、今の私は、防衛省の人間なので」
いつものように、人の好い笑みのまま。
その男もいつの間にか、彼女の傍にいた。
「ちゃんと忠告したんですがねぇ。来年まで待て、と」
「忠告をまともに受け入れられるような人間なら、もっと上にいるだろう」
「筋金入りの綾小路くん嫌いね。私もよ」
ここから、大人達の、地獄の鬼ごっこが幕を上る。
だって、これからの、彼らの戦いに。
大人の横槍など、余分でしかないのだから。
白い部屋の中で。
二人の子供は、背中合わせで、横になっていた。
「…………月城先生、連絡途絶えたんだって」
「生きてるよ。絶対。あの人が死ぬ訳ない。一夏だって、知ってるだろう?」
「…………うん」
二人にとって、月城常成は。
人生で初めて出会った、教師だった。
───ちゃんと向き合ってくれる、大人だった。
「あーあ。一緒に戦いたかったなぁ。
また、頭、撫で、て、欲しかったなぁ」
静かに、嗚咽を漏らす。
きっと、楽しい、三年間に、なったはずなのに。
あの人は、厳しくて、でも、だから、こそ。
また、褒めて欲しかった。
そっと、後ろから抱きしめられる。
その暖かさに、安心感を、抱く。
そして、同時に、愛情も。そう。多分、愛情のはずだ。
そんなの感じたことはないから、これがそうなのか、分からないけれど。
「…………慰めてくれるの?拓也」
「────うん。慰めてる。一夏」
天沢は、腕の中で、振り向いて。
その唇を、奪った。
「────一夏…………」
「ねぇ。拓也。慰めてよ」
少女は、危ういくらい、蠱惑的で。
大事にしたい少年は、大事にしたいからこそ。
幸せに生きていて欲しいからこそ。
「…………多分、自制とか、効かなくなるよ」
いつの間にか、押し倒していた。
退廃の期間を過ごしていた、三月末から、ずっと。
立ち直って、月城先生に教えられていた、四月から、ずっと。
八神拓也は我慢していた。
沢山、我慢して。
でも、今、もう。
「────きて」
天沢一夏の、イロに染まり切った声に。
八神拓也の理性は、完全に、崩壊した。
白いオフィスに、三人の大人がいる。
ホワイトルーム一期生。
またの名を、『
天沢一夏と八神拓也が生き残った五期生。εカリキュラムが、難度8。
綾小路清隆以外が全滅した四期生。βカリキュラムが、難度10。
金石麗を含めた全員が全滅した三期生。γカリキュラムが、難度9。
ブレイドを含めた全員が全滅した二期生。Δカリキュラムが、難度9。
そうして、この三人が生き残った一期生。αカリキュラムが、難度9。
難度10を唯一生き残ったのが、綾小路清隆なら。
難度9を生き残ったのは、この三人のみである。
「ここの大人は馬鹿ですね。私たちの投入も待たずに、ことを起こすなんて。何も変わっていませんね。二十五年前からずっと」
一人の女性は、口調だけは、穏やかに。
「やめろ。その指示を下したのは綾小路先生だぞ?先生を疑うのか?問題があったとしたら月城だろう」
(どう考えてもあの男の判断ミスだがな)
一人の男性は、表面上は、忠誠を誓っているかのように。
「でも、僕にとっては好都合だ。監査役の月城も居ないし、司波の方も、別件で忙しくなるそうだし」
一人の男性は、とても、優しげな声音で。
三人は、嘗ての教官達を踏み付けにしていた。
カリキュラムの一環で、嘗て散々自分達を痛めつけて来た奴らを、調整の一環と評して、
「思ったよりも心が晴れませんね。何も面白くありません」
「それはそうだろう。もう十三年以上は前から、とっくのとうにやろうと思えば殺せたんだ」
「ま、そういう指示だったし、反撃できなかっただけだもんね」
一期生では、三人も、問題なくカリキュラムを消化していくホワイトルーム生がいた。
だから、この難度で問題ないんだと、二期生も同じ難度のカリキュラムを施工して。
本来の四期生が始まる頃に、即ち僅か二年で、二期生は二人しか残らなかった。
だからこそ、三期生から四期生の間には、五年の空白期間がある。
三期生は、テストだった。
