私は、鼻唄を歌いながら、買い出しをしていた。
今日の夜は、ちょっと、楽しみなのだ。
「今日は何を作ろっかな〜♪」
と、ある食材に目が留まる。思わず片唾を呑み込んだ。
そう、今日は、禁欲期間最終日な訳で。
浅野先生に怒られてからは、添い寝もしていない。
ただ、来週の月曜日から、合宿だし。流石に合宿所でそういうことをするのは、良くないので。
金土日で、その、出来る限り発散する予定なんだけど。
「……………………ゴクリ」
禁欲期間中だったので、清隆の理性はまず吹っ飛ぶ。
例の『天国と地獄の一週間』ばりの愛欲をぶつけてくると見て間違いない。
もし、そこに、これを、加えたのなら。
思わず震える手で、鰻を手に取る。
「う、鰻重、た、食べたくなっちゃったな〜」
誰に言い訳しているの。
完全な独り言ではあるけどさ。
「か、海鮮系で、行こっかな〜?」
カゴに、鰻を入れて。貝類が売ってあるスペースへ。
サザエ、シジミその他を無視して、二種類の貝を手に取る。
「か、かか牡蠣とあさりのクリームシチューとか、作ろっかな〜………」
そうそう。隠し味に、アレも入れてみよっか。
「に、ににににんにく、その、匂いとか強いけど、ねぇ?ほ、ほら!鰻重のタレの隠し味に‼︎」
そうそう。野菜とかもちゃんと取らないとだし。
「う、うんうんうんうん!和風のサラダ食べたいし!や、山芋とか使ってみよっか‼︎」
よ、よし。
これで、よし。
「あー、調味料のエリアと間違えて、栄養ドリンクのエリアに来てしまったー」
嘘だとわかるくらいの棒読みで、しかし。
「おー、なんだこれはー、なんか美味しそうだぞー、スープの隠し味に入れてみよーっと」
正直、一週間近くそういうことをしていないのだ。添い寝までしておきながら。
清隆は勿論、こちらだって、色々と溜まっているので。
その、日本で一番有名な毒蛇が描かれたビンを、そっと、買い物かごに仕込ませた。
絶対やばいことになると分かってこそいるが、だからこそ。
ドキドキしながら、私はその食材達を買って。
ドキドキしながら、調理して。
そうして、夜。
「ただいま。お、なんだか良い匂いだな」
「ただいま。えぇ、でも、もう出来てるの。いつもより早いわね」
「お、お、お、おかえり〜二人とも。も、もうご飯出来てるし、さっさと食べちゃおっか」
うん?なんだか桔梗の様子が少し変だな。
ダイニングテーブルを見てみる、と。
「…………………ねぇ桔梗さん。今日のメニュー、詳しく教えてくれないかしら」
「今日、はですね。その、鰻重、牡蠣とあさりのクリームシチュー、山芋の和風サラダ、です」
「……………なぁ、桔梗。なんで、このレシピにしようとしたんだ?」
「な、なんとなく、かなぁ〜?」
見事に精の着く料理だな。
ふーん。そうか。そういうことなんだな。
ジャケットを少しばかり乱暴に脱いで、ハンガーにかける。
鈴音は、少し呆れて。桔梗は、露骨に目を逸らしながら。
食卓に着いた。
「──────じゃあ、いただきます」
「う、うん。召し上がれ」
「………………はぁ、いただきます」
まずは、ちゃんとご飯を食べないとな。
いつもだったら、時々桔梗が話しかけてきたりするんだが。
今日の桔梗は、なんだか静かだった。ずっと真っ赤で、黙々と食事を進めている。
赤くなった鈴音は少しだけ、非難がましい目を桔梗に向けている。
殆ど無言で食事が終わって、緑茶を飲んで、一呼吸。
───────さて。
「今日は私が洗い物やるわね」
「あ、いや、その、ちょっ」
「……………その、責任は、取りなさい」
そうそう。ここまでやってくれたんだ。責任は取ってもらわないとな。
桔梗の腕を、出来る限り痛くならないように引っ張って。
ベッドに並んで、腰掛けた。
桔梗は、すごく赤く染まりながら。
