殺せんせーの教え子たち   作:宇津木 沙坂

134 / 169
 櫛田さんのやらかし。


発散の時間

 私は、鼻唄を歌いながら、買い出しをしていた。

 今日の夜は、ちょっと、楽しみなのだ。

 

「今日は何を作ろっかな〜♪」

 

 と、ある食材に目が留まる。思わず片唾を呑み込んだ。

 そう、今日は、禁欲期間最終日な訳で。

 浅野先生に怒られてからは、添い寝もしていない。

 ただ、来週の月曜日から、合宿だし。流石に合宿所でそういうことをするのは、良くないので。

 金土日で、その、出来る限り発散する予定なんだけど。

 

「……………………ゴクリ」

 

 禁欲期間中だったので、清隆の理性はまず吹っ飛ぶ。

 例の『天国と地獄の一週間』ばりの愛欲をぶつけてくると見て間違いない。

 もし、そこに、これを、加えたのなら。

 思わず震える手で、鰻を手に取る。

 

「う、鰻重、た、食べたくなっちゃったな〜」

 

 誰に言い訳しているの。

 完全な独り言ではあるけどさ。

 

「か、海鮮系で、行こっかな〜?」

 

 カゴに、鰻を入れて。貝類が売ってあるスペースへ。

 サザエ、シジミその他を無視して、二種類の貝を手に取る。

 

「か、かか牡蠣とあさりのクリームシチューとか、作ろっかな〜………」

 

 そうそう。隠し味に、アレも入れてみよっか。

 

「に、ににににんにく、その、匂いとか強いけど、ねぇ?ほ、ほら!鰻重のタレの隠し味に‼︎」

 

 そうそう。野菜とかもちゃんと取らないとだし。

 

「う、うんうんうんうん!和風のサラダ食べたいし!や、山芋とか使ってみよっか‼︎」

 

 よ、よし。

 これで、よし。

 

「あー、調味料のエリアと間違えて、栄養ドリンクのエリアに来てしまったー」

 

 嘘だとわかるくらいの棒読みで、しかし。

 

「おー、なんだこれはー、なんか美味しそうだぞー、スープの隠し味に入れてみよーっと」

 

 正直、一週間近くそういうことをしていないのだ。添い寝までしておきながら。

 清隆は勿論、こちらだって、色々と溜まっているので。

 その、日本で一番有名な毒蛇が描かれたビンを、そっと、買い物かごに仕込ませた。

 絶対やばいことになると分かってこそいるが、だからこそ。

 ドキドキしながら、私はその食材達を買って。

 ドキドキしながら、調理して。

 

 

 そうして、夜。

 

「ただいま。お、なんだか良い匂いだな」

「ただいま。えぇ、でも、もう出来てるの。いつもより早いわね」

「お、お、お、おかえり〜二人とも。も、もうご飯出来てるし、さっさと食べちゃおっか」

 

 うん?なんだか桔梗の様子が少し変だな。

 ダイニングテーブルを見てみる、と。

 

「…………………ねぇ桔梗さん。今日のメニュー、詳しく教えてくれないかしら」

「今日、はですね。その、鰻重、牡蠣とあさりのクリームシチュー、山芋の和風サラダ、です」

「……………なぁ、桔梗。なんで、このレシピにしようとしたんだ?」

「な、なんとなく、かなぁ〜?」

 

 見事に精の着く料理だな。

 ふーん。そうか。そういうことなんだな。

 ジャケットを少しばかり乱暴に脱いで、ハンガーにかける。

 鈴音は、少し呆れて。桔梗は、露骨に目を逸らしながら。

 食卓に着いた。

 

「──────じゃあ、いただきます」

「う、うん。召し上がれ」

「………………はぁ、いただきます」

 

 まずは、ちゃんとご飯を食べないとな。

 いつもだったら、時々桔梗が話しかけてきたりするんだが。

 今日の桔梗は、なんだか静かだった。ずっと真っ赤で、黙々と食事を進めている。

 赤くなった鈴音は少しだけ、非難がましい目を桔梗に向けている。

 殆ど無言で食事が終わって、緑茶を飲んで、一呼吸。

 ───────さて。

 

「今日は私が洗い物やるわね」

「あ、いや、その、ちょっ」

「……………その、責任は、取りなさい」

 

 そうそう。ここまでやってくれたんだ。責任は取ってもらわないとな。

 桔梗の腕を、出来る限り痛くならないように引っ張って。

 ベッドに並んで、腰掛けた。

 桔梗は、すごく赤く染まりながら。

 