どれだけの難度までなら、問題なくいけるのか。
そして、金石麗が堪え過ぎてしまったから、周りを引き上げ過ぎてしまったから。四期生は難度10になった。
本来なら、四期生は全滅しているはずだった。綾小路清隆がいなければ。
そうして、綾小路清隆という例外しか、難度10は超えられないと判断して。
一期生を含めて、僅か四人しか成功作がいないので。
少しでも成功作が増えるように、五期生には難度8が施行された。
ここで、難度を著しく下げる選択を取れなかったのは、一期生並びに綾小路清隆が余りにも優秀過ぎた為だろう。
「唯一の難度10達成者。実に興味深いですね。才能の遺伝、というわけではなさそうです。綾小路篤臣に、あの地獄は生き残れないでしょう」
「先生を侮辱するな!」(それに関しては完全に同意だ)
「今は嘘をつかなくて良いよ。ここにいるのは僕たちだけだからね」
「ま、それもそうか。というかここのカリキュラムなんて、施行している奴らがどいつもこいつも達成できないものだろう。全員馬鹿だな」
女性は、タブレットを操作する。
そこに映し出されるのは、現高育生四百五十七人のデータ。
「あと一年は早く就任したかったですね。堀北学と堀北鈴音、この二人がこれほどまでに強い理由が、遺伝子なのか環境なのか、実験して解析したかったのですが。
それだと卜部藤乃もですね。まぁ、母親が天才ですし、こちらに関しては遺伝のような気もしますが。実験して確証が得たいですね。
────それから、雪村あかり。或いは、茅野カエデ。
これに関しては、来年からでも、問題なく実験出来ますね」
女性は、問題なくカリキュラムをこなしていく中で。
彼女の好奇心は一期生屈指であり、ロールアウトしてから数日は、研究室に篭って実験ばかりしていたこともある。
その科学力は、柳沢誇太郎に匹敵する。
「まぁ、俺としては、やっぱり綾小路清隆だな。こいつを真正面から捻じ伏せてやりたい。あ、高円寺六助と赤羽業と浅野学秀も面白そうだ。
二年生だと、桃井緋音ぐらいしかいないな。つまらん。
あと一年早ければ、堀北学に飛騨翔子に金石博に猫実詭々、香月遊真に犬山護に白銀園子、獅子上玲央に、剣城海。戦いたい相手がより取り見取りだ。全員纏めて相手にするのでも面白そうだな」
この男性もまた、カリキュラムをこなしていく中で。
彼の残虐性は一期生屈指であり、彼に物理的に再起不能に追い込まれることが、一期生の最も主要な脱落要因である。
その近接戦闘能力は、烏間唯臣に匹敵する。
「僕の番かな?綾小路清隆は勿論のこと、潮田渚が興味深いね。櫛田桔梗もだけど。
堀北学と一体一が成立するとしたら綾小路清隆だけ。
そして、堀北学を
果たして僕に、暗殺の才能はどれだけあるのか。試してみたい」
この男性もまた、カリキュラムをこなしていく中で。
彼の観察眼は一期生屈指であり、一期生で彼に殺せないものは存在せず、彼が殺し損ねたのは生き残った二人だけである。
その暗殺技術は、二代目死神に匹敵する。
「そう言えば、確か一人、
「あー、あいつか。なんていうか、めちゃくちゃな経歴だよな」
「分かるよ。殺し屋から教師、エージェントで、また教師。転職しすぎだよ」
防衛省にて。
その転職し過ぎな女性は、現在の上司兼夫に声を荒げた。
「ちょっとカラスマ!なんで私がまた教師な訳!それも担任なんて!」
「仕方ないだろう。月城が齎した情報を考えれば、一期生への対応策は必須だ」
「………………ホワイトルーム一期生って、そんなにやばいの?」
アレは、綾小路清隆が例外なだけで、殆どのホワイトルーム生は大したこと無いはずだが。
八神も天沢も、確かに優秀だが、プロの殺し屋なら問題なく殺せる程度。まぁ、一年前の話だ。
今の二人はプロでも殺し返せるほどであっても、違和感はない。
「ホワイトルームがあそこまでズタボロに敗北したにも関わらず、そうしてなにより、最高傑作の綾小路くんが完全に制御を離れながらも、やつの死後これほど早くに再稼働した理由が分かるか?