「………………歯、だけ、その、磨かせて?に、ニンニクも多めに入れたから、そこがちょっと、気になる、からさ」
「………………そうだな。歯ブラシ、持ってくる」
洗面所から、桔梗の歯ブラシとオレの歯ブラシと、それから歯磨き粉を持ってきて。
不意をつくように、桔梗を押し倒した。
「うぇぇえ。ちょ、おねが、歯磨きだけ、お願い」
「あぁ。こんなに美味しいご飯をいつも作ってくれているからな。今日は、オレが、磨いてやろう」
「そ、そんな、子供みたいな」
「良いだろう別に」
桔梗の歯ブラシに歯磨き粉を乗せて、膝枕する。
そうして上から、そっと、歯ブラシを口内に差し込んで、磨く。
「──────んっ⁉︎」
どうやらニンニクを使って、口臭が気になるようだからな。
念入りに丁寧に、
まずは、上顎の歯列の裏を、丁寧に、優しく、なぞるように。
「─────っ、んぇあ、あっ」
そうして次は、下顎の歯列の裏を、同じように。
「───っ、あ、ま、まっ、こ、りぇ」
「待たない」
膝の上に桔梗の涎が溢れる。
歯を磨いているから仕方ないな。
ディープキスで弄る時の動かし方を、歯ブラシで再現しているだけだからな。
仕方ない。本当に仕方ない。
「──っっっあぇ、や、や、めぇ」
そうそう、舌の裏とかも磨かないとな。
優しく、優しく、隅々まで。
────だって桔梗、ここいじられるの好きだもんな。
「ま、ま、おねがぃ、ちょ、まぁっ」
「質問に答えてくれたら、少しは手を緩めてやらんこともない」
「にゃ、にゃにぃ?」
そこで一度手を止める。
桔梗の瞳に、何かしらの光が見えた。
「────なぁ桔梗。どうして、今日はこの料理にしたんだ?」
「しょ、りぇはぁ……………」
「ふぅん」
「ぅあ、ま、みぎゃきゃにゃい、れぇ」
全く、歯を磨いているだけなのに、なぁ。
念入りに、丁寧に、隅々まで、しっかりと。
桔梗の身体が、少しだけ、跳ねる。力の抜け切った手で、オレの腕を縋り付くように掴んで。
しかしオレは、それを無視して、丁寧に丁寧に、
桔梗の脚は、曲がっては伸びて忙しなくて、シーツを乱している。
そこで、もう一度、止めた。
潤んで蕩けた視線が、オレを見つめている。
「もう一度聞くぞ、どうして、今日はこの料理にしたんだ?」
「………そりぇ、はぁ………………そ、の、…………期待、してました」
「そうか。じゃあ、口をゆすごうな」
「…………………うん」
桔梗は、ちょっとだけふらつきながら、洗面所に向かった。
その背を見ながら、オレも歯を磨き始める。
や、ヤバいわね。
た、多分、桔梗さんの料理で、完全に理性がやられているわ。
禁欲期間+添い寝禁止期間+この料理。
私たち、今日どれだけ────。
視界に入ってしまった、そのビン。
隠すように、ゴミ箱に入っている、その、日本一有名な毒蛇がパッケージの、ビン。
あ、あー、なるほど。なるほどなるほど。
これ入れながらあんなに美味しいスープ作ってたのね。凄いわね桔梗さん。
馬鹿なの桔梗さん。絶対だめじゃないこんなの。
「……………………えっと、清隆くん。
あ、あのね?げ、月曜日から、合宿でしょう?」
「そうだな」
洗い物を終えた鈴音は、恐る恐る、オレに話しかけてくる。
歯を磨きながら、それに応える。
「だ、だから、その、わ、私たちもたくさん頑張りはするのだけれど、少しだけ加減してほしい、と言いますか………」
「………………なぁ、鈴音」
「は、はいっ」
思わずびくついた鈴音は、真っ赤に染まった頬を隠そうともせずに、オレを見つめている。
「オレは禁欲期間中、ずっと我慢していたんだ」
「そ、そう、ね」
「正直、二人の体温とか柔らかさとかを感じながらも、何もせずに寝るのは、辛かったんだ」
「そ、そう、よね」
「それで、ここ二日と少しの間は、添い寝も出来なかったのが、本当に、悲しかったんだ」