「………………歯、だけ、その、磨かせて?に、ニンニクも多めに入れたから、そこがちょっと、気になる、からさ」

「………………そうだな。歯ブラシ、持ってくる」

 

 洗面所から、桔梗の歯ブラシとオレの歯ブラシと、それから歯磨き粉を持ってきて。

 不意をつくように、桔梗を押し倒した。

 

「うぇぇえ。ちょ、おねが、歯磨きだけ、お願い」

「あぁ。こんなに美味しいご飯をいつも作ってくれているからな。今日は、オレが、磨いてやろう」

「そ、そんな、子供みたいな」

「良いだろう別に」

 

 桔梗の歯ブラシに歯磨き粉を乗せて、膝枕する。

 そうして上から、そっと、歯ブラシを口内に差し込んで、磨く。

 

「──────んっ⁉︎」

 

 どうやらニンニクを使って、口臭が気になるようだからな。

 念入りに丁寧に、歯磨きする(口内を弄り倒す)としよう。

 まずは、上顎の歯列の裏を、丁寧に、優しく、なぞるように。

 

「─────っ、んぇあ、あっ」

 

 そうして次は、下顎の歯列の裏を、同じように。

 

「───っ、あ、ま、まっ、こ、りぇ」

「待たない」

 

 膝の上に桔梗の涎が溢れる。

 歯を磨いているから仕方ないな。

 ディープキスで弄る時の動かし方を、歯ブラシで再現しているだけだからな。

 仕方ない。本当に仕方ない。

 

「──っっっあぇ、や、や、めぇ」

 

 そうそう、舌の裏とかも磨かないとな。

 優しく、優しく、隅々まで。

 ────だって桔梗、ここいじられるの好きだもんな。

 

「ま、ま、おねがぃ、ちょ、まぁっ」

「質問に答えてくれたら、少しは手を緩めてやらんこともない」

「にゃ、にゃにぃ?」

 

 そこで一度手を止める。

 桔梗の瞳に、何かしらの光が見えた。

 

「────なぁ桔梗。どうして、今日はこの料理にしたんだ?」

「しょ、りぇはぁ……………」

「ふぅん」

「ぅあ、ま、みぎゃきゃにゃい、れぇ」

 

 全く、歯を磨いているだけなのに、なぁ。

 念入りに、丁寧に、隅々まで、しっかりと。

 桔梗の身体が、少しだけ、跳ねる。力の抜け切った手で、オレの腕を縋り付くように掴んで。

 しかしオレは、それを無視して、丁寧に丁寧に、歯を磨く(口内を蹂躙する)。

 桔梗の脚は、曲がっては伸びて忙しなくて、シーツを乱している。

 

 そこで、もう一度、止めた。

 

 潤んで蕩けた視線が、オレを見つめている。

 

「もう一度聞くぞ、どうして、今日はこの料理にしたんだ?」

「………そりぇ、はぁ………………そ、の、…………期待、してました」

「そうか。じゃあ、口をゆすごうな」

「…………………うん」

 

 桔梗は、ちょっとだけふらつきながら、洗面所に向かった。

 その背を見ながら、オレも歯を磨き始める。

 

 

 や、ヤバいわね。

 た、多分、桔梗さんの料理で、完全に理性がやられているわ。

 禁欲期間+添い寝禁止期間+この料理。

 私たち、今日どれだけ────。

 視界に入ってしまった、そのビン。

 隠すように、ゴミ箱に入っている、その、日本一有名な毒蛇がパッケージの、ビン。

 あ、あー、なるほど。なるほどなるほど。

 これ入れながらあんなに美味しいスープ作ってたのね。凄いわね桔梗さん。

 馬鹿なの桔梗さん。絶対だめじゃないこんなの。

 

 

「……………………えっと、清隆くん。

 あ、あのね?げ、月曜日から、合宿でしょう?」

「そうだな」

 

 洗い物を終えた鈴音は、恐る恐る、オレに話しかけてくる。

 歯を磨きながら、それに応える。

 

「だ、だから、その、わ、私たちもたくさん頑張りはするのだけれど、少しだけ加減してほしい、と言いますか………」

「………………なぁ、鈴音」

「は、はいっ」

 

 思わずびくついた鈴音は、真っ赤に染まった頬を隠そうともせずに、オレを見つめている。

 