その中心に位置するのが、ホワイトルーム一期生。
『始まりのホワイトルーム生』だ」
そう。ホワイトルームが、これ程ボロボロになってもなお、まだ、完全に崩壊していない理由。
それは、一度、確かな利益を齎したからである。
三人の一期生という、世界を変えかねない逸材を、確かに生み出した。
「それって、変よね?
成功作がもう三人もいるなら、なんであんなに綾小路に執着してるのよ。アイツ、息子に執着するようなタマだとは思えないけど」
そう。
イリーナの言うように、成功作はすでに3人いる。
しかし、ならば何故。
「三人とも、綾小路議員の本来の目的、まぁ、つまり日本を変えるような人材とは言い難い。
彼らは確かに優秀だが、嘗ての綾小路くんとは比べ物にならないくらい自分の意思が強い。
────彼らは常に、自分のやりたいことをやる。そういう人間だ」
敷かれたレールから外れるつもりのなかった、綾小路清隆とは違う。
敷かれたレールを無視して、新しいレールを勝手に作っていくのが、『始まりのホワイトルーム生』。
「ふーん。俗に言う天才肌なのね」
「そうだな。ホワイトルームが無くとも、恐らくは優秀だったし、なんらかの形で大成していただろう」
「それって、これ以上ないくらいにホワイトルームの欠陥を証明しているじゃない。『人工の天才』を作る施設なんでしょ?でも結局、ホワイトルームのカリキュラムを完遂できるのは、元から天才だった人間だけ。
そんなの、『人工の天才』とは呼べないでしょ」
三人の一期生も、綾小路清隆も、八神拓也も、天沢一夏も。
元から確かに才能があった。
とてもではないが、『ホワイトルーム』は人工の天才を作り出せる施設などではない、という証明では?
「そうだな。
五期生以降のホワイトルーム生は、確かに優秀でこそあるが、そこ止まりだ。
五期生の二人も、本来ならば、優秀止まりだったのだろうな」
敗北を糧に、あの二人は凄まじい飛躍を遂げている。
月城の齎したデータは、それ程までに凄まじいものだった。
「一周回って哀れね。綾小路篤臣は。
そこまでやって生み出せた人材の殆どが、手元から離れているなんて。
まぁ、今の八神と天沢はこっちに引き込めそうね。使える手駒は増やしていきましょう」
「そうだな。八神くんも天沢さんも、ホワイトルームに忠誠を誓っているわけではない。
彼らはただ、元E組にリベンジしたいのと、綾小路くんに挑戦したいだけだ」
それさえ終われば、二人は幾らでも、こちら側に引き込めるだろう。
月城の話では、そういう生徒らしい。
「……………まぁ、話は分かったわ。
つまり、
「あぁ。彼らの求めるものをきちんと提示出来れば、それも可能なはずだ」
確かに。その手のことは、イリーナの専門分野でもある。
「そういえば、私はどのクラスの担任な訳?」
「一年Dクラスの予定だ。これが、その名簿」
「ふーん」
「それと、月城からの情報だが、
「うち一人がDクラスってわけね」
「あぁ。ただ、これに関しては、
「………ふーん。ま、そこは私の仕事ね」
この四十人から、まずは一人、刺客を探し出して、無力化する。
「それで。気になる生徒はいるか?」
「個人的にはこの七瀬って子、気になるわね。
どの評価も非常に優秀。学年でも上位層。にも関わらずDクラス。第一候補ってところかしら」
七瀬翼、新一年生。
今、彼女は。
「あー、その、彼女は
「………え?」
「いや、その、松雄栄一郎くんいるだろう?