「そ、そう、なるわよね」
「うんうん。でも、今日までの我慢だし、って、必死に堪え続けてきたところで、なぁ?」
あの料理は、とても美味しかった。
そう、とても、美味しかったんだが。
食べている間、オレはデザートのことしか考えられなかった。
「え、えぇ。その、アレは、桔梗さんが、悪いわね」
「あぁ。だから、シャワーでも浴びて待っててくれ」
「桔梗、さん、は?」
「─────少し、躾ようかな、と」
「─────っ、」
口を濯ぎ終わって、洗面所の扉の裏で、コッソリ聞き耳を立てていた桔梗は、身体中を、恐怖と期待で震わせていた。
オレはそんな桔梗に、目で、ベッドで待っているように指示した。
恐怖と期待と諸々で、足を振るわせながら、桔梗は制服姿のまま、ベッドに腰掛ける。
桔梗と入れ替わるように洗面所に向かい、口を濯ぐ。
─────鏡に写るオレの瞳には、燃料をしこたまくべられて、おそらく過去最大級に燃え上がっている炎があった。
しかし、これをそのままぶつけて仕舞えば、流石に不味いので、深呼吸していると。
洗面所兼脱衣所に、恐る恐る入ってきた鈴音は、言われた通りにシャワーを浴びる為に、ゆっくり、見せつけるように服を脱いで。
糸一つ身につけていない肢体で、オレに背後から抱きついて。
耳元で、震える声で囁いた。
「──────良し」
理性の手綱が、完全に千切れる音がした。
早歩きで脱衣所から出て、桔梗を勢いよくベッドに押し倒す。
桔梗は、色々な感情を混ぜ合わせた炎を、瞳に浮かべながらも。
オレの頭を、胸に抱き締めて。
耳元で、震える声で、囁いた。
「──────良し」
オレは、オレだけの、甘くて柔らかくて芳しい絶品デザートを。
いつもよりも、乱暴に、食べ尽くした。
シャワーの水音でも隠し切れないぐらい大きな声が、聞こえてくる。
清隆くんの部屋は、その、角部屋で、隣に人は居ない。
床は、その、断熱性と防音性の強い素材だから、多分、大丈夫、なのだけれど。
ふ、二つ先の部屋まで、聞こえてしまいそうなぐらい、大きくて、甲高い声、だった。
「や、やり過ぎ………。絶対にやり過ぎよ、桔梗さん」
床に座り込んで、丸まってしまう。
禁欲期間+添い寝禁止期間+今日のあのメニュー+コッソリ入ってたあのドリンク。
絶対に、絶対にヤバい。
いつかの一週間に匹敵、いえ、間違いなく上回る。
だって、漏れ聞こえてくる声が、余りにも、余りにも。
悲鳴というには甘過ぎて。
嬌声というには激し過ぎて。
桔梗さんは今、間違いなく、過去最高級に
やらかした。
間違いなくやらかした。
途切れ途切れの意識の中で、脳裏に浮かぶのは、その声だけ。
もうダメだ。色々とダメだ。
あの一週間を超える熱量を、限りなく凝縮して、ぶつけられている。
もう壊れるところなんてないくらい、清隆に壊されてると思ってたのに。
また壊れてる。必死に直すけど、直した次の瞬間には、また受け止め切れないくらいの愛を打ち込まれて壊される。
一番上から降りられない。
ずっと、ずっと、一番上。
脳みそがこれ以上の
一瞬だけ失神して、余りの
まだ始まって一時間も経ってないのに。
「─────悪い、多分、今晩は、寝かせられない」
「っぁ。うぁっ、おねがっ、すこ、やさし、くぅ」
「むりだ」
お願い鈴音。早くきて。
もう無理なの。これ以上受け止め切れない。
受け止め切れないのに、受け止めたくなっちゃってるから、必死に受け止めちゃってるから。
わたし、しあわせすぎて、おかしくなりそうだから。
良くないことなのは分かっているけど、ドライヤーもそこそこに、脱衣所を出る。
いつもだったら、パジャマに着替えるところなのだけれど、今日は、そのまま。
ベッドが視界に入って、背筋が震える。
捕食としか言えない光景だった。