「オレは禁欲期間中、ずっと我慢していたんだ」

「そ、そう、ね」

「正直、二人の体温とか柔らかさとかを感じながらも、何もせずに寝るのは、辛かったんだ」

「そ、そう、よね」

「それで、ここ二日と少しの間は、添い寝も出来なかったのが、本当に、悲しかったんだ」

「そ、そう、なるわよね」

「うんうん。でも、今日までの我慢だし、って、必死に堪え続けてきたところで、なぁ?」

 

 あの料理は、とても美味しかった。

 そう、とても、美味しかったんだが。

 食べている間、オレはデザートのことしか考えられなかった。

 

「え、えぇ。その、アレは、桔梗さんが、悪いわね」

「あぁ。だから、シャワーでも浴びて待っててくれ」

「桔梗、さん、は?」

「─────少し、躾ようかな、と」

「─────っ、」

 

 口を濯ぎ終わって、洗面所の扉の裏で、コッソリ聞き耳を立てていた桔梗は、身体中を、恐怖と期待で震わせていた。

 オレはそんな桔梗に、目で、ベッドで待っているように指示した。

 恐怖と期待と諸々で、足を振るわせながら、桔梗は制服姿のまま、ベッドに腰掛ける。

 桔梗と入れ替わるように洗面所に向かい、口を濯ぐ。

 ─────鏡に写るオレの瞳には、燃料をしこたまくべられて、おそらく過去最大級に燃え上がっている炎があった。

 しかし、これをそのままぶつけて仕舞えば、流石に不味いので、深呼吸していると。

 

 洗面所兼脱衣所に、恐る恐る入ってきた鈴音は、言われた通りにシャワーを浴びる為に、ゆっくり、見せつけるように服を脱いで。

 

 糸一つ身につけていない肢体で、オレに背後から抱きついて。

 耳元で、震える声で囁いた。

 

「──────良し」

 

 理性の手綱が、完全に千切れる音がした。

 早歩きで脱衣所から出て、桔梗を勢いよくベッドに押し倒す。

 桔梗は、色々な感情を混ぜ合わせた炎を、瞳に浮かべながらも。

 オレの頭を、胸に抱き締めて。

 耳元で、震える声で、囁いた。

 

「──────良し」

 

 オレは、オレだけの、甘くて柔らかくて芳しい絶品デザートを。

 いつもよりも、乱暴に、食べ尽くした。

 

 

 シャワーの水音でも隠し切れないぐらい大きな声が、聞こえてくる。

 清隆くんの部屋は、その、角部屋で、隣に人は居ない。

 床は、その、断熱性と防音性の強い素材だから、多分、大丈夫、なのだけれど。

 ふ、二つ先の部屋まで、聞こえてしまいそうなぐらい、大きくて、甲高い声、だった。

 

「や、やり過ぎ………。絶対にやり過ぎよ、桔梗さん」

 

 床に座り込んで、丸まってしまう。

 禁欲期間+添い寝禁止期間+今日のあのメニュー+コッソリ入ってたあのドリンク。

 絶対に、絶対にヤバい。

 いつかの一週間に匹敵、いえ、間違いなく上回る。

 だって、漏れ聞こえてくる声が、余りにも、余りにも。

 

 悲鳴というには甘過ぎて。

 嬌声というには激し過ぎて。

 

 桔梗さんは今、間違いなく、過去最高級に蹂躙(幸せに)されている。

 

 

 やらかした。

 間違いなくやらかした。

 途切れ途切れの意識の中で、脳裏に浮かぶのは、その声だけ。

 もうダメだ。色々とダメだ。

 あの一週間を超える熱量を、限りなく凝縮して、ぶつけられている。

 もう壊れるところなんてないくらい、清隆に壊されてると思ってたのに。

 また壊れてる。必死に直すけど、直した次の瞬間には、また受け止め切れないくらいの愛を打ち込まれて壊される。

 一番上から降りられない。

 ずっと、ずっと、一番上。

 脳みそがこれ以上の情報(快感)を受け止めるのはダメだって思ったのか、無理やり意識を落とそうとして。

 一瞬だけ失神して、余りの情報(快感)でまたすぐに再起動される。

 まだ始まって一時間も経ってないのに。

 

「─────悪い、多分、今晩は、寝かせられない」

「っぁ。うぁっ、おねがっ、すこ、やさし、くぅ」

「むりだ」

 

 お願い鈴音。早くきて。

 もう無理なの。これ以上受け止め切れない。

 受け止め切れないのに、受け止めたくなっちゃってるから、必死に受け止めちゃってるから。

 

 わたし、しあわせすぎて、おかしくなりそうだから。

 

 