彼女は、その、彼の幼馴染らしいんだが、一年前に失踪した、ということにして隠しただろう?
それで、綾小路篤臣が接触して、手駒にしようとしたらしいんだが、直後に律に接触してもらってな。
松雄栄一郎くんと会わせることと引き換えに、こちら側に着いてもらった」
「あぁ。そういうこと。
栄一郎って男よね?やっぱりそういう関係なの?」
「さぁな。そこは知らん」
「その堅物っぷり、相変わらずね」
そうして、机に寄りかかっていた女性は。
元E組英語教師、イリーナ・イェラヴィッチは。
早速、来年の四月に向けて、準備を始めた。
自分の家の、自分の部屋で。
その少女は、一つ年上の幼馴染と、ビデオ通話していた。
『本当に良かったの。翼。三年は会えなくなるのに』
「まぁ、その、ちょっと、いや、大分悲しいけど。
で、でも!エー君達が今も生きてるのは、綾小路先輩のお陰だし!エー君達の代わりに、恩返ししたいの!」
少女の、一つ年上の幼馴染。
松雄栄一郎は、
『アイツ多分そういうの気にしないと思うけど』
「私が気にするの!だって悪いの綾小路篤臣だし!」
『まぁそうなんだけど。早く捕まってくれ。顔戻したい』
「あぁ。確かに。その顔見慣れないからねー」
嘗ての顔とは、かなり違う。
正直前の方が好みだ。凄く優しい感じなので。
「認定試験の勉強どんな感じ?」
『あー、最近
「はやいね。流石だな。エー君」
『翼も頑張ってね。なんたって高育は、国内最高難度の学校だし』
「もっちろん!たくさん頑張るよ!」
『もう時間だね。切るよ。おやすみ。また、明日』
「うん!また明日!」
そうして、通話が途切れた。
これ以上の通話は、傍受される可能性があるので。
『ごめんなさい翼さん。現状のリソースでは、これ以上は難しくて』
「全然大丈夫です律さん!通話できるだけでも嬉しいですから!」
通話どころかビデオ通話まで出来るのだ。
こんなに嬉しいことはない。
「もう一月も半ばですか。なんだか、怖くなってきますね」
あの実力主義の学校で。
果たして自分は、どこまで行けるのだろうか。
綾小路先輩への恩返しのついでに、試してみたい。
「四月が、楽しみです」
少女は、七瀬翼は、笑っていた。
綾小路くんの椚ヶ丘生活。簡単な年表。
二月 外に出る。椚ヶ丘入学。浅野と出会う。本人的には友達に。
三月 浅野と喧嘩別れ。
四月 暗殺教室開始。堀北と初共闘。
五月 イトナ襲来。一番強いやつ認定される。
六月 修学旅行。櫛田と仲良くなる。謝罪行脚に付き合って胸を貸す。
七月 期末試験。勉強会をきっかけに、三人でよく遊ぶようになる。
八月 南の島。ブレイドと初会合。堀北に命を救われる。ここで少し堀北を意識。
九月 綾小路篤臣襲来。E組がホワイトルームを知る。
十月 孤児院の経営を手伝う。ここで自分が悲惨な環境にいたんだと実感する。
十一月 二代目襲来。櫛田が傷付けられたのを見て初めて激おこぷんぷんカムチャッカファイヤー。しかし完全敗北。
十二月 期末試験で普通に勝利。
一月 分裂。堀北と櫛田に殺される。ここで完全に落とされる。
二月 二人から告白。選べない。ここからめちゃくちゃ攻めてくるようになる。
三月 なんか色々あって卒業。