桔梗さんは、食べやすくなるようにトロトロに蕩けていて。
清隆くんは、蕩けた桔梗さんを貪欲なまでに貪っていた。
一切苦痛のない、愛欲という暴力で、桔梗さんは、
ここまで暴力的な快感は、もはや苦痛の域に達していそうなのに、桔梗さんは、嬉しそうで、幸せそうな、ぐちゃぐちゃに蕩け切った笑顔で、受け入れていた。
羨ましいと、そう思ってしまう。
「───────っぁ」
桔梗さんの意識が落ちた。
許容量を遥かに超える快感に、脳みそが限界を迎えたんだと思う。
だから私は、そこで変わろうとして。
「────────あ、まっ、おねっ」
「むりだ。まてない」
「………うそでしょ」
無理やり快感を打ち込んで、清隆くんは桔梗さんを目覚めさせた。
だ、だめよ。本当にだめよ。
これ以上は桔梗さんが本当に不味いことになるわ。
「ちょ、清隆くん、わ、私少しの間変わるから!」
抱きつきながら、そんなことを言うけれど。
清隆くんは、止まらない。
「だめだ。もっとしつける。おれいがいみえなくしてやる。おれいがいあいせなくしてやる」
「も、なっ、へる」
「もっとほしい。もっと、おれの」
「ぅん……っ、わら、し、き、よたか、のぉ」
や、やばいわね。これ。
一旦離れて、部屋中を見渡して、何か、一瞬でいいから、意識を向けさせようと思って。
それ、を、見つけた。
頭の中の、本当に僅かに残った冷静な部分が、言っている。
少し落ち着け、と。
流石にこれ以上は、桔梗が本当にどうにかなってしまう、と。
そう、少しだけ、少しだけ、理性が戻って。
少しだけ、視野が広がった。
「き、きよたか、くん」
広がった視野の中に、首輪を着けて、リードの先を、そっと、オレの手に握らせる、鈴音が、いた。
「そ、その、わ、わたしも、しつけて?」
本当に僅かに残った冷静な部分が、完全に消え去ったのが、分かった。
清隆は今、鈴音をたくさん
だから、やっと、少し休めた。
呼吸を整えて、色々と、整理する。
まだ私、始めてから一時間程度しか経っていない。
にも関わらず、過去最高にやばかった。
悩む。本当に悩む。
正直舐めてた。清隆の欲望舐めてた。
禁欲期間挟むとこんなにヤバいなら、日常的に発散させるべきでは、とも思うけど。
でも、合宿所で、それはダメで。
………つ、つまり、一ヶ月近い、禁欲期間明け……?
えっ、私たち、死なない?
一旦、落ち着こう。
甘い痺れが全身を走っている。多分思考にも走っている。
震える足に鞭を打って、ベッドから降りる。
冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して、一口。
一口水を飲めたから、少しだけ、落ち着けた。
そうして、清隆に、首輪をつけられて、リードで引っ張られている鈴音を、見る。
やってることやばいって。
「っぁ、きよ、たか、くん」
「あおったすずねがわるい」
「ぅぉあ、すこし、ゆっくりぃ」
う、うわぁ。うわぁ。
わ、私もやろーっと。
首輪を探し出して、首につけて。
そうして、リードを清隆の手に、握らせた。
「し、しつけてほしいな。ごしゅじんさま」
また、たくさん
崩れかけた三日月と、そこに腰掛けている殺せんせーは、もはや真顔だった。
『ヌ、ヌル、ヌルフフフフフ。
や、やっばぁ〜〜』
金曜日は文字通り丸一晩ぶっ通しで。
土曜日も朝から晩までぶっ通しで。
日曜日の夜に、ようやく発散し切った。
オレたちは三人とも、いつの間にか、眠りに落ちていた。
そして、月曜日の朝。
「…………ぅぁ」
「ぉぁょぅ」
「ぃまぁ、らんじぃ」
オレも桔梗も鈴音も、精も根も尽き果てて、時計を見る。
朝の五時、かぁ。
「…………バスって、何時からだっけ」
「…………しちじから、よ」
「…………しゃわーあびて、きがえないと」