 良くないことなのは分かっているけど、ドライヤーもそこそこに、脱衣所を出る。

 いつもだったら、パジャマに着替えるところなのだけれど、今日は、そのまま。

 ベッドが視界に入って、背筋が震える。

 捕食としか言えない光景だった。

 桔梗さんは、食べやすくなるようにトロトロに蕩けていて。

 清隆くんは、蕩けた桔梗さんを貪欲なまでに貪っていた。

 一切苦痛のない、愛欲という暴力で、桔梗さんは、蹂躙(幸せに)されていた。

 ここまで暴力的な快感は、もはや苦痛の域に達していそうなのに、桔梗さんは、嬉しそうで、幸せそうな、ぐちゃぐちゃに蕩け切った笑顔で、受け入れていた。

 羨ましいと、そう思ってしまう。

 

「───────っぁ」

 

 桔梗さんの意識が落ちた。

 許容量を遥かに超える快感に、脳みそが限界を迎えたんだと思う。 

 だから私は、そこで変わろうとして。

 

「────────あ、まっ、おねっ」

「むりだ。まてない」

「………うそでしょ」

 

 無理やり快感を打ち込んで、清隆くんは桔梗さんを目覚めさせた。

 だ、だめよ。本当にだめよ。

 これ以上は桔梗さんが本当に不味いことになるわ。

 

「ちょ、清隆くん、わ、私少しの間変わるから!」

 

 抱きつきながら、そんなことを言うけれど。

 清隆くんは、止まらない。

 

「だめだ。もっとしつける。おれいがいみえなくしてやる。おれいがいあいせなくしてやる」

「も、なっ、へる」

「もっとほしい。もっと、おれの」

「ぅん……っ、わら、し、き、よたか、のぉ」

 

 や、やばいわね。これ。

 一旦離れて、部屋中を見渡して、何か、一瞬でいいから、意識を向けさせようと思って。

 それ、を、見つけた。

 

 

 頭の中の、本当に僅かに残った冷静な部分が、言っている。

 少し落ち着け、と。

 流石にこれ以上は、桔梗が本当にどうにかなってしまう、と。

 そう、少しだけ、少しだけ、理性が戻って。

 少しだけ、視野が広がった。

 

「き、きよたか、くん」

 

 広がった視野の中に、首輪を着けて、リードの先を、そっと、オレの手に握らせる、鈴音が、いた。

 

「そ、その、わ、わたしも、しつけて?」

 

 本当に僅かに残った冷静な部分が、完全に消え去ったのが、分かった。

 

 

 清隆は今、鈴音をたくさん蹂躙(幸せに)している。

 だから、やっと、少し休めた。

 呼吸を整えて、色々と、整理する。

 まだ私、始めてから一時間程度しか経っていない。

 にも関わらず、過去最高にやばかった。

 悩む。本当に悩む。

 正直舐めてた。清隆の欲望舐めてた。

 禁欲期間挟むとこんなにヤバいなら、日常的に発散させるべきでは、とも思うけど。

 でも、合宿所で、それはダメで。

 ………つ、つまり、一ヶ月近い、禁欲期間明け……?

 えっ、私たち、死なない?

 一旦、落ち着こう。

 甘い痺れが全身を走っている。多分思考にも走っている。

 震える足に鞭を打って、ベッドから降りる。

 冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して、一口。

 一口水を飲めたから、少しだけ、落ち着けた。

 そうして、清隆に、首輪をつけられて、リードで引っ張られている鈴音を、見る。

 やってることやばいって。

 

「っぁ、きよ、たか、くん」

「あおったすずねがわるい」

「ぅぉあ、すこし、ゆっくりぃ」

 

 う、うわぁ。うわぁ。

 わ、私もやろーっと。

 首輪を探し出して、首につけて。

 そうして、リードを清隆の手に、握らせた。

 

「し、しつけてほしいな。ごしゅじんさま」

 

 また、たくさん蹂躙(幸せに)されちゃった。

 

 

 崩れかけた三日月と、そこに腰掛けている殺せんせーは、もはや真顔だった。

 

『ヌ、ヌル、ヌルフフフフフ。

 や、やっばぁ〜〜』

 

 

 金曜日は文字通り丸一晩ぶっ通しで。

 土曜日も朝から晩までぶっ通しで。

 日曜日の夜に、ようやく発散し切った。

 オレたちは三人とも、いつの間にか、眠りに落ちていた。

 

 そして、月曜日の朝。

 

「…………ぅぁ」

「ぉぁょぅ」

「ぃまぁ、らんじぃ」

 

 オレも桔梗も鈴音も、精も根も尽き果てて、時計を見る。

 朝の五時、かぁ。

 

「…………バスって、何時からだっけ」

「…………しちじから、よ」

「…………しゃわーあびて、きがえないと」

 

 二人とも、足が震え過ぎてとてもではないが立てないので、オレが介助して、身を整えさせる。

 制服で、しかし二人は、ぽけーっとした顔で。

 

「ごはん、どうしましょうか」

「なにもたべてない。おなかすいた」

「サンドイッチ作った。これだけ食べよう」

 

 もそもそと、それだけ食べる。

 正直、殆ど何も食べてないから、こんなのじゃ足りないんだけど。

 でも、時間もギリギリだし。

 

「いっかげつだし、ふくとかはあらかじめおくったから、だいじょうぶのはず、よね」

 

 一ヶ月分の荷物なので、予め合宿所に郵送している。

 なのでオレたちは、制服に着替えてバスに乗れば、それでいいだけのはず。

 

「それよりもさ、きんよくきかんどうするかきめておいたほうがいいってこれ」

「そうよね。きんよくきかんあけがまいかいこれだと、からだがもたないわ」

「それはそれとしてまんぞくかんやばいけど」

「えぇ。ひろうかんとたこうかんであたまおかしくなりそうね」

「うん。もうぐちゃとろなんてじげんじゃないよこれ」

「しょうじきいまもよいんがすごいわ」

「しぬほどわかる」

 

 あー、だめだこれ。

 二人とも脳みそ回ってないわ。

 許容量を遥かに超える諸々で完全にバグってる。

 オレもまぁまぁバグってる気がするけど。

 

「禁欲期間に関しては、二人が添い寝したり煽ってきたのも理由の一つだし、桔梗のあの料理が一番やばいだろ」

「そうね。かくしあじにあのどりんくはほんとうにだめよ」

 

 あのドリンク?

 何のことだ?

 鈴音は、ゴミ箱に視線を向けた。

 覗き込んでみると、日本で一番有名な毒蛇がパッケージのアレだった。

 あ、あ、あー、なるほど。

 

「その、しょうじき、ごめんね?そいねだけとか、わたしらも、その、いろいろ、ね?」

「まぁ、あえてひていはしないわ。それに、けっしてわるいことばかりではなかったもの」

「うん。それは、そう、だね」

 

 そう。悪い事ばかりじゃない。

 何というか、ここまでやると、余韻が凄い。

 身体中と頭に、なんか、こう、甘い痺れが残ってあるというか、何というか。 

 正直もう一回やりたいオレがいる。

 

「つ、つきいち、ぐらいのひんど、なら」

「これつきいちでやるとかすずねはしょうき?ごむだいでつきはじめのぽいんとけしとばすつもりなの?」

「今回カートン使ったからな」

 

 五個入り×12箱だ。

 オレって凄いな。受け止めた二人もすごいが。

 

「ていうかつきいちでこんなにやってたらにんしんしちゃうって」

「ご、ごむにくわえてぴるでもたりないかしら」

「いやまぁ、それなら限りなく0に近いだろうが。ゴムの使い方も、ちゃんと守ってるし」

 

 そう、そこだけは、ちゃんと理性があった。

 避妊だけは、常に完璧だった。

 良くやった、金曜日のオレと土曜日のオレと日曜日のオレ。

 

「あ、そろそろへやでないと」

「あ、じょしりょうにもどらないとだね」

「………………歩けるか?」

「むり」

「むり」

「よし、纏めて背負うわ」

 

 二人を纏めて背負って部屋を出る。

 本当に、角部屋でよかった。

 スニーキングしながら、部屋を出て。

 逆転の発想に至る。

 

「これさ、先に駐車場にいれば、万事解決じゃないか?」

「それよ」

「かんぺき」

 

 日も登り切っていない時間に、コッソリと駐車場に訪れると。

 予想通り、バスしか停まっていないし、人もいない。

 

「たんまつはもったから、ぽいんとももんだいなしね」

「うんうん。せいふくだけでいいんだし」

「ふぅ、これで、張り切り過ぎて朝イチに着いてしまったって言い訳が出来るな」

 

 よし。

 オレたちは、駐車場隅のベンチに、三人で座って。

 寝た。

 

「……………なるほどな」

 

 朝早く来て、バスの確認をしていた茶柱佐枝は。

 ベンチで綾小路に寄りかかって眠っている堀北と櫛田を見て。

 何となく、察した。




 偽物語の歯磨き兄妹プレイに脳を焼かれた人は多いはず。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。