二人とも、足が震え過ぎてとてもではないが立てないので、オレが介助して、身を整えさせる。
制服で、しかし二人は、ぽけーっとした顔で。
「ごはん、どうしましょうか」
「なにもたべてない。おなかすいた」
「サンドイッチ作った。これだけ食べよう」
もそもそと、それだけ食べる。
正直、殆ど何も食べてないから、こんなのじゃ足りないんだけど。
でも、時間もギリギリだし。
「いっかげつだし、ふくとかはあらかじめおくったから、だいじょうぶのはず、よね」
一ヶ月分の荷物なので、予め合宿所に郵送している。
なのでオレたちは、制服に着替えてバスに乗れば、それでいいだけのはず。
「それよりもさ、きんよくきかんどうするかきめておいたほうがいいってこれ」
「そうよね。きんよくきかんあけがまいかいこれだと、からだがもたないわ」
「それはそれとしてまんぞくかんやばいけど」
「えぇ。ひろうかんとたこうかんであたまおかしくなりそうね」
「うん。もうぐちゃとろなんてじげんじゃないよこれ」
「しょうじきいまもよいんがすごいわ」
「しぬほどわかる」
あー、だめだこれ。
二人とも脳みそ回ってないわ。
許容量を遥かに超える諸々で完全にバグってる。
オレもまぁまぁバグってる気がするけど。
「禁欲期間に関しては、二人が添い寝したり煽ってきたのも理由の一つだし、桔梗のあの料理が一番やばいだろ」
「そうね。かくしあじにあのどりんくはほんとうにだめよ」
あのドリンク?
何のことだ?
鈴音は、ゴミ箱に視線を向けた。
覗き込んでみると、日本で一番有名な毒蛇がパッケージのアレだった。
あ、あ、あー、なるほど。
「その、しょうじき、ごめんね?そいねだけとか、わたしらも、その、いろいろ、ね?」
「まぁ、あえてひていはしないわ。それに、けっしてわるいことばかりではなかったもの」
「うん。それは、そう、だね」
そう。悪い事ばかりじゃない。
何というか、ここまでやると、余韻が凄い。
身体中と頭に、なんか、こう、甘い痺れが残ってあるというか、何というか。
正直もう一回やりたいオレがいる。
「つ、つきいち、ぐらいのひんど、なら」
「これつきいちでやるとかすずねはしょうき?ごむだいでつきはじめのぽいんとけしとばすつもりなの?」
「今回カートン使ったからな」
五個入り×12箱だ。
オレって凄いな。受け止めた二人もすごいが。
「ていうかつきいちでこんなにやってたらにんしんしちゃうって」
「ご、ごむにくわえてぴるでもたりないかしら」
「いやまぁ、それなら限りなく0に近いだろうが。ゴムの使い方も、ちゃんと守ってるし」
そう、そこだけは、ちゃんと理性があった。
避妊だけは、常に完璧だった。
良くやった、金曜日のオレと土曜日のオレと日曜日のオレ。
「あ、そろそろへやでないと」
「あ、じょしりょうにもどらないとだね」
「………………歩けるか?」
「むり」
「むり」
「よし、纏めて背負うわ」
二人を纏めて背負って部屋を出る。
本当に、角部屋でよかった。
スニーキングしながら、部屋を出て。
逆転の発想に至る。
「これさ、先に駐車場にいれば、万事解決じゃないか?」
「それよ」
「かんぺき」
日も登り切っていない時間に、コッソリと駐車場に訪れると。
予想通り、バスしか停まっていないし、人もいない。
「たんまつはもったから、ぽいんとももんだいなしね」
「うんうん。せいふくだけでいいんだし」
「ふぅ、これで、張り切り過ぎて朝イチに着いてしまったって言い訳が出来るな」
よし。
オレたちは、駐車場隅のベンチに、三人で座って。
寝た。
「……………なるほどな」
朝早く来て、バスの確認をしていた茶柱佐枝は。
ベンチで綾小路に寄りかかって眠っている堀北と櫛田を見て。
何となく、察した。
偽物語の歯磨き兄妹プレイに脳を焼かれた人は多いはず。